Palworld(パルワールド) とある冒険者の歪んだ手記《イレギュラー・ノート》 作:ナ月(なつき)
スマイルという名のエレパンダは、あだ名通りの白い歯を見せつけて笑顔を浮かべながら、空中から雷を出現させてモグラを襲う。
「雷撃を生む」ってどうやってんだよ。普通、雷って直進しねーぞ。
しかし、直進するイナズマを放つ。
「やっちまいな、スマイル!」
かと思えば、バリバリと落雷をライン状に連発する攻撃もしてきた。
こっちの雷は、ステップ踏んでジグザグになるみたいだ。
爆ぜる空気を吸い込み、ピリリと痺れる舌舐めずり。
三連弓を構え、放つ。
しかし、さすがはHP3万。木と石で作られた弓矢なんて豆粒程度のダメージにしかなっていない。
普通だったら肉をえぐるような強烈な一矢のはずなんだが、打撃にしかなってないな。
モグラのベタついた泥を打ち出すマッドショットも、効いてるようでちょっとしか効いてないらしく、またポケ●ンと違って、電気を無効化できているわけではないので、徐々に体力差でモグラが追い詰められていく。
「もういい、モグラ、下がれ!」
「弱々~。ざァこ、ざァこ」
「テンプレメスガキ構文どうも~。次、ポヨポヨ!」
ポヨポヨプリン……元の名前はナエモチだっけ。
草と地属性。
こいつも電気は半減だ。
「は、2体目!?」
「悪いが、俺は後3体もパルを残している」
「ちっ、じゃあ、本体を狙わなきゃ埒が明かないわね」
ピピピピ、とスマイルからレーザーポインターみたいなマーカーが表示される。
絶対ヤバイ。なんか来る。
俺は咄嗟に柱の陰に隠れた。
「ロックオンレーザー!」
ばちゅん、と雷を収束させたものが柱に直撃し、しゅおお、と表面を蒸発させた。
PCをフル稼働させて金属が焦げついたようなにおいがする。
柱が何で出来ているのか知らないが、これは食らったらヤバいやつだと理解する。
「ちっ、避けてんじゃないわよ!」
「人に向かって撃ってんじゃねーよ!?」
「行け行けスマイル! 近づいて放電よ!」
「ぎゃー、来んな来んな!」
俺とスマイルとゾーイは柱の周りをぐるぐる回る。
「ポヨポヨ、やれ! ポヨポヨ! 違う、草技じゃない! 土を出せ、土を!」
「ポヨ~」
ちっくしょう、ポヤポヤしやがって。
タネマシンガンみたいな技を撃つが、俺の弓のほうがダメージ入りそうなくらい弱い。
「ちょ、スマイル! 人間を狙いなさいよ! まったくもう!」
「お? タゲ変わった?」
柱でチェイスをしていると、やがてスマイルがぷいと向きを変えて、ポヨポヨに向かった。
やっぱそうだ。あいつらも俺たちと同じだ。
パルに具体的な命令を出して使役しているわけじゃない。
「もうっ、さっさとあの雑魚を倒すわよ!」
「ははっ、お互い、間抜けなパルを持ったな」
スフィアに入ったパルは主人に絶対服従だが、『何をするか』はパル自身が考える。そしてパルの知能は人間のように高くない。
「俺は距離を取って、弓矢でチクチクさせてもらうぜ」
ゾーイを狙う手もあるが、得策じゃない。
スマイルはライドしているゾーイへの攻撃は何が何でも守ろうとする。
まるでお姫様を守るナイトだ。
下手にゾーイを叩いて怒らせるよりも、スマイルを弱らせたほうが効率がいい。
どのみち、こいつを何とかしなきゃ勝ち目はないんだ。
「ポヨポヨもHPが減ってきたな。しゃーない。ポッチャマン、出な!」
誰が呼んだかポッチャマン。
「ハッ。スマイル相手に水属性とかバカなんじゃないのー?」
「あ、やっぱ効果バツグンな感じ?」
相性をよく理解してないんだよな。
ヤバいか?
「ペンペーン!」
しかし何とポッチャマン。
3発のアイスミサイルがスマイルの足元に着弾し、スマイルを氷漬けにして動きを封じた。
「スマイル!?」
「おおっ!? いいぞ、ポッチャマン! すごいぞ、ポッチャマン!」
その隙に三連弓を振り絞り、撃ちまくる。
氷はやがて砕かれ、雷撃であっという間にHPは溶けたが、ポッチャマン。お前はいい仕事をした。
「4体目! ヒギツネ!」
「キツネビじゃない! アンタ、ネーミングセンスなさすぎなんですけど~?」
「狐火はキツネじゃなくて火の玉の怪異です~。学が無くて乙~」
「なんですって!?」
妖怪の伝統がこっちに残ってんのかは知らんが。
しかし、ヒギツネじゃ時間稼ぎていどにしかならんな。
炎は別に効果バツグンでもないし、雷はそのまま食らう。
HPの差が、徐々に徐々に俺を追い詰めていく。
ヒギツネがロックオンレーザーを食らい、感電し、行動不能になる。
もう戻すしかない。
「アロニウム!」
「ハハん。それでラストでしょ? 手こずったけど、これで終わりよ!」
最後の砦、アロアリューことアロニウム。
ゾーイ&エレパンダHPは、残念ながら半分ちょい削ったくらいのダメージしか与えられてない。
だがしかしたかしくん。
アロニウムにはあの技がある。
俺が二回、死を見た技が。
アロニウムの至近距離に、紫色の竜の力を放出し、何もかも弾き飛ばす超次元技。
「ドラゴンバースト!」
ダメージ309。
あれぇ~、思ったより効いてないな~。
「何かしたぁ!?」
「仲間になった途端に弱くなるの止めてくれー!」
俺は死に物狂いで三連弓を振り絞った。
ゾーイに当てる、当てる当てる。
「はぁ……! しぶっといわねー!」
「勝つまでやるに決まってんだろうが!」
嫌だよ、俺の死因がパンダの感電死なんて。
……パンダの感電死ってなんだ?
「アロニウム、頼む! お前が最後の頼みの綱なんだ! マジ頼む!」
「潰せ! スマイル! 徹底的にね!」
スマイルの体力は残り三割近くまで削れている。
が、アロニウムのHPがもう半分もない。レッドランプが点灯している。
「耐えろ、アロニウム!」
「ヤっちゃえ、スマイル! いつものように!」
ズバン、ズバンと地面を撃ち抜く連続した雷撃がアロニウムに多段ヒットし、ついにアロニウムが崩れた。
俺の手持ちのスフィアに帰ってくる。
ずんずん、と大きく腕を振って歩み寄るスマイル。
「さんざん、手こずったけど、雑魚が5体集まったところで、アタシたちには勝てないんだから!」
「いやぁ、ここまで実力差があったとは、恐れ入ったわ」
「スマイル! トドメよ!」
トドメ。
死ぬってことか?
死にたくねぇなぁ。
俺の名はノーフェイス。未だ名無しの権兵衛なんだから。
「ここが踏ん張り時だな」
「無駄な足掻きね」
「どうかな」
俺は三連弓を構えて、スマイルへ引き絞っていた。