東方狂奏夏【~Phantasy “Hot” Orchestra~】   作:トカゲの妖怪

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決着 博麗の巫女と普通の魔法使いの異変解決譚

ミズチの放つ弾幕が私達の進路を塞ぐ。

魔理沙が一瞬私に目で合図を送り、八卦炉を取り出し魔力を充填する。

私は魔理沙の意図を察し、素早く印を結ぶ。

 

「【結界『拡散結界』】!」

「【恋符『マスタースパーク』】!」

 

結界を正面に展開し弾幕を掻き消し、一瞬で結界を消滅させる。

弾幕の向こう側にミズチを捉えた魔理沙が角度を微調整し、マスタースパークを放つ。

虹色の魔砲はミズチを中心に捉え、空気すらも焼き尽くす。

 

「あっつ!」

 

魔理沙が魔砲を放ち終えた八卦炉を放り上げ、手を水筒の水で冷やす。

八卦炉の砲身からは火が出ており、全体的に赤熱している。

 

「いくら魔力炉を箒に積んでいても、連発は無理か……!」

「魔理沙!」

 

灼けた空気のその向こうで、蜃気楼に包まれたミズチがこちらを睨む。

 

「加護なしでここまでやるとは、予想以上ですわね……!」

「さっきから加護加護って、昨日話に出た夏の加護ってやつ?」

「夏の加護……? あぁなるほど、そう解釈したのですね。当たらずとも遠からずですわね」

「いいや、それだとやっぱり腑に落ちないぜ。お空は夏に関係あるのか?」

「そうね、色々と腑に落ちない事だらけよ。だからここでミズチを倒して、洗いざらい吐かせる必要があるわね」

「やれるものならやってごらんなさいな! 【冷符……っ!」

 

スペルカードを発動しようとしたミズチの背後から、先ほど放っておいたお札が直撃する。

ミズチは焦った様に周囲を見渡す。

既に私達の周囲には私のお札や弾幕が放たれており、私の合図一つでミズチに向かっていく。さらに魔理沙も自立型の砲身を放っており、全方位からミズチを狙っているのが魔力で分かる。

ミズチが動きを止めた時点で、既に積んでいる。

 

「色々聞きたいことはあるけれど、まずはこの異変は何のために起こしたのかしら?」

「幻想郷を手に入れる為ですわ。こんな素敵な場所は他にありませんもの」

「そう、紫が聞いたら喜びそうね。それでどうやって結界を超えてきたのかしら?」

「外の世界で一度自分を消滅させて、蜃気楼として入り込み復活しましたわ。外気までは大結界で防げない様でしたので、侵入は簡単でしたわ」

「なるほどね。通りで検知出来なかったわけだわ」

「おい、私からも一ついいか? お前は結局何なんだ? 神様とか龍とか妖怪とか色々言われて混乱するんだ」

 

魔理沙の問いにミズチは小さく頷き、静かに頭を下げた。

 

「私の名前は楼山閣ミズチ。神の力を持つ、蜃気楼の龍ですわ」

「……って事は霊夢の言ってた神云々は間違いか?」

「……いや、大体分かったわ。誰が糸を引いているかも、おそらくね」

 

私は一旦頭の中に浮かんだ推論を封印し、ミズチに向かってお祓い棒を向ける。

 

「どちらにせよコイツを倒せば異変は終わる。それは間違いないわ」

「やれるものなら、やってごらんなさい……!」

「ッ! 霊夢外だ!」

 

魔理沙が叫ぶと同時に、私達を取り囲む弾幕の包囲が次々と消し飛ぶ。

爆発の合間から、実々美達が外から弾幕の包囲を崩しているのが見える。

魔理沙の自立砲身も、私の弾幕も一瞬で消えてなくなる。

 

「遅かったですわね! 空蝉、後は任せましたわよ!」

 

ミズチは実々美に呼びかける。

すると、一体の実々美がゆっくりと降下してミズチの前に立ちはだかった。

 

「何ですの? これは……?」

 

ミズチは何かの紙を手渡され、それに目を通している。

私はその背中に弾幕を放つが、実々美達が身を挺してミズチを守る。

 

「霊夢! クールタイムは五秒だ!」

「わかったわ!」

 

私は魔理沙の周囲に簡単な結界を張り、周囲の実々美達に向けて弾幕を放つ。

どいつもこいつも避けようともせず、正面から弾を食らい消滅する。

 

「上がったぜ! 【恋符『マスタースパーク』】!」

 

魔理沙の声と共に、ミズチとの直線上から離脱する。

魔理沙は本日何度目かの掛け声と共に、八卦炉からマスタースパークを放った。

ミズチの背中に向かって飛ぶ虹の砲は、その間に大量に割り込む実々美達に防がれる。

しかし実々美達もそれほど数がいるわけではない。実々美の壁はどんどんと数を減らし、ミズチへと虹色の魔砲は迫っていく。

 

「クソッ! 虫風情が舐めやがりましてッ!」

 

ミズチは激昂し、持っていた紙を破り捨てた。そして振り向くと同時に帯に扮していた尻尾を解き、ダラリと巨大な尻尾を垂らす。

静かに眠っていた尻尾の鱗は逆立ち、まるで刃物の様にギラついている。

 

「本気を出しますわ! 全力を出し切ってこその闘争ですわ!」

「な、なんだコイツ急にやる気出したぞ! 気持ち悪い!」

「この蝉の妖怪達明らかに質が低い。きっと見限られたのね」

「レディに対して失礼すぎるんじゃありませんか!」

 

ミズチは尻尾を振り回し、周囲の実々美達を切り刻む。

 

「こんないてもいなくても変わらない奴ら必要ありませんわ! さぁ、名乗りをあげて掛かって来なさい!」

「……博麗霊夢」

「霧雨魔理沙! お前を倒して報酬はいただきだぜ!」

「勇敢で強者たる二人、相手にとって不足なしですわ!」

 

ミズチは大剣を構え、自分の背後に尻尾を立たせる。

 

「蜃気楼の作る幻想の中で朽ち果てなさいな! 【虚像『すばしっこいスカイフィッシュ』】!」

 

帯をとったせいで広がった着物の足元から、蜃気楼で出来た小さな魚が大量に放たれる。

周囲に展開したかと思うと、パターンを作り挟み込むかの様に突っ込んでくる。

 

「【夢符『退魔符乱舞』】!」

 

私が両サイドからやってくる魚に向かってスペルカードを放つ。

大量のお札が魚達と相殺し、出来た隙間に魔理沙が突っ込む。

 

「【星符『ドラゴンメテオ』】!」

「【幻砲『ドラゴン“エンドレスサマー”ブレス』】!」

 

魔理沙が隕石の様な弾幕を放つと同時に、ミズチが巨大な火炎を吐き出す。

弾幕が火炎を防いだ様に見えるが、早苗の話によればこれの本体は不可視のレーザー。魔理沙とミズチを結ぶ直線上に、数枚の小さな結界を張る。

 

「スペルカードと結界術の合わせ技……! まさしく神技ですわね!」

 

魔理沙の弾幕は不可視のレーザーによって真っ二つにされるが、私の結界で魔理沙への到達は阻止する。

ミズチはレーザーを止めると同時に大剣を担ぎ上げ、魔理沙に向かって突進する。

 

「お散りあそばせ! 異龍刀!」

「あぶねっ!」

 

ミズチは大剣を振り下ろす。

魔理沙は箒を頭上に構え、ミズチの大剣を受け止める。鋼鉄製の箒は火花を散らしながらも、ミズチの大剣を防ぐ。

 

「鋼鉄……いや魔力を練った金属ですわね!」

「離れろこの!」

 

魔理沙がミズチを蹴り飛ばす。

ミズチは体勢を一瞬で立て直し、蜃気楼を口から吐き出す。

 

「【龍符『ドラゴンテール』】!」

 

ミズチの背中に立つ尻尾が蜃気楼を纏い、何本にも分裂した様に見える。

空高く振り上げられた何本もの尻尾は、一瞬で私に向かって振り下ろされる。

 

「【光符『アースライトレイ』】!」

 

魔理沙が発光する弾幕を放つ。

弾幕から放たれた光は直線上に光の道を作り、私に向かって振り下ろされる尻尾を照らす。

蜃気楼の尻尾は光を通し、本体のある尻尾は光を遮る。一瞬で本物の尻尾を判断し、蜃気楼の尻尾の中を突っ切る。

 

「【霊符『夢想封印』】!」

 

カウンターとしてスペルカードを放ち、ミズチに向かって光弾が飛んでいく。

ミズチは大剣を振り、光弾を切り裂く。

だが私は、ミズチの視界が塞がった瞬間に光弾に隠れる様に針を投げる。

 

「ぐっ! ……二段構えの攻撃、学習しましたわ!」

 

ミズチは腕に刺さった針を引き抜きながら、満ちた様な笑みを浮かべた。

 

「魔理沙!」

「分かってる! 【恋風『スターライトタイフーン』】!」

「いつの間に背後に!?」

 

魔理沙の放った弾幕が背後からミズチを襲う。竜巻の様に回転する弾幕がミズチを一瞬で飲み込む。

 

「【霞符『古から続く無限の回廊』】!」

 

ミズチから弾幕が放たれ、魔理沙の弾幕が一瞬で打ち消される。

ミズチの弾幕は直角に何度も曲がり、迷路の様に周囲を覆った。

 

「やはり実践でしか得られない学び! 私が見た弾幕ごっこはもっと美しく!」

 

ミズチが声を上げた瞬間、迷路を構成する弾幕が動き出す。

 

「もっと煌びやかに!」

 

迷路の通路を抜ける私の正面から、色とりどりな大きな弾幕が迫る。

私は迷路の壁の弾が動くと同時に、隣の通路に転がり込む。

 

「そしてもっと巧妙に!」

 

壁の隙間から同じ通路に出てきた魔理沙と顔を合わせる。

周囲の弾幕が動き出し、私達を追い込む。

 

「【夢境『二重大結界』】!」

「【恋心『ダブルスパーク』】!」

「スペルカードに甘えましたわね!」

 

私と魔理沙が同時にスペルカードを放ち、ミズチの弾幕をかき消す。

消えた弾幕の隙間から、こちらに魔法陣を向けるミズチの姿が見えた。

 

「【『消えゆく摩天楼』】!」

「【夢符『封魔陣』】!」

 

魔力の消費も度外視で、全力の防御結界を張る。

直感だったが、次の瞬間にはその判断が正しかった事を理解した。

巨大な摩天楼が槍の様に具現化し、私達に向かって次々と放たれる。

 

「く……!」

「いい反応速度、ですが一手読み違いましたわね! スカイフィッシュ!」

 

透明化していたのか、周囲の空間に一瞬で蜃気楼の魚が現れる。

魚は私達に狙いを定めるが、一瞬で魔理沙の魔法で撃ち落とされる。

 

「一手、読み間違えたな?」

「それすらも織り込み済みですわ!」

 

ミズチは尻尾で蜃気楼の摩天楼を掴み、私達に向かって投げつける。

私の防御結界は、二つ目の摩天楼を受けると同時に砕け散る。

 

「最後の一本ですわ!」

「霊夢、時間を稼いでくれ!」

 

魔理沙は八卦炉からコードを引っ張り出し、箒に開いた小さな穴に連結させる作業を始める。

ミズチは巨大な摩天楼を蜃気楼で作り出し、魔力を込めて実体化させる。

そして振りかぶり、私達に向かって全力で投げつける。

 

「【宝具『陰陽鬼神玉』】!」

 

私は陰陽玉をあるだけ放ち、向かってくる摩天楼を削る。

摩天楼にぶつかった陰陽玉は弾かれつつも、摩天楼の速度を確実に落としている。

私は最後の陰陽玉を放ち、結界を正面に張った。

 

「魔力300%充填! 準備完了だ!」

 

魔理沙が虹色に輝く八卦炉を摩天楼に向ける。

 

「行くぜ! 【魔砲『ファイナルスパーク』】!」

 

摩天楼が結界にぶつかり突き破ると同時に、魔理沙の八卦炉から今までにない程のマスタースパークが放たれる。

私は素早く印を結び、弾かれた陰陽玉をミズチに向かって遠隔で放つ。

摩天楼は虹の砲に飲み込まれ、一瞬でミズチにまで到達する。

 

「【『太陽を輝かせる虹の輪』】!!!」

 

ミズチが正面に虹の輪っかを繰り出す。その中心にマスタースパークや陰陽玉が飲み込まれ、ただの魔力に分解される。

分解された魔力はミズチの背後に集まり、巨大な太陽の様に輝く球体に変形する。

 

「全てはこの一撃のための布石! 手に入らないのならば、幻想郷共々破壊してくれますわ!」

「霊夢! 行け!」

「当然!」

 

私はさっき結んだ印の効果を、遅延させて今発動する。

体が折り畳まれ、一つの点に吸い込まれる感覚に襲われる。

紫から教わった通りに道を辿り、天高く弾き上げられた陰陽玉にワープする。

 

「この幻想郷は私が守る! 【『夢想天生』】!」

 

ミズチは頭上の私に向かって巨大な球を発射する。

私の放った夢想天生はその球を貫き、ミズチに直撃した。

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