暗く冷たい場所に僕はいた
これは土だ。僕は今土に埋もれている
体を起こすと土が割れ、僕は外土の上の世界を見た。綺麗な星空だった。
『僕は…死ななかったのか…いや、死ねなかったのか』
あんな別れ方をしたのにまだ僕は生きているなんて
『あれは…月?』
月だ。丸く大きな月が僕を見下ろしていた。
『みんなは…無事に月に辿り着いたのだろうか…』
僕は姿を龍に変えて空を飛んだ。周りには森しかなかった。
見渡す限り森、森、森…
『人は…もういないのか』
そう思ったが一筋の光が見えた。
そこには村が、街があった。家々が建ち並び、ワイワイガヤガヤと賑やかに騒いでいた。
『何を騒いでいるんだ…?』
僕は興味本位で龍の姿のままその街に近付いてしまった。門で警備をしていた者達は僕の存在にすぐに気付き、騒ぎ始めた。
「敵襲!敵襲ぅ!」
どうやら敵と勘違いされたようだった。大量の矢が一斉に僕目掛けて射られる。僕の体に何本物矢が刺さり、激痛が走る。
『うぐぅっ…!?』
やはり僕はもう人間じゃない、この姿は誰にも受け入れられない。そういう事なのだろう。
すると一人の少女が僕目掛けてその拳を振る。先程の矢よりも何倍も痛かった。僕は痛みに耐えようと叫び、痛みを和らげようと暴れ、地面に体を打ち付けた。何度も。その少女にも手を出してしまった。その大きな体を少女にぶつけてしまった。
力無く近くの家に投げ飛ばされた少女を見て、罪悪感に駆られ、僕は逃げるようにその場を去った。
大好きな人には殺されず、知らぬ少女に手を出してしまった。僕の思い通りに動いてくれない。
『僕は…僕なんか―――』
産まれてくるんじゃなかった
「くっ…こんな万全じゃ無い時に…!」
「ん?そういえばお前ところどころ怪我してんな。どうした」
「昨晩、お前達の龍によって出来た傷だよ!」
「私らの龍?こっちに龍なんて居ねぇよ?」
「はぁ?!ならあの龍はなんだってのさ!?」
「ちょっと良いか…諏訪の神よ。その龍について知りたい」
「……体は蒼い、角は独特な形をしてたよ」
「蒼い体…独特な角……もしやこの龍ではないか?」
「っ!…そうだよこの龍だよ!やっぱりそっちの「まだ生きていたのか」…え?」
「ツクヨミ様?」
「ふふふ…みんなにいい土産話が出来そうだ。まぁ、彼女らは名前すら思い出せないらしいがな」
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あれから何年、何十年経った。もしかしたら数百年も経っているのかもしれない。
僕はもう何度も住処を負われた。何度も人間に見つかり、その度に恐れられる。もう嫌だ。
『………人の姿に戻ればいいじゃないか』
何故今までそれに気が付かなかったのだろうか。僕は元人間だ。人の姿に戻ればいいじゃないか。
久しぶりに地面に足を付ける。久しぶりの感覚によろけそうになるがなんとか耐える。
「この近くに村とかあればいいんだけどなぁ…」
だけど僕がいるのは森の中。当然村など無く、ただ動物達がいただけだった。
すると後ろからポキッと何かが折れる音がした。後ろに振り返るとそこには一人の女がいた。
「誰だっ!?」
「あなた…人間じゃないのね」
「誰だと聞いている!」
「わたしは…妖怪、ただの妖怪よ。龍さん、あなたこそ誰?」
僕は石を持ち、妖怪に投げようとした。
「去れ!妖怪は穢を放つ存在、僕はこれ以上穢を……いや、もういいんだっけか」
別に人間じゃなくなった僕に穢なんてどうでもいいんだ。
「あら、わけ有りかしら」
「………それでなんのよう」
僕は妖怪を睨みながらそう言う。
「あなた見たいな存在は今まで一度も聞いたことないの。だから貴方はオンリーワンな存在と言ってもいいのかもしれないわ」
「…それで?」
「この世界にいるとされる神、妖怪、人間……あらゆる存在が受け入れられ、祝福される楽園を作りたいの」
神も妖怪も人間も受け入れられる楽園か…そこなら僕のような存在も怖がられずに受け入れられるかな…
「それで…?」
「土地はだいたい決まっているのよ。だからあとは結界やらが欲しいのだから手伝ってくれない?」
「…嫌だと言ったら?」
「了承するまで後ろを着いていくわ」
やり方がストーカーだぞ。
「お願い、貴方に損はさせないわ」
「………その楽園に名は?」
「《幻想郷》。それが誰も知らない忘れられた者達の楽園よ」
「ふぅ〜ん…僕が出来るような事はあるのか?」
「それは自分で考えてほしいのだけれど」
誘うだけ誘ってやることなしか。僕は女の妖怪の逆を向き逃げるようにその場を去る。
「その幻想郷とやらが出来たら教えてくれ。僕には何も出来そうにない」
「え、あ…わ、わかった。えっと協力…はしてくれるのね」
「僕が必要な事があればの話だけどね」
「わかったわ!あ、その前に―――」
何か妖怪が言っていたが僕は無視して飛び去る。龍として過ごしてからはや数年。僕は大量の妖怪の群を発見した。
『…あれは』
「百鬼夜行よ」
『お前は…あの時の妖怪女』
「紫。八雲紫がわたしの名よ。散々探し回ったのよ?貴方、名前すら言わずに消えちゃうんだから」
『名前など知らん。それであの百鬼夜行はなんだ』
「鬼達が何処かの人間の都を襲うのよ。多分行き先は……あの街でしょうね」
紫が指差した方角には大きな街があった。
『なぜ妖怪は人間を襲う』
「人間を怖がらせない一部の妖怪は存在を失ってしまう。だから襲う。ある妖怪は人の魂を喰らい、ある妖怪は人を喰らう。強き人間は妖怪を退治し、弱い妖怪は消えていく…そして強い妖怪だけが生き残っていく」
『止めないのか?』
「あれは群が勝手に起こしたこと。他の妖怪は関係ないわ。退治されたらそこまでよ」
『…人間の反撃はどうだ』
「この前、一つの群れが人間達に退治されたばかりよ。このまま行けば妖怪は完全に消えてしまい、次第に忘れるでしょうね」
妖怪も大変なんだな。僕も大変だけど妖怪も大変らしい。
「それから幻想郷の大本は完成したわ。結界も張れた」
『なら僕はいらないな』
「いいえ、貴方には幻想郷の守護龍になってもらいたいの」
僕が守護龍?