Palworld(パルワールド) とある冒険者の歪んだ手記《イレギュラー・ノート》   作:ナ月(なつき)

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 ジッバニャンはクビな。これからはアロニウムの時代だから。

 

 手持ちを整え、散策をしていると、浜辺の岩陰に黒い穴を見つけた。

 何だこれ。

 近づくと、『ダンジョン』と表示された。

 ダンジョン?

 

「おや、また会えたね」

「んあ、商人か」

「シオラだよ。ノーフェイスさん」

「名乗ってくれて助かるよ」

「挑むの?」

「ダンジョンって挑むもんなの?」

「そりゃね。行くならお供してあげようか」

「いいの?」

「いいよ。君のレベルアップのために」

 

 そう言って、気さくについてきてくれるシオラ。

 四十代半ばって感じか。ちょっと大人っぽく見えるし、腰に下げた剣が強そうだ。

 

「俺が強くなることにそんな価値あんのか?」

「あるよ。塔の攻略には必要不可欠だ」

 

 金のためじゃなかったか。

 俺とシオラはダンジョンへ足を踏み入れた。

 

「レイン密漁団と戦えってのか」

「僕ひとりじゃ勝てないからね。でも、古代端末を持っている君なら話は別だ」

「まぁ、便利だしな」

「便利なだけじゃないよ。パルを5体も持ち歩けるのは、君しかいない」

「え、他のみんなは違うの?」

「原則、ひとり一体だよ」

「マジか。ってか、ダンジョン内ってすげーな」

「ダンジョンは初めて?」

「ああ。何か光るキノコみたいなのもあるし、砂浜は白いし、結晶がところどころ浮き上がってる。原石の中に飛び込んだみたいだ」

「面白い例えだね」

「松明まであんのな」

「人がいるってことだよ」

 

 などと、シオラは物騒なことを言う。

 人か。戦いたくねーな。

 

「あ、モグラだ」

「捕まえておいでよ」

「よっしゃー!」

 

 俺はモグルンという爪の長いポケモ……じゃなかった、パルを追いかけ捕獲し、ダンジョンの奥へ進む。

 

「誰だ!」

「ん?」

 

 奥へ進むと、『密漁団のしたっぱ』という敵が現れた。

 Lv.8。弱いな。

 

「なぁ、お前らって……」

「さては俺たちの資源を盗ろうって魂胆だなぁ!? 死ねぇ!」

 

 話し合いなど余地もなく、棍棒で殴りかかってきた。

 

「おい、話を……」

「死ねぇ!」

 

 話の通じない棍棒男を前に、アロニウムを出して嘆息する。

 なるほど確かに。

 話し合いの余地もなく、命の奪い合いが発生する。

 

「おい、シオラ……?」

「あっ、こっちは終わったよ。そいつは自分で倒して」

 

 下っ端が三人、すでに斬り伏せられていた。

 よ、容赦ねぇ~。

 

「押しつぶせ、アロニウム!」

「アロ~!!」

「ちょ、ま……うぐぇ!」

 

 怨、とアロニウムの周囲にドラゴン属性の渦巻きが発生し、弾き飛ばされた密漁団の下っ端が壁にしたたかに叩きつけられて、それ以降、動かなくなった。

 

「……なんて命が軽い世界だ」

「だから言ったろ。黙ってたら殺されるか、売り飛ばされるよ。抵抗しなきゃ」

「抵抗って……お前、容赦なく斬ってんじゃん」

「殺しに来る相手に、殺さないように戦ってやる道理はないでしょ」

「はぁ……俺の中の道徳観がマヒしてくる」

「あ、こいつらパルスフィア持ってる。ほら、これは君が持ってきなよ」

「いいのか?」

「パルを無制限に所有できるのも君だけだよ」

「あー、パルボックスって、もしかして俺にしか作れない?」

「そそ」

「マジか。そりゃ夏油傑もびっくりだわ」

「誰それ?」

 

 つまり、みんなは一体しか持てないパルを、俺は無限に所有できると。

 なるほどなるほど。

 俺、もしかして強い?

 なんかやっちゃいました系な?

 

「こっち、進めそうだよ」

「進んでどうすんの? そういや」

「そりゃ、ダンジョンの奥にはボスと宝物があるって相場は決まってるでしょ」

「あるわけねーだろ。ゲームじゃねーんだから」

「知能を持ったパルは、探索者が弱る洞窟の奥で待つ。そして知能を持っているから、価値のあるアイテムが分かるし、それを然るべき時が来るまで保管しようとする。合理的でしょ?」

「そりゃ合理的だわ。奥行こうぜ」

 

 頼もしい商人剣士シオラとともに、ダンジョンの奥へ進む。

 中にいたネムラム、モグルン、ニャオテトを捕獲し、レイン密漁団の下っ端を倒しながら、奥へ進む。

 

「彼らも捕まえればいいのに」

「え、人間も捕まえれんの」

「この地に生を受けた者は、この地のルールに縛られる。外来人は別として、ね」

「じゃあ、ボスも捕まえられんの?」

「捕まえられるよ」

「そりゃ楽しみだ」

 

 ダンジョンの穴をくぐり、細い切り立った石の橋を渡って、一本の樹木が聳える開けた空間にたどり着いた。

 ボスだ。

 

 『モグルン。Lv.14』

 

 今の俺たちのほうが、レベルが高い。

 とはいえ、強そうだ。こいつを捕獲できりゃあ、一気に戦力アップだ。腕が鳴るぜ。

 

「取り巻きの雑魚モグルンは僕が倒すよ。君はボスに集中していい」

「助かるぜ」

「あと、地属性には草属性が有効だよ」

「そりゃ朗報。ポヨポヨプリンとアロニウムで迎え撃つぜ!」

「何その変な名前」

 

 雑魚モグルンはシオラに任せ、俺はポヨポヨプリンを出し、三連弓を構えてデカモグルンと対峙する。

 マジででけぇ。俺よりも背丈が高い。

 でもレベルは14なんだよな。

 アロニウムを乗り越えた俺の前では、敵わない相手じゃない。

 

 敵の攻撃をくぐり、俺の三連弓がモグルンの脳天にブチ当たる。

 ポヨポヨプリンのシードマシンガン、交代で出したアロニウムのボタニカルスマッシュがモグルンのHPを見る見る削っていく。

 ああ。

 戦うって、楽しいなぁ。

 命の奪い合い、生死のやり取り。

 その中で生まれる、生きたいという願望。

 それが、何者でもない俺を、何者かにさせてくれるような気がして。

 俺は今、洞窟を探検する冒険者で、戦う者で、パルテイマーだ。

 

「そろそろかな」

 

 シオラの声が聞こえる。

 俺はパルスフィアを取り出し、モグルンにカチ当てる。

 一度出てきても関係ない。立て続けに投げまくる。

 

「ちょ、ネムラム、今は攻撃しないで。ポイズンシュートしないで。相手もう瀕死だから」

 

 常に行動するネムラムの腕輪のせいで、血気盛んなネムラムがトドメを刺そうと攻撃を連発する。

 捕獲モーションの合間にネムラムの腕輪を外そうとするが、外れねぇ。

 呪いの装備かよ。

 

 仕方なく、間髪入れないようにスフィアを投げまくり、10投目くらいでようやく捕獲。

 危うく手にかけるところだった。

 

『古代テクノロジーポイントを1pt獲得』

 

 なんか古代技術の源もゲットした。

 

「何こいつ。『脳筋』だって」

「おめでとう。そのパルは塔攻略で、きっと役に立つよ」

「そっかぁ。じゃ育てておくかな」

 

 ネムラムはクビだな。

 便利だが、捕獲にはネックになる。

 

「宝はこっち」

「いつの間に」

「ふむふむ。ルビーと装備の設計書だね」

「設計書のレシピ? よくこんな紙切れに価値があるってわかったな」

「それだけ、パルの知能が高いってことだよ。情報に価値があると知っている」

「ほーん。優秀なこって」

「ところで、ルビーっていらないでしょ? 買い取ってあげようか」

「待て待て。こういうのは装飾品にするとステータスが上がるんだよ」

「そんなん着飾って強くなれるわけないでしょ。パルソウルがなけりゃ、ただの綺麗な石ころだよ」

「そんな石ころ集めて、お前は何に使うの?」

「そりゃ、君から安く仕入れて、遠くの富豪に高値で売るのさ」

 

 転売ヤーじゃねぇか。

 とはいえ俺には価値がないので、ルビーをシオラに売りつけ、なけなしの金貨を得た。

 何円とか、何ドルとか、何ゼニーとか、何ベリーとかはなく、金貨だった。単位という概念はない。

 

 洞窟から海岸へと戻り、んー、と伸びをする。

 だいぶレベルも上がったし、パルも増えた。

 拠点に戻って、体勢を整えて、それから、それから……。

 ああ、やることがいっぱいで、無限に時間が溶けていく。

 

「それじゃ、僕はこれで。また会ったらよろしくね」

「おう、シオラ。またな」

 

 シオラとは別れを告げて、拠点に戻る。

 パルたちは俺のことを待っているだろうか。

 まるで、我が家に帰る小学生に戻った気持ちで、俺は帰路についていた。

 

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