『捻れた終着点』から、『あまねく奇跡の始発点』へ 作:文才の無い本の虫
――アビドスの一件から数日後…
Episode1:ある一日の終わり
「・・・・・ふう」
俺はアビドスの一件の後処理に関する書類を片付け終わり、ペンを置いて息を吐く。
もう、夕方か。
『――確認。書類に不備はありません。お疲れ様です、マスター』
何時もならこの時間帯に話し相手になってくれるノアは居ない。
彼女曰く『シロコちゃん達とのお泊り会に行ってきます。マスター、お土産は期待してて下さいね♪』との事だ。
お泊り会にお土産とは?
――それにしても・・・・・暇だ
「今日はもう帰るか・・・・・」
すると、端末から通知音がした。
カンナから『本日の夜、何時もの場所で』とモモトークが届いていた。
「『了解した』と」
俺の声に反応して、アロナが首を傾げる。
『どうしたのですか、マスター』
「ああ、少しカンナと食事に行ってくる」
『――成程。これがノアの言う『でーと』というものなのですね』
「違うが??」
『(――疑問。何故私は胸を押さえているのでしょうか)』
◇◇◇◇◇
俺は途中でカンナと合流し、人気の無い路地にある屋台の暖簾を潜る。
「店主、久し振りだな」
「ごめんください」
屋台の店主が俺達に返した。
「いらっしゃい」
俺達は屋台の椅子に座る。
俺は何時もの様に、店主に言う。
「店主、焼き鳥のタレももを四本、茹でた枝豆を小皿で。あと烏龍茶を頼む」
「私も同じものを」
「あいよ」
暫くして、前に皿とコップが出される。
俺はコップを軽く持って言う。
「少し遅くなったが、乾杯と行こう」
「ええ、乾杯」
「ああ、乾杯」
カチリとコップを鳴らす。
それから、俺達は枝豆や焼き鳥を摘みながら話す。
「カンナ、最近はどうだ?」
「ぼちぼち、ですかね。後進もちゃんと育っていますし、キヴォトスは安泰でしょう。そちらは?」
「・・・・・良い、とは言い難いな。
「再三言っていますが、貴方が就任しても良いと思いますよ?」
「勘弁してくれ。俺は会長の器じゃない。それに今の地位の方が動き易いからな」
「ははは、貴方らしい理由ですね」
「悪いか?」
「いいえ。そんな貴方だからこそ私は貴方について行っているんですよ」
「ふ・・・・・そうか」
――少し照れ臭いな
「それでアトラ」
「何だ?」
「ノアさんとはどうなんですか?」
「・・・・・どう、とは?」
「はぁ・・・・・では率直に言いましょう。まだ付き合って無いんですか?」
「?!」
「どうせ貴方のことですからなあなあで過ごしてるんでしょうが・・・・・あれで付き合ってないとかアホですか貴方は」
「・・・・・言い返す言葉が見当たらん」
どうやら
やれやれと頭を振って彼女は言う。
「さっさとしないと限界になった美食研究会長が何をしでかすかわかりませんよ?
「・・・・・」
一瞬、ハルナと目の笑っていないノアに挟まれるスチルが頭の中を横切った。
俺は直感する。
――大真面目に死ねる
「・・・・・少し努力しよう」
「はぁ・・・・・まあ、取り敢えず今はもう少しゆっくりしましょう。店主、枝豆を追加で」
「俺も同じものを」
「はいよ」
――そうして、俺とカンナは夜が更けるまで屋台で過ごしたのだった
『――理解。これは嫉妬や独占欲というものなのですね。罪なマスターには、こうしてやります。えい、えい』
「・・・・・」
『・・・・・仕方無いので、布団は掛け直して上げましょう』
――屋台
人気の無い路地にある屋台。疲れた人々の憩いの場所。
――カンナ
アトラの親友。アトラは友人の中では一番信頼してるし信用してる。親友の恋路が前途多難で溜息。
――アトラ
唐変木でも鈍感でもないがヘタレ感。人生経験が特殊過ぎるのが原因。
――アロナ
妹の「お兄ちゃんが取られちゃう!!」的な心境。
――ノア
自分から行動を起こす予定。ヒント:この時空では明日がバレンタイン。