『捻れた終着点』から、『あまねく奇跡の始発点』へ 作:文才の無い本の虫
――良いですか、アトラ・・・・・「行ってきます」、は「ただいま」と言う為の約束なんですよ
「いくぞ」
――神秘を
強く踏み込み、ノアを蹴り飛ばす。
彼女はレールガンを盾にして蹴りを受けた。
「速い、ですね!!」
「守ってばかりでは勝機は無いぞ?」
彼女はバックステップを使って下がりながらレールガンの銃口を此方に向ける。
「言われなくとも、そんな事はわかっていますよ――ロック解除『光よ』ッ!!」
瞬間――周囲の時間が遅く感じ始める。
――思い出せ、
『良いですかアトラ。相手の目線と呼吸を読むんです。そうすれば撃たれる前に動く事が出来ます。相手より速く動き出すのが、戦闘の基本ですよ』
――射線が見える
俺は身体を少し傾ける。
独特の発砲音が鳴り響く。
同時に、ノアの驚いた顔が見える。
「甘い」
ショットガンを押し付けるように撃つ。
ノアは、痛みに顔を歪めながらもレールガンを振り回す。
「っ!はぁッ!!」
俺はそのレールガンをショットガンの側面で往なし、腹部に掌底を叩き込む。
「ふっ!!」
「ぐうっ・・・・・負ける、訳にはいかないんです」
それでも、彼女は立っていた。
――駄目だな・・・・・弾がない
流石に無計画過ぎた。
――アロナに自分の喧嘩だと言った手前、弾を補充して貰う訳にもいかない
なら。
「何を・・・・・銃を捨てた?」
「性には合わないが・・・・・
俺は、レイナの様に構える。
『良いですか、アトラ・・・・・生徒間の問題なら殴って解決出来るんですよ?あ、私の事野蛮人だって思いましたね?!今口に出しましたよね?!酷くないですか?!私だって乙女なんですよ?それにキヴォトスの銃社会の方が大概だと思うんですが?!』
懐かしい記憶。
――先ずは、武器を
「壊させて貰うぞ」
ノアが持つレールガンを掴む。
――神秘を力に
そして、レールガンが圧壊する。
「ッ!!はっ!!」
ノアは瞬時にレールガンから手を離し、体を捻って蹴りを放ち――俺はその蹴りを往なす。
「余裕、ですねっ・・・・・!!」
「
「・・・・・ふふっ、そうですね!!」
ノアが攻撃し、俺が往なす。
暫くそうやって応酬を繰り返したあと、俺とノアはお互いに向かい合った。
『河原の友情って良く言いますけれど・・・・・あれって本当なんですよ?私とリンちゃんも初めの頃は良く殴り合ったりしたものです・・・・・』
彼女は、憑き物が取れたような顔をしていた。
「流石に技術では敵いませんね・・・・・どうやら、私はこの在り方を変えることは出来ない様です・・・・・
「ああ」
俺とノアは、同時に踏み込む。
そして、お互いの拳が――かなりの勢いで――相手の頬に突き刺さった。
「「〜〜〜ッッッ」」
鈍痛。
痛みを堪え、拳を握る。
――笑え
「「ーーーッ!!」」
そうして、決着が着くまで俺達は殴り合った。
俺も、ノアも、ボロボロになって床に寝転ぶ。
「負けて・・・・・しまいました・・・・・ですが、何故か清々しい気分です」
「済まないな、ノア」
「いいえ。私は変われない・・・・・そんな事は、とっくのとうにわかっていて・・・・・認めたく無かった。私は、この奇跡の様な日常に縋り過ぎていた様です・・・・・・・・・・終わりをつくったのは、私なのに」
「やっぱり・・・・・行くんですね?」
「ああ。それが、俺の最後の『責任』だよ」
◆◆◆◆◆
「・・・・・アトラさん、貴方は何時も私を置いて行ってしまいますわね」
「ハルナ」
「でも、良いですわ。私、待ちますから・・・・・美食と、同じです。待つのもまた、乙なものでしょう?」
「・・・・・」
「ですから・・・・・・・・・・きっと・・・・・会いに来てくださいませ。貴方の事を、忘れませんから」
「・・・・・ああ」
◇◇◇◇◇
――ああ、不味い
「残り時間が少ない・・・・・」
寝てしまったノアをユウカに預け、俺は家を目指して。
――せめて・・・・・
聞き慣れた声が、響く。
「アトラっ!!」
「・・・・・姉さん?」
俺は後ろを振り返る。
其処には、息を切らした姉さんが立っていた。
「はぁ、はぁ・・・・・仕事は放って来ました!!」
「何の宣言?!」
少し間を置き、姉さんは息を整える。
姉さんの、見透かす様な目が俺を映した。
「ふぅ・・・・・私の勘が『アトラが何処か遠くに行ってしまう』と告げたので・・・・・・・・・・その様子では、本当の様ですね」
「・・・・・」
姉さんは言う。
「病院に行ってどうにかなる類のものではなさそうですね・・・・・どうにも、出来ないんですね?」
「ああ・・・・・ごめん、姉さん」
姉さんは少し悲しそうな表情を浮かべ、俺の頭に手を置いた。
温かい。
「・・・・・・・・・・アトラ、貴方が何を成そうとしているのか、その先に何が待っているのか、多くは聞きません。私は、お姉ちゃんですから・・・・・弟を信じるのもまた、私の役目です。ですから・・・・・アトラ。貴方は、貴方の為すべき事を成しなさい」
「・・・・・ありがとう」
「ええ・・・・・
「うん。行ってきます、姉さん」
――俺は、振り返らずに先を急ぐ