Palworld(パルワールド) とある冒険者の歪んだ手記《イレギュラー・ノート》 作:ナ月(なつき)
双騎士の大橋を渡り、彩蝶の森を抜け、古びた祭祀場でフラリーナを仲間に。それから細長い花兎山を越えて、ついに凍てつき山にやってきた。
寒かったので、道中『耐寒毛皮アーマー』を作った。
『革』と『氷結器官』で。
なんで『革』と『氷結器官』で耐寒防具ができるんだよ。普通、発火器官で耐寒防具作るだろ。いやまぁ、できたものに文句をつけるつもりはないけど。
ちなみにゾーイは。
「お前そのままで寒くないの?」
「平気よ。下に寒くても暖かいインナー着てるから」
とのことらしい。
ヒートテックか何かか? 何それ俺も欲しい。
とはいえ凍てつき山の登山は過酷を極めた。
そもそも当たり前だが、山は人間が上れるように作られたものではない。
当たり前だ。ゲームの山だったら上れるように作られているが、自然とは必ずしも人間が登れるようにできていたりはしない。
少し不運が重なっただけで、人の命など簡単に谷底に転がり落ちる。
まさに天然の要塞。
その要塞を、時にクラフトで足場を整えたり、時に壁と階段を作りながら、えいさほいさと登って行った。
舗装されていない道を進むのは、骨が折れる。
ようやく山頂に着いた。登頂した。
やりきった、すごいぞ俺たち、がんばったぞ俺たち。
やけに乾燥してパリっとした薄い空気を何度も吸って、酸欠みたいになった。
「おいこら、こんな辺ぴなところに住みやがって。暖かいココアでもてなしやがれ」
「まったくよ。グランモスのステーキも出しなさいよ」
ふたりしてゼーハー言いながら塔に向かって歩いていくと、塔の前に数十人ほどの信徒たちの姿が見えた。
「あーもー、どーしろってんだよー」
岩陰に隠れながら、頭を抱える。
ひとりでもそこそこ厄介なのに、数十人て。いやもう数えんのもめんどくせー。
しかもひとりひとりがレベル22ある。強い。
ここまで冒険してきた俺のレベルなんか28だぞ。
そこまでレベル差のないやつらを、まとめて数十人相手にして、その上で塔にいるボスとも戦えってか? うーん、無理ゲー。
「おやおや、ノーフェくんにゾーイちゃん。ちょっと待たせたかと思ったけど、タイミングバッチリだったかな?」
「このさっぱりした軽口は……シオラ!」
「あんたここまでどうやって来たの……って何、その大所帯は!?」
ドンと構える、白い商人服を着たシオラの背後に、銃火器を持って武装したゴロツキども。すなわちレイン密漁団たちがぞろぞろと続いていた。
目には涙を浮かべ、どこか感極まった感じがする。
「ゾーイの姉御!」
「あ、姉御なんて呼ばれたことないんですけど?」
「俺たち……俺たち、感動しました!」
ボロボロと涙と汗とその他もろもろの汁を弾き飛ばしながら、男どもが叫ぶ。
「な、何が……?」
「今までただデカい顔して、幹部だからってふんぞり帰ってるのかと思ってました。でも、この吟遊詩人から熱い魂の言葉を聞いて、本当は、一族の守ってきた塔を守るため、そして俺たちの居場所のために今も戦ってくれてるって聞いて、それで、それでぇ……っ!」
「えーと、あの」
「シオラ、お前、まず行商人だろ」
「すべてにおいて嘘は言ってないよ」
誇張はしただろうな。
それも、かなり。
「俺たちも戦います! 戦わせてください!」
「いや、あの……」
「つーかお前ら集まって叫んでるから、もうバレてんぞ」
愛護団体が銃を持ってこちらに向かってくるのが見える。
「おでに任せなぁ!」
対して、ガトリング銃を構える密漁団クラッシャー。
確実に互いを捕捉し、戦闘の火蓋が切って落とされた。
「密漁団!? 一体どこから……ええい、一歩たりとも塔へ踏み込ませるな! リリィ様に近づく羽虫どもを焼き殺せ!」
「マジで人間嫌悪団体だな、こいつら」
「リリィ様にはパル愛護団体の顔として、これからも活躍していただかなければならないんだ! 金ならある。マーカス自警団、弾薬代はケチるな。ありったけ撃ち込み殺せ!」
「ホントにね、ノーフェ。宗教家は物騒だ」
気づいたらシオラの姿はなく。
純白の地の上に白銀の刃を光らせ、愛護団体へ斬り込んでいた。
はええな、あのおっさん。
「シオラ!」
「ああ、いつも通り行こう、ノーフェくん。雑魚は僕に任せて、君はボスを」
「いやー、毎度のことながら助かりますわー」
剣士兼、行商人兼、吟遊詩人。
何でもアリだなこいつ。
「よーし、今のうちに行こうぜ、ゾーイ?」
「……あ、あんたたち! 無茶はするんじゃないわよ! 危なくなったら下がりなさい!」
と、彼女はそう声をかける。
いや、多分それ激励になっちゃってるな。
ほら、ニッと振り向きざまに笑うとか、もう死ににいくやつのそれじゃん。
さっさとリリィを塔から引きずり出さないとな。
「ケリつけんぞー」
「ええ、決戦よ」
塔の扉を長押しし、入る。
ゾーイを連れていけるか不安だったので、手を繋いで入った。
おしごとがんばります