戦え!超ロボット生命体ユメパイセン   作:クソザコぎつね

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3章の重さにまた脳が焼かれました。小鳥遊ホシノ……あなたは私が止めます。これから…ネフティスを堕とします。

それはそれとして、本作品でのユメ先輩は原作と違う場所で遭難しています。


扱いづらい武器

 

 

「……なるほど、大体把握できたよ。新しい仲間に、より良い武器をプレゼントしたい……と」

 

私達のパーティーはアリスちゃんの武器を入手すべくエンジニア部へと足を運んでいた。

 

モモイちゃんとミドリちゃん曰く、機械の修理や作成に特化した【マイスター】が集まる事でハードウェアに特化した部活であり、武器の改造も進めていることから、使われていない武器を頂戴しようという算段だ。

 

「そういう事であれば、エンジニア部に来たのは素晴らしい選択だね。ミレニアムにおける勝敗というのは、優れた技術者の有無に大きく左右されてしまうものだ」

 

部室……と言うにはあまりに広いな、ここは。

アビドス高校の体育館以上はあるんじゃないかな。

壁は全て防弾仕様だし、天井からは効率よく日光を取り込む事で電気を付けずとも明るい。

 

(これが部室だというの……?)

 

ミレニアムのレベルであれば、これ程の環境を用意する事も可能なのか。

資本主義の恐ろしさが身に染みるよ。

 

「そっちの方に、私たちが作ってきた試作品が色々と置いてある。そこにあるものであれば、どれを持っていっても構わないよ」

 

了承してくれたウタハさんが指を指した先には、ガンラックに吊るされていたり、ダンボール箱に詰められていたり、様々な銃がジャンクショップの様に置かれていた。

 

ん?待てよ……よく考えたら私の方がウタハさんより年上だな。けど私って正規の生徒とかじゃないし……。

 

(良し!ここは敬意を込めてウタハさんと呼ばせてもらおう!)

 

そもそも協力してくれてるんだし、それが最適だろう。

 

「ああそれと、君にはちょっと話がある」

 

(え!私!?)

 

まさか心を読んだとでも言うのか。

アリスちゃん達について行こうとした矢先に私は肩をガッシリと掴まれ、ウタハさんに引き止められてしまった。

 

「なに、別に怖がる事は無いさ。ちょっと付き合ってくれれば充分だ」

 

(一体なにに!?)

 

目が怖いよ、目が。怒ってるとかじゃないんだろうけど、そんなに好奇心むき出しのままで言われたら鳥肌が立っちゃうよ。

 

「さあ、こっちに……む?」

 

どんな事をさせられるのか、内心ヒヤヒヤしている私を無理やり連れて行こうとウタハさんが私の右腕に触れた瞬間、なぜかフリーズしてしまった。

 

「これは……もしや」

 

なんと今度は私の右腕をペタペタと触り始めてしまったぞ。

 

「……そんな事が……いやしかし、実際に存在している。何処の誰が……」

 

思考をそのまま吐き出し、私の気持ちなど意にも介さず観察する様子にウタハさんの情熱の炎がメラメラと燃えているのが分かる。

 

十分程経ちようやく落ち着いたのか、ウタハさんはキラキラした瞳のまま腕から手を離してくれた。

 

「……失礼。君の腕があまりにも綺麗で興味深くてね、つい夢中になってしまった」

 

別に触られて悪い気はしないけど、なにか事前に言って欲しいものだ。

 

『気にしないで。多分、これが義手だからでしょ?』

 

「!」

 

やっぱりそうだよね。エンジニアとしてこの技術が興味の対象になるのは頷ける。

さほど詳しくない私にもこの腕がオーバーテクノロジーなのはよく分かるから。

 

「すまない、私は────」

 

『本当に良いってば。それに、貴方が気になるのはそれだけ?』

 

眼帯をコツコツと指で叩くと、そちらにも興味の視線が注がれる。

考えてみれば、私という存在自体にも技術的革新へと至る要素がある。

無理も無い。

 

「……否定はしないよ。君をそういう目で見てしまっていることは事実だ」

 

『だろうね。せっかくだったら付けてみる?』

 

「……いいのか?」

 

私専用に作られた物だから、他の人に扱えるかは分からないけどね。

バンドを緩めて眼帯を取り外すと、重量からの解放と共に違和感のある視界が広がる。

 

軽く作られてはいるけど、無い方が楽なのは変わらない。

 

「その目……いや、そんな必要はないな」

 

そう。私の右目はとうに死んでいる。本来なら見えない筈なのだ。だからこうして眼帯無しの感覚に触れると、日頃のありがたみを感じる。

 

「……おや?」

 

どうしたのだろうか。ウタハさんが私の手渡した眼帯を装備してみるも、いつものような起動音は鳴らず、またレンズにも光が灯っていない。

 

(調子でも悪いのかな?)

 

「……笑えるな。コイツはどうやら主人以外には大層冷たいらしい」

 

『主人?』

 

まるで何かを悟ったかのようにウタハさんは「大事にした方が良い」と言って呆気なく返してきた。

言われなくてもそのつもりではあるけど……あっさり過ぎじゃない?

 

あんなに興味津々だったのに。

 

「まさしく君専用だからね。そんな物、少なくとも私は分解する気にはならない」

 

『そういうもの?』

 

「そうさ。けどまあ、おかげさまで私も俄然やる気が出て来たよ。感謝する」

 

一体何を見たのか、何を知ったのかは分からないけど、ウタハさんの顔は晴れやかで満ち足りた表情である。

 

『ところで、私に話って?』

 

「ああ。簡潔に言ってしまえば、コレは依頼だ」

 

『もしかして知ってるの?私の事』

 

「多少は」

 

『悪いんだけど今はちょっと止められてて』

 

あのラナだよ。絶対怒られるに決まっているじゃないか。

 

「なに、簡単なものだ。試作品の武器を試してくれるだけでいい」

 

『そうは言われても』

 

「報酬としてここにある武器を一つ渡す。それならどうだ?」

 

武器か……。別に今でも充分なんだけどね。上手く使い分けできてるし。

けど、あって損はしないだろうな。戦術の幅が増えるのは良い事だし。

 

報酬が武器なら、ラナに金の動きをバレる恐れも無いだろう。

 

ちょっと揺らいでる、というか大分だな。無料でゲットという言葉に弱いぞ、私は。

 

『ちなみに何処で試すの?』

 

「ここの演習場だ。別に企業のビルを標的にするつもりは無いから安心してくれ」

 

(それなら……良いのかな?)

 

そういえば、こういう誘いを学生から受けるのはなんだかんだ初めてだな。

大人から受ける事は多くあったけど、毎回アレだったし。

いつもはラナが運んできてくれるからね。

 

簡単な依頼内容ではあるし、このくらいなら治験のアルバイトみたいなものだと思っておくとしよう。

 

『分かった。その依頼、受けるよ』

 

「よし決まりだ。契約書と使用する武器を持ってくるから少し待っててくれ」

 

 

 

 

──────

 

 

 

 

 

「どうだい?私達の演習場は。今回の依頼にはピッタリだろう」

 

それから少し時間が経ち、契約書と多数の武器が入ったダンボール箱を大きな台車に乗せて帰ってきたウタハさんに連れられて私はエンジニア部の部室に隣接された演習場へと足を踏み入れた。

 

演習場内にはバリケードやドラム缶による障害物が多数。地面は砂で出来ており、遠くの方にはターゲットらしき物がいくつか点在している。

室内に設けられてるんだし、かなり便利そうだ。

 

改めて依頼内容を確認し契約書にサインをすると、早速ウタハさんがワクワクした表情で武器を一つ寄越してきた。

 

「まずはコレだね。名前はPYTHON。数ある試作品の中で最も小型に成功したレールガンさ」

 

『レールガン?』

 

「火薬じゃなく、電磁気力で弾丸を加速させて発射する技術。及びそれを組み込んだ兵器群の事だ。利点としては探知されづらい事や誘導弾よりコストが低いと言ったものがあるけど、ソイツには無いね」

 

(ええ……)

 

「極超音速で飛ばすから、当てること自体は容易い筈さ」

 

『でもなんでそんな物を?』

 

「……カッコイイからに決まってるじゃないか」

 

ふむ。言われてみればこのデザイン。中々奇妙だとは思っていたが、三つのレールと無骨なシルエットには拘りが見受けられる。リベットや銀色のヒートシンクも相まって、ロボットとかが装備していそうだ。

 

「実際の性能は使えばわかる。試しにあそこの標的を狙ってみてくれ」

 

指さされた方向に体を向けると、標的のうちの一つ、テスト用の人型ロボットが立っていた。

 

反動が存在するのか、あるとしたらどれくらいのものか。全く想像がつかないので、念の為両足を並行に置き、両腕で真正面に構えて撃つことにする。

 

トリガーに指を掛けると、かなり重い感触が私でも伝わってくる。私からして重いってなるのは大分問題だと思うけどね。

ゆっくりと引いていくと、レールには青い光が徐々に点灯し、次第にバチバチと稲妻じみた閃光を発し始める。

 

(これ、かなり危ないんじゃ……?)

 

だが、今更止める術など無い。後は発射するしか道は残されていないのだ。

赤熱化し始めた銃身と、段々間隔を狭めていく加速音。

 

力を目一杯込め、完全に引き切ると、一瞬の静寂を挟んだ後に絶大な光と轟音が爆発する。

あまりの光に目を細めるが、その発した音に私はとてつもない威力を感じた。

極超音速とはこれほどのものなのか。空気を焼き切るどころか破壊しそうなほど、暴力的な一発は青い光を乗せて残像を描きながらターゲットへと着弾した。

 

(………?)

 

「やはり駄目か……」

 

どういうことだ。私は幻覚でも見ているのだろうか。

なんと、確実にヒットした筈のターゲットは粉砕されることなく、それどころか貫通もしていない様子。

ズームして観察してみると、どうやら受けたダメージはへこみ一つと多少の焦げのみ。

 

そんなに硬いのか?ミレニアムのデコイは。

 

「PYTHONの最大の改善点。それは弾丸さ」

 

『弾丸?』

 

「極超音速で打ち出された弾丸は従来の兵器とは比べ物にならないほどの速度で空気と接触する。前回より弾丸のサイズや素材を見直したんだが……今回も途中で燃え尽きたみたいだね。速度を落としても利点が潰れるし、ガトリングにするのは無理そうだ」

 

ここからターゲットまでは丁度50mある。この距離で駄目なら実戦では使い物にならないだろう。近距離ならアリかもしれないが、いかんせん引き金が重すぎる。

 

「やはりサイズは正義だな。大きければ大きい程弾丸が圧縮空気の熱に耐えられる時間も伸びる」

 

音と見た目なら満点なんだけどなぁ。命の危険を感じた割にはしょぼい結果に終わってしまった。

 

「次はコレだね」

 

『ナイフ?』

 

今度手渡されたのは、美しい弧を描いた少々大きめの刃物であった。

銀色の刃は美しく研がれ、私の顔が反射している。

 

「ブーメランとしても使えるナイフだ。使用する際にはこのヘッドギアを使う。まあ付けてみてくれ」

 

ダンボールの中からウタハさんが取り出したのは、配線や基盤がむき出しのままのヘッドホン状の機械だった。

 

「脳波を感知して持ち主の思考に合わせて動くように作ったんだ。協力企業から名を取ってムラクモと呼んでいるよ」

 

『ムラクモって、あの大企業の?』

 

「そのムラクモさ。幾つかの企業は私達エンジニア部と技術提携をしていてね。中でもムラクモは羽振りが良い……例外を除けばだが」

 

よく見てみると、持ち手の所に小さくムラクモのマークとエンジニア部の刻印が施されている。

まさかそんな有名企業と手を組んでいるとは。何もかも違うな、私の居た場所とは。

 

「プログラムの構築は一通り終わってるけど、実際に使うのはこれが初めてだ。くれぐれも怪我の無いように」

 

少々キツめのヘッドギアを装着し、私は適当なコンクリのバリケード目掛けてムラクモを思いっきりぶん投げた。

 

ヒュンヒュンと回転し、空気を切り裂きながら突き進むムラクモ。手裏剣みたいでカッコイイなと思っていると、突如空中で軌道を変更し始めた。

 

(おお!)

 

ふわふわとしていた脳内のイメージを固めていくにつれてその軌道は鋭さを増し、速度を上げていく。

最初の方はUFOじみた不安定な動きだったが意外にも慣れやすく、数分と経たずに思いのまま動かせるようになった。

 

「筋が良いね。私達でもそこまで安定させられるのは極小数。もしや君には適性があるのかもしれないな」

 

えへへ。そんなこと言われたら嬉しくなっちゃうぞ。

 

「ターゲットを狙ってみてくれ。どれ程の威力か試したい」

 

大体想像がつかないでもないが……試してみる価値は大いにあるか。

人型の標的へと狙いを定め、私はムラクモの動きをイメージする。

 

手足とかを狙うのには罪悪感があるので、握られているライフルへと設定する。

 

「──────!!」

 

するとどうだ。かなり特徴的な音と共に、スパッとライフルの銃身が切り落とされてしまったでは無いか。

実際に目にすると、やはりこれは危険だな。自在に動かせるからって調子に乗らない方が良さそうだ。

 

「充分だ。後は手元に戻ってくるかどうかだが……出来そうか?」

 

要望通り、まずは逆回転の動きをイメージしてブレーキを掛けて速度を落とす。

そして可能な限り無駄な動きを入れることでさらなる減速を図るが─────何やら様子がおかしい。

 

次第にイメージから外れていく。不規則な動きが増えていく。

まるで別の意思が介入しているかのように。

 

(──────まずい!)

 

空気を裂く音が悲鳴にも聞こえ、銀色の光が星の様に後を残していく。

 

気張って意志を強く持ち、支配する。私の意思こそが絶対だと言い聞かせ、ムラクモにぶつけてやると、まるでリードを引きちぎったかのように、なにかに反抗するように、狂おしく身をよじる。

 

やがて速度を落としたムラクモは、突然スピードを落とし墜落の様相を見せながら地面へと突き刺さってしまった。

無秩序の恐怖とでも言うべきか。手元から離れる怖さを、私は身に刻んだ。

 

「………要改善かね。君の責任じゃないさ、今度は別の形でテストしてみるよ」

 

『ごめん』

 

もし制御を奪っていなければ、どうなっていたことやら。

最悪の場合、ウタハさんに……いや、考えたくもない。

ライフルを容易に切断できるほどだ。ろくな事にならないだろう。

これはあまりにも危険すぎる。

 

調子に乗った自分を戒め、私の気分は一気に曇り空だ。

 

「さて次だ。そもそもこれは持てるかどうかが重要だけどね」

 

(?)

 

一足先に気を取り直したウタハさんが引っ張り出したのは今までで一番未来的なフォルムをした銃であった。

引っ張り出したと言うよりは、ダンボール箱の下敷きになっていたのが顕になったというのが正しいか。

 

その切り替えの早さに私は風邪をひきそうになる。

 

「この子はまだ不完全でね。調整はしてみたものの、まだマトモに撃てたことは無い」

 

『そんなものを』

 

「というか拾い物らしい。前にムラクモから解析の名目で送られてきたんだが、ミレニアム郊外の廃墟で見つかったとの事だ」

 

(廃墟か……)

 

もしやオーパーツとかだったりしないだろうか?

ボロボロなフレームに急ごしらえの配線が巻きついている姿はどこか痛々しいが、機関部らしき場所はまだ綺麗なままである。

 

「まずは持ってみてくれ」

 

(じゃあ遠慮なく……)

 

グリップらしき場所を掴んで両手で上へと持ち上げようとするものの、かなり重い。およそ銃とは思えない重さだ。

明らかに見た目と質量のバランスがあっていないぞ。

私のバイクくらいはあるんじゃないか?

 

「……手こずっているらしいな。どれ、私も手を貸そう」

 

ウタハさんが前方のバレル付近を。私が後方のグリップを同時に持つことで少しずつ銃はゆっくりと起き上がっていく。

二人がかりでようやくとは、絶対ただの銃では無いなこれ。

大砲かなんかだと言われた方がしっくりくるぞ。

 

「そのままキープ出来そうか?」

 

やがて完全に持ち上がった所で、少し苦しそうな表情をしているウタハさんの問いに私は頷き、早急にターゲットへと狙いを定める。

 

キープできると言っても30秒位が限界だ。この機会を逃さぬよう慎重にトリガーへ指を掛け、グリップに力を込める。

 

「よし!撃て!!!」

 

(ぐっ………!)

 

トリガーを力のまま引くと、青い光が球状となって広がり、視界がそれ一色に染まっていく。

発射されたそれはあまりに大きく、星のような一撃が私から感覚と思考を奪い去っていく。

 

あまりにも強大な一発であった。

 

眩い光が遠ざかっていくにつれ、もたらした結果がさも当然かの様に提示される。

これくらい朝飯前だと。

 

砂の地面はそこだけがガラスと化し、進路上の障害物は軒並み蒸発、液状化。空気中には稲妻が迸り、感嘆の声をあげている。

あれが俗に言うプラズマ化なのだろうか。

 

そしてターゲット。

 

(………………)

 

ターゲットは既に、存在しなかった。いたという痕跡ひとつ残さず、跡形もなく、消し飛んでいた。

丸呑みだった。

 

「これは……ちょいと厄介な代物だね」

 

ターゲットのその先。演習場の壁には、くっきりと丸い跡が残っていた。仄かにオレンジがかったそれに、私は畏敬の念を感じる。

エネルギーが拡散していたとはいえ、良くぞ受け止めたものだ。

 

ただただ、私は戦慄した。そして本能で理解した。理解出来てしまった。

 

これは、私達の持つべきものじゃない。

 

このキヴォトスにあってはならない力だと、容易に判断できた。

 

「まさかこれ程とは。管理の意も込めて、ムラクモじゃなく私達で永久に封印した方が良さそうだ」

 

同じく感じたのだろう。ウタハさんは額から垂れる汗を拭いながら呟いた。

その発言に私も生唾を飲み込む。

 

「尤も、今の一発だけで殆どが焼き付いてしまったから、このままじゃ使い物にはならない。扱うのなら少なく見積ってもこれ以上のサイズに改造しなくては」

 

腕を大きく横に広げるウタハさん。やはり技術者魂と言うやつか。

くれぐれもこの兵器が表に出ない事を祈るとしよう。ウタハさんならきっと、そうはならないと信じられる。

 

それはここまでの会話で掴めたからね。

 

『この銃。名前はあるの?』

 

ウタハさんに聞くと、少し震えた指で持ち手近くの機関部。まだ煙を発しているそのフレームに深く打刻されている。

 

なぜだか何よりもしっくり来るその真名は。

 

 

 

 

 

 

 

KARASAWA

 

 

 

 

 

 

 

──────

 

「ここまで付き合ってくれてありがとう。それで、何か気に入る武器は見つかったかい?」

 

(う〜ん……どれも難しいな)

 

拳銃型のライターってなんだ。普通ので良いでしょ普通ので。

 

スプーン型のフラッシュライトってなんだ。食事相手に目眩ししちゃダメでしょ。

 

ショルダー投石機ってなんだ。全く当たらないのに、なまじ威力が高いから惹かれちゃうじゃん。

 

「みんな笑える装備品達だったろう?どれも真心込めて作られているからね。安心して選んでくれ」

 

(そういう事じゃないんだけど……)

 

せめて選ぶならコレだろうか?

私が選んだのは、光学迷彩付きのハンカチだった。といっても少々大きく、拳銃一つは隠せそうな位だ。

 

「それを選ぶならこっちの方は……」

 

『こっちが良い』

 

ダメダメ。下着はもう間に合ってるんです。私は買いませんからね!

 

「そうか……」

 

そんなしょんぼりした顔しないで欲しい。多分誰かには必要だよ。多分。

今じゃないだけだから。

 

「ソイツの利点は、扱いが通常のハンカチと同じ事だ。勿論手を拭くのにも使えるし、洗濯にも耐えられる」

 

普段使いのハンカチとして使わせてもらうとしよう。悪いけど、他のを選んだところで私に扱えそうな物が無いからね。

……これが武器なのか、疑問に思うだろう。だが物は使い用だ。ペンをナイフの代わりにも出来るし、ダイナマイトならトンネル工事に使える。

 

力をどう使うか、それは自由であるとラナは言っていた。

 

「それだけじゃ物足りないだろう。追加報酬としてコレを受け取るといい」

 

『カセットテープ?』

 

ウタハさんが制服のポケットから取り出したのは、私の持つものとよく似た外見の一般的なカセットテープだった。

 

「いや、見かけはそうだが実態は多目的記録媒体だ。容量は約6TB。音楽の再生は当然可能として、単体でSSDクラスの働きが可能だ」

 

(6TB!?)

 

こんな薄い外装に何を突っ込んだらそれ程の容量になるんだ。パソコン顔負けじゃないか。

 

「さて、依頼はこれで終了。短かったけど良いデータが取れたよ」

 

『本当に……?』

 

最初の三つ以外もマトモには使えなかったけど、良いのだろうかそれで。

 

「向こうはどうなってるかね?」

 

ああ、命の危機を感じすぎてすっかり忘れるところだった。そもそも私がここに来たのはアリスちゃんの武器を一緒に探すためではないか。

 

やや早歩きで演習場を後にし、ウタハさんと二人で部室に戻ると、何やらキラキラした表情のアリスちゃんが何かを見つめていた。

 

「わぁ、うわぁ……!」

 

凄い。なんて光だ。心が浄化されていくみたいだぞ。

純粋さとはこうも素晴らしきものなのか。

 

『あれは一体?』

 

隣に立つウタハさんに私は問いかける。ただのオブジェクトにしては外見が妙だし、パーツにしては既に纏まりすぎている。

 

「【光の剣:スーパーノヴァ】さっきテストしたPYTHONの技術を流用した改良発展型さ。コンセプトも変えてある」

 

『コンセプト?』

 

「ズバリ、宇宙戦艦さ」

 

壮大だ。作れないとは言いきれないのがエンジニア部の凄いところだね。

 

「本来はその艦に搭載する筈が、作り終えた時点で下半期予算の70%を持って行ったから今は中断している」

 

『よく作ろうと思ったね』

 

「ロマンがあるし、なにより笑えるだろう?」

 

笑顔でこちらに振らないで。反応しづらいよ。

 

それから私はエンジニア部の他二名、ヒビキちゃんとコトリちゃんに挨拶を済ませ、無事に元のパーティーへと帰還した。

 

「アリスちゃんがこんなに興奮してるの、初めて見たかも」

 

「……これ、欲しいです」

 

「……え?」

 

ヒビキちゃんは口をぽかんと開け、突然のおねだりの無いように理解が追いつかない様子。

しかしそんな事に構わずアリスちゃんは追撃を繋いでいく。

 

「偉大なる鋼鉄の職人よ、あの龍の息吹が欲しいのだ」

 

もはや文学的な表現ともとれそうじゃない?

 

「うーん、そう言ってくれるのは嬉しいのだけど……」

 

「申し訳ないのですが、それはちょっと出来ないご相談です!」

 

「何で!?この部屋にあるものなら何でも持っていって良いって言ったじゃん!」

 

「……それは、理由があって」

 

明後日の方向を見ながら耳をパタパタ動かすヒビキちゃん。

言えないというよりは、申し訳なさが立っているように見える様子だ。

 

「理由?もしかして、私のレベルが足りてないから……装着可能レベルを教えてください!」

 

「いや、悪いがそういった問題ではなくてだね……もっと現実的な問題なんだ」

 

「お金かー……。心配しないでアリス。私が、ミドリのプライステーションを売り払ってでも……」

 

「……お金の問題ではないよ」

 

「現実にお金以上の問題なんて無いでしょ!」

 

おっと、それは私にも突き刺さっちゃうぞ。

 

「まあ、製作にかける予算という意味では、ある程度同意はするけれど……この武器は、個人の火器として使うには大きくて重すぎる。アイツと同等さ」

 

アイツ、とは恐らくカラサワの事だろう。

 

「なんと、基本重量だけで140kg以上です!更に光学照準器とバッテリーを足した上で砲撃を行うと、瞬間的な反動は200kgを超えます!」

 

コトリちゃんの話した重量。それは銃というにはあまりに大きく、重すぎた。

砲撃という言葉が示す様に、これは大砲だ。個人が運用する物じゃない。

 

KARASAWAを撃った時のように、普通の生徒なら最低でも二名による使用からがスタートラインだろう。

 

一応完成している分こっちの方がマシだけど。

 

「……」

 

「コレをかっこいいと言ってくれただけで、私たちは嬉しいよ。ありがとう。持って行けるのならば、本当にあげたいところなのだけど……」

 

不甲斐ない顔をするウタハさんをよそに、アリスちゃんの表情は二転三転し、疑問から気づきへと移り代わった。

まるで一筋の光を見つけたみたいな、そんな顔である。

 

「……汝、その言葉に一点の曇りもないと誓えるか?」

 

「ん?この子、また喋り方が……」

 

「た、多分ですが【本当なのか】って聞いてるんだと思います」

 

「勿論嘘は言っていないが……それはつまり、あれを持ち上げるつもり、ということかい?」

 

その言葉を聞いたアリスちゃんは深く頷き、スーパーノヴァへと手を伸ばす。

 

「この武器を抜く者……此の地の覇者になるであろう!」

 

「ふふふっ、なるほど。意気込みは素晴らしいですね!」

 

持ち手らしき場所をしっかりと掴み、小さい体躯ながらもアリスちゃんは地面にしっかりと重心を置く。

 

「無理は、しない方がいい……クレーンでも使わないと持ち上がらな────」

 

ヒビキちゃんの心配を否定するかのようにスーパーノヴァは音を軋ませ、アリスちゃんが放つ刻苦の声に比例して、じりじりとその巨体が揺らぎ始める。

 

「……まさか」

 

ゆっくりと、着実にだが重力の束縛から解放されていくスーパーノヴァ。

そしてアリスちゃんが完全に地面から離したかと思えば、淀みのない、極めてシンプルな動作で頭上へとしっかり掲げられてしまった。

天へと突き出された腕は全く震えることなく、安定性を損なう不安要素はとうに排除されていた。

 

「えぇぇっ!?」

 

なんということだ。

先程までの重さはどこへやら、まるで相応しき者の手に渡ったかのように、スーパーノヴァは元の位置に戻ろうとはせず、アリスちゃんによって従えられてしまった。

 

一体その細い身体の何処にそんな力があるのか。そんなありえない話ではあるが、確かにここに存在しているからにして、認める他ないだろう。

 

「……も、持ち上がりました!」

 

満面の笑みで彼女は最初のミッション完了を報告する。その言葉に事実の再確認を受け、一同は驚きを隠せずには居られなかった。

 

「嘘……信じられない……」

 

「えっと、ボタンは……これがBボタンでしょうか?」

 

大剣を彷彿とさせる取り回しに、その図体は確かに合っている。質量200kgという数字を耳にしていなければだが。

 

「ま、待って……!」

 

ヒビキちゃんの静止虚しく、押されてしまう謎のトリガー。ビジュアルからしてあれが何を意味するのか、私は一瞬で察した。

 

(──────!)

 

「……っ、光よ!!!」

 

アリスちゃんが発動を宣言したとほぼ同時。あのPYTHONとほぼ同時の電磁が駆け巡り、重心に込められた光は青白く暖かな光を纏わせる。

 

咄嗟にモモイちゃんとミドリちゃんに覆いかぶさり、来たる衝撃へと備えた。

 

刹那、KARASAWAを彷彿とさせる超新星の奔流が私から視覚を奪う。

 

瞼を閉じるも、あまりに強烈な光はソレを貫通し、今私が目を開けているのか閉じているのか、それすらも確認できない程である。

 

遅れて次に轟音と熱風。衝撃波が同時に襲いかかってくる。

耳の感覚も焼かれ、ジャケットがはためく。

空気が逆流しているのだ。

 

やがて数十秒たった後、私は目を開き、目の前の光景に息を呑む。

 

「あああああっ!わ、私たちの部室の天井がぁ!?」

 

「……すごいです」

 

破壊された天井からは青空が確認でき、更に向こう、雲に届かんとする光が一つ。

アリスちゃんが真上に向けて打ち上げた事により、加速の向こうへと突き進む弾丸はもはや真昼の星と言ってもいいほど輝いていた。

 

パラパラと、細かな瓦礫が肩にかかる。

 

「アリス、この武器を装着します」

 

「ほ、本当に使えるなんて……で、ですがそれだけは、その……!予算とか諸々の問題で、出来れば他のでお願いしたく……!」

 

焦りながら引き留めようとするコトリちゃん。手足をあれやこれやと動かしながら必死だが、それも無理はない。

恐らくこのレールガンを作るのには並々ならぬ努力や技術、血と汗の結晶というプロセスを踏んでいる。

 

それを思えば、至極当然だ。

 

「……いや、構わないさ。持って行ってくれ」

 

しかし部長は約束通りに、キッパリとした態度で示した。

まだ小さな子供の純粋な約束を、守ってみせた。

やはり信じて正解だろう、これは。

 

「ウタハ先輩……本当に良いんですか?」

 

「ああ。どちらにせよ、この子以外には使えないだろうからね」

 

ミドリちゃんからの再度の確認にも答え、ウタハさんは理由を提示した。

まるで聖剣みたいな理由だ。この場合、カテゴリとしては電光剣とでも付くのだろうか。

 

弾丸を放つ剣も、それはそれでアリだろう。もしかしたら、どこかの世界には存在しているかもしれない。

 

「ヒビキ、後でアリスが持ちやすいように、肩紐と取っ手の部分を作ってあげてくれ」

 

「分かった。……前向きに考えると、実戦データを取れるようになったのはありがたいかも」

 

「うわ、何だかものすごい武器をもらっちゃったね!ありがとう!」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

心の底からの感謝を伝えるアリスちゃんに、その電光剣は何故か良く似合っている。

 

「いや、お礼にはまだ早いさ」

 

「え?」

 

「さて……ヒビキ、以前に処分要請を受けたドローンとロボット、全機出してくれるかい」

 

「……うん」

 

「えっと……ウタハ先輩?なんだか展開がおかしいような……」

 

「これってもしかして【そう簡単に武器は持って行かせない】みたいなパターンじゃない!?」

 

「その通りさ」

 

あっけらかんと答え、ウタハさんは後ろに引き連れたダンボール達の中をゴソゴソと漁りながら続ける。

 

「その武器を持って行きたいのなら……」

 

「私たちを倒してからにして下さい!」

 

コロコロ変わるね、コトリちゃんは。表現豊かに繋げる姿が面白いぞ。ノリノリだ。

 

「!?」

 

「えええっ!そんな、ウタハ先輩どうして!?」

 

「ぶ、武器一つの為にここまで……?」

 

「他の武器なら、喜んで渡しただろうけど……その武器については、確認が必要かなと思ってね」

 

「か、確認?」

 

「いや……【資格】と呼んだ方が相応しいかな」

 

「資格?それって……」

 

肯定の報せか、私の予想よりも早く準備を済ませたモンスター達が部室の奥から群れをなして堂々と登場してくる。

 

「前方に戦闘型ドローン及びロボットを検知、敵性反応を確認。来ます!」

 

これがアリスちゃんを含めた最初の戦闘になる。あくまで私は助っ人的存在だし、遠巻きに見物させてもらうとしようか。

 

 

 

 

 

 

──────

 

 

 

 

 

「……素晴らしい」

 

「くっ、悔しい……ですが、これが結果ですね!アリス、その【光の剣】はあらためて、あなたの物です」

 

フィジカルではゲーム開発部の方が上ではあったが、その差をエンジニア部は武装で補っていた。

見ていても中々退屈しなかったね。

 

「わぁ、わぁっ……!」

 

「ふぅ、とりあえず良かった」

 

「それを使いこなせるなんて、本当にすごいね……。おいで、アリス。もう少し使い方を教えてあげる。それから、取っ手の部分をもう少し補強しようか」

 

可愛がり甲斐があるな、アリスちゃんは。……あっ、私にとってのオンリーワンはホシノちゃんのままだからね。

 

「ちょっと良いかい?」

 

私の肩をつついたのは何やら神妙な顔つきをしたウタハさんだった。

小さな声で告げられる声に耳を傾けてみれば、内容からしてどうやら私と似たような考えに至ったみたいだ。

 

「最低でも1トン以上と推定される握力、発射時にもブレない安定した体幹バランス、強度や出力は勿論、肌全体に傷すら見当たらない綺麗な肉体……いや機体。つまり、最初から厳しい環境での活動を想定し、ナノマシンによって【自己修復】することを前提として作られた体……」

 

出会ってからそこまで経ってないはずなのに、そこまで見抜くとは。観察眼も冴えているようだ。

いや、でなければここには居ないか。

 

「その目的はきっと…………【戦闘】、だな」

 

ウタハさんは意地悪だね。私に言うことだろうか、それは。

 

「すまない。……杞憂だったか」

 

『誰だとしても、あの子はあの子だよ』

 

「エンジニアとしては気になるが……それもそうか」

 

 





KARASAWA

ムラクモ社が廃墟で偶然発掘した謎の兵器。機関部以外はとうに喪われており、エンジニア部が開発した簡易機構を用いる事で一発だけ発射が可能であった。

そのサイズと重量から、大型の人型兵器が扱う物ではないかと推測されている。

██の追記

ある程度の信仰を得たものはその世界に記録され、形は違えども必ず登場します。その世界のシリーズが、世界の根幹が続く限り、永遠に。

何故、コレがキヴォトスにあるのでしょうかね?

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