Palworld(パルワールド) とある冒険者の歪んだ手記《イレギュラー・ノート》   作:ナ月(なつき)

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 翌日の朝、俺はゾーイにアイテムを投げてよこした。

 

「ゾーイ。これ持っとけ」

「え? 何、この三角形の、アクセサリー? き、綺麗ね?」

「ノーマルシールド。ある程度の攻撃は肩代わりしてくれるようになるらしい」

「あぁ、そういうこと……」

「不必要な戦闘は極力避けたいからな。これでかすり傷くらいは無視して進めるようになんだろ」

「ふーん」

 

 超ありがたいパルテクノロジーの恩恵を、素っ気なく受け取るゾーイ。

 これだから女の子は。

 ロマンってものがわかってないんだから。ぷんすか。

 

「ってゆーか、彩蝶の森って長いな」

「湖を迂回するように、ぐるっと回る必要があるから、仕方ないわ」

 

 仕方なく、黙々と歩く。

 てくてく。

 踏みしめる土の感触が、湿っていて柔らかい。

 森の空気はとても澄んでいて、排気ガスで汚れコンクリートの上で巡回しない空気と違い、あたかも栄養素が含まれているかのように、豊潤な草木の香りに満ちていた。

 風を木々が受け止め、そよそよと音が鳴る。

 普段はハイキングなんてしないなかったはずの俺でさえ、野山を駆け回る子供時代よりもずっと前、野性に還ったような気分になれた。

 

「たまにはいいな、こういう散歩も」

「何よ、物珍しいものでもあった?」

「あるよ。そこらじゅうにな」

「ふぅーん」

 

 この自然を当たり前のように甘受しているゾーイは、こんな気持ちにはならないんだろうな。

 

「ははっ」

「な、何よ。あたしの顔見て笑わないでよ」

「いや、悪い。ふはは」

 

 別にそんな面白くないことでも、面白く思えた。

 ゾーイの顔でさえ、どこか輝いて見えた。

 うおー。

 テンション上がって来たー。

 

 ―――『月欠け湖畔』。

 

\ パピプ蝶々もポプリーナちゃんもゲットだぜー/

 

「あ、森抜けた」

「みたいねー」

「隣に開けた空間があるな」

「祭壇じゃない?」

「うーわ、なんだこのブロック群。何を祀ってあんの?」

「パルよ。エリートパルが守ってるの」

「何から?」

「さぁ、土地じゃない? 他よりも強い個体だから、気をつけたほうがいいわよ」

 

 ダンジョンと同じようなもんか。

 俺の持ってるデカモグラと同じようなパルだろう。

 それにしても、すごい遺跡だな。

 専門家が見たら垂涎ものだろうな。

 この島に、この島を調べてる人間がいるのか知らんけど。

 

「よっしゃ。ちょっと寄ってくか」

「本気?」

「自警団と愛護団体から逃げ回り続けてもラチ開かないからな。戦力も上げておこう」

 

 俺は祭壇へと向かう。

 円形に積まれた白い大理石の中央に、青白い光が見える。

 そこに触れると、それまで建っていた地面がひっくり返るような感覚に陥った。

 白い世界が反転し、黒い世界が訪れる。

 

「これは……」

 

 さっきまで青空だった場所が黒い天井になり、白い大理石だった場所が壁になる。

 裏返った。

 結界の中に入ったんだ。

 

「いるわよ」

「おりますねぇ」

 

 緑色の体に、人間みたいな手足を持ち、両耳のあたりに桜色の花を咲かせた少女型パル。

 

『花園の姫君 Lv.28 フラリーナ HP2460』。

 

 あれ、こいつワシよりも強くねー。

 

「HP2500だって。いけっかなー」

「いけるわ」

「3万から見たら、そりゃまぁ……ならいけるのか?」

 

 アロニウムの一件以来、自分よりもレベルの高いやつは直感的にヤバいという印象があるが。

 二対一か。

 なんとかなるかもしれない。

 

「やるか」

「前線はあたしたちに任せて」

 

 そこからの戦闘は単調なものだった。

 ゾーイが戦線に立って電撃攻撃を繰り出し、カウンターで来る相手の攻撃を受けきる。

 俺とヒギツネで中間から攻撃し、ヒギツネが攻撃を受けそうになったら引っ込める。この繰り返し。

 

「そういえば、愛護団体のやつら、パルスフィアを使わないのよ」

「へぇ、なんで?」

 

 なので、会話をする余裕もあった。

 

「信条に反するとかなんとか。パルを道具みたいに扱うスフィアのことを、よく思ってないみたい」

「ふーん、生き方に随分こだわりのある連中だこと」

「ある意味では、信念があるともいえるわね」

 

 フラリーナのリーフカッターみたいな攻撃を柱の陰に隠れてやり過ごしながら、俺はゾーイの言葉を反芻する。

 

「信念、か」

「考えなしは自由に動けるけど、あるやつはあるやつで、強いわよ」

「そいつらは、自分がどう生きるのか、決めてるってことだよな」

「そーなるわね」

「ふーん」

 

 レイン密漁団の元幹部としてケジメをつけに行くゾーイ。

 こう生きると決めてその信念に従う愛護団体。

 とりあえず塔ぶっ壊すマン、俺。

 

 やべーな、話し合いになったら勝ち目なさそう。

 いや、でも話せるなら聞きたいな。

 なぜその生き方をしようと思ったのか。

 俺の生き方のヒントになるかもしれない。

 

「ゾーイ、攻撃中断! 捕獲に切り替える」

「任せたわ」

 

 俺は拾い物のなけなしのメガスフィアを投げ、捕獲を試みる。

 一度ではやはり捕獲できない。何度も投げる。

 パルはスフィアを破ると、そのまま攻撃を仕掛けてくる。

 これは俺が気合で避けるしかねぇ。

 高速回転する硬質な葉の刃を、皮膚が切れるスレスレで避ける。左右から展開されたミキサーみたいな葉の竜巻を斜め前方に受け身を取って避けた。そうして汗を流しながら回避に徹し、スフィアを当て続ける。

 やがて、勝利条件を達成。

 フラリーナが仲間になった。

 

「ひーはー。疲れた。よーし、こいつを採用して、ポヨポヨプリンは降板だな」

「捕獲したフラリーナのスフィアが消えたけど、どこに行ったの?」

「一度はパルボックスに格納される。空間転移の技術があるらしい」

「マジ? 古代端末って、ホントすごいのね」

「まーな」

 

 なぜか偉そうにふんぞり返る俺。

 そう、強くはなっている。

 強くは。

 ……でも、俺の求めるものは、強さだけじゃないんだよな。

 




ちょっと続き書くの遅れますー
今まで毎日更新してきたのが奇跡なんですけどね
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