病める時もすこや物語   作:足洗

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体は正直(※台本形式)

 

 

「お前は、一目で気付いてくれるんだな……母さんも信じてくれなかったのに」

 

「頭おかしいって言われたよ」

 

「そりゃそうだよな。家に知らない奴がいて、そいつが自分の息子だとか言い出したら」

 

「必死で説明してさ。昔の話とか個人情報とかいろいろ」

 

「……ダメだったけど」

 

「なんだよ、TSって」

 

 

 

 

「よっ」

 

「昨日は悪かったな。突然押し掛けてさ」

 

「ん、落ち着いたっていうか諦めがついたっていうか」

 

「親も一応信じてくれた。そりゃ男だった俺は行方知れずだし」

 

「……信じるしかなかったんじゃね」

 

「気にしてないかっていうと、まあ……でも」

 

「お前は気付いてくれたし」

 

「それでいいや」

 

 

 

 

「来てくれて助かったわ」

 

「いやさー休み時間の度にクラス中で囲みやがって」

 

「人のこと珍獣かなんかだと思ってんだぜあいつら」

 

「特に男子の態度! なんか妙に優しいっつうか」

 

「べたべた触ってきやがるし」

 

「視線も、なんか……」

 

「はは、こっちが気付いてねぇとでも思ってんのかね」

 

「……」

 

「こんなに簡単に変わるんだな」

 

「見方とか」

 

「態度とか」

 

「まだ一週間だぜ? 俺はまだ全然整理ついてねぇっての」

 

「ふざけんな」

 

「俺は、まだ……」

 

「────俺は女じゃねぇよ!」

 

「……ごめん」

 

「八つ当たりだよな」

 

「でも……お前はあんまり変わんないから」

 

「前と同じように見てくれるからさ」

 

「お前がいてくれてよかった」

 

「じゃなきゃ俺とっくにどうにかなってた」

 

「なぁ、お前は変わらないでくれよ」

 

「頼むからさ」

 

「俺、変わりたくねぇよ」

 

「体はこんなだけど、中身は同じなんだ。同じでいたいんだ」

 

「変わるの、恐いんだ」

 

「頼むよ、マジで」

 

「お前しかいねぇんだよ……」

 

 

 

 

「…………あっ、じゃあ俺、約束あるから」

 

「おーい」

 

「待ったか? ごめんな。クラスの奴ら撒くのに手間取ってさ。ゲーセン行こうぜ」

 

「は?いいよ別に。知らん奴とカラオケ行っても楽しくないし」

 

「それにどうせ合コンの数合わせにされるんだぜ」

 

「TSしたのを入れると面子揃いやすいんだってさ」

 

「俺は、お前がいればいいよ」

 

「こうなってから近付いてくるのは俺の見た目とか、TSの男ってところが目当てなのが大半だし」

 

「ちやほやされてるなーってわかるんだけど、なんでかな……気分悪いんだ」

 

「贅沢、なのかな」

 

「俺はお前だけでいいや」

 

「けど……お、お前になら」

 

「ん、いやなんでもない」

 

 

 

 

 

 

「お待たせ」

 

「おい、そこは待ってないって言うとこじゃん。シャコージレーとか知らん人?」

 

「しょーがねぇだろ。髪とか顔とか準備むちゃくちゃ手間かかんだぞ」

 

「女の大変さマジ実感する。今なら元カノに土下座できるわ」

 

「どーよ?結構可愛いだろ」

 

「……ぷっ、いやガチトーン。いやいいけど」

 

「なんでかな」

 

「女扱いされるの苦痛でさ。今までの自分を否定されるみたいでさ」

 

「なのに」

 

「お前に褒められるの、イヤじゃない」

 

「……あっ、いや」

 

「変な意味じゃなく」

 

「ちがっ、も、もう行こうぜ」

 

 

 

「……変わらないよな」

 

「俺達、友達のままだよな」

 

「……それでいいって、自分で俺」

 

 

 

 

 

「……あっ」

 

「おー……ぃ」

 

「……」

 

「……」

 

「よう」

 

「今の」

 

「……あぁ部活の後輩だっけ、あの子」

 

「お前ってさ。昔から年下によく懐かれるよな」

 

「バ先にもいたよな。他校の……結構可愛い子」

 

「ふふ、ああいうのが好みなん?」

 

「いいじゃん。絡んでけって」

 

「したら彼女くらいすぐ」

 

「すぐに……」

 

「……」

 

「……えっ、あ、いや別に?」

 

「どーする帰り。腹減らね? どっか食いに行こうぜ」

 

「ラーメンの口だわ今。ニンニクと脂ギトギトなやつがいい」

 

「はは、間違っても後輩女子とか連れてけねぇよな」

 

「俺ならどこでも付き合ってやれっし」

 

「……俺ならどこでも、いつでも、お前には……俺がいればいいよな」

 

 

 

 

 

 

「今日もさ、ナンパされたんだ」

 

「結構イケメンだったぜ」

 

「やっぱし俺可愛いから」

 

「学校でもモテまくりだし」

 

「最近は慣れてきてまあそこまで悪い気しないっていうか」

 

「試しに一人くらい付き合ってみようかなーなんて」

 

「……は? んだよその返し」

 

「俺は、整理ついてる」

 

「俺が聞きたいのは」

 

「真剣に? 考えてねぇ訳ねぇじゃん」

 

「体がこんなんなってから考えない日なんてなかった」

 

「この先の自分」

 

「これからの……俺達のこととか」

 

「俺はずっと、こんな、友達なのに、こんなこと」

 

「なのにお前はそんな、一般論振りかざしてよ。大人ぶってスカしたこと」

 

「俺は、こんなに真剣にっ!」

 

「……は、はは」

 

「びびった? ガチな訳ねぇだろ」

 

「ウソウソ冗談だって」

 

「マジ顔ウケる」

 

「じゃあ俺帰るわ」

 

「……放せよ。セクハラなんですけど」

 

「俺には話なんてねぇよ……」

 

「……本気で、ホントに真剣に、話つけたいってんならさ」

 

「…………家、来る?」

 

「イヤなら別に……ふぅん、そう」

 

 

 

 

 

「お前がうちに来るの結構久しぶりだよな」

 

「まあいろいろあったし」

 

「ホントいろいろ……」

 

「先に部屋上がっててよ」

 

「なにか飲み物、持ってくから」

 

「タンスとか漁んなよ~」

 

「ちゃんとお願いしたら、下着くらい見せてやるけど? どうする?」

 

「あ、ちょっと怒った」

 

「ごめんて」

 

「あはは」

 

「前来た時と別にそんな変わってないだろ」

 

「コスメとか服とかは、そりゃ女物だし」

 

「なんでかな。色とか小物の好みとか、微妙に変わってくるんだ」

 

「少しずつ」

 

「自覚する度、怖くてさ」

 

「変わってくのが怖くてさ」

 

「あぁ鍵? こうなってすぐ付けてもらったんだ」

 

「閉めとくと不安が紛れるんだ」

 

「ダメ?」

 

「ベッド、座れよ」

 

「ふふ、なんの遠慮? それ」

 

「いいから」

 

「話、するんだろ」

 

「はあ? いいじゃん隣で」

 

「なにキョドってんだよ。友達同士じゃん」

 

「それとも……お前は違うの」

 

「俺、どう見える? どう見てる?」

 

「この制服、スカート、髪、化粧の匂い」

 

「お前はどう思ってる」

 

「教えてよ」

 

「可愛いって言ってくれたよな」

 

「似合ってるって」

 

「お前はすぐ、褒められるのイヤじゃないか聞いてくれたけど」

 

「俺、俺さ」

 

「変だよな。友達なのに」

 

「男同士なのに」

 

「なのに」

 

「……嬉しかったんだ」

 

「お前に褒められるの、見てもらえるの」

 

「心配してくれるのも、女扱い、されるのも」

 

「は、はは」

 

「タブスタすぎて笑うわ」

 

「変わりたくない、変わらないでってあんなに思ってたのに」

 

「あんなに怖かったのに。今は」

 

「今じゃ、この様でさ」

 

「俺、俺……!」

 

「……あぁ」

 

「ごめん」

 

「ちょっと最近ヘラっててさ。夜もうまく眠れなくて……それココア。お前も飲むだろ」

 

「こっち、お前の分」

 

「……」

 

「ん……ちょっと落ち着いた」

 

「ごめん」

 

「……迷ってるのは」

 

「俺が元男だから?」

 

「違う、なら、なんで?」

 

「……友達だから、か」

 

「はは、嬉しい。やっぱり嬉しいって思う」

 

「俺のこと考えて出してくれた答えだもん……でも今は」

 

「お前の、それが。俺が一番好きなお前が」

 

「すげぇ憎い」

 

「俺が男子に絡まれてるとすぐ助けてくれる」

 

「ナンパされたって言った時から帰り道とか休みの日とか付き添ってくれる時間増えたよな」

 

「後輩の子からせっかく告白されたのに……断ったの知ってるんだぞ」

 

「なぁ」

 

「なんでここまでしてくれるの?」

 

「友達だから?」

 

「ホントに、それだけ……?」

 

「……どうしたの?」

 

「眠いの?」

 

「じゃあ、寝ればいいよ。気にせず」

 

「俺のベッドで」

 

「でも」

 

「もし今このままここで眠ったらどうなるか」

 

「なにをされるか」

 

「わかる? わかるだろ」

 

「ダメダメ、急に起きたら危ないよ」

 

「ふふ、力よわ」

 

「俺には全然だったけど、お前にはよく効いてるね」

 

「……そんな目で見ないでよ」

 

「お前はいつもまっすぐ俺のこと見てくれたよな」

 

「でも気付いてた?」

 

「俺がお前のことどんな目で見てたか」

 

「この首とか胸とか、指とか」

 

「大きくて太くて、もう俺には無い逞しさが」

 

「堪んないくらいエロくてさぁ」

 

「想像の中で何度も、何度も……!」

 

「……ふふ、引いた?」

 

「これが俺だよ」

 

「お前が真剣で、誠実でいてくれようとしてるのに」

 

「変わらないでいてくれたのに、俺」

 

「はっ、はは、俺、こんな、お前のこと、お前が欲しくて」

 

「お前の男が欲しくてさあ!」

 

「あははははっ」

 

「……ごめんな」

 

「諦めてよ」

 

「だって俺、もう」

 

「お前じゃないとダメなんだ」

 

「はぁ……はぁ……」

 

「……ふぅ……ふぅ……」

 

「はぁはぁはぁ……ぁ」

 

「あ、ぁ、ははは」

 

「なぁんだ……よかったぁ……」

 

「ふはっ……俺でも、ちゃんと勃つじゃん」

 

「んっ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホントだ可愛い!ここのブランド最近ハマっててさー」

 

「でも“私”にはちょっと高いかも」

 

「男に買わせるー?でもあいつ彼氏じゃないしなー」

 

「あはは、うんそうそう。まだ友達なんだ」

 

「これからはわかんないけど」

 

「あ」

 

「言ってたら迎えが来た」

 

「また明日ねー」

 

 

 

「お待たせ」

 

「帰ろうぜ」

 

「ふふふ」

 

「ん? いやさー」

 

「クラスの女子がさ」

 

「お前のこと“俺”の彼氏だって」

 

「やっぱそう見えるんだ。そりゃそうだよな」

 

「毎日一緒に登下校して、休みも二人で出掛けるし、外じゃ恋人繋ぎでさ」

 

「これで付き合ってないのが異常っちゃ異常だよね」

 

「まあ俺はいいけど」

 

「いつまででも」

 

「お前は?」

 

「やっぱり友達に戻りたいって思う?」

 

「別にいいよ」

 

「その時はあの写真ばら撒くだけだし」

 

「リベンジなんとかって奴だ」

 

「けどあれ、女の方がダメージでかいよな」

 

「俺の人生がぐちゃぐちゃになるだけ」

 

「いいんだぜ? お前が俺を捨てるならそれで」

 

「俺は人生捨てるだけだし」

 

「……そんな悲しそうな顔しないでよ」

 

「俺はいつまででも待つよ」

 

「お前が心底諦めてくれるの、ずぅっと」

 

「でも、よく言うじゃん。体は正直だって」

 

「こうなった俺が言うんだから間違いねぇよ、うん」

 

「だからさ」

 

「今日も家、来てよ」

 

「今日も親いないから」

 

「朝まで」

 

「二人っきりだよ」

 

「ごめんな」

 

「俺、こうだから」

 

「こうでもしないと、もう」

 

「もうダメなんだ」

 

「お前、優しいから」

 

「絶対逃げられないって知ってて」

 

「逃げられないお前が」

 

「お人好しのお前が」

 

「俺……」

 

「俺、もう女なんだ」

 

「お前なしじゃ生きられない」

 

「どうしようもない女なんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

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