Palworld(パルワールド) とある冒険者の歪んだ手記《イレギュラー・ノート》   作:ナ月(なつき)

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「突然、消えたかと思えば、帰って来たんですね」

「ええ。あたしが弱ったのに、あんたが元気なままじゃ勢力に影響が出るんでね」

「あなたは私たちの破滅を望むのですか」

「違うわよ。あたしの楽しい旅路の前に、あんたたちはジャマってだけ」

「私はあなたがたが憎くて仕方がない」

「あたしたちにとっちゃ、どうでもいいわ。ルールもしがらみもあんたらも」

 

 ゾーイとリリィが。

 リリクインとスマイルが睨み合う。

 

「やるよ、スマイル!」

「今回もよろしくお願いします、リリクインさま!」

 

 リリクインがほろろと鳴き、スマイルがグシシと笑う。

 葉と雷をまき散らし、ふたりの戦いが幕を下ろした。

 肌を焼き切るような雷が爆ぜ、葉が焦げる。

 エネルギーを詰め込んだ種の爆弾が足元で爆ぜ、上空からは暗雲もなく落雷が発生する。

 緑の化物と黄色い化物が取っ組み合い、リリィの槍がゾーイの頬を掠める。

 

「顔に傷つけたら承知しないわよ」

「あなたは少し痛みを覚えたほうがいい」

 

 スマイルの雷を纏った爪がリリクインの身体を掠め、リリクインの周囲に放たれた草葉のエネルギーの放出が、周囲の物を吹き飛ばす。

 

「楽しく生きるには不要な物よ!」

「人間なんて! 生きるだけでも他者に迷惑をかける」

「そりゃそうよ。人間だもの!」

「だからこそ! 他者への配慮を忘れてはならないのです!」

「うるさいなぁ! みんなが笑って生きていければそれでいいじゃないの!」

「幸福なる生を望むのです!!」

 

 片や自由奔放。片や自縄自縛。意見が合うはずもなく。

 爪と葉と、雷と槍と、皮をえぐり肉を断つような猛攻が繰り広げられる。

 意見は拮抗。平行線。

 しかし物理的な体力は、『ステータス』は残酷にもふたりの差を突き付ける。

 部下を連れた数の戦いでは、むしろレイン密漁団のほうが分があっただろうが、大将対決では、ましてやアウェーな塔の中での戦闘では、ゾーイが押される。

 

「くっそ、がぁ」

「レイン密漁団も、今日で終わりです。元はと言えばあなたたちが……」

「あたしたちが、なんなのさ」

「……いえ、もう言葉は不要ですね」

 

 リリクインから放たれたビームがスマイルを打ち抜く。

 両腕から放たれる凄まじいパルエネルギーの放出は、射線上のあらゆる物質を容赦なく削り命を奪う。

 

「スマイル! お前、またあたしをかばって……」

「勝負あり、ですわね」

「……スフィアの中で休みな、スマイル」

「これでおしまいです。ゾーイ・レイン。あの世で己が犯した蛮行を悔い改めなさい」

 

 決着が今まさにつこうというときに。

 

 ―――ああ、俺が、ようやくお出ましって感じみたいだ。

 

「まぁ、だろーなとは思ったよ」

 

 かつーん、こつーん、と、塔の中に足音がやたらと大きく響く。

 まるで、俺はここにいると強調し、逃げられまいとするスポットライトのように。

 ああ、それでいいさ。

 俺はもう、逃げるつもりは毛頭ないのだから。

 

「……話の途中に、なんですか。あなたは」

「リリィ、お前、死ぬのが怖いんだろ」

 

 ズバリ、と指をさす俺を、リリィは冷たい目で見下ろした。

 

「私は生き方を説いているのです」

「違うな。死後の世界を恐れてる。んまぁー、宗教と死語の世界ってのは切っても切れない縁でな」

「私の崇高な生き方を、『宗教』などとひとくくりにしないでいただきたい」

「俺たちは食べ物を食べるとき、いただきますと礼を述べる。可笑しな話だと思わないか? 弱肉強食のこの世界で、底辺の雑魚どもの肉を食べるのにさえ感謝を述べるんだ。それは、俺たちが死後の世界を妄想しているからに他ならない」

「死んだ後の話など……」

「死んだ後に! 恨み祟られるのを恐れているんだ。自分たちが踏みつけてきた弱者の屍が足元から這い上がってくることを。だから時には大仰な儀式を執り行うこともある。神に捧げますとか言って『神も食ったんだから祟られるときゃ同罪な』みたいにな。お前らは肉を食わず、物言わぬ植物からしか搾取しない。そうすることで、恨みの対象から外れようとしているんだ」

 

 だから「あの世で詫びろ」なんてセリフが出てくるんだ。

 普通、死んだら終わりだ。その先はない。

 こいつには、死後の宗教がある。

 

「わ、私の心を、あなたが決めつけないでください!」

「決めてるんじゃない。図ってるんだ。そうとしか考えられねぇだろ。なぁ、植物が何のために根を張り葉を広げる。地球からエネルギーを搾取するためだろう。その葉を食らい生きている羽虫も、それを食らう獣も、パルも、人も、何も変わっちゃいねぇんだよ。認めろ」

「何を、何を……っ!」

「生命の本質は奪い合いなんだよ。それを拒むってんなら、今すぐ口を縫って緩やかに死ね」

「私は、血肉を食べるよりも良い生き方があると教えているだけです!」

「それは、同じ血肉を持つ人間を殺してでも伝えるべきことか? いーや、残念だったな。お前の人生も、大概呪いに呪われているぜ」

「う……嘘よ」

「何がお前にそこまでの感情を植えつけたのかは知らんが、まー、相手が悪かったな」

 

 俺はパルスフィアを両手に抱えて不敵に笑う。

 

「こっちはこれまでに踏みつけた雑魚どもを全て従える百鬼夜行のパルテイマーだ! お前が踏みつけた弱者の痛みを思い知れ!」

 

 口喧嘩に勝ち、かつ大声でビビらせ、精神的に勝ったような気分で状態で勝負を始める。

 反撃の狼煙ってのは、デカければデカいほうがいい。

 さぁ、リターンマッチだ!

 

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