東方狂奏夏【~Phantasy “Hot” Orchestra~】   作:トカゲの妖怪

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宴会

博麗神社の庭先に、またいつもの様に人が集まっていた。

今回の異変に関係あったものを招いた、細やかな八雲紫のお礼だ。

全て八雲紫の奢りであるという文言に、無関係の者もやって来ているが。

 

「ぷはぁ……異変解決の後に毎度こうやって祝勝会があればやる気も出るんだけどねぇ」

「んだよ霊夢は現金だなぁ! ガハハ」

「まったく……霊夢は幻想郷の巫女としてもっと自覚を持ってほしいわね」

 

お淑やかに酒を飲む紫に、盃を持った霊夢が飛びかかる。

それを見ながら魔理沙がゲラゲラと腹を抱えて笑い、その様子を見てアリスはお菓子を口に運ぶ。

 

「あら、洋菓子も合うわね」

「でしょ。紅魔館の食糧庫をせっかくだから整理してたら見つけたのよ」

「せっかくだから? 何かあったの?」

「アリス、お嬢様の好意を素直に受け取ったら?」

「それもそうね。魔理沙、これ美味しいから一緒に食べましょ」

 

アリスは洋菓子を少し小皿に取り、魔理沙の元に走っていく。

レミリアは残った洋菓子を恐る恐る齧る。

 

「そのお菓子、虫の卵ついてるわよ」

「ゲホォッ!?」

「嘘よ、レミィ」

「ゲホッ! マジでやめろ……!」

「ごめん」

「お嬢様〜お水で〜す」

「あら美鈴ありがとう……ってこれお酒じゃない!」

 

レミリア達紅魔館組のやりとりを遠巻きに見ながら、静かに酒を飲む者が二人いた。

神奈子は酒の瓶を片手に居心地悪そうに気によりかかり、諏訪子は料理の乗った小皿を片手に神奈子の隣に座っている。

 

「早苗が呼ばれるのなら分かるが、どうして私達が呼ばれるんだ……」

「まぁまぁ。聞けば紅魔館のは招待されてないらしいし、私達はただ酒飲んで気分良くなろうよ」

「そうは言ってもなぁ……」

「おや、獅子奮迅の大活躍だった割に随分と謙遜するのだな」

「飯綱丸」

「失礼するよ」

 

鴉天狗の集団を掻き分け、飯綱丸が神奈子達の目の前に座り込む。

そして巨大な盃に、どぷどぷと酒を注ぐ。

 

「今日は奢りだ、た〜んと飲んでくれ……まぁ私の奢りじゃないが」

「ふん。次は何を企んでいるんだ、飯綱丸?」

「あ〜神奈子が悪い顔になっちゃった、早苗に言いつけちゃお〜っと!」

「わあぁぁ! 今日はビジネスの話は無しだ飯綱丸!」

「ははは! 流石の山神でも早苗ちゃんには頭が上がらんか!」

「いや、そうじゃなくって……邪魔したくないんだ、あれを」

 

神奈子が早苗に気づかれない様に指を刺す。

指の先では早苗が数人の妖怪達に囲まれ、酒を飲んでいた。

 

「ガハハ! これで天狗も負けましたねぇ!」

「つ、強すぎでしょ……!」

「ぶぇ……」

「な、なんで……前飲んだ時は一杯で潰れてたのに……」

 

射命丸文も今まさに空になった盃を握ったまま、意識を失って倒れた。

周囲には空いた酒瓶がこれでもかと転がっており、誰が飲んだかわかる様に色付きの布が巻かれている。

はたては口元を拭いながら、まだ中身の入っている盃を傾ける。

 

「ははははは! 奇跡を使っているのでそう簡単には酔い潰れませんよ!」

「ズルじゃないですか!」

「ズルじゃないです! これが正常なんです〜!」

「なら私が挑戦しても問題ないな!」

「げっ」

 

はたての盃を奪い取り、勇義が早苗の隣に座り込む。

周囲で観戦していた天狗達は距離を取ったが、早苗が自分の盃に酒を並々と注いだ事で場は大盛りがりとなった。

その楽しそうな鴉天狗達に囲まれ、訳もわからずお空も一緒になって盛り上がっている。

そんな様子を呆れ顔で見るお燐の背中に、さとりが寄りかかる。

 

「楽しいですね、さとり様」

「私本当にここにいていいのかしら……」

「何言ってるんですか! さとり様の指揮のおかげで旧地獄の復興は順調、今日だってやる事全部終わらせて羽伸ばしにきてるんですから楽しみましょうよ!」

「でも……」

「何か悩み事ですか?」

 

そんなさとりの前に、聖白蓮が座り込む。

その手には料理の乗った小皿と、お茶が入ったコップが握られている。

 

「お酒を飲む気分じゃなければ、私と料理でも食べませんか?」

「……そうね。それなら少しもらおうかしら」

 

さとりは小皿を受け取り、お茶の入ったコップを受け取った。

 

「それにしても、命蓮寺の人達が宴会にやって来るとはね」

「あら、こう見えても常連なんですよ? うちは」

「あらそうなの? てっきり戒律や規則で禁止かと」

「お呼ばれになるならありがたくいただきますよ。まぁ個人的な修行の一環で、私は飲みませんが」

「へぇ……お弟子さん達は立派なのね」

 

さとりはサードアイで聖を見つめながら、静かにそう言った。

しかしすぐに目を開き、気まずそうに顔を背けた。

 

「あれだけ心の声がやかましいと……少し制御は必要かもしれませんね」

「……?」

 

聖は首を傾げる。

その背後。大きな木の向こう側では、命蓮寺のメンバーが目も当てられない酒の飲み方をしていた。

 

「ギャハハハハ!」

「脱げ脱げ〜〜〜! ヒューーー!」

「無礼講最高〜〜〜!」

「ぐが〜〜〜!」

「ご主人! これ美味いぞ!」

「おいおいナズーリン、それは地蔵じゃぞ!」

 

マミゾウがナズーリンを星の方向に誘導し、遠巻きにみんなの凶行を酒の肴にしている。

その隣では、管牧典が馬鹿にした目でその集団を見ていた。

 

「慣れない力仕事の報酬がチャチい安酒まみれの宴会じゃ納得が行きませんでしたが、こんな面白いものを観れるのなら来た甲斐がありましたね」

「ほほほ。人を馬鹿にして飲む酒は美味いか、管狐よ」

「えぇ、安酒も名酒に早変わりですよ」

「ほう、お前はあの馬鹿とは違う言うのか? 下賤な狐よ」

「誰かと思えば八雲藍じゃないですか、何の用ですか?」

 

藍は小さな紙を典に手渡す。

典はその紙に目を通すと、どんどんと顔が青くなっていく。

 

「こ、これは……?」

「紫様は酒だけを用意して、料理は各自が持ち寄る形にしたかったが……お前の所の龍が料理全般を請け負ってくれた。その紙は発注した料理の請求書だ」

「あぁ……私も脱ぎましょうかね……」

 

典は遠い目をしながら、酒を飲んだ。

その様子を見て、藍とマモゾウは乾杯した。

 

「あれ何やってるんですか?」

「さぁ、私としては健康に害がない程度に収めてくれてたらいいわよ」

「むにゃむにゃ……聖様……」

 

鈴仙に酒を注がせながら、永琳は響子を膝枕したまま料理を食べる。

その背に隠れるように、空蝉が座っている。

 

「まさかこんなに早く再開するとは思わなんだ……」

「でも探してる人は見つからないんでしょ? 竹林で死なれてても迷惑だし、紫の許可も取ったししばらくゆっくりしなさい」

「く……先に外の世界に帰った者達に申し訳ない……」

「じゃあ小分けにして持って帰ればいいんじゃない?」

「……では頼む」

「お、持ち帰りなら団子がおすすめだよ〜」

 

鈴瑚が持ち帰り用団子を大量に抱えてやってくる。

空蝉は渋々お財布を出し、持ち帰り用団子を大量に買う。

鈴瑚は団子の在庫がはけた事を喜びながら、物陰に隠れた清蘭の元に戻る。

 

「はい、はい。報告は以上です」

(お、やってるやってる)

 

清蘭は静かに指を立て、通信機に意識を集中させる。

 

「え、地上……ですか?」

「……」

「……えぇ、サグメ様の言う通り素敵な場所ですよ」

「へへ」

「え? 月の技術の使用痕跡が!? ちょっと……知らないですね! あ〜! 通信の調子が悪い! すいません切れます!」

 

清蘭は通信を切り、焦った顔で鈴瑚を見る。

鈴瑚は同じ様に焦った顔をしながら、酒の瓶を取り出した。

蜈蚣達はその会話を盗み聞くが、酔っ払っているためあまりよく分かっていない。

そんな蜈蚣達は自分の巣に帰る様に、百々世の髪の中に帰っていく。

 

「お、なんだなんだお前ら。もうお眠か?」

「百々世っていつも髪の中に蜈蚣入れてるけど、潰れたりしないの?」

「そんな事ならねぇよ。寝る時もうつ伏せで寝てるしな」

「蜈蚣の為に?」

「いや、ただの癖だ」

「ふ〜ん」

 

蜈蚣達で構成された玉座に座りながら、針妙丸は酒をちびりと飲む。

百々世は対照的に、瓶底をくり抜いて豪快に盃にしている。

 

「ウ〜! バウワウッ!」

「うわっ! 狛犬の下剋上だ! 針妙丸なんとかしてくれ!」

 

あうんに吠えられながら、正邪は木の上に逃げる。

私はあうんの頭を撫で、正邪から興味を逸らさせる。

 

「今日は悪さをしないんだったら、正邪も見逃されるって話なんだから。吠えちゃだめだよ」

「そうは言っても正邪さんって、いっつも悪巧みしてるじゃないですか!」

「まぁそれはそうだけど」

「もっと私を庇ってくれよ針妙丸〜! 相棒だろ〜!?」

「ふふ、どうだかねぇ」

 

酒をご機嫌に飲みながら、針妙丸はあうんのもふもふの頭に埋もれる。

しかしすぐに顔を上げる。

 

「何か焦げ臭くない?」

「……あぁ! 私の尻尾が燃えてる!」

「消火消火!」

「ははは! 吾の松明の火が燃え移ってしまった様だなぁ!」

「お前が聖人の所の放火魔!」

 

布都はタッパーに料理を詰めながら、松明をあちらこちらに振り回す。

火の粉が飛び散り、酒に火が付く。

 

「太子様は遠慮なさって来られなかった故に、吾がご馳走を持ち帰るのだ!」

「ここで食えここで! 日持ちしねぇだろうが!」

「確かに天邪鬼の言う通りであるな。いや、天邪鬼だから日持ちはするのか!?」

「え〜ん、松明振り回すのやめてください〜!」

 

そんなみんなの様子を少し離れた場所で、ミズチとオオヒメ様が眺めている。

 

「どうですかオオヒメ様、これが幻想郷でしてよ」

「うん……見るだけよりも、ずっと楽しい……」

 

眠そうな目を擦りながら、オオヒメ様はジュースの入ったコップを傾ける。

口の端からこぼれたジュースを、ミズチが丁寧に拭う。

 

「ちょっとミズチ! あんたもこっち来なさいよ!」

「そうだぜ! なんか面白い事しろ〜!」

「しゃ〜ね〜ですわねぇ! 蜃気楼使った一発芸をやりますから、見逃し厳禁ですわよ!」

「「「うおぉぉぉぉぉ!」」」

 

楽しそうなミズチの様子を見ながら、オオヒメ様は微睡む。

 

「オオヒメ様もこっち来なさいよ! これ美味しいわよ!」

「この洋菓子も絶品だぜ!」

「うん……!」

 

オオヒメ様はゆっくりと立ち上がり、みんなの輪の中に入って行った。

 

こうして異変は完全に終わりを告げ、幻想郷に新たな住人が加わった。

幻想郷は、今日も平和だ。

~【東方狂奏夏】END~

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