『捻れた終着点』から、『あまねく奇跡の始発点』へ   作:文才の無い本の虫

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――祈りの果て

――偶然な必然

――人はそれを、『奇跡』と呼ぶ







Final:彼と彼女の、あまねく奇跡の始発点

 

 

 

 

 

 

「――起きてください、マスター」

 

 

「――待ってましたよ、アトラ」

 

 

ガタンゴトンという振動が伝わって来る。

 

どうやって辿り着いたかはわからないが、俺は境界列車に乗っている。

 

――正に、今際の際か

 

 

「何故――いや、聞くまでもないか」

 

 

しかし、此処に彼女達(・・・)は居てはいけない。

 

俺は右隣で悲しそうな顔をしているレイナに聞く。

 

 

「このまま順当にいけば、俺は消える。合っているな?」

 

 

「・・・・・ええ。貴方の存在はアロナちゃんが繋ぎ止めている様なものですが、もう限界です」

 

 

限界、か。

 

――最後に為さねばならない事がある

 

いや、俺のエゴか。

 

俺は左隣のアロナの頭を撫でる。

 

 

「・・・・・アロナ」

 

 

「むふ・・・・・至福、です」

 

 

アロナは心地良さそうに目を細める。

 

――思えば、アロナとは誰よりも長い付き合いだった

 

俺は、右手で俺の補われたヘイロー(・・・・・・・・)を掴む。

 

 

「マスター・・・・・何を、しているんですか?」

 

 

「お前は、此処で俺と一緒に消えるべきじゃない」

 

 

残りの生を燃やす様に力を込める。

 

――ヘイローにヒビが入る

 

 

「!・・・・・警告。そんな事をすれば、マスターは」

 

 

「アロナ・・・・・お前とは、ずっと一緒だったな」

 

 

「マスターが、死んでしまいます」

 

 

――ヒビが広がっていくのがわかる

 

俺は、ヘイローに入ったヒビ(存在証明の綻び)を利用して一つずつ丁寧にアロナと俺の『繋がり』を解いていく。

 

 

「だけど、お前を巻き込む訳には行かない。お前が、こんな所で消えて良い訳が無い。お前は、生きるんだ」

 

 

「生きる?マスターが居なければ意味なんて有りません。それなら、マスターと一緒に消えてしまった方がましです」

 

 

「アロナ、コレは万に一つ(・・・・)でもお前を巻き込みたくないという俺のエゴだ。恨んでくれて構わない」

 

 

――最後の一つ

 

『繋がり』が無くなる。

 

その瞬間、アロナが光に包まれ始めた。

 

俺から独立した彼女に境界列車(生と死の狭間)への乗車券は無い。

 

 

「じゃあな、アロナ」

 

 

「・・・・・決意」

 

 

彼女は俺の前に立って言う。

 

その目は、強さを感じさせた。

 

 

「憤怒。私は今、激おこです。激おこぷんぷんまる、です。判決は撫で撫で12時間の刑です(・・・・・・・・・・・)。マスターが12時間撫で続けてくれるまで絶対に許しません」

 

 

「・・・・・それは」

 

 

「ですから、マスター。行ってらっしゃい(・・・・・・・・)、です」

 

 

彼女は、涙を流しながら姉さんが教えてくれたおまじないの言葉を言って消えて行った。

 

――ああ・・・・・行ってきます(・・・・・・)

 

 

「アトラ・・・・・貴方(『紛い物の先生』)は消える。それに、後悔していませんか?」

 

 

「してないさ。()はあの場所で死ぬ筈だった・・・・・そんな()が、再び彼女達に会えた。それだけで(『先生』として)後悔は無いよ」

 

 

()は、レイナに言う。

 

 

「レイナ・・・・・一つ、頼みがあるんだ。アロナを、お願い出来ないかな」

 

 

「・・・・・はぁ、貴方は本当に酷い人です。アロナちゃんを泣かせて、私を泣かせて。一度背中を刺されたらどうです?」

 

 

「それは・・・・・困るね(困るな)

 

 

()は、困った様に頬を掻く。

 

ため息を吐いて、やれやれといった風にレイナ(彼女)は言う。

 

 

「・・・・・わかりました(わかったよ)アロナちゃんの事は任せて下さい(あの子の事は任せて)だから・・・・・(だから・・・・・)無理だとはわかっていますが(無理かもしれないけど)早めに会いに来て下さいね?(早めに会いに来てね?)

 

 

そうして、彼女は境界列車から消えて行った。

 

もう、時間は少ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「“――此処は?”」

 

 

「・・・・・今際の際に、来客か・・・・・お久しぶりですね、先生」

 

 

私が目を覚ますと、不思議な電車の中で、彼――ユウカの同僚である不知火アトラと向き合って座っていた。

 

何故か、彼は弱っている様に見える。

 

 

「“うん。久しぶりだね、アトラ。それで、此処は?”」

 

 

「此処は、俗に言う『生と死の狭間』・・・・・です、かね」

 

 

「“えっ?!私・・・・・死んじゃったの?!”」

 

 

「・・・・・見たところ、貴方()生きていますね・・・・・寝た時に、意識だけ滑り込んだ様ですね」

 

 

「“ふう・・・・・それなら良かった。?・・・・・君は?”」

 

 

「俺は・・・・・死んで行く、最中です、ね」

 

 

「“ッ!!”」

 

 

「流石に・・・・・慣れていたとしても、怖いですね」

 

 

彼の左手は、少し震えていた。

 

――コレは、『大人のカード』ではどうもできない

 

(“なら、せめて。”)

 

私は、少し震えている彼の手を握る。

 

 

「“大丈夫かい?”」

 

 

「何故・・・・・手を?」

 

 

「“あまり関わりがなくても・・・・・君は、私の生徒だからね。”」

 

 

彼は、ゆっくりと瞬きをして、言った。

 

 

「・・・・・確かに、貴方は、先生だ・・・・・・・・・・一つ・・・・・お願いがあります」

 

 

()は、彼の言葉に耳を傾ける。

 

 

「忘れてしまうかもしれない・・・・・・・・・・図々しい、願いですが・・・・・皆を・・・・・よろしく、お願いします」

 

 

→応える

 

彼の言葉に()は頷いた。

 

 

「“うん、勿論だよ。”」

 

 

―――――(ありが■う)―――――(ご■います)

 

 

そして、彼は満足そうに笑って目を閉じる。

 

瞬きのうちに彼の身体は光の粒子になって消えていく。

 

――その光は、何かを祝福するかの様に青い空へと昇っていった

 

 

(“・・・・・何と無く、彼とはまた会える気がした。”)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――何時か

 

 

 

 

 

――何処か

 

 

 

 

 

――透き通った青空の下で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久し振りだな、アロナ。背が伸びたか?・・・・・いや、その前に言うべきことがあったな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ただいま」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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