凛果は動画の件を陽向に話したが彼女の反応は薄かった。
「ほら、炎出てない?」
「いやぁ……。いたって普通の指差しポーズじゃない?」
翌日、凛果はスマホを片手に倉田大樹がポーズを決めるシーンを何度も陽向に見せてきた。
最初凛果から「このシーン見て!凄いから!」と言われた時は少々怠そうに見たがシーンは至って普通。
凛果の推し(陽向は全く一ミリも興味ない)が爽やかな絵顔を振り向いてるだけだ。
「えー。陽向までそう言うの?。コメント欄でも特に炎に言及した奴はないし私の見間違いなのかなー」
でも実際に炎は出てるしと中々凛果もひかない。
「凛果が超能力に目覚めたとかだったら面白そうね」
「ちょっとぉ。何呆れた風に言ってんのよ。でも超能力かぁ、そんな力があれば………大樹とうふふ♡」
(あ、この子絶対禄な事考えてないわね)
ハァとついた溜め息は強くお腹を強打する音に打ち消された。
始まったのだ……このクラスの朝の地獄が……。
「うぅ……ゲホッ」
「玲奈!しっかり……ぐぁ!」
一人の男子生徒に蹴られ蹲る二人の男女。
蹴った生徒はパンパンと手を叩いた。
「さあさ皆さんご注目!。今からこのリア充風陰キャカップルをボコしま〜す」
少年の一声で男女含めた8名が次々と二人に暴力を振るい初めた。
「止めなきゃ!」と陽向は席を立ちかけるも凛果に「行っちゃ駄目!」と自身が止められた。
「放っておけないわ!」
「今行ったら陽向までいじめられちゃうよ!」
いじめっ子グループに聞こえるか聞こえないかスレスレの声量の会話は凛果の心臓に悪かった。
このいじめは半年前から突如として始まり何の前触れもなく陽向のクラスで所謂陽キャを自称するグループが園田玲奈と川名遥輝をいじめ出したのだ。
この時からいじめを止める為に陽向は奔走したが、凛果に心配されたり、いじめグループが教師の目が付かぬところでやったりと奴等は滅多な証拠を残さなかった。
否……例え残したとしてもいじめグループの生徒の中にそれを揉み消すぐらいの権力を持つ親がいるのかも知れない……。
この令和の時代に………恥ずべき事だ。
「陽向………。お願いだから落ち着いて。傷つく貴女を見たくない…」
「凛果…私はとっくに傷ついてるわ。この情けない自分にね!これ以上誰も傷つけさせない!」
「ちょ……!。陽向!」
陽向は凛果の静止を振り切った。
「あんた達!毎日園田さんと川名君をいじめて恥ずかしくないわけ!?。自分達がどんだけ幼稚な事やってんのか実感しなさいよ!」
「あ?」
リーダー格の生徒が陽向を睨み近付くがどこからともなく舌打ちが聞こえ、「あ~、萎えた萎えた」といじめグループは疎らになった。
「園田さん!川名君!立てる!?」
「俺よりも玲奈を……!」
「分かった!でも川名君も大怪我だよ!凛果手伝って!」
「ひぃぃぃぃ……。むちゃしすぎだよぉ……」
陽向と凛果は玲奈と遥輝を其々支え保健室に連れて行った。
(今日をクラスを変える日にするんだ……私が!)
陽向の心に一筋の光が溢れる。