坂柳の帽子を彼女の部屋に届けた後、清隆から飲み物買いに行こうとのお誘いがあった。
「うぃ。」
「久しぶりだな、廻那。」
「言われてみれば確かに。…お前のクラスは大変そうだな。」
0ポイントってどうなってんだDクラスは…。中間テストとか乗り切れるのかよ…。
「困難の渦中にこそ、オレは輝ける。むしろ好都合だ。」
「お前…。」
一体どうしたら、人=道具思考人間がここまで面白くなってしまうんだ。
そのまま清隆と談笑していた俺達は、エレベーターを降りて外の自販機まで辿り着いた。
…?気配?誰かがいるようだ。
「…鈴音、ここまで追ってくるとはな。」
「もう兄さんが知っていた頃のダメな私とは違います…。追いつくために来ました。」
…誰かと思えば生徒会長と堀北じゃないか。やっぱり兄妹か、似てるな。
何となくその場から離れる気もしなかった俺達は、気配を殺して傍観を続けることにした。
そんな最中、堀北がすぐにAクラスに上がってみせるだのなんだの言っていると、何やら険悪な雰囲気が漂ってきた。
「Dクラスに振り分けられた妹、恥をかくのはこの私だ。今すぐこの学園を去れ。」
ん〜なんかヤバそう…。動画でも撮っておこう、監視カメラ無さそうだし。
「兄さん…私は…。」
「お前には上を目指す力も資格もない…それを知れ。」
いやいや生徒会長何やってんすか。完全に打ち込む姿勢だぞ…。
「おい清隆…。」
「分かってる。」
そう言うと俺の横から高速で抜け出す清隆の影が見えた。
清隆は即座に生徒会長の右腕を掴み、攻撃を未遂のものとしたようだ。
「あ、綾小路君…!」
「あんた、今本気で打ち込もうとしたろ。彼女を離せ。」
俺の友達かっこよ。
「やめて…綾小路君…。」
堀北が弱々しい声で清隆にそう告げると、清隆は生徒会長の腕の拘束を解いた。
──瞬間、生徒会長が清隆に腕を横ばらった。
清隆はギリギリを装うように避ける。…徹底してるなあいつの暗躍者ムーブ…。
生徒会長はすかさず前蹴りを入れるものの、清隆にかわされる。だが流石は生徒会長、間髪入れずに次の手を打ってきた。武道経験者だなあれは。
「…いい動きだな、何か習っていたのか。」
「ピアノと書道なら。」
嘘つけぇい。
「あぁ、そういえば今年の入学試験、全科目で50点を取ったという新入生がいたな。加えて先日の小テストも50点…狙って揃えたな?」
「偶然って怖いっすね。」
「なかなかユニークな男だな。」
き、清隆さん?
あの馬鹿野郎入学試験でなんてことしてやがるんだ…お前が思ってる普通とかけ離れてるぞそれ…。暗躍者ムーブ徹底してるとか嘘、ただのアホだあいつ。
俺は呆れながらも動画を回す手を止めなかった。ことが大きくなる前にそろそろ参上しよう。
「はいストップ〜。お二人さん中々いい戦いっぷりでしたね。」
「…!西園寺か。お前がいるとは思わなかった。気配を消すことが余程上手いようだな。」
「西園寺君…?貴方まで…。」
「家族に手をあげるような人だとは思いませんでしたよ、会長さん。」
「…何が目的だ?西園寺。」
流石の洞察力というべきか、胸ポケットにしまっていた端末で動画を撮ってることバレていたようだ。
「目的ねぇ。…強いて言うなら、会長さんが今まで受けてきたテストの過去問、全部欲しいですね。」
俺は勉強会をしている途中、過去問があれば楽なんじゃないかと何となく考えていた。ぽっと出の思考である。
坂柳は今回の中間テストで、全員が全科目100点を取ることを最大の目的にしていた。達成するためには傾向と対策を知るべきだろう。…まぁ無くてもいけそうだけど。
「過去問か…やはりお前は優秀だな。…鈴音、お前に友達がいるとは正直驚いた。上のクラスに行きたければ、西園寺のような人間を超えられるよう死にものぐるいで足掻け。」
「綾小路君はともかく、彼は友達ではありません…。」
酷い。…だが清隆はともかく、か。清隆は堀北を程よく絆しているようだな。
「ふん、孤高と孤独の意味を履き違える程では無くなっているようだな。…西園寺、後でお前の連絡先に全過去問のPDFを貼っておこう。動画は削除してもらえるか。」
「了解です、恩に着ます。」
俺は会長に動画の削除画面を見せた。元々ポイント払って会長に過去問貰おうとしてたから、安上がりで過去問貰えてラッキーだ。
生徒会長は野暮用があるらしく、寮のエントランス口ではない方向へと去っていった。
その場に留まっていた俺と清隆、そして堀北の3人は、当初の目的である自販機で飲み物を買った。その後、何となく気まずそうにしていた堀北が話をし始めた。
「…変なところを見られちゃったわね。」
「…喧嘩するほど仲がいい、って訳じゃ無さそうだったしなぁ。」
「むしろ堀北も普通の女の子なんだなって…なんでもありません。」
堀北がキッとした目線を清隆に向けて話を終わらせた。…清隆、会話下手かよ。
「…入試の点数をわざと揃えたって本当?」
「…言っただろ、偶然だ。」
俺は無言で清隆にジト目を送る。目を逸らそうとするな、お前。
「…お前、本当に勉強会はいいのか?」
うわぁ、露骨に話題逸らした〜。
「…。」
堀北は清隆の発言にだんまりする。自分自身で思うところがあるようだ。
「前にも言ったが、お前の欠点は他人を足でまといだと決めつけ、最初から切り捨てることだ。長期的な目で判断しろ、少しづつでいい。」
「…分かっているわ、綾小路君。貴方に協力を申し出たのは、他でもない私自身だもの。」
堀北が従順だと?…たまげたな、清隆は予想以上に人たらしのようだ。
「…もう少し策を練ってみるわ。綾小路君、貴方も協力して頂戴。」
「もちろんだ、オレだって下克上はしたい。」
アニメでの黄金展開だから、という後付けが聞こえてきたのは気の所為だろうか。
「…そう、ありがとう綾小路君。」
ほ、堀北が感謝…?お前誰?
堀北は清隆に感謝の言葉を投げかけると、一足先に寮へと戻って行った。
「さて、オレたちも帰るか。」
「待て、オール50点馬鹿。」
バツの悪そうな顔で清隆は俺を見てきた。
「清隆…あれはなんのための半年間だったんだよ…。」
「100点の半分は50点だ。つまり、平均的な点数は50だと考えたまでだ。」
「ドヤ顔するな、お前やっぱり馬鹿だろ。本当は目立ちたがり屋なんじゃないかって勘違いするところだったぞ…。」
「なるほどこれだと目立ってしまうのか…次からは気をつけよう。」
清隆は手をポンと叩いて理解を示した。またデコピンしてやろうかこいつ。
真面目に説教垂れるのも馬鹿らしくなってきた…頭痛くなる。
「…帰るか…。」
「そうだな。…それに、廻那にも過去問を使うという考え方があったんだな。」
個々人の部屋へと戻る途中のエレベーターの中で清隆がそんなことを言ってきた。
「…世間一般的には受験をする際に、志望校の過去問から傾向と対策を練るらしい。そうなれば必須級のアイテムかと思えてな。」
「やはり廻那の思考は侮れないな。いずれ超えるべき存在として、手強い限りだ。」
「黙れ最高傑作。」
煽るような言葉を吐いてきた清隆はおやすみ、といってエレベーターを降りた。
あ、過去問送られてきた…小テストまである。…これ、この前の小テストの問題と同じじゃないか…!
俺のぽっと出の思考は、海老で鯛を釣ることが出来たようだ。
幾度もの勉強会、そして過去問のおかげもあり、Aクラスは中間テストを余裕で乗り切ることが出来た。
白板に張り出された科目ごとの点数結果用紙は、国語、英語、化学、数学、社会の5科目において100点という数字で全て埋め尽くされていた。
「お手柄です。西園寺君。」
「もっと褒めて。」
「え?…えぇと…す、凄い、偉い、とても賢い…!」
「ありがとう坂柳。」
知性ェ…。ここまで来るとむしろ面白くなってきたな。
「皆素晴らしい結果を今回の中間テストで叩きだしてくれた。今年のAクラスはやはり豊作だ。今回のテストで加算されたクラスポイントは100、来月一日を楽しみにしておけ。」
真嶋先生が期待を込めた顔で俺たちにそう激励した。
しかし、来る6月の1日になってもポイントは振り込まれることは無かった。聞けばCクラスの生徒とDクラスの生徒が暴力事件を起こしていた模様。
なんだDクラスか、清隆いるし大丈夫だろう。いい機会だ、あいつの手際を今1度把握しておこうか。
一学年クラスポイント一覧
Aクラス…1040pt
Bクラス…663pt
Cクラス…492pt
Dクラス…87pt
暴力事件はすっ飛ばします。はよ無人島行きたいので。
坂柳と西園寺の関係性をどうするか。
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付き合え。
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このままで。
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作者の自由でも良し。
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最早別キャラと付き合え。