暴力事件そのものには関与しませんが、アニメを見返した結果、佐倉のストーカーには制裁を受けてもらおうかと思います。
暴力事件勃発から数日経過していた。
清隆に貸した漫画を読み返したくなったため、あいつの部屋に勝手に行った時があった。しばらくして、知らん奴らと櫛田が清隆の部屋に入ってきて焦ったこともあった。
その知らん奴ら、池や山内から聞いた話から推測するに、どうやら清隆は堀北や櫛田を駆使して、裏からこの事件の解決の糸口を見つける手助けしているようだ。
それと櫛田に連絡先を交換させられた…あんまり関わりたくないのに…。
若干の不運を被った俺は、元々関与する予定のない暴力事件にこの先絶対に関わらないことを今1度固く決意した。櫛田が軸に動いてるのなら尚更だ…。
それから何日か経って生徒会による審議が行われたらしいが、結論は再審にとどまったようだ。
「CクラスもDクラスもねちっこいですよね。」
坂柳は再審の通知を掲示板で見たやいなや、退屈だと言わんばかりの表情をしながら言葉を発した。
「Dクラスはともかく、Cクラスのリーダーである龍園は危険な男だと聞く。あまり軽んじないほうが良いと思うぞ坂柳。」
葛城は自分の大腿四頭筋を揉みほぐしながら坂柳にそう言い返した。
俺のトレーニングが余程キツかったのか、4日ぐらい前からこんな感じだ。それに休日は意識が無かったらしい。
…で、坂柳は隣だからともかく、当たり前のように俺の席に集まってくるのね。
最近はこの3人で日々を共に過ごすことが多くなってきている気がする。そのせいか、1部では俺がAクラスの総裁だのなんだのと認知されているらしい…普通に青春したいのに。
「まぁともかく今回の件は俺達には関係ない。事の顛末を楽しみに、DとCのタイプも探れるいい機会だと思っておこうぜ。」
「そうだな。…そういえば西園寺、Cクラスには中々筋の良さそうな男がいた気がするぞ。」
「山田アルベルトのことだろう?マイフレンド。頃合を見て
「他クラスにも変態を植え付けるのはやめてください。変態とは戦いたくありません。」
坂柳は俺たち2人を交互に見ながらそう言った。誰が変態だ。
「なっ!変態だと坂柳…!…嬉しいことを言ってくれるじゃないか…。」
葛城は恐らく、変態=ブーメランパンツが似合うマッスルメン、という独自解釈を生み出しているのだろう。フランキーかよ。
こいつトレーニングでぶっ倒れてから肉体にも脳にも変な拍車がかかったな…。
「さ、西園寺君…私この人嫌です…。」
マジの変態を脇目に坂柳が目を潤ませながらこっちを見てきた。んー可愛い。
「悪ぃな坂柳。こう育てた覚えはないんだがな。」
「げ、元凶は貴方なのですか…。」
坂柳は全てを諦めたような顔をしてバッグから胃薬を取り出した。こらこら飲みすぎは駄目って言ったでしょ。
そんなこんなで俺達Aクラスは暴力事件での混乱には目もくれず、少しばかりポイント節約しながらいつも通りの毎日を過ごしていた。
かく言う俺も…とはいかなくなった。
ある日の放課後、俺は坂柳と一緒に下校しようとしていた。理由は無い、何となく俺がそうしたくなっていただけだ。
坂柳と教室で下校の準備をしながら談笑していると、清隆から突然電話がかかってきた。
「もしもし。どうしたお前から電話だなんて…」
「すまん廻那、急用だ。今送った路地裏まで全力で向かってくれ…!」
ブツっと電話は切れてしまった。…清隆がここまで取り乱すことはあまり無い…友の頼みだ、急ごうか。
「?どなたからでしょうか?西園寺君。」
「悪い坂柳。質疑応答の時間も、ゆっくり話している暇も無さそうだ。」
送られてきた場所はケヤキモール近くの路地裏。走って学校から約10分弱…普通ならば。
「言われた通り全力で行かせてもらおうか。」
「え、え?何処に行くつもりですか?」
「悪い!今日はここでお別れだ坂柳!また明日!」
俺はなりふり構わず教室の窓から飛び降りた。
坂柳の西園寺君〜という声が遠ざかってゆく。マジでごめん坂柳。
時代が違えばかまいたちとして妖怪扱いされるような速度で、地面を削り取るように俺は走り続けた。
校舎が完全見えなくなり、丁度商業施設でごった返しているケヤキモールが見えた辺りに到着した。
いちいち人を避けながら、かつ狭い路地を渡って向かうのは非効率だと考え俺は1度足を止めた。
「跳ぶか。」
飛んだ。
俺は足に力を込めて踏ん切りをつけ、その場にかがんで真上に飛んだ。
暴力的な上昇気流が巻き起こり、辺りの塵は綺麗に吹き飛んだ。
元いた場所の地面はひび割れて破壊されていた。また弁償代がかさむ…。
周りにいた数少ない人間は、顎が外れるのではないかと思うぐらい驚いていた。ごめんね、なりふり構っていられないんだ。
超人的な視力で俺は目的地を見つめた…女子生徒がおっさんに強姦されているのか…?!
どうやら一刻を争う事態らしい。俺は体重をのせてまるで隕石のようにその場へと着弾した。
──到着と同時に爆音が路地裏に鳴り響く。
「!?」
「な、なんだお前!!」
「ジジイ、花の女子高生に何してやがる。」
──不衛生な面持ちをした中年男性に突き刺さる殺気。
生物の頂点か、武神かと見紛うかのようなその覇気は中年男性の行動を中断させるのには充分だった。
幸いなことにまだ未遂のようだ。
「…お、お前!なんなんだ本当に一体…!」
「威圧で押し黙らないとは、お前相当な執着心だな。性犯罪者。」
「う、うるさい黙れ!僕達は運命で繋がっているんだ!!」
ジジイは俺に襲いかかってきた。1発殴られておこう、正当防衛となる根拠が欲しい。
極めて冷静な思考で俺はジジイの殴打を顔で受け止めた。痛くも痒くもない。
「は、はっ?!」
「…ジジイ、恐れなくていいぜ。罪と向き合うんだ。」
──俺は片足を地面にめり込ませるかのように踏み込む。
踏み込みで砕けた地面に足を固定し、身体をねじ曲げ、ジジイの腹に拳の焦点を当てる。
虎のような威光を放ちながら、心を砕くためにジジイの目を冷酷に見据え、踏み込みで生まれた積力をのせた拳を穿つ。
「冥躰震虎拳っ!」
「殺すな!廻那!」
いつの間にか到着した清隆が俺にそう忠告した。わかってるよ安心しろ。
拳がジジイの腹にめり込んだ瞬間、おおよそ人から生まれる音とは思えない衝撃音が鼓膜を貫いた。
ジジイは嘔吐してそのままその場にへたりついて気絶した。
「廻那…殺してないよな…。」
「外傷はないが、内蔵はやばいことになってるだろうな。それでも心臓は避けた、死にはしないさ。」
「全員が全員お前じゃないんだ。気をつけろ…。」
「…分かった。」
それからしばらく経った後、Bクラスの一之瀬が警官を引き連れてやってきた。何故一之瀬が?まぁいいか。
「お勤めご苦労、一之瀬。」
「君はAクラスの西園寺君…!どうしてここに…。」
「話は後だ一之瀬、とりあえずコレ回収してくれ。」
一之瀬と警官達は引き攣った表情でジジイを回収していった。
「佐倉、大丈夫か?」
「綾小路君…何とか平気、えっと西園寺君が場を収めてくれたから…。」
「あの中年男性は監視カメラの映像を証拠に豚箱入りだろう。人生終わっただろうな。」
「…ごめんなさい、綾小路君。」
「アイドルも大変なんだな。」
…アイドル?
「でもこれでよかったのかも…自分を偽り続けるのって大変だから…。ごめんねずっと黙ってて。」
「別に謝ることじゃない。けれど、これから先悩むことや困ったことがあったらいつでも相談してくれ。」
「…ありがとう綾小路君。…西園寺君もありがとう。」
「清隆のおかげで大事にならずに済んだんだ。俺に感謝は不要だよ。」
「…2人とも私の事、変な目で見ないんだね。」
「変な目?…そういう佐倉も俺の事、変な目で見ないんだな。」
化け物扱いされてもおかしくない動きだったのにも関わらず、佐倉の瞳にはブレがなかった。…こんな目を向けられたの久しぶりだ。
…この佐倉の目、どこかで見たことある気がするのは気の所為か…?
「…その、佐倉ってアイドルやってたのか?」
「え、あ…うん、雫っていう名前でグラビアやってて…。」
!!!!!?????
ほとばしる稲妻、俺の頭に弾ける轟雷。
この学校に来て1番の衝撃が突き刺さる。
し、しし雫??俺が夜な夜な投稿写真見て発狂しかけたあの雫!?
滑らかな脚線美と人から醸し出されるのかと疑うほどのオーラ溢れる写真をポンポン投稿するあの雫?!
あ、やばい、うるさすぎて清隆に金的されたの思い出した…。落ち着こう…。
「な、なるほどな……さ、サインください…。」
ダメだっ…欲望に抗えん…。
直後、股間に激震が走った。
はうっ…!清隆の全身全霊の睾丸殴打…!?
「空気読め廻那。…悪いな佐倉、廻那は雫のファンなんだ…。」
「…悪い佐倉、絶対に今言うべき発言じゃなかった…。」
「…ふふっ、綾小路君と西園寺君って仲良いんだね…!こんなにラフな綾小路君初めて見たかも…。」
その場を後にした俺たちは、先程のことがなかったかのように話し始めていた。
佐倉が清隆に頑張って話しかけようと努力していたのを見て、俺は萌えると同時に、変身してしまいそうなぐらい羨ましくなっていた。
が、結局サインをくれた佐倉のおかげで変身せずに済んだ。家宝確定。
「西園寺君みたいなファンもいるって考えると、私頑張ってきて良かったなって思えるよ…!」
「ありがとう…ありがとう…。」
「何故廻那が感謝する…。」
清隆には「推す」という感覚が身についていないようだ。青二才が。
佐倉が一足先に寮へと足を進め俺と清隆だけになった頃、須藤がこちら側へと近づいてくるのが見えた。
「おお!綾小路…ってなんで西園寺までいるんだよ!」
「いちゃ悪いか、須藤。」
「別にそういう訳じゃねぇけどよぉ…。」
「須藤、審議はどうなった?」
「何が何だか分かんねぇけど、Cクラスの奴らが急に訴えを取り下げたんだ。やっぱ堀北が何とかしてくれたんだよな?」
「だろうな。」
「やっぱすげぇよな堀北って!んじゃあ俺部活行ってくるわ!」
須藤はそう言って体育館へと走っていった。
「…訴えを取り下げる、ね。事件のペナルティを軽減するとかじゃなくて、そもそも無かったことにするとは、流石だな清隆。」
「ふふん、なかなかの暗躍者ムーブだっただろう?」
「うーん…結構ガッツリ事件に関わってる気がするけど…まぁいいんじゃね?」
俺たちがそう会話していると、ポツポツと小雨が降り出してきた。傘ねぇぞ…。
「うん?いかん雨が降ってきたな。いや雨だよ。」
「別に感動的なシーンでもなんでもないからな清隆…。」
自己完結型マスタング大佐やめろ。こいつ訳わかんない時に変なボケ挟んでくるの本当になんなんだ…。
「面白くなかったか?」
「正直ちょっと面白かった…って雨足強まってるじゃん、学校に傘取りに行こうぜ。」
「そうだな、雨だもんな。」
「ウケてるからって雨だ雨だ連呼するな。」
俺は清隆を茶化しながら教室へと一旦戻ろうとしていた、すると前から生徒会長と…お団子の女の子2人がやってきた。
「西園寺がいるとは驚いた…よく会うな俺達は。」
「本当に奇遇ですね、生徒会長。」
「まぁいい…綾小路、Cクラス側からの申し出により、訴えを取り下げることを認めた。」
「そうですか、不思議なこともあるもんですね。」
…お前会長に完全に目付けられたな。
「これがお前の言った佐倉が嘘つきではないと証明する方法か。…見事だ。」
「全部あんたの妹がしたことだ。俺は何もしていない。」
「…西園寺に綾小路、今年の1年は粒ぞろいだな。…橘、書記の席は1つしか空いていないのか?」
「…はい。」
「そうか…お前達が望むなら、生徒会としての席を用意しよう。」
「会長…!本気ですか?」
「不服か?」
「いえ…会長が仰るなら、異論はありません…。」
「…オレは断る。普通の学生生活を謳歌したいんだ、面倒ごとは気に食わない。」
「今はそれでいい…西園寺はどうだ?」
「…。」
正直どっちでもいいんだが…生徒会入をすることで葛城との溝が出来たら嫌なんだよなぁ…生徒会に葛城はギリギリ落とされちゃったらしいし。
「…今はまだ、決断の時じゃないかと思います。会長が俺を評価してくれたのは恩に着ますが、次会う時までには必ず答えを用意しましょう。」
「そうか…いい返事がかえってくるよう期待しておく。」
生徒会長と橘さんはそのまま俺たちを横切って行った。
「良かったのか?廻那。」
「正直、生徒会に入るメリットを把握しきれてない。これを機に色々と調べてから結論を下す。」
「そうか。オレはあの場で肯定して、フィクションのような生徒会内でのラブアンドコメディを楽しむという手も正直あったが…やはり暗躍者としての活躍が最優先だ。」
「く、くだらねぇ〜…。」
清隆の馬鹿みたいな動機を聞き流していると、次は堀北がやってきた。清隆に用があるらしいので、その場で俺は離脱して教室で傘を取って帰った。
坂柳帰っちゃったか…一緒に帰りたかったな。
近づいてきた無人島編に向けてのアンケートを取ろうかと思います。
是非ご回答をお願いします。
坂柳と西園寺の関係性をどうするか。
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付き合え。
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このままで。
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作者の自由でも良し。
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最早別キャラと付き合え。