Palworld(パルワールド) とある冒険者の歪んだ手記《イレギュラー・ノート》 作:ナ月(なつき)
むしゃむしゃ。
「イノボウのワイルドな肉の香りに、タマコッコの産みたてエッグのフレッシュな味わい。シンプルに塩で味付けされているのがまた、素材の旨味を最大限に生かせている」
「何で解説してんの?」
「あいつら肉食に目覚めないかなと思って」
ちらり、とパル愛護団体のほうを見る。
「野蛮だ! パルを食うなんて、正気の沙汰じゃない! ぐぅ~」
「パルは人間と同じなのよ! 共食いもいいところだわ! きゅるる」
「我々は屈しない……屈しないぞ……! ぐぎゅるるる」
「思ったより効いてて草」
まぁ、所詮は下っ端だしな。
信仰心もそんなに強くないと見える。
「ボスはこんなもんじゃないわよ」
「愛護団体のボスって、どんなやつ?」
「何度か戦場で会ったことがあるわ。前線に立って、槍を構える女性。リリィって呼ばれてて、緑がかった白髪に、薄紫色の瞳をしていた。でも、美辞麗句を並べるだけで、心の内までは、よくわからなかったわ」
「あー、まぁ、宗教家って、大体そうよな」
「あと、スマイルと同じように、巨大なパルに乗っていたわね」
「塔のエネルギーの供給を受けてるわけか。ま、一回何とかなったし、次も何とかなんだろ。さて、こいつら雑魚は解放してやるか」
「殺さないの?」
「密漁団と愛護団体の確執なんて知ったこっちゃねーよ」
縄をほどき、もう迷惑かけんなよと一応、念を押して解放してやる。
パル愛護団体は、悪態を吐きながら去っていった。
「武器くらい奪えばいいのに」
「そしたらあいつら、この世界を生きていけないだろ」
勿体ないと言わんばかりにシオラが嘆息する。
身ぐるみ全部剥がして売り飛ばしそうだな、こいつは。
「さて、今後の方針だ。地図はあるんだが、愛護団体の塔はどこにある?」
「パル愛護団体の塔は、ここから北にあるわ。まずはウチの塔の跡地まで向かうとして、そこからだと双騎士の大橋を渡り、彩蝶の森を抜ける必要があるわね。そこに古びた祭祀場があるから目印になるはずよ。それから花兎山を越えて、その先の凍てつき山に塔があるわ」
「よし、アロアリューのサドルできた」
「ねぇ、聞いてた? 人の話」
「聞いてた聞いてた。北にいきゃぁいいんだな」
「長い旅になるわよ」
「そうかぁ。んじゃまぁ、気合入れて行くか」
俺はアロニウムにライドする。
おお、こいつはいい! めっちゃ早いぞこいつ。
そういや、神速ってパッシブスキルついてたな。有能~。
また、ゾーイはスマイルにライドする。
「じゃあ、行ってらっしゃい」
「は? シオラも来るんじゃないの?」
「僕はパルを持っていないんだ。君たちみたいにカサカサ動けないんだよ」
「カサカサ言うなよ」
「と、いうわけで君たちとは別ルートで塔へ向かうよ。確かめたいことがあるから、塔で合流しよう」
「追いつけんの?」
「商人には極秘の裏ルートがあるものなんだよ」
そう言って、シオラは悪戯っぽく笑う。
こういうところは子供っぽいのよな。
「じゃ、後は若い衆ふたりでがんばって~」
「ふ、ふたり旅!? ちょ、なんであんたとなんか!」
「しょーがねーな。変な気起こすなよ、ゾーイ」
「あたしのセリフだー!!」
それから、ゾーイと俺の旅が幕を開けるのだった。
***
パル愛護団体、幹部の集いにて。
リリィの前にかしずいて、頭を垂れる女がひとり。
「リリィ様。報告いたします」
「はい、なんでしょう」
「古代端末を持つ異国の人間が、レイン密漁団の塔を破壊した件ですが……どうも結託し、こちらに向かってくるとの報告がありました」
「そうですか」
「いかがいたしますか」
「もしこちらに来るようでしたら、通してください。話を聞きたいのです」
「……お言葉ですが、パルを私利私欲のために使い、パルの肉を食う野蛮なやつらです。人命よりパルソウルを。パルの命を軽んじる愚者の言葉になど、耳を傾ける必要などありません」
「そうですね。パルのためなら私たちの命など安いとは、私も思います。でも今の彼女となら、話し合える気がするのです」
「……わかりました。リリィ様がそう仰るのなら」
「問題は、異国の人間。それが災厄の種火になるのか、それとも救済の変革をもたらすのか……」
「……リリィ様?」
「いえ、なんでもありません。皆に伝達をお願いします」
「はっ」
リリィの元から離れた女は、部隊に戻ると、こう宣言した。
「リリィ様からの命である!」
「ドキドキ……」
「ソワソワ……」
「殺せ! マーカス自警団に連絡しろ。パルを強制労働させ、パルの肉を食う野蛮なやつらだ。異国の民はゾーイもろとも始末しろ! 絶対に塔に近づけるな!」
ははっ、と緑色のローブを着た信徒たちはその命をしかと受け、配備に動き始めた。
「汚物どもめ……我らがリリィ様と同じ空気が吸えると思うなよ」
P.S
へへ……たまには視点切り替えで不穏な空気も出してみちゃうもんね……