『捻れた終着点』から、『あまねく奇跡の始発点』へ   作:文才の無い本の虫

54 / 57





――良いですか、アトラ・・・・・「行ってきます」、は「ただいま」と言う為の約束なんですよ







Quarrel:想い

 

 

 

 

 

「いくぞ」

 

 

――神秘を速度に(・・・)

 

強く踏み込み、ノアを蹴り飛ばす。

 

彼女はレールガンを盾にして蹴りを受けた。

 

 

「速い、ですね!!」

 

 

「守ってばかりでは勝機は無いぞ?」

 

 

彼女はバックステップを使って下がりながらレールガンの銃口を此方に向ける。

 

 

「言われなくとも、そんな事はわかっていますよ――ロック解除『光よ』ッ!!」

 

 

瞬間――周囲の時間が遅く感じ始める。

 

――思い出せ、あの時の自分(最高の自分)

 

『良いですかアトラ。相手の目線と呼吸を読むんです。そうすれば撃たれる前に動く事が出来ます。相手より速く動き出すのが、戦闘の基本ですよ』

 

――射線が見える

 

俺は身体を少し傾ける。

 

独特の発砲音が鳴り響く。

 

同時に、ノアの驚いた顔が見える。

 

 

「甘い」

 

 

ショットガンを押し付けるように撃つ。

 

ノアは、痛みに顔を歪めながらもレールガンを振り回す。

 

 

「っ!はぁッ!!」

 

 

俺はそのレールガンをショットガンの側面で往なし、腹部に掌底を叩き込む。

 

 

「ふっ!!」

 

 

「ぐうっ・・・・・負ける、訳にはいかないんです」

 

 

それでも、彼女は立っていた。

 

――駄目だな・・・・・弾がない

 

流石に無計画過ぎた。

 

――アロナに自分の喧嘩だと言った手前、弾を補充して貰う訳にもいかない

 

なら。

 

 

「何を・・・・・銃を捨てた?」

 

 

「性には合わないが・・・・・これ(徒手格闘)が最適解だ」

 

 

俺は、レイナの様に構える。

 

『良いですか、アトラ・・・・・生徒間の問題なら殴って解決出来るんですよ?あ、私の事野蛮人だって思いましたね?!今口に出しましたよね?!酷くないですか?!私だって乙女なんですよ?それにキヴォトスの銃社会の方が大概だと思うんですが?!』

 

懐かしい記憶。

 

――先ずは、武器を

 

 

「壊させて貰うぞ」

 

 

ノアが持つレールガンを掴む。

 

――神秘を力に

 

そして、レールガンが圧壊する。

 

 

「ッ!!はっ!!」

 

 

ノアは瞬時にレールガンから手を離し、体を捻って蹴りを放ち――俺はその蹴りを往なす。

 

 

「余裕、ですねっ・・・・・!!」

 

 

そんなお前には(・・・・・・・)負けないさ」

 

 

「・・・・・ふふっ、そうですね!!」

 

 

ノアが攻撃し、俺が往なす。

 

暫くそうやって応酬を繰り返したあと、俺とノアはお互いに向かい合った。

 

『河原の友情って良く言いますけれど・・・・・あれって本当なんですよ?私とリンちゃんも初めの頃は良く殴り合ったりしたものです・・・・・』

 

彼女は、憑き物が取れたような顔をしていた。

 

 

「流石に技術では敵いませんね・・・・・どうやら、私はこの在り方を変えることは出来ない様です・・・・・ですから(最後に)マスター(・・・・)。殴り合いといきましょう」

 

 

「ああ」

 

 

俺とノアは、同時に踏み込む。

 

そして、お互いの拳が――かなりの勢いで――相手の頬に突き刺さった。

 

 

「「〜〜〜ッッッ」」

 

 

鈍痛。

 

痛みを堪え、拳を握る。

 

――笑え

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ーーーッ!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、決着が着くまで俺達は殴り合った。

 

俺も、ノアも、ボロボロになって床に寝転ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「負けて・・・・・しまいました・・・・・ですが、何故か清々しい気分です」

 

 

「済まないな、ノア」

 

 

「いいえ。私は変われない・・・・・そんな事は、とっくのとうにわかっていて・・・・・認めたく無かった。私は、この奇跡の様な日常に縋り過ぎていた様です・・・・・・・・・・終わりをつくったのは、私なのに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり・・・・・行くんですね?」

 

 

「ああ。それが、俺の最後の『責任』だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「・・・・・アトラさん、貴方は何時も私を置いて行ってしまいますわね」

 

 

「ハルナ」

 

 

「でも、良いですわ。私、待ちますから・・・・・美食と、同じです。待つのもまた、乙なものでしょう?」

 

 

「・・・・・」

 

 

「ですから・・・・・・・・・・きっと・・・・・会いに来てくださいませ。貴方の事を、忘れませんから」

 

 

「・・・・・ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

――ああ、不味い

 

 

「残り時間が少ない・・・・・」

 

 

寝てしまったノアをユウカに預け、俺は家を目指して。

 

――せめて・・・・・アロナ(・・・)

 

聞き慣れた声が、響く。

 

 

「アトラっ!!」

 

 

「・・・・・姉さん?」

 

 

俺は後ろを振り返る。

 

其処には、息を切らした姉さんが立っていた。

 

 

「はぁ、はぁ・・・・・仕事は放って来ました!!」

 

 

「何の宣言?!」

 

 

少し間を置き、姉さんは息を整える。

 

姉さんの、見透かす様な目が俺を映した。

 

 

「ふぅ・・・・・私の勘が『アトラが何処か遠くに行ってしまう』と告げたので・・・・・・・・・・その様子では、本当の様ですね」

 

 

「・・・・・」

 

 

姉さんは言う。

 

 

「病院に行ってどうにかなる類のものではなさそうですね・・・・・どうにも、出来ないんですね?」

 

 

「ああ・・・・・ごめん、姉さん」

 

 

姉さんは少し悲しそうな表情を浮かべ、俺の頭に手を置いた。

 

温かい。

 

 

「・・・・・・・・・・アトラ、貴方が何を成そうとしているのか、その先に何が待っているのか、多くは聞きません。私は、お姉ちゃんですから・・・・・弟を信じるのもまた、私の役目です。ですから・・・・・アトラ。貴方は、貴方の為すべき事を成しなさい」

 

 

「・・・・・ありがとう」

 

 

「ええ・・・・・行ってらっしゃい(・・・・・・・・)、アトラ」

 

 

「うん。行ってきます、姉さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――俺は、振り返らずに先を急ぐ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。