戦え!超ロボット生命体ユメパイセン   作:クソザコぎつね

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Have a nice day


 

 

 

「ユメを?」

 

『彼女はここの所私としか過ごしていない。感情の起伏を主にした人格面の経過観察をする為にも、外からの刺激が必要だ』

 

「観察って……」

 

『普通に生徒と同じ態度で接してくれればいい。頼むぞ』

 

「……分かったよ」

 

『最近は様々な事が起きすぎた。杞憂なら良いが……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暇だ。

 

ある程度空調の効いたボロ小屋(なんでエアコンがあるの?)で私は室内着のままベッドに寝っ転がっていた。

 

(やることないよ〜……ひぃん……)

 

事の発端は数十日前。ラナから私にとんでもない知らせが来た。

 

【ユメ、私はこれからしばらく野暮用で外す。依頼の件については、学園に情報を売ってルートを繋いでからだ】

 

さあこれからという時にこんな事態になるとは思ってもいなかった。

 

【戻るまでの指示だが……しばらく休め。今はそれが君の仕事だ】

 

つまりは留守番である。

 

確かに最近はずっと任務続きで休む暇もなかったが、まさか今度は長期休暇とは。両極端過ぎない?

もう少しバランスを考えてほしいね。

 

因みに生活面では特に変わりは無い。ご飯はドローンが持ってきてくれるし、いらない時はそのドローンに言えば了承してくれる。

生活費も少し多めに貰ったから、困ることは無い。

 

このボロ小屋も見かけがボロいだけで、機能性はワンルームのアパートくらいにはある。

 

問題は娯楽だ。

 

知っての通りアビドス自治区にはアミューズメント施設みたいなものは殆ど無い。ほぼゴーストタウンだし。

だから大体郊外にまで行かなきゃ遊べたりしない訳だ。

郊外ならここと違っていくつかの施設がある。最近開館したアクアリウムなんかは最たる例だね。

 

(…………ぐぬぬ)

 

イルカショーにペンギン館、ひいては海のトンネルまであるらしいし、エサやり体験なんかには普通に興味もある。

机に投げ出されたパンフレットに再度目を通してみると、悠々と青に泳ぐ魚達がキラキラと輝いている。

なんともそそられる宣伝だ。

 

(でもチケットの値段が……)

 

なんと一人分で1万5000円するのだ。一端の学生にはちょっと厳しい値段ではある。

今の私が学生と呼べるかは甚だ疑問だが、なんにせよ気合いを要する値段に違いは無い。

 

(ラナ……もう少し小遣いくれない……?)

 

心で語りかけるも、当然返事は帰ってこない。任務の時以外はパソコンで会話してるし。

天井を見つめながら、食費を切り詰めてでも遊びに行くべきか悩みに悩んでいると、不意に過去の記憶がよぎった。

 

長い暇潰しの記憶だ。

 

そういえばホシノちゃんと一緒にいた頃はどう退屈から逃げてたんだっけ……。

 

(………あれ?)

 

手がかりを探ってみても、印象に残っているのはホシノちゃんとの思い出のみ。

おかしいな。前は一人でも平気だったのに。

 

目を輝かせながらついてくるその動きが、私の話に乗ってくれる優しさが、何処でも大丈夫だと思える頼もしさが、既に手放せない。

 

(………さみしい……な……)

 

お喋りしてるだけでも、いや、傍にいるだけで、私は楽しかった。

 

(…うぅ………)

 

枕に顔を埋め、引き摺られそうになる過去を何とか振り払う。

別に二度と会えないわけじゃないし。

まだその時じゃないだけだし。

我慢だ我慢。

 

多分、一度でも学校に戻ったらこんな生活続けられないし……。

そう思って、選んだのだから。

 

首だけ動かして机を見つめると、一枚のディスクがポツンと置かれている。

中身は一言で言えばゲームである。といっても既存の物ではなく、ラナが暇潰し用としてパソコンで遊べるように作ったものだ。

ご丁寧にコントローラーも付いてる。

 

内容はシミュレーションに近く、赤いロボットが主人公の3Dアクション。

中々リアリティある作りだし、敵も強い。やや淡白ではあるが楽しめる内容ではある。

個人で作ったにしてはすごい出来だ。

 

だが今では全クリしてしまった。

 

隠しパーツは全部取ったし、敵は全て倒した。薄いストーリーを何周もし、全ミッションでSランク制覇もした。

 

ボリュームが足りないよ。

 

(他になにか……あるかな?)

 

強いて挙げるならバイクでツーリングだろうか。

キヴォトスの地は広大だ。様々な場所にバイクで赴くのも一興。充分な暇潰し手段である。

 

ネックがあるとすれば、やはり独りであるということか。

 

やはりどの暇潰しでも孤独は変わらない。

 

バイクは孤独を楽しめるが、どうやら私が求めているのは暇潰しではなく、他人らしい。

 

どう暇を潰しても、最後には虚しさが残ってしまう。

退屈とは、そういうこと。

 

(……………)

 

きっと、アクアリウムに行ったところで充分には楽しめないね。

 

(ホシノちゃん達は頑張ってるのに……私一人……)

 

なんとも情けない姿ではないか。

一人自由を謳歌するなど。

 

いや、本当に自由なのかな?

 

何かしなくちゃいけないという使命感と、何も出来ない無力さで押しつぶされそうだ。

 

そんな何も無い時間を意義あるものに変えようと、私は懐からある物を取り出した。

持ち運び可能なカセットテーププレーヤーである。

 

【先輩、こんなものを見つけましたよ!】

 

ホシノちゃんが掘り出し物を見つけたみたいに倉庫から持ち出してきた事は鮮明に思い出せる。

そのレトロな見た目が新鮮で、その日以降はずっと手持ちに入れていた筈……なのだが、ラナから修理して返却されるまでその存在はすっぽりと記憶から抜け落ちてしまっていた。

怪しく思いながらも手に取った瞬間、記憶が蘇った時の感触が稲妻に打たれたようで鳥肌が立ったのは最近の事だ。

 

これは数少ない繋がりの一つ。完全に壊れてなくて本当に良かったと思う。

じゃなきゃ思い出せなかったかもしれないし。

 

ブラックマーケットで購入したカセットテープを入れ、蓋を閉じ、ガチャリと機械の音を鳴らしてスイッチを固い感触と共に押し込む。

 

『~♪~~♫~~~♪』

 

イヤホンを装着すると、ややノイズが混じってはいるが、デジタルとは違う暖かくて丸い音色がノスタルジックを感じさせる。

同じ曲を手に入れられたのは幸運だった。

 

スライドショーみたいに過去の情景達が次々と瞼の裏へ流れていく。

最初は不安であったが曲と一緒であれば、いくらかメロディーが私を引っ張ってくれる。

過去を振り返る上で、囚われないやり方の内の一つ。鼻歌にして流すくらいが丁度いいところだろう。

 

(あいむしんかーとぅーとぅーとぅーとぅとぅー……♪)

 

にしては少し激しい曲達ではあるが。

まあ、大事なのはそれと共に過ごした思い出だ。曲調は関係ない。

 

独りじゃない、って思い出せるから。

 

(!)

 

そうだ、この子達を連れて出掛けるのはどうだろうか。

寂しさにフォーカスすること無く、きっと違う一面が見えてくるに違いない。

 

なにしろロマンがある。

 

なぜこんな妙案を思いつかなかったのだろう?

そうと決まれば即実行だ。まだ午前だし、早速この檻から抜け出そうとジャケットに手を伸ばす。

 

(?)

 

すると、引き止めるかのようにパソコンから通知が来た。

適当にバイクで走りに行こうとでも思ったんだけど、まさか依頼じゃないよね……?

だとしたらタイミングがちょっと悪いぞ。

椅子に腰掛け、目を細めながら渋々内容に目を通す事にした。

 

 

 

──────

 

依頼主 シャーレ

 

初めまして、先生です。

ゲーム開発部の子達と一緒にミレニアムにある廃墟へ冒険に行くんだけど、もし良かったら同行して欲しいです。

場所と時間は送っておくので、気が向いたらお願いしますね。

 

──────

 

 

 

(………………)

 

私は頭を抱え、出もしないため息をついた。

パソコンでのネットサーフィンである程度先生という存在については把握しているつもりだ。なんでも、覆面水着団なるアウトロー達を率いていたり、生徒の足を舐めたり、シャーレの部室に連れ込んだり……変な噂が絶えない人だ。

後は、カイザーとアビドスの問題解決に一役買ったという話もある。

 

どこからが本当で、どこまでが嘘なのか……私には見抜くのは難しい。

文面を見る限りは良い人そうだけど……大人相手にいい思い出は無いから。

ホシノちゃんもいないしね。

 

けど、もし本当に後輩ちゃん達に手を貸してくれていたのなら────受けない手は無いよ。

 

(ラナ………)

 

それにしても、いつの間にルートを構築したのだろうか。

ラナが相手と交渉している姿を想像してみるも、普段の素振りからはあまりハッキリと見えてこない。

不器用ながらも私の事を大事にしてくれてるという感じだけは、なんとなく分かるが。

 

(気にしてもしょうがないか)

 

なんにせよ、私もラナの事は好ましく思っている。

それこそ、友人と呼べるくらいには。

 

(……もっと知りたいな……)

 

いつしかラナに触れられる日が来る事を祈るばかりである。

 

さて、ここからは仕事の時間。

了承の返事を送信した後、室内着から着替えてジャケットを羽織り、銃や弾薬等いつもの装備を着用し、立て付けの悪い玄関を開けると待ってましたとばかりにバイクが停めてある。

 

(いつもありがとね)

 

シートに跨り、キックペダルを取り出して足をかけて少し踏み下ろす。

デコンプレバーを引きながらペダルを上死点まで持っていき、そのままキーをオン。

 

そこから勢いよく蹴り抜くと、やや甲高い轟音と共にエンジンが応えてくれる。

そして、フロントが若干浮く感触に少し冷や汗を垂らしながら、私はミレニアムへと舵を切った。





ALH 628
ユメの乗るバイク。ベースは500ss、型式名H1であるが、元がじゃじゃ馬すぎる為ラナにより『調教』されている。
自動運転機能や呼び出し機能もついており更にはかなり頑丈な事から、特殊な使い方が可能だが本人は望まない。

ラナから交通ルールは教わっているが、時たまノーヘルと無免許でヴァルキューレをぶっちぎっている。


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