日間ランキングにコレがありました。嘘やろ。
皆様、本当にありがとうございます!!!
また、誤字報告などめちゃくちゃ助かります!陳謝。
先に言おう。初動ミスった。
初めての、青い空から晴る光が注がれる、暖かい教室というものに、俺はワクワクしすぎてしまったのだ。
無機質で、目が痛くなるような電灯が、光を投げつけてくるところとは、何一つ似つかないそんな場所に。
教室のドアはスライド式だった。
ガラガラという音が、轟速で辺りに雷鳴のように響いた。
おもっくそ強く引きすぎて、俺は、片手に外れたドアを持ったまま、教室へと足を踏み入れてしまった。
目の前に広がる、え、何こいつと言わんばかりの視線。
清隆、友達が出来なさそうなのは、どうやら俺の方のようだ。
「す、すみません…」
怪奇の目を向けてきた数人に、俺はちょこちょこ会釈をしながら、外れてしまったドアを元に戻そうとしていた。外面は平気を装ってはいるが、内心の沈みようは海溝レベル。
ああクソっ!全然ハマんねぇなぁこのドア!
「大丈夫か?良ければ手伝おうか。」
そんな俺に声をかけてきたのは、スキンヘッドのケツアゴ君。
一目見て分かった。こいつは、磨けば光るな、と。
制服の上からでも分かる、バルクのある肉体を宿している。パワータイプだな、昔の俺みたいだ。細かく筋肉を動かす意識と、力に緩急をつける技術を身につければ、かなりいいところまでいくだろう。
「すまん、助かるよ…」
「気にするな、同じクラスメイトだしな。俺は、葛城康平という者だ。これからよろしく頼む。」
葛城は、そう言いながらドアを凹みにはめてくれた。良い奴だなお前。
「ありがとう葛城。俺は西園寺廻那。…いきなりこんなこと言うのは気色が悪いかもしれんが、素晴らしい肉体をしているな、お前は。」
俺がそう言うと、葛城は少し驚いたような表情を浮かべていた。
「ん?どうした?」
「いや…てっきり、この頭のことについて聞かれると思ってだな。…持病なんだ、無毛症というものでな。」
「あ、そうだったのか。めちゃくちゃ似合ってたから、微塵もそんなこと思ってなかったわ。」
「嬉しいことを言ってくれるじゃないか、西園寺。それに、筋肉に対してもな。お前もトレーニングを嗜む感じか?」
「そりゃもう当然!今度暇があったら、敷地内のジムでも見に行こうぜ!」
「ああ、是非とも頼む。」
俺は、葛城康平という同士との会合に胸を躍らせた。
これからの成長、期待させてくれよな。
「あ、座席表どこ?」
「座席表は教卓の上にあるぞ。あそこだ。」
「サンキュー葛城!また後でな!」
葛城に、座席表の場所を教えてもらい、自席の位置を確認する。
窓際の暖かそうな席だった。
隣の席は…なるほど、坂柳有栖さんね…坂柳?
微妙な疑問に引っかかりを覚えつつ、俺は自席へと赴いた。
隣の席の坂柳さんが、絶対女の子がしちゃいけない顔をしていた。
「ど、どうして貴方が、ここに…。」
「え?…いや、隣なんで。あ、俺は西園寺廻那!よろしく坂柳!」
「え、は、はい。よろしくお願いします…。坂柳有栖と申します…。」
よそよそしい感じの子なのかな?あまり目を合わせてくれない。で、苗字が坂柳ね、十中八九、理事長のご息女だろうな。
…それにしても、何だか懐かしい気がするんだよな。昔から、坂柳の気配を知っているような気がする。
「坂柳…俺たちって、もしかして会ったことあるか?」
「えっ…そ、そうでしたっけ?申し訳ございません、私の記憶には少々…。」
「あー、なんか変なこと聞いちゃったね。ごめんな。」
うーん…恐らく誤魔化してますね。
ホワイトルームのことも、知っていておかしくはないだろう。俺、なんかしたかなぁ…後で、理事長に聞いてみよ。
思考に耽っていると、担任と思わしき男性が教卓の前へと立っていた。
「まずは入学おめでとう。Aクラスの担任を務める真嶋だ。これより、本校の資料、次いで各々の学生証端末を配布する。前の者は順序、後ろへと流してくれ。」
俺の手にも、パンフレットとやらが渡ってくる。一通り目を通したが、入学前に受け取った資料と、ほぼ変わらないことが書いてあった。
学生証端末の方だが、とんでもないハイテク機器だ。ほとんどスマートフォンと変わらない、SNSも多少の制限はあるとはいえ、使えそうだ。
「では、これより本校の説明に入る。」
そう言って真嶋先生は、高度育成高等学校の独自のルールについて説明し始めた。
・全寮制で、敷地外への外出と外部との連絡が禁止。
・3年間、クラス替えはなし。担任も3年間同じ。
・買い物には端末のポイントを使え。Ptは毎月一日に支給、今月は10万。「なんでも」買えちゃうぞ。
ぐらいかな、大事そうなのは。今月のお小遣いが10万と言われた時は、周りの皆はかなり驚いていたが、すぐに話に耳を傾ける姿勢を取り戻していた。
…本当にお前ら高校1年生か?優秀すぎない?
俺なんか、松雄さんから大金貰った時、馬鹿みたいに喜んでたのに。
坂柳は、何やら考え事をしていたようだが、恐らく俺と同じように「毎月一日支給」と「今月分の10万」の、叙述トリック的な先生の発言に、違和感を覚えたのであろう。
「以上で説明を終える。なにか質問のあるやつはいるか?」
横から、はい、という芯のある声が聞こえた。
今は凛々しいんですね、坂柳さん。
「坂柳か。今答えられる範囲で、質問に答えよう。」
「ありがとうございます。先程、先生は毎月一日にポイントが支給されると仰っておりましたが、来月にも10万ポイントが振り込まれる、という認識でよろしいのでしょうか?」
「…先に話した通り、毎月一日、来月で言えば5月1日にポイントが振り込まれることになる、例外はない。」
え〜質問に答えろよ〜。
俺、毎月10万貰いたいんだけど。あっ、答えられないのか。この質問に。
「…そうですか、ありがとうございます。」
「他に質問のあるやつは…いないな。これから先、入学式までの時間は各自自由とする。規定の時間までには、廊下に並んでおくようにしておいてくれ。」
坂柳が先生との質疑応答を終え、先生が教室から出ていくと、クラス内には若干、懐疑的な雰囲気が漂っていた。
こいつコレが目的だったな、鋭い思考を見せつけて、クラス掌握ってか。
「…やるねぇ坂柳。」
「そ、そうでしょうか?私はただ、先生に質問をしただけですよ…?」
やっぱりなんで俺と話す時、そんなたどたどしくなるの。
「…さ、西園寺君は、気づいていましたか?先生の発言の、本当の意図に。」
お、質問してきてくれた。嬉しい。
「まぁ一応…。それに見て、あの監視カメラの数、明らか不自然でしょ。お前らの実力見せてもらいますよ、って言ってるよあいつら多分。…ここは強制教育機関かっつーの。」
最後の言葉は、小声で坂柳にしか聞こえないように言ったが、監視カメラ云々に関してはちょっと声を張り上げた。
有能アピールして、さっきの愚行の汚名返上しないと…。
「ふふっ、やはり…流石ですね。」
あ、ウケた。ホワイトルーム、知ってるの確定です。
「…てかやっと、普通に目を見てくれるようになったな。」
「あっ…。」
…おい、言ったそばから目を逸らすな。おい。
「皆、ちょっといいか。」
坂柳とのガタガタなやり取りを終えた所で、葛城が、磐石な声を教室に響かせた。
「入学式までの間のこの時間、少しでも交流を深めたい。そこで、自己紹介の機会を設けたいと思うのだが、どうだろうか?」
賛同の声が続々と上がる。葛城は、指導者気質があるタイプか。クラスの内情とか温和に調節できそうな、そういう方向のリーダータイプ。
「ありがとう皆。俺は葛城康平だ。中学時代に、生徒会を務めていたこともあり、この高校でも生徒会に入る予定だ。趣味は、運動といっても筋トレが主だ。これからよろしく頼む。」
拍手が、まばらに生まれた。よろしく
葛城を皮切りに、各々自己紹介をこなしてゆく。そして、隣の坂柳に、番に回ってきた。
「坂柳有栖と申します。先天性の心疾患を持っているため、運動はからっきしですが、その代わり勉学は得意ですので、学力でこのクラスに尽力出来たらと思います。チェスが趣味ですので、できる方は是非とも、お手合わせ願います。よろしくお願いします。」
儚げな表情を浮かべながらも、自らの芯を貫くことを厭わない、まるで女王のような覇気が、教室にほとばしる。
お前誰だよ。おどおどしてよ。
だが、俺の目に入ってきたのは、背丈とは似ても似つかない、大きな「自己」を誇示しつつの挨拶だった。坂柳のリーダーシップも高級品だな、これは。僭主政治とか始めそうなタイプだけど。
故に、葛城と坂柳の二大巨頭体制が完成すれば、このクラスの全体的な能力が、ぐんと跳ね上がるだろうな。
あ、俺の番か。
「西園寺廻那です。まず教室のドア外しちゃって、本当にすみません!幼い頃から、力だけはあるもので…。でも、それを活かした身体の使い方は心得ているので、運動方面で活躍したいなと思います!よろしく!」
割とウケてた。耐えた〜。
そうして無事、自己紹介のターンが終わり、その後の入学式も順当に進んでいった。
生徒会長が、この学校は「完全な」実力主義だ、とか言ってたのが引っかかったが。
入学式終わり、短いHRを終えたAクラスは、下校指示を受けた。
葛城に、ジムを見に行こうと言われたが、ごめんと断った。
すまんな、今日は教育データを渡すために、理事長に会わなきゃいけないんだ。連絡先は交換したけどな。
その前に用を足しておこう、と思いトイレへと向かったが、1年生フロアの個室が空いていなかったため、仕方なく、2年生フロアのトイレを借りて、出すもの出してきた。
…先程から感じる、この違和感はなんだろう。残尿か?
いや違うな、視覚的に見て、明らかな違和感があることに気づいた。
まず、明らかに生徒数が少ない。確か1クラス40人、学年全体で160名のはずだが、所々席数の差が見られる。AクラスからDクラスにかけて人がどんどん少なくなっている気がする。
また、Dクラスの先輩を筆頭に、目が死んでいる覇気のない人間や、素行不良が目立ちそうな人間が多く存在していた。
2年生フロアだからかもしれない、と考え、興味本位で3年生のフロアにもお邪魔をした。結果は、2年生程ではないが、生徒数が少ないことに変わりはなかった。
それに、規則性でもあるのだろうか、やはりAクラスからDクラスにかけて生徒数が減少しており、人となりも、おおよそ良いとは言えそうにない人間が、下位のクラスに所属していた。
下位?…当たり前のように使ってしまったが…なるほど、しっくりくる。
「新入生が3年生のフロアにいるとは、珍しいな。」
眼鏡をかけた、体幹の良さそうな先輩に声をかけられ、俺は思考を1度止める。
「って、生徒会長じゃないですか。会長挨拶、よかったです。」
「ほう、それはありがたい限りだ。して、なぜお前はここにいる?」
生徒会長、堀北学は俺の事を試すような視線を向けてきた。レンズの奥側から、凛々しい瞳が訴えかけてくる。
えぇ…なんでそんな目で見てくるの?
排便のついで、とか言えねぇよ…。それっぽいこと言わないと…。
ホワイトルーム仕込みの脳ミソをフルで活用し、自分の思考を纏めあげる。
毎月一日のポイント支給、今月は10万、生徒数の減少、クラス格差、クラス替えはなし、生徒会長の…。
あ。
「完全な実力主義、ね。この学校、趣味悪くないですか?」
先程に組み立てた仮説を結論にすべく、そしてこの状況を打破すべく、俺は生徒会長の言葉を借りて、それっぽいことを言ってみた。
生徒会長は、ニヤリと笑みを浮かべていた。
…大当たりらしい。あぶねぇ〜!
「お前、名前は?」
「西園寺廻那です。クラスはAクラス、将来有望らしいです、俺。」
俺も会長に負けじとニチョニチョしとく。仮説大当たりしたらしいのでね、嬉しくなっちゃった。
あ、そんな目しないでください。
「…西園寺か、覚えておこう。西園寺、今時間はあるか?」
「…あ、俺こんなとこいる場合じゃなかった。理事長室って何処ですか。」
「理事長室だと?…お前は、予想以上の大物のようだな。ついてこい、案内してやる。」
「え、いいんすか?」
「問題ない。元々俺は、方向が同じ生徒会室へ向かう予定だったからな。」
か、かいちょぉ〜(感涙)
「…それにしても、こんなに早く、この学校のルールに気づいたとはな。」
「明らかに不自然なところが、ちらほらありましたからね。監視カメラの数とか、上級生の人となりとか、人数とか。…どーせ、来月は10万貰えないんですよね?」
「…!そこまで気づいていたのか…。」
やっぱりそうなんかい。すまんね会長、今確信しちゃった。
「…この情報って、1学年全体に流したらどうなるんだろ。」
ボソッと出てしまった、ささやかな興味。
「なっ!…それはさすがにやめておけ、西園寺。この4月は1度、仮初の平等を用いて、個々人の自律を促すための大切な一月だ。…聞いた俺側にも、責任があるか…。」
へぇ、結構色々考えられてるんだ。自主性を促し、社会の荒波に揉まれて病まないためのカリキュラムなのかな。
そう考えていると、俺の学生証端末から通知音が鳴り響く。
「西園寺、これはお前へのこれからの期待と、少しばかりの謝罪料だ。受け取れ。」
西園寺廻那、所持ポイント110万…?????
「あばばば、ばば、ば。」
「さ、西園寺…?」
松雄さんによる、一般的な金銭感覚講座が、ここで牙を剥くとは思わなかった。
何してんだこの人、金の亡者か。
「あ、ありがとうございます。」
絶対このこと、人に言わんとこ。でもまぁ、気づいてるだろう清隆には言ってもいいかな。
てか、あいつなんでDクラスなんだよ。
暗躍者ポジションってのにまだ憧れとかあっちゃったりするの?
あいつ「実はオレ最強でした」ムーブが、なまじ出来ちゃうのが本当に良くない。厨二病が。
「ああ。先に言った通り、お前には期待している。頃合いを見て、お前を生徒会へと推薦したい、と思うほどにな。丁度近いうちに部活動紹介がある、興味があれば、生徒会の紹介を見てくれ。」
理事長室はまっすぐ行って左だ、言い残すと、堀北会長は踵を返していった。
…わざわざ近くまで着いてってくれたのか、清隆の動機推測してたら行っちゃったよ。
てか会長、用事がプライベートな事だと想定して、ここでの退散とは、配慮の鬼だな。
ポイントが、送金されたついでに、連絡先も貰っていたため、メッセージで一言感謝を伝えて、俺は理事長室へと向かった。
「失礼します。坂柳理事長。」
ドアをノックし、荘厳な扉を開けて理事長室へと入る。
「おぉ、西園寺君か。大きくなったね。」
「え、俺の容姿を知ってるんですか。」
「有栖と共に、ホワイトルームへと見学に行くことが多かったからね。…君が、いや君たちがこうして無事にここへ来れて、本当によかったよ。」
あの
つか、やっぱり坂柳のやつ、ホワイトルームで俺と会合してるじゃん!
「えぇと、娘さんと一緒に、ですか。…俺多分、手振ってましたよね?」
あの頃の坂柳は、手を振り返してくれたのに…。今じゃ目も合わしてくれないぞ。
「あぁ…マジックミラー越しにね…。そういえば、西園寺君は有栖と同じAクラスなんだってね。…仲良くしてくれると、助かるよ。」
理事長は、少し微妙な顔をしながら俺にそう言った。
「あー…それなんですけど、娘さん、俺となんか気まずい感じらしくて。…俺なんか失礼なことってしてましたか?」
「…君は、血狂った目をしたライオンと友好的になれると思うかね?」
おい、どんな例えだジジイ、コラ。
…けど、まぁ意味は分かる。人生で、運動という行動を禁じられてきた、か弱い少女が、目の前で、鉄パイプを捻り切る人間に出くわしたら、本能的に危険だと感じざるを得ないだろう。
坂柳にも、忌避の目を向けられるの、ちょっと嫌だな。
いや、俺はもう自由になってやったんだ。白い部屋に固執して、あそこの基準を持ち込むな。
…よし、少しづつ坂柳有栖との交友を深めていこう。高校生活中の目標だ。
「理事長、例えとしてその話は、分かりました。でも、俺はもう、あの部屋にはいないんです。周りの人間も、あの部屋の人間じゃないんです。…俺は俺なりに、成長していきたいと思っています。娘さんとも、必ず仲良くなってみせますよ。」
「…私は、君を冷徹な化け物だ、と勘違いしていたのかもしれないね。」
どこの初期綾小路だ。…でもまぁ、昔のあいつを見てたら、他の子もそうなのかもしれない、って考えるのも無理ないか。
「…あ、理事長、そういえばこれ。」
俺は、理事長に悪逆非道データ集を手渡した。
「あぁ!そうだったね、拝見させていただくよ。私の方でも、松雄くんのように、情報の拡散をしておこう。…出資者の1人として、君と綾小路くんに謝罪を、申し訳ない。」
「いえいえ。生活も環境も最悪だったけれど、俺は人生、そこそこ楽しいんで。」
清隆も、そうだといいな。いや、もう結構楽しんでそうだな、実は。
「では、理事長、俺はこれで。また暇だったら来ますね!」
「う、うぅむ。西園寺君、お元気で。娘ともよろしく。」
そう言って俺は、理事長室を出た。
…言いよどみがあったのは、気のせいだよな、うん。
思えばかなり長い時間、行動をしていた。朝から始まり、そして今、何もかもが刺激的な1日だった。
あぁ腹減った。清隆でも呼んで飯行くか。
出したいキャラとか、思考が多すぎてほんま。
長いのに見てくれてありがとうございます!
坂柳と西園寺の関係性をどうするか。
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付き合え。
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このままで。
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作者の自由でも良し。
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最早別キャラと付き合え。