東方狂奏夏【~Phantasy “Hot” Orchestra~】   作:トカゲの妖怪

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霊夢&魔理沙編 五話

魔理沙を抱えつつ、倒れる様に加速する。

頭上の針妙丸は百々世を振り翳し、石ころの様に投擲する。

 

「迎撃は任せろ!」

 

魔理沙が弾幕を張り、百々世を近づけさせまいとする。しかし百々世は体をくねらせ、弾幕の隙間を縫う様に走り抜ける。

 

「蜈蚣の機動性を舐めたな!」

「いいや、ルートは絞れたぜ!」

 

魔理沙が小瓶をいくつか投げ上げ、レーザーで撃ち抜く。

小瓶は爆発し、ばら撒いた弾幕に連鎖反応を起こし次々と爆発する。

 

「霊夢、少し右!」

「わかってる!」

 

魔理沙の言う通りに移動し、魔理沙を投げ上げる。

空中に放り出された魔理沙の目の前に、爆風を避けた百々世が飛び出す。

 

「よぉ、箒の仇を取りに来たぜ。【魔符『スターダスト』】!」

「うぉ! 蜈蚣共!」

 

魔理沙の星弾が落下してきた百々世を飲み込む。だが百々世は咄嗟に蜈蚣を自分の正面に集め、魔理沙の星弾を防いだ様に見えた。

私は自由落下する魔理沙を受け止め、百々世の反撃に備え急いで距離を取る。

その時、目の前に大きな壁が現れる。

 

「逃がさないよ! これが本当の『ウォールオブイッスン』ってね!」

「針妙丸……!」

「退け退け!」

 

巨大化した針妙丸が、大きく手を広げ私達の行手を防ぐ。

魔理沙は針妙丸に向かってレーザーを放つが、まるで効いている様子がない。

 

「【『千切れもがき苦しむ蟲の怨み』】……!」

「まずい! 後ろから来るぞ!」

 

防御に使われ散っていった蜈蚣達の破片が集まり、ゆっくりと大きな蜈蚣の形を取る。

百々世はその蜈蚣の頭に乗り、私達に狙いを定める。

 

「針妙丸! 行くぞ!」

「【小槌『お前が大きくなあれ!』】」

 

針妙丸が小槌を振り、百々世に光が降りかかる。

その瞬間蜈蚣は更に大きくなり、龍と対峙しているかの様に錯覚する。

 

「【()大蜈蚣『ドラゴンイーター』】!」

「魔理沙! 合わせて!」

「こうなりゃヤケだ!」

 

龍の様な大蜈蚣が大口を開けて向かってくる。

魔理沙が私の首にしっかり捕まり、私は自由になった片手でお祓い棒を取り出し印を結ぶ。

魔理沙は八卦炉を取り出し、側面のリミッターを噛み壊す。

 

「【大結界『博麗大結界』】!」

 

幻想郷を囲う大結界を最小サイズで展開し、龍の様な大蜈蚣と百々世を結界の中に収める。

素早く魔理沙の体を腕を回し、八卦炉を構える魔理沙を支える。

 

「【魔砲『ファイナルマスタースパーク』】!」

 

八卦炉から極太のマスタースパークが放たれ、龍の様な大蜈蚣を正面から粉砕する。

だが百々世はいち早く察知して、蜈蚣を乗り捨てていた。

 

「最強は俺達だぁ!」

 

ピッケルを振り上げ、百々世は勝ち誇る。

その瞬間、結界に跳ね返ったマスタースパークが背後から百々世を焼き尽くす。

そのままマスタースパークは結界を破り、針妙丸の顔に直撃した。

星の散る爆発を巻き起こし、気絶したのか針妙丸の体は小さくなって落ちていく。

 

「……ケホ」

 

小さく咳き込み、百々世も満身創痍でこちらを睨む。

すぐに目線を切り、落下する針妙丸を受け止める。

 

「針妙丸がこれじゃこっちの負けだな……」

「もういい?! 疲れたんだけど!」

「あぁ、俺の。いや、俺達の負けだ」

 

大きく上を向き、百々世はため息をつく。

そのため息に感化されたかの様に、百々世の手の平の上の針妙丸も同じ様にため息をつく。

 

「ごめんね、百々世。小槌の副作用を恐れなかったらもっとやれたんだけど……」

「いいんだよ。俺も結構楽しめたしな」

「それで、あんた達は何が目的だったの? 部屋とかなんとか言ってたけど」

「あぁ? あぁ……実は鬼人正邪って奴がなぁ」

 

突然言いようの無い悪寒が背筋を伝う。魔理沙も感じた様で、驚いた様に私の顔を見る。

 

「なんだ今の!」

「どこ!?」

 

幻想郷中の蝉の声がやけにうるさく感じる。

気温が上がる様に体が火照り、周囲の景色が蜃気楼の様に歪む。

 

「いやぁご苦労ご苦労。さすがは幻想郷、想像よりも早く現れる事が出来ましたわ」

 

歪んだ景色の中から、巨大な人影が浮かび上がる。

長い紫の髪をドリルの様に左右で巻き、その頂点からは二本の角が生えている。

 

「……誰だお前」

「ご機嫌よう魔法使い。それと博麗の巫女。それから幻想郷の全ての生命よ! (わたくし)の名前は『楼山閣(ろうざんかく) ミズチ』、この幻想郷をこれから支配する女王ですわ」

「って事はあんたがこの異変の主犯って事ね!」

「ご名答ですわ。さすがは博麗の巫女。飲み込みが早い事で感心ですわ」

 

ミズチは嘲り笑う様に口元を手で隠し、私を見下ろす。

そんなミズチの足元から、何百人もの実々美が飛んで来る。

 

「うわ! 姿形全員一緒で気持ち悪い!」

「ご苦労実々美、約束通り幻想郷の下半分は差し上げますわ」

「ふん。私達の働きとして正当な報酬だな」

「ですが邪魔者がいては支配も出来ません。屈服させ、支配しなければ真の目的達成とは言えませんね」

 

何千何万もの実々美が一斉にこちらを向く。幻想郷の空を実々美の大群が覆い尽くし、渦を巻いて旋回する。

 

「ですが(わたくし)、争い事は嫌いでして。……なので降伏する時間をあげましょう」

 

ミズチは懐から時計を取り出し、こちらに向ける。

 

「明日の昼、昼食をとり終わった十四時ちょうど。その時までには幻想郷の支配権を(わたくし)に開け渡せる様にしておいてくださいまし」

「誰がそんな提案に乗るかっての!」

「おほほほほ! 拒否するならば更に気温を上げ、この地を焼き尽くす事もやむなしですわ! よくお考えなさってくださいまし! お〜っほっほっほっほっ!」

 

ミズチは高笑いを残し、煙の様に景色に溶けて消えてしまった。

空に渦巻いていた実々美達も解散し、各々幻想郷に散らばっていく。

太陽の光が残された私達の肌を焼く。

 

「霊夢!」

「……紫」

 

スキマを開いて紫が慌てた様に顔を出す。そして私達の様子を見て、安心した様に息を吐く。

 

「とにかく無事でよかったわ。今から事態を纏めるから、一度集まってちょうだい」

「えぇ、そうね。色々と確認すべき事もありそうだし……」

 

体から急に力が抜ける。魔理沙を抱える腕にも力が入らず、落下する感覚だけが残る。

 

「おっと、こうなったのは俺のせいでもあるな」

「……」

「睨むなよ」

 

百々世が私を受け止め、私が首からかけていた水筒を開けて中身を飲ませてくる。

喉を生ぬるい水が通り抜けると、ぼーっとしていた頭がはっきりとする。

ある程度水を飲ませると、百々世は私の水筒の中身を勝手に飲む。

 

「なんで私のばっか飲まれるのよ……」

「重い〜!!!」

「あと少し! がんばれ針妙丸!」

 

魔理沙を支えながら足をばたつかせ、針妙丸はスキマの中に入っていく。

百々世も私を肩に担ぎ、紫の作ったスキマの中に入っていった。

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