東方狂奏夏【~Phantasy “Hot” Orchestra~】   作:トカゲの妖怪

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決戦 その二 霊夢&魔理沙

意気揚々と地上を離れ、実々美の集団に突っ込む。

実々美達はぶつかる事を恐れる様に道を開けるが、ある程度進めば周囲を完全に実々美達に包囲されていた。

 

「魔理沙!」

「いるぜ!」

 

蝉の鳴き声が何重にも響く空間で、すぐ隣から魔理沙の声が聞こえる。

しかし他の奴らの姿は見えない、完全に分断された。

実々美達は私達を完全に包囲したまま蠢き、空間自体が揺れ動いている様な錯覚に陥る。

 

「ジジジジジ! 我々に包囲された時点で死に方は二つ。大爆音で身体中を破壊されるか、自ら首を掻っ切って死ぬかだ!」

「ふん。随分と偉そうね! 地下道であった奴はピーピー弱音吐いてたくせに!」

「ッ! 我らが同士の仇、今ここで討ってやる!」

 

実々美達の一部が壁から吐き出され、数十体の実々美が私達に向かって弾幕を飛ばす。

私は一部を結界でかき消しつつ、針を撃って反撃に出る。

実々美は避けようともせず針を受け、そのまま力尽き落下する。その代わりにまた壁から新たな実々美が飛び出す。

 

「全員倒さなきゃ抜けられないか!」

「それだけじゃねぇぞ霊夢!」

 

魔理沙の方を見ると、箒にしがみついた実々美をレーザーで撃ち抜いている。

しかしレーザーを食らっても実々美は離れず、大声をあげ体を光らせる。

次の瞬間、箒にしがみついていた実々美が大爆発を起こす。魔理沙は瞬時に箒を乗り捨て、背中の鞄から新たな箒を取り出し着地する。

 

「前戦った奴よりも強いし、自爆までしやがる!」

「魔法使い、貴様は箒がなくなると飛べなくなる事を知っているぞ。昨日の戦いで見させてもらったからな」

「その上ストーカー癖まで持ってやがる!」

「情報戦を制したと言ってもらおうかな!」

 

実々美達は編隊を組み、私の周囲から同時に攻撃を仕掛けてくる。

結界で身を固めつつ、一匹一匹に弾幕を浴びせる。しかし実々美達は被弾する直前で囮弾幕をばら撒き、私の弾幕の誘導を逸らす。

 

「今までの戦い方は通用しないってわけね」

「【恋符『マスタースパーク』】!」

 

魔理沙が八卦炉を構え、実々美の壁に向かってマスタースパークを放つ。

七色の光は実々美達を蹴散らすが、何百層にも重なった実々美の壁を打ち抜けずに光が散る。

 

「クソ! どこもかしこも敵まみれだ!」

 

魔理沙は八卦炉を冷ましながら突進してくる実々美を避ける。

まるで気紛れの様に放たれる弾幕によってルートを絞られ、その少ないルートの先では実々美達が待ち構えている。

撃っても避けられ、当たっても決定打にならない。運よく撃ち落とせたとしても、次の実々美が投入される。

魔理沙の姿も時々見えるくらいで、まるで無限地獄を彷徨っている気分だ。

 

「っ!」

 

体に弾幕が擦れる。弾幕と言えど高密度のエネルギー、当たれば痛みもある。

痛みを食いしばり、迫る弾幕を避け続ける。

 

「ジジジジ! 我々に手も足も出ない姿を見よ!」

「我々こそが真の王だ! 我々こそが天下蝉だ!」

「スペカを発動するタイミングも、それで打破するビジョンも浮かばない!」

「霊夢!」

 

弾幕の隙間を抜け、魔理沙が私の腕を掴む。

私を箒に乗せ、八卦炉を箒の後ろに取り付ける。

 

「強行突破する! 守りは任せたぜ!」

「分かったわ!」

「【彗星『ブレイジングスター』】!」

 

魔理沙の箒の先端に尖る形に結界を張る。

魔理沙の箒は急加速し、実々美達の壁にぶつかる。結界にぶつかった実々美達は吹き飛ばされ、私達は壁の中を突き進む。

 

「逃すな! 噛み潰せ!」

 

実々美の声と共に、上下の実々美がゆっくりと迫ってくる。

正面の実々美達はお互いをがっちりと掴み、防御を固める。魔理沙の箒の勢いも落ち、八卦炉から火が上がる。

 

「クソ! オーバーヒートだ!」

 

まるで歯の様に実々美達が迫る。私は魔理沙と燃える箒を引っ掴み、今来た場所を引き返す。

数百メートルは進んだはずなのに、戻るのには時間がかからなかった。

 

「あれ……?」

 

振り向けばすぐ、さっき実々美達と戦闘した空間だった。

頭が混乱する。

さっきのミズチの発言の通り、暑さで思考が鈍っているのかも知れない。

言い様のない不安に襲われる。

 

「霊夢!」

 

魔理沙がレーザーを下に放つ。私に襲い掛かろうとしていた実々美が焼かれ、落下していく。

 

「霊夢しっかりしろ! まだまだ来るぞ!」

「……私は正常?」

「あぁ!? 知るかよ!」

 

実々美達で構築された壁から、巨大な実々美の顔が浮かび上がる。

私達を見下ろし、巨大な実々美はニヤリと笑う。

 

「これは……夢?」

「【爆音『インファーナルサイレン』】!」

「霊夢!」

 

巨大な実々美が口を開け、高音の音波を吐き出す。

空気を揺らし鼓膜を揺らし、ゆっくりと音波は迫ってくる。

魔理沙に引っ張られ音波を回避するが、耳をやられたのか意識が遠のく。

急に全ての音が遮断される。

 

『霊夢! 聞こえるか?』

「魔理沙?」

 

私を抱き抱える魔理沙の顔を見る。

ほっとした様な顔をした魔理沙は、いつの間にか耳当ての様なものをつけている。

 

『通信機能付き遮音ヘッドホンだ。これで少しはやりやすくなるぜ』

「ヘッドホン……?」

『昨日アリスに頼んで作るの手伝ってもらったんだ。これで私とはいつでも話せるぜ』

「魔理沙……耳が痛くて頭がぼーっとするの、どうしたら……」

『あんだけの音をモロに聞けばそうなるだろ。時間が経てば改善する!』

 

巨大な実々美の顔は私達に狙いを定め、また大きく口を開く。

おまけに背後からは実々美達が弾幕を放ちながら迫っている。

私は針を放つが、先頭の数匹が倒しただけで実々美達は止まらない。

 

『霊夢』

 

魔理沙の声が聞こえ振り向くと、魔理沙の顔が迫っていた。

そしてそのまま魔理沙は私に接吻をする。そして口に含んだ液体を私の喉に流し込む。

体の奥底に炎がついた様に体温が上昇し、力がみなぎってくる。ぼやけた頭はさらにぼやけ、不安が一気に消し飛ぶ。

 

「何すんのよ!」

『鬼の酒を素にしたポーションだ! 少しはシャキッとしろ、博麗の巫女!』

「バーカ!」

 

口元を拭い、お札を実々美達に放つ。お札が連鎖爆発し、実々美達の姿が見えなくなる。

だが私には見える。魔力の流れがハッキリと。

 

「【夢符『封魔陣』】!」

 

魔力の流れで実々美達を捉え、スペルカードで一掃する。背後で巨大な実々美が音波を放つが、魔力の塊で整形された音波など見ずとも避けられる。

音波の上を通り、天に向かって体を晒す。実々美達の魔力の流れが手に取るように理解できる。

 

「そこ!」

「ぎゃ!」

 

巨大な実々美の顔の眉間に針を放つ。短な叫び声が聞こえると同時に、巨大な実々美の顔が崩れ無数の実々美に分裂する。

頭に針の刺さった実々美が真っ逆さまに落下する。

 

「統率役がいたのね。つまりこの集団飛行にもいるはず!」

『霊夢、こっちは見つけたぞ!』

 

魔理沙が叫ぶと同時に、右側の実々美の壁が崩れる。統率を失い、実々美達は互いにぶつかり合いながらこちらに向かってくる。

 

「【神技『八方鬼縛陣』】!」

「ぐゃ!」

「潰れう!」

「イギー!」

 

結界を張ると実々美達は結界にぶつかりお互いを押し潰され、次々と爆発する。

私は魔力の流れを探り、壁を構成する実々美達の中から統率役を探す。

 

「お前だ!」

「え、バレた!?」

 

蝉の大合唱を潜り抜け、統率役の実々美を真っ二つにする。一瞬で壁が崩れるが、そのすぐ後ろにも同じ様に実々美の壁が広がっている。

それに崩れた壁を構成していた実々美達は統率を失い、ほとんどが右往左往と規則性もなく飛び回る。

互い同士がぶつかると大爆発を起こし、それに巻き込まれた実々美も大爆発を起こす。

 

「邪魔!」

『霊夢!』

 

私が弾幕を実々美に放った瞬間、魔理沙がその実々美の奥に見える。

弾が実々美を撃ち抜くと、実々美の体が光り輝く。

何かが私の足にしがみつき、ヘッドホンを無理やり引き剥がす。足元を見ると、頭に針の刺さった実々美が腰にしがみ付いていた。

 

「イッショ、イッショ」

「っ!」

 

爆音と共に視界が光で塞がる。

熱が体を焼き、私は咄嗟に身を縮める事しかできない。

 

「【独楽『コマ犬回し』】!」

「【咒符『魔彩光の上海人形』】!」

 

私の目の前にふわふわの物体が現れ、回転して爆発をかき消す。

周囲に迫る実々美達を、小さな上海人形が次々と撃ち落としていく。

 

「霊夢さん! 大丈夫ですか!」

「あうん! 神社はどうしたの!?」

「狛犬は二体で一つ、昨日散歩に行ってやがった罰で任せて来ました!」

「それにこの人形は?」

「霊夢! 撃つ時は周りをよく確認しろ!」

 

魔理沙が上海人形にぶらさがりながらやってくる。服の所々に焦げ跡がついている。

 

「魔理沙! それにアリスも!」

「はぁ……昨日手伝うって言ったのにどうして断ったのかしら。本当に来なかったら死んでたわよ?」

「悪い悪い、おかげで助かったぜ」

「あとこれ注文の品よ」

 

魔理沙は新しい箒をアリスから受け取り、その上に跨る。

金属で出来ているのか、光沢が少し眩しい。

 

「いい出来だ! これならもっと速度が出せる!」

「霊夢さん、私達でここを請け負います、霊夢さんは黒幕の元に!」

 

あうんの周りを上海人形が集い、私に向けてガッツポーズを見せる。

アリスは気怠そうだが、人形達で丸わかりだ。

 

「霊夢! 黒幕がどこにいるか分かるか?」

 

周囲を見回す。鬼の酒で強化された魔力感知でミズチを探すが、どこにも姿が見えない。

四方八方を見回し顔を空に上げる。

 

「うわっ!」

 

思わず目を塞ぐ。大きすぎる魔力が、上空で光輝いていた。

その中にミズチの魔力も感知した。

 

「ミズチは上! この更に上にいる!」

「よっし! 後ろに乗れ!」

 

魔理沙に手を引かれ、鉄の箒に乗る。

小さなサドルが取り付けられており、お尻が冷えない親切設計だ。

 

「しっかり捕まってろよ! 【擬似・ブレイジングスター】!」

 

魔理沙の腰に手を回す。箒から何かが動く音が聞こえると、箒の後方からマスタースパークが放たれる。

箒はグングンと上昇し、実々美達に近づいていく。

 

「……! 【針符『月卿を封じる針』】!」

 

天井の実々美達の統率役を針で撃ち抜く。一瞬で実々美で出来た天井が崩れ、二層目に突入する。

一層目が邪魔で私達に気づかなかったのか、次々と実々美達を蹴散らしながら上昇を続ける。

十層を超えてしばらく登った先、実々美達が姿を消す。

代わりに雲一つない青空が、無限に広がっていた。

 

「あらあら、一番乗りですわね。おめでとうございますわ」

 

私よりも少し大きいサイズのミズチは拍手をしながら、ゆっくりと近づいてくる。

 

「お前が楼山閣ミズチ!」

「えぇ、これが本当の初めましてですわ。博麗霊夢、霧雨魔理沙」

「お前を倒してこの異変を終わらせる!」

「んで報酬をいただく!」

「ふふ、元気のいい事で。お相手して差し上げますわ、この私直々に!」

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