Palworld(パルワールド) とある冒険者の歪んだ手記《イレギュラー・ノート》   作:ナ月(なつき)

15 / 24
15

 むしゃむしゃ。

 

「イノボウのワイルドな肉の香りに、タマコッコの産みたてエッグのフレッシュな味わい。シンプルに塩で味付けされているのがまた、素材の旨味を最大限に生かせている」

「何で解説してんの?」

「あいつら肉食に目覚めないかなと思って」

 

 ちらり、とパル愛護団体のほうを見る。

 

「野蛮だ! パルを食うなんて、正気の沙汰じゃない! ぐぅ~」

「パルは人間と同じなのよ! 共食いもいいところだわ! きゅるる」

「我々は屈しない……屈しないぞ……! ぐぎゅるるる」

「思ったより効いてて草」

 

 まぁ、所詮は下っ端だしな。

 信仰心もそんなに強くないと見える。

 

「ボスはこんなもんじゃないわよ」

「愛護団体のボスって、どんなやつ?」

「何度か戦場で会ったことがあるわ。前線に立って、槍を構える女性。リリィって呼ばれてて、緑がかった白髪に、薄紫色の瞳をしていた。でも、美辞麗句を並べるだけで、心の内までは、よくわからなかったわ」

「あー、まぁ、宗教家って、大体そうよな」

「あと、スマイルと同じように、巨大なパルに乗っていたわね」

「塔のエネルギーの供給を受けてるわけか。ま、一回何とかなったし、次も何とかなんだろ。さて、こいつら雑魚は解放してやるか」

「殺さないの?」

「密漁団と愛護団体の確執なんて知ったこっちゃねーよ」

 

 縄をほどき、もう迷惑かけんなよと一応、念を押して解放してやる。

 パル愛護団体は、悪態を吐きながら去っていった。

 

「武器くらい奪えばいいのに」

「そしたらあいつら、この世界を生きていけないだろ」

 

 勿体ないと言わんばかりにシオラが嘆息する。

 身ぐるみ全部剥がして売り飛ばしそうだな、こいつは。

 

「さて、今後の方針だ。地図はあるんだが、愛護団体の塔はどこにある?」

「パル愛護団体の塔は、ここから北にあるわ。まずはウチの塔の跡地まで向かうとして、そこからだと双騎士の大橋を渡り、彩蝶の森を抜ける必要があるわね。そこに古びた祭祀場があるから目印になるはずよ。それから花兎山を越えて、その先の凍てつき山に塔があるわ」

「よし、アロアリューのサドルできた」

「ねぇ、聞いてた? 人の話」

「聞いてた聞いてた。北にいきゃぁいいんだな」

「長い旅になるわよ」

「そうかぁ。んじゃまぁ、気合入れて行くか」

 

 俺はアロニウムにライドする。

 おお、こいつはいい! めっちゃ早いぞこいつ。

 そういや、神速ってパッシブスキルついてたな。有能~。

 また、ゾーイはスマイルにライドする。

 

「じゃあ、行ってらっしゃい」

「は? シオラも来るんじゃないの?」

「僕はパルを持っていないんだ。君たちみたいにカサカサ動けないんだよ」

「カサカサ言うなよ」

「と、いうわけで君たちとは別ルートで塔へ向かうよ。確かめたいことがあるから、塔で合流しよう」

「追いつけんの?」

「商人には極秘の裏ルートがあるものなんだよ」

 

 そう言って、シオラは悪戯っぽく笑う。

 こういうところは子供っぽいのよな。

 

「じゃ、後は若い衆ふたりでがんばって~」

「ふ、ふたり旅!? ちょ、なんであんたとなんか!」

「しょーがねーな。変な気起こすなよ、ゾーイ」

「あたしのセリフだー!!」

 

 それから、ゾーイと俺の旅が幕を開けるのだった。

 

***

 

 パル愛護団体、幹部の集いにて。

 リリィの前にかしずいて、頭を垂れる女がひとり。

 

「リリィ様。報告いたします」

「はい、なんでしょう」

「古代端末を持つ異国の人間が、レイン密漁団の塔を破壊した件ですが……どうも結託し、こちらに向かってくるとの報告がありました」

「そうですか」

「いかがいたしますか」

「もしこちらに来るようでしたら、通してください。話を聞きたいのです」

「……お言葉ですが、パルを私利私欲のために使い、パルの肉を食う野蛮なやつらです。人命よりパルソウルを。パルの命を軽んじる愚者の言葉になど、耳を傾ける必要などありません」

「そうですね。パルのためなら私たちの命など安いとは、私も思います。でも今の彼女となら、話し合える気がするのです」

「……わかりました。リリィ様がそう仰るのなら」

「問題は、異国の人間。それが災厄の種火になるのか、それとも救済の変革をもたらすのか……」

「……リリィ様?」

「いえ、なんでもありません。皆に伝達をお願いします」

「はっ」

 

 リリィの元から離れた女は、部隊に戻ると、こう宣言した。

 

「リリィ様からの命である!」

「ドキドキ……」

「ソワソワ……」

「殺せ! マーカス自警団に連絡しろ。パルを強制労働させ、パルの肉を食う野蛮なやつらだ。異国の民はゾーイもろとも始末しろ! 絶対に塔に近づけるな!」

 

 ははっ、と緑色のローブを着た信徒たちはその命をしかと受け、配備に動き始めた。

 

「汚物どもめ……我らがリリィ様と同じ空気が吸えると思うなよ」




P.S
へへ……たまには視点切り替えで不穏な空気も出してみちゃうもんね……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。