東方狂奏夏【~Phantasy “Hot” Orchestra~】   作:トカゲの妖怪

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聖&清蘭編EX 【空っぽの蝉妖怪】

あの異変解決から二日。

太陽はずっと幻想郷の直上に留まり続けている。

幻想郷の自主性を尊重し博麗の巫女が動くかと待っていたが、一向に異変が解決される様子はない。

 

「よし。清蘭、覚悟はいいですね」

「オッケー、任せろ」

 

時間にして早朝、私と清蘭は二人で異変解決に動き出した。

私には全て分かっている、あの太陽に全ての元凶がいるという事が。

地上から飛び上がり、一気に加速する。ミズチと戦った空域の少し上には、うっすらとしか認識出来ないが結界が張られている。

 

「結界が張られていますね……う〜ん」

「どうしたんだ?」

「ここより上に行きたいのですが、どうやら正しいルートを通らなければ行けない結界の様で……」

「正しいルートが分からないのか。こじ開けたり出来ないのか?」

「う〜ん不可能ではないでしょうが、もしかしたら()()()で幻想郷が滅んでしまうかもしれません」

「……なしだ。絶対になし! 正しいルートを探すべきだ!」

 

清蘭は慌てふためき、結界を探ってルートを探そうとしている。

だが、入り口にすら触れられていないところを見ると、結界術の知識があるわけではなさそうだ。

せめて巫女のどちらかを連れてくればよかった、と後悔していると、背後から蝉の羽音が耳に聞こえてくる。

 

「そこで止まれ」

「……残党、ですかね」

 

振り向くとそこには、透き通った髪を持った透明度の高い実々美がいた。

その後ろには、普通の実々美も数十人見える。

 

「なんだお前は」

「私の名は【空蝉(うつせみ)】。いわゆる油熊四天王の最後の一人にして、最初の蝉の妖怪だ」

「最初……?」

「今存在する実々美は全て私の劣化コピーだ。と言っても今の私も、オリジナルから意識だけを飛ばして幻想郷にやってきたコピーなのだがな。森の中に抜け殻が置いてあったおかげで、体を得る事ができたのだ」

 

空蝉は体を触りながら、長く透き通った髪を掻き上げる。

清蘭は空蝉に対して銃を構えるが、私が手で制する。

 

「それでその空蝉様が、一体何のご用でしょうか」

「要件は二つ。一つは抜け殻を作り出した実々美を知っているか? 恐らくそいつもオリジナルの私と同じく、髪が透けているはずだ」

「いえ、出会った事はありませんね。清蘭はどうですか?」

「いや、私もそんな奴は知らないね」

「そうか。なら二つ目の要件だ。今すぐここから立ち去れ」

 

空蝉は冷たく言い放ち、私達に槍を向ける。

清蘭は反射的に銃を構える。私も僧衣から腕を出し、呼吸を整える。

 

「それはできません。この先の人物に用があるので」

「……そうか。教えてやろう、【オオヒメ様】は言及の縛りを敷いていない」

「っ!? ……そうですか、それはよかったです」

「なぁなぁ、言及の縛りって何だ?」

 

清蘭が不思議そうな顔をして私に尋ねてくる。

 

「言及の縛りとは、いわば神様の名を好き勝手に使われないための防護策。神様が見ている事を知っている状態で神様の名を不用意に喋ったり、神様の思惑を考察したりする。すると、神様はお怒りになって天罰を下される。という縛りです」

「ふ〜ん、【XXX様】みたいな事か」

「え? 今なんて?」

「……まぁ。似た様なのは月にもあるって事」

 

清蘭は脂汗をダラダラとかきながら、口笛を吹いて誤魔化す。

私はあまり言及しない様に心に留め、空を見上げる。

 

「オオヒメ様……という事は、やはりあの声は天照大神なのですね」

「然り。私は普段は実々美達とは距離を置き、一人で生きている。そんな私の耳に、ミズチと四天王の蛮行が入ってきた」

「幻想郷侵攻ですか?」

「然り。目に余る蛮行、許されざる愚行。授かり有り余る力に溺れた愚か者共。故に生き残った実々美を引き連れ戦場を脱した。ミズチには書文を送った故、義理は通したつもりだ」

「そうですか。ですが、未だにあなたが私の事を止める理由がはっきりしませんね」

「失礼した。私は天照大神様に命を救われた恩がある。恩人の分体といえど、害されようとすれば止める。それが私の正義だ」

 

空蝉ははっきりと言い切ると、目で背後の実々美達に合図を送る。

すると実々美達は離れ、気をつけの姿勢をとった。

 

「オオヒメ様の元に行きたくば、私を倒せ。邪魔は入れさせん」

「なるほど、あなたの主張は分かりました。しかし、龍に誑かされ無邪気にも他人を害した事には償いが必要です。だから私が直接赴き、指導する必要がある。通してもらいましょう。この聖白蓮、容赦はしません」

「何だか分からんが、あいつを倒せばいいんだな。援護は任せろよ」

「良い目だ、二人纏めて掛かって来い。空っぽの私が相手をしてやる」

 

空蝉は後ろの実々美から投げ渡された槍を受け取り、両手に槍を構える。

清蘭はセーフティを外し、物は試しと発砲した。

銃声と共に、空蝉の姿が消えた。

 

「ど、どこ行った!?」

「未熟、いとも容易い」

 

一瞬で清蘭の背後に移動していた空蝉の槍を、反射的に掴む。

驚いた様にもう片方の槍を振り上げ、空蝉は私に振り下ろす。

 

「はっ!」

「っ! はははっ、掌底でこの槍を破壊するか! 見事見事!」

「いつの間に……!」

 

清蘭が振り向きざまに銃を撃つが、空蝉はあっさりと槍を手放し姿を消した。

 

「私は他の実々美とは違う。空っぽであり、何にでもなれる。身軽で、自由で、森羅万象だ」

「へ〜……聖の言ってた【悟り】ってやつ?」

「……まぁ近しいかもしれません、きちんと勉強できてて偉いですね!」

 

私は死角から槍での一撃を狙う空蝉の腕を掴む。

空蝉はぼーっとした表情のまま、口元だけを笑わせた。

 

「やはり見えているな! 見事な反応だ!」

「おしゃべりはそこまでです!」

 

空蝉を引っ張り腕の中に抱きしめる。そして空蝉の首に腕を巻き、力を込めて締め上げる。

空蝉は反射的に槍を手放し、首にかかった私の手を跳ね除けようとする。しかし、魔法で強化した私の裸絞めが解ける事は絶対にない。

 

「勝負はつきました。今降参して引くのなら、これ以上の追撃はしません」

「……この手は使いたくなかったんだがな」

 

空蝉がそう言葉を発した瞬間、全身の力が抜ける。

空がぐにゃりと曲がり、脳が液体になったかの様に頭が重くなる。

姿勢が制御できず、ふらりと地面に落ちる感覚に全身が陥った。

 

「聖!」

「……っは。今のは?」

 

私は次の瞬間、清蘭に抱えられ目を覚ました。

空蝉は捩れた頭を元に戻しながら、首をコキコキと鳴らす。

 

「一種の催眠術だ。だがこの技は好かん、どいつもこいつもくだらん芸事ばかり磨く。嘆かわしいぞ」

「聖、大丈夫か?」

「えぇ、今は大丈夫です」

 

だが私の推理が正しければ、空蝉は強力な敵である。

私は魔法を使い、自分の耳を塞ぐ。

 

「安心せよ。次に捕まったとしても使わぬ」

「それはありがたいですね」

「もう二度と捕まることはないがな」

「【凶弾『スピードストライク』】!」

 

清蘭が放った銃声と共に、また空蝉の姿が消えた。

その瞬間、清蘭が例のグラスをかけた。

 

「私には、お前の姿が見えるぞ! 【弾符『鷹は撃ち抜いた』】!」

 

清蘭は何もない空間を撃ち抜く。

弾が飛び、それに飛び込む様に空蝉が現れる。

 

「く……ははは! 未来視か!」

「ご名答! 月一番のメカニックが作り上げ、実用化に押し上げた未来視グラスのプロトタイプ! 破れるものなら破ってみろ!」

「いいだろう! その挑戦受けてたとう!」

 

また空蝉の姿が消える。

だが、清蘭には相手の姿が見えているかの様に冷静だった。

静かに周囲を見回し、銃を構えて弾を放つ。

 

「そこ!」

 

清蘭が放った弾丸は大きく広がり、全てが一点に集まる。

そしてその中心に、空蝉が現れた。

 

「【時雨一刀流奥義『時雨斬』】」

「な!? 切りやがった!」

「清蘭! 危ない!」

 

空蝉は刀を振り、弾幕を全て切り裂く。

切り裂かれた弾幕は制御が効かず、清蘭に向かう弾幕を叩き落とす。

 

「怪我は!?」

「無い……が、あの刀見覚えがあるぞ」

「あれは魔法の森で戦った、油法師の刀ですね」

 

やはりさっきから繰り返している姿を消す戦法、催眠術、そしてあの刀。

私の推理通りの様だ。

 

「清蘭、気を付けてください。空蝉は四天王の能力を全て使える様です」

「はは〜ん、なるほどな。ならやり易いな」

「何故だ?」

「教えてやるよ、コンパチキャラは大した事ないってことを! 【銃符『ルナティックガン』】!」

「清蘭待ちなさい!」

 

清蘭は私の静止も聞かず、空蝉に向かって弾幕を張る。

弾丸はウネウネと不規則な軌道を描き、空蝉を囲む。そしてその真正面から、清蘭が銃を撃ち込む。

 

「時雨流奥義……」

 

魔力の形で、空蝉が刀を納刀し居合切りの構えに入ったのを見る。

清蘭の背中で見えないが、私の危険を知らせる鐘は大音量で鳴り響いていた。

 

「許せ! 【天符『釈迦牟尼の五行山』】!」

 

私は狙いを定め、仏の掌を顕現させて振り下ろす。

掌は清蘭と空蝉のちょうど中間に振り下ろされ、二人を分断する。

 

「【『時雨切り』】!」

「うわっ!」

 

その瞬間、間に入った仏の掌が細切れになる。

清蘭は飛び退くように引き返し、何とか細切れにならずにこちらまで帰ってきた。

止まる事なく続く斬撃の雨は、周囲の弾幕までも見えない程に細断した。

そしてバラバラと細かくなって降り注ぐ仏の掌の雨の中、空蝉は静かに言葉を発する。

 

「どんな未来が見えた?」

「……何も見えなくなった」

「それは上々」

「清蘭、無茶は禁物です」

「あぁ、身に染みて分かったよ」

「一つ訂正をしよう。四天王の能力を全て使えるではない、奴らは私の能力を一つしか使えないのだ」

 

空蝉の背が、大きく膨らむ。

服を突き破り、新たな腕が二本生えて槍とナイフを構える。

元の右手には刀を、左手には巨大な拡声器の様な物を握っている。

 

「さぁ、ここからは本気で行くぞ」

「清蘭、一度退き」

 

声が出なくなる。私の首にはいつの間にかナイフが深々と突き刺さり、地面に向かって吹き飛ばされていた。

一瞬で解ける様に流れる景色の中、空蝉が私の胸の上に乗り拡声器を口に構える。

 

「【音響兵器『ローレライト』】!」

 

空蝉が大きく酸素を吸い込み、胸を膨らます。

私は一瞬で魔法の防御を耳に集中させた。だが、次の瞬間その防御は大音量の叫び声によって粉々に破壊された。

咄嗟に腕で耳を塞ぐが、衝撃に吹きとばされ地面に叩きつけられる。

 

「あ……が……!」

 

想像を絶する叫び声が、もう鳴っていないのに頭の中に反響し続けている。他の音は何も聞こえず、ただ顔の穴と言う穴から出血が止まらない。

震える手で魔人経巻を取り出し、乱雑に開く。

即座に魔力が充填され、急いで身体の修復にかかる。

 

「う流……」

「っ!?」

 

修復された耳に、背後から発せられた空蝉の声が聞こえた。

振り返る暇もなく、刀が鞘を擦る音が聞こえた。

 

「【弾符『ラビットシューティング』】!」

「チッ」

 

空から銃をぶっ放しながら、清蘭が空蝉目掛けて落下してくる。

大勢の崩れた空蝉は刀を納め弾幕の雨の中を走り抜ける。

 

「……じり! だ……か!」

 

清蘭が心配そうな顔をしながら尋ねてくるが、頭の中で反響する声に遮られよく聞こえない。それどころか、頭の中の声はどんどんと音量を上げ始めている。

 

「清蘭! フラッシュバンを二つお願いします!」

「……! ……!」

 

清蘭が何かを叫びながら、私に向かってフラッシュバンを二つ投げ渡す。

私は二つともピンを抜き、両方を自分の耳の中に突っ込んだ。

 

「空蝉ィ!」

 

両足に力を込め、魔力を探知して空蝉の居場所を割り出す。

その場所に向かい一直線で、地面や木々をぶち抜いて飛ぶ。

フラッシュバンの起爆までの猶予は三秒、私は一秒も経たずに空蝉の目の前にまでやってきた。

 

「っ!」

 

腕を伸ばし空蝉を掴もうとする。

だが、空蝉は四本の腕を巧みに使い私の腕の軌道を変えた。

私の腕は宙を掴み、そのままの勢いで空蝉に背中を向けてしまう。

背中に空蝉の殺意をビリビリと感じる。

何を向けられているかは分からない。槍かもしれないし、刀かもしれない。ナイフかもしれないし、拡声器かもしれない。

だが、そのどれも私が鍛錬し磨き上げた背中を突き破るイメージは存在しなかった。

 

「南無三!」

 

足で力強く地面を踏み締め、背中側に踏み出す。

私の背中に何か鋭いものが当たったが、恥かれる様にその感触は移動する。

空蝉には四本の腕を使って私の背中を止めようとするが、勢いは止まらない。

 

「そこ!」

 

感触的に背中に空蝉の体が触れた瞬間、足を軸に反転し空蝉の胸元を掴む。

更に、思い切り自分の頭を空蝉の頭に叩きつける。

 

「三秒!」

 

フラッシュバンが爆発し、目の中から強烈な光が見える。

もう何も聞こえない耳からは、脳を直接揺らす空気の振動だけが感じれた。

 

「ぐ……がぁ……! なんだ今のは……!」

 

優先して修復した耳から、空蝉の苦しむ声が聞こえる。

その声の方向に腕を伸ばし、何も見えない中空蝉を掴む。

 

「……捕まえました」

「な……! 何だ!?」

 

修復された目で、空蝉の姿を捉える。

空蝉は何が起こったか分かっていないのか、虚な目をギョロギョロと動かしている。

目も、耳も使い物にならなくなった空蝉の肩を抑え、その場に跪かせる。

 

「ぐっ……!?」

「……慈悲を与えましょう」

 

魔法を使い、空蝉の目と耳を修復する。

空蝉の瞳孔が縮まり、一瞬で瞳に光が宿る。

そして私の顔を見上げ、口元だけでニヤリと笑った。

 

「そうか、負けたのか」

「えぇ、残念ながら」

「だが目的は達成した、その状態でオオヒメ様の元に行くほど身の程知らずではないだろう」

 

空蝉の空っぽの目に、私の姿が反射する。

目も当てられない負傷。即座に表面だけを魔法でカバーする。

みてくれだけは良くなったが、中身はボロボロのスカスカだ。

 

「ふふ。あなたと同じですね」

「……その通り、この世は空虚。故に空っぽの私は生を謳歌するのだよ」

 

空蝉は背中から生えた腕を収納し、ゆっくりと立ち上がる。

すぐに実々美達が降下してきて、空蝉を両サイドから支える。

 

「聖! 大丈夫か!?」

「えぇ、見ての通りです」

 

私は頬に手を当てながら、心配そうな顔を向ける清蘭に微笑んだ。

だが清蘭は私の言葉になど全く耳を傾けず、掴みかかるように私の顔を両手で包み込む。

 

「めちゃくちゃ重症じゃん! なんで誤魔化すの!?」

「え……えっと……」

「魔力で隠してても分かるもんは分かるよ! まずは消毒、そしてすぐに永遠亭! 返事は!?」

「はい……わかりました」

 

私が魔力で隠した皮を清蘭は引き剥がし、異次元から治療道具を引っ張り出し私の傷を手当てする。

私はなされるがままにその場に跪き、清蘭の自由にさせる。

その時、空蝉を支える実々美が空を指差し空蝉に耳打ちする。

私も空を見上げると、霊夢と魔理沙が空高くに見える。

 

「そうか……だがもう余力は残っていない。放っておけ」

「私も手を貸す程の余力はありませんね。あとはこの幻想郷の自浄作用を信じましょうか……」

「動かないで! 手元狂ったら針で刺しちゃうよ!?」

「すいません……」

 

清蘭に怒られ、おとなしく顔を真っ直ぐに向ける。

清蘭は手際良く傷口を塞ぎ、小さな傷にも消毒を施す。

 

「オオヒメ様がどうなるかは分からんが、どちらにせよ私はこの幻想郷を出る。もう会う事はないだろう」

「そうですか、また気が向いたら遊びに来てくださいね。命蓮寺はいつでも誰でも歓迎しますよ」

「ふ」

 

空蝉は静かに笑うと、森の中に実々美達と消えていった。

 

「もう……聖は無茶し過ぎだよ」

「いえ、でも助けてくれてありがとうございます」

「もう二度と武器は貸さないからな! 絶対だ!」

 

清蘭はプリプリと怒りながら、私の手を引いて立ち上がる。

 

「ほら、永遠亭行くぞ!」

「……は〜い」

 

天高くに鎮座する太陽の中に消える二人を見つめながら、私は清蘭に手を引かれるまま歩く。

私が出ずとも幻想郷は守られる。これが自浄作用と言わず何というのか。

自分の心配性な部分は、少し直すべきかな。と心の中で反省した。




~その後~

「応急処置が優秀なのと、魔法でほぼ完治してるから私ができる事は大してないわね」
「ですから大丈夫と言ったのに……」

永遠亭の医者、八意永琳はライトをしまいながらそう言う。
清蘭は少しだけむくれた様子で、ベッドの上に座っている。

「にしてもまさかあなたがそんなに地上に入れ込むとはね」
「何すか……悪いって言うんですか!?」
「違うわよ。あなたって結構地上を忌避してたじゃない」
「う……うぅ……」
「まぁこの地上に対して好意を抱いてくれているのは素直に嬉しいわね」

永琳は清蘭の頭を撫でる。
しかし清蘭は居心地悪そうに頭から手を跳ね除け、私の後ろに隠れてしまった。

「あらあら、自称月一番の突撃兵さんが隠れるなんて珍しいものね」
「げ! 鈴仙!」

外の廊下を通った鈴仙が清蘭のお尻を叩く。
清蘭はムキになって鈴仙を追いかけて部屋を飛び出す。
微笑ましくその様子を見つめる。

「それで、今日は何の用? 滅多に医者にかからないあなたがここに来るのは、相当なことがあったのかしら?」
「……いえ、清蘭に連れてこられただけなので」
「あら、あなたは結構頑固だって患者達から聞くわよ? 大怪我おっても医者にかからないって」
「えぇ、魔法で何とかなるので」
「……なるほどね。やっと対等なお友達が出来たって事ね」
「……もしかしたらそうかもしれませんね」

廊下の外でわちゃわちゃと揉み合いになっている清蘭と鈴仙を、てゐが諌めている。
もう永遠亭に入院している者達はいない。異変は解決され、これ以上患者が出る事もない。
私は改めて異変が終わった事を実感しながら、窓から吹き込んでくる春の息吹を感じ取った。
~END~
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