戦え!超ロボット生命体ユメパイセン   作:クソザコぎつね

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機械少女は電光神話の夢を見るか?

 

 

「あれ……?あのロボット達、急に追ってこなくなった……?この工場に入るまでは、恐ろしい勢いで向かってきたのに」

 

モモイにそう言われ、自分たちが逃げてきたルートを確認してみると、先程まで群れをなしていたロボットの大群達は跡形もなく消え去っていた。

………いや、残骸は残っているが。

 

膝に手を置き、震える肺に酸素を取り込んでいくと、自分の体力の無さを実感してしまう。

スーツで動き辛い格好だからというのもあるが、心臓のドラムに叩かれてしまえばその言い訳は通用しない。

気道もまた、慣れない酷使と乾燥に悲鳴をあげている。

 

私もある程度トレーニングをした方が良いのだろうか。

時間が取れるといいけど。

 

「何でか分かんないけど、とにかくラッキ〜、で良いのかな?」

 

「良くないよ!うわあああん!もういや!いったいなんでこんなところで、ロボット達に追われなきゃいけないの!」

 

追われるまでは一応想定の範囲内だったけど、中々危険な綱渡りには違いない。

幸運なのはその通りだ。

 

「ひっ!?」

 

ミドリが短い悲鳴をあげると同時に、得体の知れぬ物体が高速で私たちの近くに飛んできた。

気持ちのいい音と共に、軽い衝撃が床を揺らす。

あまりに一瞬だったので、その事にワンテンポ遅れてから反応してしまった。

 

工場内部の壁へと投げつけられたらしいそれをまじまじと観察すると、どうやらあのロボットの一人に見える。

 

見える、というのは原型を留めていないからだ。

体積だけは、元が人型だった事実を伝えようとしているようだが。

 

「せ……先生?」

 

「誰!?誰なんですかこの人!」

 

楽観的なモモイもこの相手には困惑を隠せない様子だ。

ミドリに至ってはモモイの服の袖を掴みながら、必死に涙声で訴えかけている。

二人の視線の先を追った先、逆光に照らされてゆっくりと人影が歩いてくる。

土煙の中に揺らめく赤い眼光が獲物の始末を確認すると、微かに瞬いてその輝きをすぼめる。

 

更に一歩、コツコツとブーツを鳴らし、次第に距離が縮まるにつれて私の心拍数も比例していくのがひしひしと感じられた。

だが、だからといってその感情を面に出す私ではない。

 

「レイヴン……だよね?」

 

逃げ出す本能を抑えながらそう問いかけると、ユメ……いや、レイヴンを取り巻く圧力と恐怖は完全に散逸し、暖かさを感じさせる微笑みが顔を出した。

 

「……?」

 

「……レイ……ヴン…?」

 

首を傾げる二人の様子から見るに、どうやらピンと来ないようだ。

傭兵や企業等、そこら辺の話に興味がある生徒でなければ、彼女の存在を知るものは居ないだろう。

私もカヤ以外からその話を聞くことはほとんどなかったし。

 

「今回は私達だけじゃ危険そうな場所だと思ったから、助っ人として私が呼んだんだ」

 

「助っ人?」

 

「この人がですか……?」

 

ミドリに怪しい目で見つめられるが、事実だから仕方ない。ラナにも頼まれてるし。

助っ人というには少々……不安なのだろう。

今は大丈夫だが、戦闘中の彼女には近寄り難い雰囲気があった。

見た目の時点でそういう印象を持ってしまうのもあるが、特にそう感じるのは戦い方である。

 

高い跳躍力を活かした、空中での立ち回りに、格闘と俊敏性を用いた高い近接戦闘能力。

銃を用いずとも四肢のパーツをちぎっては投げ、相手の腹に拳を突っ込みながら仲間ごと巻き添えにする様子には冷や汗を垂らした。

今までに見たことの無いやり方だ。

 

相手がロボットで良かったよ。

 

そんなバイオレンスな戦いぶりにあの奇妙なマネージャーの話を重ねていると、レイヴンがポケットからスマホサイズのガジェットを取り出した。

 

『よろしくね♪』

 

「えっと……よろしく!」

 

「……よろしく、お願い……します」

 

なるほど、そうやって会話するのか。

物騒なファーストコンタクトであったが、発声方法の問題は大丈夫そうだ。

モモイとミドリならば、早々に打ち解ける筈。

 

「ところで、その……レイヴンさん?は……」

 

『レイヴンで良いよ』

 

「分かった!じゃあ、レイヴンは────」

 

そこからは、四人固まって工場内を探索しながらも雑談の時間へと移行する。

モモイとミドリからはゲームについてと、ユウカとのエピソードが。

レイヴンからはアビドスでの一件や、後輩達についての話が。

私が思っていたよりも、レイヴンは人当たりが良く話しやすい相手であり、私の疲労が回復する頃には、すっかり三人は打ち解けていた。

ラナとホシノが語っていた性格と概ね一致していた事にとりあえず、ほっと胸を撫で下ろす。

 

やがて話していた内容は自分達の経験から、さっきのロボット達についての話へと移り変わる。

ラナも幾つかロボットを所持してはいるが、あれは全くの別物だろう。構造やデザインからしてキヴォトスによく見られる物と同一だし、レイヴンもこれまで見た事ないとの話だった。

 

「あのロボットたち、実は連邦生徒会が非常時に使う為の秘密兵器で……とかは考えて見たけど……そういうのじゃない気がするし……何なんだろ」

 

モモイの考えになると、連邦生徒会が兵力を撤収した意味が無い。

そも秘密兵器であるなら、あんな所でパトロールに使わないだろう。

所属が連邦生徒会でないのはほぼ確定とも言える。

 

「うーん、何か引っかかってるんだよね……大事な事を見落としてるっていうか、それに……」

 

無表情の天井を見つめながら先行するモモイ。

彼女が脳内思考の言語化に苦戦しつつ唸っていると────突如工場内にくぐもった声が響いた。

 

『接近を確認』

 

「えっ、な、なに?」

 

辺りを見渡すも、声の主は見えない。恐らくはこの工場のスピーカーからの音声だ。

案内用のアナウンスにしては少し遅いが。

 

『対象の身元を確認します。才羽モモイ、資格がありません』

 

「え、え!?何で私のこと知ってるの?」

 

いきなり資格無しとは、酷い言い草だぞ。

というか何の資格だ。

こちらが状況を飲み込むよりも先に、冷たいアナウンスは淡々と次を述べていく。

 

『対象の身元を確認します。才羽ミドリ、資格がありません』

 

「私のことも……一体どういう……?」

 

ミドリも駄目か。何が何だかよく分からないが、この工場に秘密があるのは間違いなさそうだ。

少なくともこの場でアナウンスが動いているという事象には、常識では及ばない力が働いている気がする。

 

『対象の身元を確認します………エラー。保留とさせていただきます』

 

これは……誰だ?私かレイヴンどちらかであろうが、名前が出ない限りは分からない。

レイヴンに視線を送るが、お手上げのジェスチャーで返される。

 

『対象の身元を確認します……【▇▇▇▇▇▇先生】』

 

おや、という事はさっきのエラーはレイヴンか。考えられるエラーの原因としては、学籍を持っていない事だろうか?

キヴォトスにおいて学籍は人権そのものと言われる価値だし。

まあ私にとって、そんなものは関係ないが。

 

『資格を確認しました。入室権限を付与します』

 

「ええっ!?」

 

「え、どういうこと!?先生はいつこの建物と仲良しになったの!?」

 

私にも分からん。

 

『才羽モモイ、才羽ミドリの両名を、先生の【生徒】として認定、同行者である【生徒】にも資格を与えます』

 

『あれ?私は?』

 

『三名を承認しました。下部の扉を開放します』

 

『ちょっと!』

 

超高速でキーを叩き反論するレイヴンだが、声が出せない事が災いしてか全く返事が返ってこない。

相手に返事をする意思があるのか疑問ではあるけど。

 

「……下部の扉?この目の前の扉じゃなくて?」

 

ミドリが指を指したのは、頑丈そうな金属製の扉である。所々腐食が目立ちはするが、重厚感は本物だ。

力で開けるには一苦労だろう。

 

「それより、下部ってもしかして……」

 

頼む。考えないようにしてるんだ。

ほら、レイヴンも頭を左右にブンブンと振っているではないか。

あの扉なんだろう?なあ、そうだと言ってくれ!

 

「流石に違うでしょ。どこからどう見てもただの床────」

 

 

 

祈りは……通じなかった。

 

 

 

「ゆ、床が無くなっ……落ちるっ!?」

 

「うわわわっ!」

 

願い虚しく、継ぎ目一つ無かった筈の床が表情を変え、大口を開けて私達を待ち構える。

 

「お姉ちゃんっ!先生!きゃあぁぁっ!」

 

「レイヴンッ!うゎああぁぁっ!?」

 

視界は黒く塗り替えられ、足元に自由を感じた私の意識は、反射的に動きながらもミドリとモモイの悲鳴と共にステージ移動したのだった。

 

 

 

 

──────

 

 

 

 

なんで来て早々落下しなくちゃいけないの……?しかも結構な高さだし。

これじゃバイクも呼び出せないよ……ひぃん。

 

「うーん……。あれっ、お姉ちゃん?先生!?」

 

おや、ミドリちゃんも起きたか。僅差ではあるがモモイちゃんの方が早かったな。

 

「いやー、流石に死ぬかと思った……」

 

『二人とも怪我とかしてない?』

 

「私とミドリは大丈夫そうだけど……」

 

「……あれ、先生は一体どこに……」

 

それなら簡単だ。

 

「ふぉふぉに……」

 

私が下方向に指を指すと、カエルみたいにぺちゃんこにされた状態のまま丁度よく先生が答えてくれた。

あ、私は踏んでないよ。落下には慣れっこだし。

 

「ひゃあっ!?なっ、なっ、なんで!?どうして私達の下にいるんですか!!?」

 

若干の恥ずかしさと困惑を浮かばせ、素早く飛び退くミドリちゃん。

 

「どうしてって……落ちる時咄嗟に先生が、私達のクッションになってくれたからでしょ」

 

親指を立ててご満悦な先生だが、聞いていたよりはタフな様で何より。

出血や傷等大した怪我も無さそうである。

 

「あっ、ご、ごめんなさい……びっくりしちゃって、てっきり先生に【そういう趣味】があるのかと……」

 

「いや、今の言葉に対しても、もう一度謝った方が良いと思うけど……」

 

「とにかく先生、大丈夫?」

 

「損して得取れっていう言葉があってね……」

 

そう答えながら両の足で立つ先生ではあるが、若干ふらついている。

 

「ああ、大丈夫だよ……」

 

不安定な身体を支えようと腕を回すものの、やんわりと断られてしまった。

頑丈な訳でも無いんだし、あまり無理はしないで欲しいけど。

 

「と、とにかく……ありがとうございます、助けてくれて」

 

「そんなに深いところまで落ちたわけじゃないみたいだけど……ん?」

 

壁で囲まれた周囲の内、ただ一点を見つめてフリーズするモモイちゃん。

どうやら気づいたようである。

 

「…………えっ!?」

 

驚愕のあまり、声が出たモモイちゃんに釣られてミドリちゃんもその方向に目を向ける。

 

「ん……?どうしたのお姉ちゃん」

 

私もびっくりしてるけどね。先生も、目を見開いて半開きの口が空いたままだし。

 

「えっ……!?」

 

彼女らの視線の先。そこには、崩れた天井から差し込む寂しげな陽だまりが、スポットライトのように部屋の中心を照らしている。

長い間放置されていたのだろう、光の当たる場所には薄い緑のカーペットが生えていた。

 

そして中心……そこには、一人の少女が。

とても座り心地の良いとは思えない、機械の椅子に腰掛け、瞼を閉じたまま。

このような場所にはミスマッチな筈であるが……何故だろう。

私には、この光景に微かな祈りを感じる。

例えるなら、赤ちゃんを寝かせた後の寝室に近い。

 

この子を守ろうとしたのは……眠らせてあげたのは……誰なのだろうか。

 

廃墟の中であるのに、その白く、穢れなき姿は違和感を生じさせなかった。

幻想的で、夢幻。それなのに目の前にある。

幼き御伽噺そのものが姿を象っている。

 

オルゴールの一つでもないかと、壁面近くの瓦礫達へ声を掛けるが……誰も知らぬようだ。

今に存在するのはこの少女ただ一人である。

 

その光景に視線を抑えていると、最初にモモイちゃんが、続いてミドリちゃんも、その非日常に足を踏み入れた。

 

「お、女の子?」

 

「この子……眠ってるのかな?」

 

さて、どうだろうか。私も近づいてみるが、外見上は普通に可愛い少女だ。特徴とするなら、髪が身の丈以上に長い事だろう。

 

「……返事がない、ただの死体のようだ」

 

「不謹慎なネタ言わないで!それに死体っていうか……ねえ、見て」

 

ミドリちゃんに促され、私もじっとその姿を観察する。

傷一つない白い肌に、均整のとれたつくりをした顔。

身長はゲーム開発部の二人よりも高そうである。

ちなみに衣服は着用していない。

 

「この子、怪我とかじゃなくて……【電源が入ってない】みたいな感じがしない?」

 

「そう?言われてみれば、何だかマネキンっぽいね。どれどれ……」

 

マネキン。その表現は当たらずとも遠からずに思える。

なんせこの子は呼吸をしていない。普通、呼吸する際は胸の辺りが動くのだが、先程から見ていてもそのような動作は無かった。

 

「すごい、肌もしっとりしてるし柔らかい……あれ?ここに何か、文字が書かれてる」

 

肌をぷにぷにと触っていたモモイちゃんだが、どうやら何か見つけたみたいだ。

 

「……AL-IS……」

 

少女の背中にちょこんと、それは刻まれていた。

まるで機械の型式番号のように。

 

「……アル、イズ……エー、エル、アイ、エス?どう読むのか分からないけど、この子の名前?」

 

名前というには、冷たいな。

 

「……アリス?」

 

……良い名前だ。この子からしたら、このキヴォトスは不思議の国だろう。

もっとも、夢ではないが。

 

 

 

 

──────待って。

 

私は今、何て?

 

なぜ、不思議の国と、言い切ったの?

 

この子が、今の世界を知らないと、なぜ、知っているの?

 

……………分からない。

 

なんだか、断片的で、モヤがかかったようだ。酷く気持ち悪い。

 

「………どうしたの?レイヴン」

 

『ちょっと、目眩が。休んでもいい?』

 

モモイちゃんが首を縦に振ったのを確認し、私は床に腰を下ろす。

乗り物酔いってこんな感じ……?

頭の中をかき混ぜられてる気分だよ……。

 

全身の血液が逆流したような、そんな感触。

意識の中で誰かが叫んでいるような、声。

ふわふわとした無重力に、ぱちぱちと思考が削られる。

視界がぐるぐる回って……景色が、流れていく。

どれも見た事ないはずなのに。

 

黒い……宇宙みたいな火が……真っ黒に……。

 

全部──────焼かれている。

 

悲鳴が聞こえる。祈りが聞こえる。呪いが聞こえる。

誰かが私に願っている。

 

これは……なに?

 

私は……見覚えが……。

 

 

レイヴン

 

 

その一言が、バラけた私を────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユメ……無理はしないで……」

 

ああ……そうだ。

 

とにかく……少し楽になろう。

 

促されるまま、崩れ落ちる身体を先生に預けて、私はぼんやりと目の前の事象を記憶する事にした。

 

「大丈夫ですか?」

 

『うん。気にしなくていいよ』

 

少し震える指を隠しながら、ミドリちゃんにそう告げた。出来るだけ、二人には要らぬ心配をさせたくは無い。

 

『ごめんなさい。先生』

 

私の発言に先生は首を左右に振る。

初めてだよ、ここまで優しい大人って。

今迄の行動を見ていれば、信じる事はもちろん容易いし、今後裏切られたりする事も無い様に思えたから安心だ。

元より私は、信頼100%でもあるからね。

そんな風に少し過去の事を思い出していると、どうやらミドリちゃんが新たな発見をしたみたいだ。

 

「……お姉ちゃん、これよく見ると全部ローマ字じゃなくて……AL-1S、じゃない?」

 

「え、そう?」

 

AL-1S……HSL-1。一文字違いだ。

ラナはなにか、知ってるのかな?あまり話したがりじゃないけど。

もしかしたら姉妹だったりして。

 

口元から何故か、笑みがこぼれる。どんな感情かは、分からない。

 

「いったいこの子は……それにこの場所、いったい何なんだろう?」

 

「この子に聞いた方が早いんじゃない?」

 

「起きて、話してくれるなら良いんだけど……とりあえずこのままじゃ可哀想だし、服でも着せてあげよっか」

 

寒そうな格好には間違いない。私のジャケットは……ブカブカだろうし、やめておこう。

 

「へえ、予備の服なんて持ってきてたんだ……ってそれ私のパンツじゃん!」

 

「違うよ、これは私の。猫ちゃんの表情が違うでしょ」

 

ミドリちゃんは手際よく、物言わぬ少女にミレニアムの制服を着せていく。

相手が動かないというのもあるだろうが……きっと姉とのやり取りで培われたのだろう。

世話焼きな妹らしい。

 

私とホシノちゃんは……いや、そこまでにしようか。

 

「……よし。これでいいかな」

 

着せ終えた瞬間、どこからか電子音が鳴った。

万が一もある為、念には念をとホルスターに手を掛けておく。

 

「ん?」

 

「な、何この音!?」

 

「警報音みたいだけど……もしかして近くにロボットが?」

 

『先生、一応私の後ろに』

 

「もう平気なのかい?」

 

私は深く頷き、立ち上がって先生を背後に移動させる。

突然動いたからか一瞬クラクラしたが、意地で持ち直して構える。

 

「今の音……【この子】から聞こえた気がする」

 

「え?ま、まさか……」

 

否定を覆す様に、目の前の少女から現在の報告が成される。

口を開かずに。

 

『状態の変化、および接触許可対象を感知。休眠状態を解除します』

 

そう告げると、ついに少女は……AL-1Sは重たい瞼を開き、止まっていた身体を動かし始める。

 

「……」

 

「め、目を覚ました……?」

 

「……状況把握、難航。会話を試みます……説明をお願いできますか」

 

これはこれは。絵に書いたような振る舞いじゃないか。

もしや本当にそうなのだろうか。

 

「え、えっ?せっ、説明?なんのこと?」

 

「せ、説明が欲しいのはこっちの方!あなたは何者?ここは一体何なの!?」

 

「本機の自我、記憶、目的は消失状態であることを確認。データがありません」

 

即答か。こちらを真っ直ぐ見る眼差しには、嘘は感じ取れないが……。いや、昔見た映画はそれが原因で故障したんだっけ。

 

「ど、どういうこと……?い、いきなり攻撃してきたりしないよね?」

 

「肯定。接触許可対象への遭遇時、本機の敵対意思は発動しません」

 

「うわ、すごい。ロボットの市民ならキヴォトスによくいるけど、こんなに私たちに似てるロボットなんて初めて」

 

私もそう思う。青い瞳の奥にカメラがうっすら見える事と、やや無機質な声を除けば、ロボット────アンドロイドとは気づかないだろう。

 

ラナの方が、ちょっぴり感情がこもっているかな?

警戒を半分解き、私は簡単な質問を投げかける。

 

『服のサイズはどう?』

 

『本機の最大稼働範囲を確認。問題ありません』

 

……大丈夫そうだ。

 

「うーん……先生、どうしましょう?」

 

ミドリちゃんは不安そうに先生を見つめる。

すると、先生は悩む事なく質問を投げた。

 

「【接触許可対象】って、どういう意味か教えてくれる?」

 

「回答不可。本機の深層意識における第一反応が発生したものと推定されます」

 

「深層意識って、何のこと……?」

 

「うーん……工場の地下、ほぼ全裸の女の子、おまけに記憶喪失……ふふっ、いいこと思いついちゃった!」

 

「いや……今の言葉の羅列からは、嫌なことしか思い当たらないんだけど……」

 

なるほど……棚からぼた餅という訳だ。

たまには外に出るのも良いかもしれないね。

 

「???」

 

当の本人は分かってないみたいだけど。

 

…………なにかが、私の心に引っかかっている。

違和感というには、少し違うが。

今気にするような事でもないだろうし、この先必要になるのか分からない。

 

雲を掴むような考えだし、有り得ないとわかってはいるけど……ものは試しだ。

 

 

『私の事、知ってる?』

 

 

AL-1S

 

少女は……アリスと呼ばれた子は、私を数十秒間観察した後、答えた。

 

 

「否定。本機のデータにあなたはインプットされていません………しかし、テキストでは説明不可能な感情が発生しています」

 

 

 

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