戦え!超ロボット生命体ユメパイセン   作:クソザコぎつね

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沢山の感想、お気に入り登録。ありがとうございます。
ユメ先輩先生の妹概念とか入れてみたい気もしますが、業が深すぎるので止めてます。
残すところ後、数話で対策委員会編は終わります。それ以降も書き続けるので待っていて下さいね。




砂の記憶

 

 

「けほっ、けほっ……うわぁ、ここも砂だらけじゃ〜ん」

 

久しぶりに足を踏み入れた別棟に先生を招き、私はかつての記憶を思い出していた。

手入れもされず、活気のない風景……こことは違うけど本当に、久々だ。

 

「ま、仕方ないんだけどね。掃除をしようにも、そもそも人数に対して建物が大きすぎて……。砂嵐が減ってくれればいいんだけど……」

 

人数に対して、無駄に大きいものだから掃除する時はいつも一苦労だった。

大抵は、使う所だけ。

なのに二人だけだったから、時間もかかる。

今は後輩達がいるから、ちょっとは楽かな。

 

「うへ~、せっかくの高校生活が全部砂色だなんて、ちょっとやるせないと思わない?」

 

窓の枠に積もった砂を払いながら、私は呟く。

何度掃除しても、直ぐに砂で覆い隠されてしまう。なら、こんなことをしても意味は無いのだと言った時もあった。

 

無駄なことだと。

 

「ホシノは、この学校が好きなんだね」

 

「……今の話の流れで、本当にそう思う?うへ、やっぱ先生は変な人だね」

 

好きでここにいるのかと聞かれると、すぐには答えられない。

 

【学校が責任を取るべきお金だ。何も君たちが進んで背負う必要は無いのではないか?】

 

カイザーPMC理事が言った言葉は、確かにそうだ。きっとそれが一番楽だろう。

去っていった顔も知らぬ先輩達もそう思っていたに違いない。

賢い選択では無いのだ。

 

私の使命は……責任は、誰かに言われて背負っている訳じゃない。あくまで私が、私に課しているだけ。

 

『でもねホシノちゃん、一緒に掃除が出来て私は楽しいよ?だから───』

 

笑いながらそう答えたあの人は、きっとこの学校が好きだったんだろう。

私だって、楽しかった。

夢に見るくらいだから。

こんな日々が続いてくれるなら、悪くないなって。

 

けど、もう続きはなくて。残ってるのがコレしかないから……。

 

縋りついてでも、守るんだ。

 

「……砂漠化が進む前、アビドスは大きくて力のある学校だったって言われてるけど……そんな記憶も実感も、おじさんには全く無いんだよね〜」

 

残っているのは過去の栄光だけ。使い道の分からない機械や、価値のおかしい備品。

一体どんな学校だったのだろうか?

もうそれを記憶している者も居ない。

せめて地中とかに埋蔵金でもなんでも残しておいて欲しかった。

 

「最初から全部めちゃくちゃで、ちゃんとしたものなんて何一つない学校だった」

 

入学してすぐに整理とか片付けをしなくちゃならなくて、ちょっと面倒くさかった。

 

「おじさんが入学した時のアビドス本館は、今はもう砂漠の中に埋もれちゃったし。当時の先輩たちだって、もうみんないなくなった」

 

私の考えていた通り、いくら掃除しても砂は入るばかりで。一緒に雑巾をかけて走った廊下も、数多く運んだ机も、全ては消えてしまったと言える。

でも、私はその事を覚えている。

一緒に過ごしたあの日を。

 

「今いるここは、砂漠化を避けて何回も引っ越した結果に辿り着いた、ただの別館」

 

引っ越す度におじゃんだから、辛かった。まるでここから出ていけとでも言っているかのようで……けど諦められなかった。

 

「……ま、でもここに来てシロコちゃんやノノミちゃん、アヤネちゃんにセリカちゃんと会えたから……」

 

私は戸惑う。これは言っていいものなのかと。言う資格があるのかと。

肯定する材料はあるだろうか。

 

「……」

 

これはいつの間にか、私に芽生えていたものだ。でも知らない内に大きくなって、今ではその思いが私を動かしている。

 

「……うへ、やっぱり好きなのかもしれないね〜」

 

守りたいって思えるなら、好きって言えるんだと思いたい。

───胸を張れる程、自分を認められないけど。

 

「……」

 

そう言って笑ってみても、先生は真剣な表情で見つめるばかり。

上手く笑えていなかっただろうか?

私は今、どんな表情だろうか。

 

「それにしてもこの前のは酷かったね〜。一体どこの誰なんだろ?」

 

先日、アヤネちゃんと先生を除いた私達はアビドスの砂漠でカイザーPMCの基地を発見した。充分な歩兵と、武装した大量の戦車。数キロ先まで張り巡らされた有刺鉄線は、カイザーの強欲な面が形になったかのようで。

 

理事に会ったのもその時だ。

 

【……ああ、思い出したよ。賢そうな君と一緒にいた、あの全くもってバカな生徒会長のこともな】

 

【……】

 

心底ムカついた。私達の土地を奪っただけでなく、勝手に争いを始め、あまつさえ出ていけなどと。

 

何が、宝探しだ。

 

たとえ向こうが合法で、きっちりした手続きで居るのだとしても、私は気に入らない。

 

私が嫌う大人とはああいう奴だ。上から見ているだけで、人の努力を掠めとって、弄んで、要らなくなったら捨てる。

 

踏みにじり、抵抗もできず反論も出来ず。

いくつもの理不尽が書かれたカードを遠慮なく使うその様。

 

本当にうんざりだ。

 

意味が無いと分かっていても、嗤うその顔に一発入れてやりたいと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あーあー。えっとぉ?対策委員会の人。聞こえてるかな?』

 

 

 

広域通信で誰かの声が聞こえた。明らかにマトモではない声ということは覚えている。

目の前の理事なんか比にもならないほどに、笑う男の声だ。

 

 

『ごめん!時間ないから要件だけね。そこのPMCにプレゼントがあって……もうすぐでしょ?』

 

 

一同困惑した。それは理事も同じで、部下に対して誰がやったのか問い詰めていた。

それが何を思って振り下ろされたのか、知る由もない。

 

【この反応は……!皆さん物陰に隠れて下さい!】

 

アヤネが声を荒らげて促す。嫌な予感がした私は後輩達を背に、コンテナ裏へと逃げ込んだ。

 

【……!!】

 

生唾を飲み込み数秒後、ミサイルであろう物が私達の居るPMCの基地に着弾した。

 

熱を孕んだ空気が髪を揺らし肌を焦がす。モロに食らった建物や兵士は、木っ端微塵のスクラップへとジョブチェンジした。

 

 

『じゃあ、頑張ってね!……プレゼント、気に入るといいけど』

 

 

続けて轟音を鳴らしながら、空から降ってくる兵器たち。

 

【何よ……アレ……!】

 

私はその兵器に見覚えがあった。この砂漠地帯で時折見かける、二足歩行の人形を模した機械人形。

砂埃を舞い上がらせて着地したその兵器は、独特な駆動音を鳴らしながら手持ちのキャノン砲で瞬く間に残党の処理に当たっていった。

 

一歩一歩踏みしめる度に地面を揺らし、破壊したことによって生じた黒い煙が白い体を汚す。所属を表すマークも無く、ただ滅するのみ。

 

【逃げるよ!】

 

背に感じるのは恐怖か歓喜か。

正直言って……少しはざまあみろと思った気持ちがないでは無いが、得体の知れない奴らに私は冷や汗をかいた。

理事がその後どうなったかは知らない。私達の近くにいたから、運が良ければ死んではいないと思うけど。

 

「ホシノ」

 

悲しそうに先生は言う。ちょっと脱線しちゃったね。

 

「……先生、正直に話すよ」

 

どうやら話を逸らしても無駄らしい。まあ元からそのつもりでここにいるのだ。

窓から差し込む月明かりが先生の顔を照らし、私は少し目線を逸らそうとして……やっぱり真正面から見て話すことにする。

 

「私は二年前から、変なやつらから提案を受けてた」

 

「提案?」

 

「カイザーコーポレーション……」

 

私の口からその言葉が出ると、先生の顔が引き締まるのが見て取れた。

 

「提案というかスカウトというか……アビドスに入学した直後からずっと、何回もね」

 

虫のいい奴らだ。……この話は感情が入りすぎてしまう。

なるべく自分を落ち着けようと、節々で呼吸を入れながら私は続ける。

 

「そういえば、ついこの間もあったな〜……」

 

数ある廃ビルの一つ。窓からのみ光さす場所に浮かぶ怪しい影。

 

【あなたに、決して拒めないであろう提案をひとつ】

 

人差し指を立てながらその影は何度目か数えるのも億劫な話をする。

 

【アビドス高校を退学し、私共の企業に属する……その条件を呑んでいただければ、今アビドスが背負っている借金の半分近くをこちらで負担しましょう】

 

元からつり上がったような口が更に口角を上げたように錯覚し、あるはずの無い表情を想起させる。

 

【ククッ、ククククッ……さあ、答えを聞きましょう。もしイエスならば、こちらにサインを】

 

スっと取り出した契約書と高そうなペン。このやり取りも飽きてきた。

 

【……何度も言ったはずだよ、断るって】

 

【……】

 

そういう度に毎度しょんぼりしているのか、それとも無表情なのか。

結果なんてわかっているだろうに。

 

「それは誰から見たって破格の条件だった。でも当時は私が居なくなったらアビドス高校が崩壊するって思ってたからこそ、ずっと断ってたけど……」

 

この事も、話すべきだ。後腐れ無きように。

 

「───私には既に仕事があった。グローバルコーテックスからのね」

 

その会社名を聞いても、先生はピンと来なかったみたいだ。

無理もない。私だって初めて聞いた名前だったから。

 

「どんな会社かは私も把握してない……。でも、要はただのアルバイトだよ。ちょっと報酬が多いけど」

 

私の発言に、先生は疑いの目を向けてくる。でも事実だから仕方ない。

 

「安心してよ。仕事内容の契約データもちゃんとあるから」

 

期待していますの一言でポンと大金を渡され続けるものだから、こっちも訳が分からない存在だ。

とりあえず微笑んで言って、そこまでにする。

 

「……あいつら、PMCで使える人材を集めているみたい」

 

「……その人は、一体何者?」

 

「私も、あいつの正体は知らない……ただ、私は黒服って呼んでる」

 

「黒服?」

 

それ以外にアイツを形容する言葉は見つからない。

 

「何となくぞっとするやつで……キヴォトス広しといえども、ああいうタイプのやつは見たこと無かったし……」

 

似たようなので言えば、グローバルコーテックスが近いけど何か違う。

内側に内包した狂気は……あの砂漠での通信先の男に似ている。

だが似ているだけで、全くの別物である気がするのだ。

 

「怪しいやつだけど、別に特段問題を起こしたりはしなかった……」

 

そこがやけに不気味だ。

 

「何なんだろうね。あのカイザーの理事ですら、黒服の事は恐れてるように見えたけど……」

 

「じゃあこの退部届は……」

 

懐から取りだしたのは一枚の紙。

───まだ、ただの紙だ。

 

「……うへ」

 

嗅覚が鋭いね、本当。良い後輩を持ったものだ。

それこそ、勿体ない位に。

 

「……まあ、1ミリも悩んでなかったって言ったら嘘だし。ちょっとした気の迷いっていうか」

 

そっと受け取り、両手で持つ。いつも通りの調子で書いた筈だけど……なんだかいつもより滲んだ筆跡だ。

 

「…….うん、もう捨てちゃおっか」

 

ビリビリと音を立てて、一思いに破る。

 

 

……嫌な事、思い出しちゃったな。

 

ごめんなさい。

 

私が、貴方みたいに出来ていれば。そうすれば、今みたいに後悔せずに済んだのに。

 

いつまでも変わらぬ笑顔のままで居てくれたのに。

もうその声は霞んで、赤らめた顔さえよく見えなくて。

 

『だ〜れだ?』

 

そう言って後ろから手で目を隠されて……。でも気づいて振り返った所で、もう遠くて。

 

歩くしかなくて。

 

強くなるしかなくて……。

 

何も怖くないって、呟いて、言い聞かせるんだ。

 

 

「うへ〜、スッキリした」

 

こういう時こそ……それでも笑うしかない。

私はそうやって生きてきた。

その───はずだ。

 

「余計な誤解を招いてごめんね。ただ、こんな話をみんなにした所で、心配させるだけで良いことも何も無さそうだったからさ」

 

一呼吸置いて、私は紡ぐ。

 

「聞かされたところで困らせちゃうだけだろうけど、隠しごとなんて無いに越したことはないだろうし……明日、みんなにちゃんと話すよ」

 

駄目だな……本当に。

 

「実際のところ、今はあの提案を受ける以外、他の方法は思いついてないんだけどね……」

 

「……きっと何か、方法があるはず」

 

目の前にいる大人の言葉に目をぱちくりさせる。

 

「……」

 

変な人だ。

根拠の無い理想だけで突っ走って、いつかはと、やがていつかはと。

大人っぽくないよ、それは。

 

「そうだね、奇跡でも起きてくれれば良いんだけど……」

 

さり気なく視線を逸らし、自然な動きを意識して窓の外を見つめる。

 

「……奇跡、かあ」

 

───それはダメだ。

 

重ねてはいけないのだ。前だってそうだったじゃないか。

 

「……さ〜てと、この話はこれでおしまい」

 

背を向けて、去ることにする。

……もう見ていられないから。

 

「じゃあ、また明日。先生」

 

窓に映るは生者のみだ。

そして、この私自身も。

砂の混じる風が窓を叩き、乗じて私は一歩踏み出す。

 

「さよなら」

 

本当にね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"ホシノ!"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なに……?」

 

いい所で終わるはずだったのに。

 

「私が大人として、どうにかする!だから……」

 

「……うへへ。私、そんなに元気なさそうだったかな?」

 

駄目だな、ホントに。

 

私は先生の方へ踏み出し、とびっきりの笑顔で告げる。

 

「うん。ありがとう先生」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ごめんね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『大きすぎる…修正が必要だ…』

 

 

 

 

 

 

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