白部屋のフィジカルモンスター   作:うぇいぱー

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前回のオチを修正した結果、綾小路父が禿げました。
高頻度で編集してしまい、誠に申し訳ございません…。


5.

 

ホワイトルームから抜け出してからの半年間。

俺たちは、俗世をこれでもかと満喫していった。

 

何故か回る寿司屋、何故かペッパーミルを目の前でジャグリングし、肉を焼く鉄板焼き屋、好きな物がなんでも食い放題のバイキング、など単調な飯しか出てこない施設の影響もあり、食ってばっかりだった。

 

──5キロ増えた、筋肉量が。

 

また、ありとあらゆる娯楽にも手を染めた。

 

漫画、ゲーム、アニメ、ホビーなどのサブカルチャーは、俺たちに世界の自由さを教えてくれた。俺はこの半年間、ずっと口角が上がりっぱなしだった。

 

特に漫画は、俺の戦闘技術力に、大きな影響を及ぼした。出来そうなものが割とあったからな。

爆砕点穴や流水岩砕拳などを、見様見真似で習得した。

 

ただ、俺よりも清隆の気分の上がり具合が、相当なものだった。

 

ドラ○ンボールを見ていた時のあいつが、かめはめ波こっそり練習していたの、俺覚えてるからな。

 

俺も、練習しました。ちょっと出た気がする。

 

またアニメで清隆は、頭脳を使って無双する、暗躍者ポジションのキャラクターばかり気に入っていた。おかげで、遅めの厨二病期間が、あいつにやってきてしまったらしい。

 

俺が、「イタいよ…」と口をこぼすと、ちょっと傷付いたような表情で、「そ、そうか…」と返答していた。ごめんて。

 

 

 

 

 

──そんな日々を過ごしつつ、先々月辺りに行われた入学試験を、俺たちは無事に突破し、高度育成高等学校への入学が、始まろうとしていた。

 

「松雄さん…本当にこの半年間ありがとうございました。」

 

脱走計画の中核となったことは勿論のこと、住処の契約、慈善活動への参加手続き、金銭管理など、一般的な身辺整理はほとんど、松雄さんに任せていた。

 

俺と清隆もある程度、手伝おうとはしたものの、結論よく分からんものが多かったため、松雄さんに頼りっきりだった。

 

「ホワイトルームの教育データ、しっかり理事長にも渡しときますから。」

 

俺たちが高育を学び舎とする3年間、恐らく松雄さんは1人だ。

 

関係者からの圧力により、命を脅かされる可能性も無くはない。

 

そのため、松雄さんは、これまでのツテで関わってきた政界の人間達に、あの非人道的な教育映像を垂れ流すことにより、自身の周りに味方を作るべきだ、と考えた。清隆が。

 

1コミュニティ内での情報の伝播速度は、計り知れない。

 

情報を揉み消される心配もあるため、俺と清隆にそれぞれ1つずつ、録画データを渡してもらった。大人からの外部接触が難しい坂柳理事長に1つ、卒業後に事の被害者である俺たちが情報を促すことで、再熱を巻き起こすために1つ、という寸法である。

 

「松雄、オレたちにとってお前は、もう1人の父親のような存在だった。感謝する。」

 

清隆のそんな言葉に、松雄さんは涙していた。

 

俺は、鼻水垂らしながら泣いた。

 

清隆も…目尻に雫を浮かべていたような気がする。

 

それを見て俺はもっと泣いた。大号泣だ。

 

「まづおざん”…!俺、おれ卒業したら真っ先に、連絡じまズビッ…!」

 

「ははっ!……泣きすぎですよ、廻那君。君に鍛えてもらったおかげで、大分、身の保証が着くようになりましたから、感謝しますよ。」

 

おぉ、ヴぉあ(大泣き)

 

「廻那…顔とんでもない事になってるぞ…。」

 

そんなこんなで、俺たちは制服に身を包み、松雄さんと清隆と写真を撮って、バス停へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…そんなに気に入ったのか、その写真。」

 

西砂二丁目のバス停にて、バスを待っている間に清隆はそんなことを問いてきた。

ここへと向かう途中のコンビニで、先の写真を現像しておいたのだ。

 

「当たり前だろ!もうこれ家族写真じゃん!大事にするよ。」

 

「…なるほどな。」

 

「あ、今欲しいって思っただろ?…ほら、ちゃんとお前の分も現像してあるから!」

 

清隆は、口の端を少し上げながらその写真を受けとった。

 

少し甲高いバスの扉が開く音で、俺たちの会話は1度絶たれた。

 

 

 

 

 

バスに乗り、席が並んで空いているところを見つけて、俺たちは座った。

 

バスに揺られながら景色を見ていると、突如、清隆に話しかけられた。

 

「…なぁ廻那。人は平等だと…いや、なんでもない。」

 

「え、何?哲学?急にどうした。」

 

清隆は、唐突に平等についての意見を問うてきた。バス内での話題として、平等について論を交えるやつがいたら、それはそれは奇特な者だろう。

 

悩みでもあるの?話聞こか。

 

「いや、人は平等か否かを考えていたんだが、お前を見た瞬間に、否、という文字が浮かんできてしまってな。」

 

「??あぁ、そう。」

 

…なんだろう。このなんとも言えない苦い感じは。

 

まるで「お前を人とはカテゴライズしてないよ」と、言われた気分だ。酷い話だな、品性方向で、ちょっと強い人間ですよ、俺は、うん。

 

一端の高校生らしい、くだらない言葉のやり取りを交わした後、バス内で優先席に座っている金髪の新入生と、これまた同じ新入生の女の子が、何やら言い合っていた。

 

曰く、社会貢献にもなるからばぁちゃんに席譲って、とのこと。

 

「…廻那、どうする。」

 

清隆、お前マジで成長したな…。

 

「あー、俺が譲るかなぁ。清隆はそのまま座ってな。…すみませぇん!ここ、ここ!空きましたよ!」

 

そう言って俺は席を立つ。窓側の席だったので、清隆もばぁちゃんの道を空けるために立つ。

 

ばぁちゃんから感謝の言葉を貰いました。

 

マジで人からの感謝ってアツい。他者から、嫌悪の目しか今まで向けられてこなかったから、より一層。

 

さて、席を譲ったため俺の座る場所が無くなってしまった。

 

──が、場所が無いなら作ればいいじゃない。

 

清隆が、元いた席に座ると同時に、俺も清隆の隣の、「空」に座った。

 

恐らく、このバスの中にいた全員が、各々の思惑や行動を停止した、否、停止させられただろう。

 

彼が、俗に言う空気椅子をしている間、その身には一切のブレがなかったことを、真隣の黒髪の女子は記憶していることだろう。

 

俺の大腿四頭筋が、椅子に圧迫されて窮屈だったらしいので、空気椅子できて一石二鳥ですね。あっ、着いたわ。

 

俺たちは下車し、高度育成高等学校の門の前へと立つ。

 

「うし、行くか清隆。」

 

「あぁ、今日からここに通うのか。」

 

そう言って、門へと足を潜らせる。

 

──これで晴れて、3年間は自由の身だ。

 

 

 

 

 

 

 

「あの〜!さっき席を譲ってくれた人〜!」

 

「ん?あ、俺?」

 

いきなり、後ろからさっき口論していた女の子に声をかけられ、俺は若干戸惑っていた。俺も清隆も、対女への処世術が無さすぎる。

 

清隆は、帝王学や心理学的な知識で、武装することが可能だろうが、俺にはそんな器用な真似は出来ない。

 

「そうそう!私、櫛田桔梗って言います!…さっき、お婆さんに席を譲ってくれて、ありがとう!助かったよ!」

 

「まぁ、人助けって気持ちいいからな。俺は西園寺廻那、よろしく櫛田!」

 

「…一応、綾小路清隆だ。」

 

「西園寺君に、綾小路君だね!よろしく!2人とも新入生、で合ってるよね?あっちの方で、クラス分けの表があるみたいなんだけど、良かったら一緒に見に行かない?」

 

 

 

こ、こいつ俺に気があるのか…!?

 

 

 

なんてね、ある訳ねぇだろ…いやあってもいいんだよ?

 

 

 

多分、持ち前の愛嬌で男女問わず誑かして、表向きの権力も、裏向きの情報も握ってきたタイプなんだろうな。

 

あざとい!

 

でも、可愛ければ、それでいいじゃない。

 

「俺はいいけど…清隆は?」

 

「大丈夫だ。問題ない。」

 

「ほんと?!ありがとう!!」

 

そんな会話を挟みつつ、俺たちは櫛田と共にクラス分けの表を見に行った。

 

それを見に行くまでの道中、櫛田桔梗の人間性がおおよそ推測された。

 

櫛田自身を褒めれば、大袈裟とも言える反応で、嬉しそうに謙遜の意を示す。

 

自身以外を焦点に当てれば、僅かだが、その仮面に亀裂が走る。

 

…しょ、承認欲求モンスターだ。それも超重度の。

 

あんま関わらんとこ…多分無理だけど、と考えながら、いつの間にか俺たちは、人がごった返している場所の奥にある、クラス表の張り紙が目に入っていたことに気づいた。

 

「清隆と櫛田はD、俺の名前は…Aか。なんだよ、一緒じゃねぇのかよ。」

 

『A』だけに、『え〜』ってね。ははは、殺せ。

 

「す、すごい…よくここから見えたね、西園寺君。」

 

「ふふん。目はいいのでね。」

 

だが、俺が間違えている可能性もあるため、一応、人波に溺れそうになりながらも、クラス表の至近距離まで、近づくことにした。

 

「どれどれ…なるほど、本当に廻那の言う通りみたいだ。」

 

本当に俺は清隆と別クラスなのかよ…!!クソ!!

 

「あ〜あ〜、寂しくなるなぁ。清隆ぁ。」

 

「クラスが違うだけだ。暇なら何時でも話に来ればいいだろ。」

 

「お前、友達出来なさそうだもんな。いつも通りになりそう。」

 

鼻で笑ってやった。

 

すると、ガッと脇腹に衝撃が走る。何すんだよ。

 

手大丈夫?ちょっと赤いよ?

 

「友達になっちゃえば、クラスの問題なんて大した問題じゃないよ!」

 

…櫛田さん、横に同じクラスの奴がいる前でその発言。

 

中々どうして、腹黒いかもしれんな。

 

「まぁそうだよなぁ。っと、結構時間食ってたみたいだな、Aクラスはあっちの方が近そうだし、俺こっちから行くよ。またな!」

 

「お、おい廻那。」

 

1人にしないでくれってか?俺以外にも、友達作らなきゃダメだぞー清隆。

 

こいつ全然櫛田と話してなかったし、善意だよ善意、ヒヒィ…。

 

そんな俺も、清隆以外友達出来たことないから、めちゃくちゃ心配なんだけどね。自己紹介とかあるのかな…失敗したら、どうなるんだ、怖い。

 

…てか、意外と普通に高校生出来てんだな、俺。

 

あの部屋の中で望んでいた普通の生活が、今、現実となっていることに俺は微笑みを隠せなかった。

 

…ほな、Aクラス、おじゃましまーす!

 





廻那はAクラスでした。理由は銀髪ロリがいるから。

テンポがおっそいので何とかしたいです。

坂柳と西園寺の関係性をどうするか。

  • 付き合え。
  • このままで。
  • 作者の自由でも良し。
  • 最早別キャラと付き合え。
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