東方狂奏夏【~Phantasy “Hot” Orchestra~】   作:トカゲの妖怪

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聖&清蘭編 五話

清蘭が銃を乱射し、飛んでくる虫達を撃ち落とす。

レミリアは咲夜を連れ、グングニルを振って虫を落としながらリグルに向かっていく。

 

「一度慈悲を与えたと言うのに、それを自ら跳ね除けるとは」

「残念ながら我々に協力しないお前は排除対象だ、聖白蓮!」

 

紅魔館を囲む虫の大群から、蝉達が実々美の周囲に集まる。

 

「いくぞ小さき同士達! 【故符『岩にしみ入る断末魔』】!」

 

周囲に集まった蝉と共に実々美が絶叫を始める。実々美の絶叫が放たれた弾幕を揺らし、軌道が読めなくなる。

そんな弾幕の隙間から、絶叫を上げ続ける蝉が突進してくる。

弾丸の様な蝉を避けると蝉は地面にぶつかり絶命し、弾幕をばら撒く。

 

「命を……!」

「同士よ、恐るな! 我らは不滅、安心して逝くがいい!」

 

蝉達は弾丸となり、弾幕の隙間を縫って向かってくる。手で払い撃ち落とすが、絶命した瞬間に弾幕をばら撒く。

清蘭は弾丸を放ち蝉を撃ち落とすが、弾幕の雨に難儀している。

蝉の弾丸は尽きる事はなく、紅魔館を囲う虫達から次々と湧いて出てきている。

 

「【大魔法『魔神復踊』】!」

 

スペルカードを放ち、弾幕で蝉を一気に焼き払う。

狙いを定め、レーザーを全て実々美に向ける。

だがレーザーの砲塔が実々美に向いた瞬間、紅魔館を囲む虫の一部が飛び出し実々美の前に壁を作る。

 

「ははは! 虫ならいくらでもいるぞ!」

「南無三……!」

 

心の中で謝罪し、虫に向かってレーザーを放つ。レーザーは実々美には届かず、虫達の命を消費して防がれる。

焼けた虫達がボロボロと地面に落ちてくる。

 

「清蘭!」

「あいよ!」

 

清蘭が銃を構え、虫のガードの向こうの実々美を狙い撃つ。

だが実々美は弾丸を避け、指で蝉達に指示を出す。

蝉は私達を取り囲み、一斉に鳴き出す。

 

「【伏兵『絶叫地獄』】!」

「うっ……!」

「聖!」

 

蝉の鳴き声は共鳴し合い、私達の体を貫く。清蘭はすかさず耳栓をして防いだが、私はあまりの音量に膝をつく。

清蘭が何かを叫びながら蝉を撃っている。だが蝉は撃ち落とされればすぐに新しい蝉が補充される。

私は清蘭の服を引っ張り、こちらを向かせる。

 

「……! ……!」

 

何かを言っているが、蝉の鳴き声で聞こえない。

私は気が飛びそうな状態で、口を動かし清蘭に伝える。

清蘭は頷き、異次元からフラッシュバンを取り出した。

 

「……!」

 

ピンを抜き掲げると、光と音を発しフラッシュバンは爆発した。

蝉達は音量と光に驚き地面にバタバタと落ちる。

囲んでいた蝉が晴れると、私に向かって蛇が向かってきていた。

 

「っ!?」

 

清蘭を抱えて避けると、蛇はそのままの勢いを保ったまま紅魔館を囲む虫達の群れを食っていく。

魔法で鼓膜を再生しつつ、周囲を観察する。紅魔館の虫達に沿って重力に逆らいながら、二匹の巨大な蛇が虫達を食べている。

実々美は私達には気づかず、蛇に向かう蝉達に指示を出している。

 

「清蘭!」

「その綺麗な顔撃ち抜いてやるよ! 【凶弾『スピードストライク』】!」

 

清蘭が背中に背負ったスナイパーライフルを構え、実々美に向かって弾幕を放つ。

 

「おっと! 危ない危ない!」

「同士リグル!」

 

リグルが虫の大群を引き連れ、弾丸を実々美から逸らす。

清蘭は舌打ちをし、次の弾を装填する。

その隙を狙って清蘭に向かう虫を、慈悲の心を持って叩き落とす。

 

「同士よ、あの蛇はなんだ?」

「……わからん! 面倒だ。同士リグルよ、隙を見て外に出ろ!」

 

リグルと実々美が話している。

リグルの相手をしていたはずのレミリア達を探すと、紅魔館中に入ろうとする虫達を対処していた。

 

「忘れてんな!」

 

清蘭がマシンガンに持ち替え、二人に向かって乱射する。しかし二人の虫妖怪は虫の大群に潜り込んだ。

その虫の大群を突き抜け、魔力を纏ったお札が清蘭に向かって飛んでくる。

 

「危ない!」

 

お札を手刀で切り落とすと、清蘭はお札が飛んで来た場所に向かって弾丸を放った。

 

「虫に隠れたせいで姿が見えない!」

「落ち着いてください、私が必ず守りますから」

「それなら魔力探知で狙撃できる!」

 

清蘭はゴーグルを取り出し装着し、マシンガンを構える。

虫の大群の一部に狙いを定め、弾丸を次々と放つ。

 

「手応えアリだ!」

「流石です!」

 

清蘭がガッツポーズをとった瞬間、巨大な蛇が虫の壁を突き破り突進してくる。

その蛇に拳を振り落とし、地面に叩きつける。

蛇が通ったせいで虫の壁には大穴が空き、その穴にリグルが飛び込む。実々美が大穴に向かって指示を出すと、虫達がその穴を塞いだ。

 

「これで一安心だ! さぁ続きをやろうか!」

「少し行ってきます!」

 

虫の動きが鈍っていたのを見逃さず、地面を蹴って一瞬で実々美に向かって蹴りを繰り出す。

だが蝉の大群が私の蹴りを受け止める。

 

「……やはり! 蝉以外の指令が遅い!」

「もっと早く動け虫共!」

 

実々美が怒鳴り散らすと蝉以外の虫達が私を引き剥がそうと纏わり付く。

 

「【『ブラフマーの瞳』】!」

「クソ! 役に立たない!」

 

スペルカードを発動し虫を一掃する。

実々美は蝉に囲まれながら私から離れようとするが、私も逃すほど甘くはない。ピッタリと並走して実々美を囲む蝉を払い落としていく。

その瞬間、体の動きがビタリと止まる。

蝉達は今がチャンスと言わんばかりに私にまとわりつき、鳴き声を上げ体内を破壊してくる。

 

「このっ! 清蘭、虫の向こう側です!」

「分かった!」

 

体を捩り蝉を吹き飛ばす。それと同時に清蘭が虫の向こう側の存在に弾を放つ。

急いで逃げる実々美を追いかけるが、実々美は清蘭に向かって方向転換する。

 

「このまま行くぞ!」

 

清蘭が叫び、迫る実々美を無視し虫の向こう側に狙いを定める。

私の体がまた止まる。力を振り絞り、清蘭に向かう実々美の前に立ち塞がる。

 

「二人ともぶち抜いてやる!」

「【『スターソードの護法』】!」

 

魔力で作り出した独鈷杵に魔力を込め振るう。実々美には避けられたが、蝉の大群は真っ二つに切り裂かれる。

清蘭は虫の向こう側に狙いを定め、引き金に指をかける。

 

「……鷹は撃ち抜く」

 

小さな一言と共に鋭い弾丸が放たれる。虫の壁を撃ち抜き、弾丸は見えなくなった。

清蘭は静かに笑みを浮かべる。

 

「この国じゃ狙撃の前に祈るって聞いたよ」

「百点満点です」

 

蝉達をほとんど失った実々美は周囲を見回し、焦った様子を見せる。

残った少しの蝉を集め、自分の近くに寄せる。

 

「クソ……クソ! こんなはずじゃない! 私が負けるはずがない! 同士リグル、私を助けろ!」

 

清蘭は実々美を無視し、虫の壁の向こう側を狙撃し続ける。

 

「どうやらこっちには簡単には来れない様だな!」

「そのままお願いします、私は実々美と決着をつけます」

「ヒィ! 来るな!」

 

実々美は飛び上がり、大穴があった場所に向かって飛んでいく。

槍を取り出し私に投げつけるが、それを受け止め投げ返す。

実々美は頭を抱えて槍を避ける。そんな実々美の胸ぐらを掴み、拳を握る。

 

「うわぁぁぁぁぁ!」

 

実々美が弾幕を放とうとしたが、その弾幕を清蘭が撃ち抜く。

 

「チャンスは与えました。それでも悪事を働き続ける貴方には罰が与えられるべきです!」

「同士リグル! 同士ィッ! ミズチィ! 誰でもいいから私を助けろぉ!」

「南無三!」

 

魔法を使い強化した拳を、実々美に打ち込む。

その瞬間紅魔館を囲む虫達が真っ二つに割れた。

実々美は衝撃に耐えられなかったのか塵となってバラバラになり、虫の壁の向こう側にいたリグルも遠くで地上に向かって落ちていく。

 

「ふぅ」

「聖! 大丈夫か?」

「えぇ、蝉にやられた傷は深くありませんから」

「よかった……うん?」

 

清蘭が目を細めて紅魔館の門に向かって歩いていく。

紅魔館の門の向こうには何故か、妖怪の山の巫女東風谷早苗と鴉天狗の姫海棠はたてがいた。

 

「あらあら、誰かと思えば山の巫女さんでしたか」

「うわぁ、あんまり見たくない顔だな」

「そういうお二人こそ、どうしてこんな所に?」

「こんな所とは心外ね。私の紅魔館に文句でもあるのかしら」

 

メイドの十六夜咲夜に日傘を持たせ、レミリアスカーレットが不満げに門までやってくる。

レミリアは塀に引っかかって気絶しているリグルを見ると、不愉快そうに眉を顰めた。

 

「何があったんですか? さっきの虫は?」

「この二人がやってきて、霧を出して日を遮れって」

「それで急にレミリアさん達との戦いが始まって」

「倒したと思ったら今度は虫がやって来て」

「……それで今に至ると?」

 

早苗の問いに、三人で首を縦に振る。

早苗とはたても戦っていたのか、身体中傷まみれだ。

すると早苗は目を細めて清蘭の背中に背負われている銃を睨む。

 

「もしかしてさっき撃って来たのあなたですか!?」

「あん? もしかして弾幕撃って来た奴か? てっきり敵だと思ってたが……」

「退治です退治! 巫女に対する暴力罪で退治です!」

「は〜、やっぱり敵で間違いない様だなぁ!?」

「コラ、お止めなさい」

 

鋭いチョップを清蘭の頭に入れる。

清蘭はウサ耳を萎びさせながら、頭を押さえて蹲る。

 

「いくら恩人とは言え、手は出すなよ!」

「いいえ、交戦的な振る舞いは許さないと言ったでしょう。それに今回は私達にも非があります、一緒に謝りましょう」

「……すいませんでしたぁ」

 

清蘭だけが頭を下げ、その様子をはたてが写真に収める。

 

「一緒にって言ったよね!?」

「でも私は何もやってないなって思って……」

「意味がわからん! どうにかしてくれ!」

 

清蘭が叫んだ瞬間、背筋に嫌な物が走る。

その場にいた全員が感じたようで、一斉に周囲を警戒する。

霧の向こうを挟んだ向こう側、人里とは逆方向。魔法の森手前の空間に、巨大な人影が現れる。

 

『いやぁご苦労ご苦労。さすがは幻想郷、想像よりも早く現れる事が出来ましたわ』

 

紫の髪を縦巻きにし、その髪の上からは龍の角が生えている。その人物は誰かと会話する様に少し下を見ている。

 

『ご機嫌よう魔法使い。それと博麗の巫女。それから幻想郷の全ての生命よ! (わたくし)の名前は『楼山閣(ろうざんかく) ミズチ』、この幻想郷をこれから支配する女王ですわ』

「幻想郷を支配……? というか霊夢さんあそこら辺にいるんですね」

『……ご名答ですわ。さすがは博麗の巫女。飲み込みが早い事で感心ですわ』

 

ミズチは高笑いし、尚も足元にいるであろう霊夢と会話を続ける。

そんなミズチの足元から突然、黒い塊が波の様に湧いて出る。

 

『ご苦労実々美、約束通り幻想郷の下半分は差し上げますわ』

「あの数の蝉妖怪がいたのか? つまり私達が今倒したのは一匹に過ぎないって? やってられるかよ」

 

清蘭が口をこぼし、大袈裟にリアクションを取る。

私は上空から降り注ぐ太陽の光に目を細めつつ、ミズチを見る。

さっきの実々美が助けを求めていたのは、あの人物らしい。

 

『ですが邪魔者がいては支配も出来ません。屈服させ、支配しなければ真の目的達成とは言えませんね』

 

蝉の妖怪達は幻想郷の空を埋め尽くし、太陽を遮り渦を巻いて旋回する。

太陽が遮られ、周囲の気温が下がる。自分の力の制御が効くようなった感覚がある。

 

『ですが(わたくし)、争い事は嫌いでして。……なので降伏する時間をあげましょう』

 

ミズチは懐から時計を取り出し、足元にいるであろう霊夢に向ける。

ここからでは遠く、何も見えない。

 

「あ、撮れた」

 

はたてがシャッターを切ると、巨大な時計を見る霊夢の後ろ姿の写真が画面に表示される。

みんなでそれを覗き込む。

 

『明日の昼、昼食をとり終わった14時ちょうど。その時までには幻想郷の支配権をに開け渡せる様にしておいてくださいまし。……おほほほほ! 拒否するならば更に気温を上げ、この地を焼き尽くす事もやむなしですわ! よくお考えなさってくださいまし! お〜っほっほっほっほっ!』

 

高笑いをするだけして、楼山閣ろうざんかくミズチは跡形もなく消え去った。

 

「異変の主犯様直々に顔出して宣戦布告とはいい度胸ね。咲夜戦争の準備をしなさい!」

「いえ、さっきの虫の襲撃で食糧庫が食い荒らされました。武器弾薬も木製の物は虫に食われ、紅魔館内に残った虫の駆除に従者総出で駆り出されております。パチュリー様は紅魔館の魔力障壁の再構築と、虫の迎撃で魔力切れと喘息の発作を同時に」

「分かったわよ! ……チッ、とにかく残ってるタスクを片してきなさい」

「かしこまりました」

 

レミリアは傘を咲夜からもぎ取ると、咲夜は一瞬で姿を消した。

レミリアは大きくため息をつき、私達の顔を見上げる。

 

「あんた達はどうするのよ」

「異変解決の為に戦います! きっと霊夢さんもそう言います!」

「私も命蓮寺の皆や、里の信者。そして幻想郷の為に」

「……異変解決までが命令なので」

「私も異変解決しなきゃ、里でやっていけないからね」

「あっそう……まぁ私もあんなに日が強いと鬱陶しいから、早めに解決してちょうだいね」

 

レミリアはそう言い残し、紅魔館に向かって歩いていく。

その後ろ姿に亀裂が入り、空間を割ってスキマが出現し慌てた様子の八雲紫が顔を出す。

そして早苗の姿を見て安心した後、私の姿を見て困惑した表情を浮かべる。

 

「早苗……と命蓮寺の?」

「あらどうも、ご無沙汰しております」

「……それに玉兎?」

「どーも」

「早苗、この人達は?」

「わかんないです。何でこんな所に?」

「異変解決の為、霧で空を覆おうと……」

「異変解決の協力者? なら助かるわ、一緒に来てちょうだい」

 

紫はスキマを大きめに拡張し、私達を中に誘う。

私達は四人で顔を見合わせ、早苗とはたてはスキマに入る。

私はまた上空に輝く太陽を見上げ、スキマの中に入った。

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