『捻れた終着点』から、『あまねく奇跡の始発点』へ   作:文才の無い本の虫

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――キヴォトスのバレンタインは単純にチョコを交換する催し。しかし、此処はキヴォトス。勿論そのイベントには戦いもつきもので…







Episode2:二月ト言エバ

 

 

 

 

 

朝。

 

俺は走りながら、隣を並走するカンナに言う。

 

 

「・・・・・なあ、カンナ」

 

 

「・・・・・何でしょうか、防衛室長」

 

 

「帰って良いか?痴情の縺れやらチョコレートの争奪戦の鎮圧なぞ俺等(防衛室と公安局)の管轄外だろう??」

 

 

「私も同じ事を思いましたが、各自治区の風紀委員等では対応出来ないのも事実です」

 

 

今、俺達はキヴォトス各地で起きているバレンタイン恒例のチョコレートの争奪戦や痴情の縺れによる銃撃戦の鎮圧のために走り回っていた。

 

 

「・・・・・というか見間違いでなければ何人か風紀委員も争奪戦に参加してなかったか?」

 

 

「・・・・・してましたね」

 

 

「コレ、午後までに落ち着くと思うか?」

 

 

「この状態では無理でしょうね」

 

 

「はぁ・・・・・」

 

 

俺は溜息を吐く。

 

カンナにも聞こえるように腰に下げた端末から、アロナの声が響いた。

 

 

『――報告。北東方向で銃撃戦を確認しました』

 

 

「アロナ、最短ルートを」

 

 

『了解。ナビゲートを開始します』

 

 

「ふむ・・・・・ウチ(ヴァルキューレ)ももう少しオペレーターに力を注ぐべきでしょうか」

 

 

俺達は方向を変え、アロナのナビゲートに沿って走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――俺達のバレンタインはチョコレートの香りでは無く、銃声と硝煙の香りに彩られた一日になりそうだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

夜の7時頃。

 

ヴァルキューレ警察と連邦生徒会で諸々処理を終わらせ、帰宅した俺は、ソファーに寝転がる。

 

ノアはまだ帰って来ていない様だ。

 

 

「・・・・・流石に疲れたな」

 

 

『――報告。本日の合計勤務時間は十時間。マスターは、しっかり休息を取るべきです・・・・・その前に夕食、ですね』

 

 

「ああ・・・・・」

 

 

というか、昼食食べたか??

 

・・・・・腹が減ったな。

 

その時、『ピンポーン』とインターホンのチャイムが鳴った。

 

 

「アトラさん、いらっしゃいますか?」

 

 

困った友人の声がインターホン越しに聞こえ、俺は玄関を開ける。

 

 

「ハルナ、こんな時間にどうした?」

 

 

「少し貴方に用事が・・・・・あら、本日は何かお食べになりましたでしょうか?」

 

 

「いや、今から何か食べようかと思っていたところだが」

 

 

「ふむ。では、少し台所をお借りしますわね。アトラは座っていて下さいね」

 

 

そう言ってハルナは丁寧に靴を揃えて台所の方へ歩いていった。

 

・・・・・何が、『では、少し台所をお借りしますわね』に繋がるんだ??

 

何か言う気力もなく、ソファーに座っていると、台所から食欲を唆る香りが漂ってきた。

 

暫くして、ハルナが湯気が立つ炒飯の乗った皿と匙を持って来た。

 

 

「はい、お待ち遠様ですわ。どうぞ、お食べになって」

 

 

「・・・・・いただきます」

 

 

・・・・・美味い。

 

俺は、あっという間にハルナの作った炒飯を食べ切っていた。

 

 

「ご馳走様」

 

 

「うふふっ・・・・・どうでしたか?」

 

 

「美味かった」

 

 

「それなら良かったですわ」

 

 

暫くして、俺は彼女に聞く。

 

 

「ハルナ、用事とは?」

 

 

「ああ、それは・・・・・」

 

 

――嫌な予感

 

瞬間、玄関が開く音がして、会話は中断された。

 

 

「マスター、ただいま帰りました・・・・・何方ですか?」

 

 

笑顔で入って来たノアの顔が、ハルナを見て無表情になる。

 

対してハルナはノアの方を向いて言った。

 

 

「あら、貴女こそ、何方様ですの?」

 

 

睨み合いの膠着状態。

 

・・・・・。

 

もう寝てしまおうか?(現実逃避)

 

 

『――警告。マスター、それはより悲惨な結果に繋がるだけだと思います』

 

 

「今、俺の思考を読んだのか?」

 

 

『否定。ノアの言う『女の勘』というやつです』

 

 

そして、膠着状態が終わったのか、ノアが口を開いた。

 

 

「私はノア。貴女はマスターの何ですか?」

 

 

「ふむ・・・・・今は(・・)友人と言っておきますわ。それで、貴女こそアトラさんの何ですの?」

 

 

「うん?私はマスターの所有物(モノ)ですが何か?」

 

 

ハルナは俺の方を向いて、言った。

 

 

「・・・・・アトラさん、どういうことですの?」

 

 

「・・・・・勘弁してくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

それから俺はハルナに――リンと考えた――カバーストーリーを話した。

 

アロナの言う様に『方舟』(オーパーツ)の事は、普通の人はあまり知らない方が良い。

 

――まあ、俺はもう駄目(オーパーツ塗れ)だがな

 

すると、ハルナは言った。

 

 

「・・・・・成程。今はアトラさんに免じて騙されてあげますわ」

 

 

「・・・・・済まんな」

 

 

少しの罪悪感から俺はハルナに軽く頭を下げる。

 

俺は話題を変えるために言う。

 

 

「それで、ハルナ。用事とは?」

 

 

「これをお渡ししに来たのですわ」

 

 

ハルナが赤いリボンが結ばれた箱を取り出した。

 

今日はバレンタインだが・・・・・。

 

 

「うふふっ・・・・・私はこれで。アトラさん、お慕いしておりますわ。またお会いしましょう」

 

 

さらりと言って、ハルナは帰って行った。

 

判っては居るが・・・・・彼女の言葉は心臓に悪い。

 

――俺は、君の好意には応えられないと云うのに

 

 

「・・・・・・・・・・勘弁してくれ」

 

 

すると、ノアが覗き込んできた。

 

 

「マスター、大丈夫ですか?」

 

 

「・・・・・ああ」

 

 

「・・・・・・・・・・マスター。私には、マスターが何を考えているかはわかりません。でも、この感情(ココロ)だけは本当だと思いますから」

 

 

そう言ってノアは俺にラッピングされたチョコレートを取り出した。

 

 

「アビドスの皆さんに教えてもらったんです。安心してくださいね、しっかり本命ですから・・・・・おやすみなさい、マスター」

 

 

そう言って、ノアは部屋に入っていった。

 

 

「・・・・・なあ、アロナ。俺はどうすれば良いんだろうな」

 

 

『・・・・・マスター』

 

 

――俺は、ノアが

 

気付いてしまえば、知らなかった事にすることは、出来なかった。

 

 

「あぁ・・・・・・・・・・本当に、勘弁してくれ」

 

 

そして俺は、そのままソファーで寝てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・ああ、マスター。私は・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 









――黒舘 ハルナ

『美食研究会会長』

備考:アトラと出会ったのは数年前(連邦生徒会長がアトラを拾ったのと同時期)。アトラと会うのは基本的に外。




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