『一番機早瀬ユウカ……出るわよ!!』【ブルアカ×ロボットSS】 作:一旦しーた
「先生っ!?」
瞬間、稲妻のような予感が頭を貫いた。
スラスター残量の少なくなった機体を捨て、脱出シーケンスを起動しようと手を止め、手を離した操縦桿をもう一度握り直してレーダーを注視する。
「この反応――――……先生……っ」
ブン、とパワードローダーのツインアイに灯が灯る。攻略戦で既に酷使した機体はあちこち悲鳴を上げており、スラスター残量も満足にない。
けれど考えが頭に浮かぶ前に身体が動いてた。次の瞬間、脱出シーケンスで地上に戻ったはずのノアから通信が入る。
『ユウカちゃんっ脱出シーケンスの使用回数がユウカちゃんの仕様分残り一つになったのを確認しました。ですが先生の姿がまだ地上から確認できません……っ!』
「今こっちで先生の生体反応をキャッチしたわ! 今迎えに行くっ!」
『駄目ですユウカちゃん! そのスラスター残量ではその高度からの着地は不可能です!』
確かにノアの言う通りこの残量では着地制御に必要な逆噴射には到底足りないだろう。
「それが何だって言うのよ――――ッ!」
降り注ぐアトラ・ハシースの残骸をくぐり抜けながら、先生の反応へと急ぐ。障害物との衝突を警告するけたたましいアラートがコックピット内に響くが気にしていられなかった。全神経を機体制御に集中して最短距離を突き進む。
「間に合え……間に合え……っ!」
ガンガンと破片の衝突音が聞こえてくる。頑丈なパワードローダーはこの程度ビクともしないが、生身の先生に取っては小さい破片の直撃一つで致命傷だ。
そうでなくてもここは高度75,000メートル上空。ヘイローが存在する私たちでも数分と持たない地獄の環境。先生の身体どれくらい持つかの計算など、したくもない。
「……ッ!」
眼の前の大きな残骸が2つに別れ、予測ルートが塞がれる。今から迂回ルートを計算する余裕などない。
「…………光よ――ッッ!!」
右腕に構えた光の剣が残骸を切り裂く。反動を最小限にするため、左肩のブースター一点に反動制御を集中させる。衝撃に耐えられず肩ごと左腕が吹き飛び、アラートの量が更に増える。機体が軽くなったことをいいことに更にブーストを吹かす。その瞬間、上部から爆破音が響き機体が揺れ、モニターの大きなノイズが走る。
損傷で頭部カメラが壊れたのだろうが、まだサブカメラが生きている。まだレーダーに先生の反応は捉えている――!
『ユウカちゃん……! それ以上の損傷は機体が持ちません! 早く脱出シーケンスを……!』
「まだよ……っ! たかがメインカメラがやられただけよ――!!」
そしてついに先生をカメラで捉える。意識はなさそうに見えるが奇跡的に五体満足なのを確認してブースターを最大稼働させる。
距離が500メートルを切る。少しずつ速度を落としてゆっくり先生へと機体を接近させる。
「400……300、250、100……!」
距離が10メートルを切ったのを確認してメインブースターを停止させる。これ以降はサブブースターの微調整で距離を合わせないといけない。
光の剣を背中に格納し、右手を先生の身体へと伸ばす。パシュッと機体制御の噴射音が聞こえてくる。
ミスなど許されない。心臓の音がドクンドクンと大きな音を立てて跳ねる。
「止まれ……止まれ――――!」
速度を合わせ、右手で先生の身体を受け止める。そのまま落とさないように右手をゆっくりとコクピットへと近づける。
「先生……先生……っ!!」
コクピットハッチを開けると、とてつもなく冷たい空気がコクピット内で暴れた。吹き飛ばされないよう注意しながら、先生の身体を引っ張って中へと格納する。
急いでハッチを閉め、先生の容態を確認すると意識はなかったが、不思議なことに大きな傷もなく小さく呼吸もしていて、命に別状があるようには見えなかった。
「先生、よかった……っ」
ぎゅっとその身体を抱きしめると体温がほんのりと温かった。その温かみでホッとしたのか、ぽつぽつと涙が自然と溢れてきた。
『――――っ!! ――っ』
ノアの声がノイズ越しに聞こえてくるが聞き取れない。いつのまにか損傷で通信系もイカれてたようだった。
「……ここからね」
意識のない先生の身体を、固定用ベルトで固めてからシートへと戻る。スラスター残量を確認するとすでに風前の灯火。この高度からこれで着地しようなどそれこそ万が一の確率だろう。
けれど、絶対にやらなくてはいけない。ここまで来て最大の功労者である先生を見捨てて帰還だなんて恥ずかしいことができるわけがない。
「……いや、それは言い訳ね」
後方に固定された先生の方へと振り返る。
……先生の顔を見ているだけで色々な記憶が蘇ってくる。初めてあった時のこと、降臨大祭、エリドゥ攻略戦、ゲヘナ奪還作戦、シェマタ攻略戦……そして学校やシャーレでの日々。思い出したくない記憶もなくはないが、それも含めて大切な先生との思い出だ。
「……好きですよ。先生」
呟いて操縦桿を強く握り直す。あとできることは最適なタイミングでスラスターを全開にすること。そして祈ることだ。
「せめて先生だけでも……」
そう祈った瞬間。通信が壊れたはずのスピーカーから声が響く。
『そう……貴方がこの世界の特異点だったのですね。早瀬ユウカ』
「誰……?」
知らない声だった。無機質で平坦な口調だが、不思議と冷たさはあまり感じない。
『説明している時間はありません。貴方と先生を生存させるためにやってもらうことがあります』
どこから届いてるのかも知らない声はそう続けた。
『直上の大きな残骸が着地時に障害になります。狙撃ポイントを指定するのでそこを撃ち抜いてください』
「……本気で言ってるの? 狙撃の姿勢制御でもうこのスラスターを使い切ることになる。なんならそれにすら足りるかどうか……それに少量だろうと着地の逆噴射に使ったほうが――」
『着地は私たちに任せてください。だから貴方には狙撃をお願いします』
声の主は淡々とそう告げた……けれどどこの誰かもわからない、通信方法も謎だしこの状況で着地を成功させる方法も想像がつかない。だから提案は断ろうと、そう頭の中で結論付けて。
『――信じて』
「――わかった!」
撤回した。
レーダーにポイントが表示され、残り少ないスラスターで機体の向きを変える。確かにサブモニターには大きな残骸が直上にあることを映していた。
「残りスラスター全部姿勢制御に回すわよ! 着地任せたからね」
光の剣のチャージが始まるが、自由落下による気流で照準が大きくブレる。パシュッと機体の向きをポイントに合わせるが、また残量が減る。
『――元の世界とこの世界の状況は大きく異なります。特にパワードローダーによる戦力差は大きな変異点で』
独り言なのだろうか。声の主はぽつぽつと喋り続ける。左にズレた照準を左足のブースターで調整する。左腕がない分バランスが想定以上に崩れた。また残量が減る。
『そのせいで戦力の増強、演算処理にリソースを使い過ぎました。私達二人のリソースだけでは奇跡にはまだ足りない』
最後のブースターを吹かす。スラスター残量がEMPTY(燃料切れ)のアラームを響かせた。
『……それもそのはず。この世界の特異点は先生だけではなかったのですね』
機体が左に大きく回転する――その瞬間ポイントへ照準がカチリと噛み合った。
「……光よ――――!!!」
レールガンの火花(プラズマ)がバチバチッと光ってキレイな直線を描いた。
『奇跡をありがとうございます。早瀬ユウカ』
ポイントのど真ん中を貫いたプラズマは残骸を突き抜けて宇宙(ソラ)へと迸(ほとばし)る。
次の瞬間、貫かれた残骸は大きな爆発を起こして四散した。
「やることやってやったわよ! これでそっちがしくじったら承知しないからねっ!?」
『……ありがとうございます』
『はじめましょう。あなたと私……私たち3人の、奇跡を』
やっぱり某映画を見てから書きました。2時間で書いたから内容については深く突っ込まないでね……あと全人類『Plasma』聴いてきて