1週間サボってしまい申し訳ありません。サボってる間にアニメ最終話を見たり3章を読みました。取り敢えず地下生活者はターゲットです。
スオウ、あなた……フォグシャドウみたいなアセンじゃないですか。
次回の投稿は2週間後になりますのでご了承ください。
片方の手を鎖で机に繋がれ、椅子に座るようジェスチャーで促されると、私は渋々そのパイプイスへと腰掛けた。
私の今いる場所、それは窓ひとつ無い簡素な机と椅子だけの部屋。
明かりは頭上のLEDだけだし、歓迎のお菓子やお茶もある訳では無い。
モノクロのみで構成された部屋模様に、机の上に置かれたバインダーと数種類のファイル。
つまりは、取調室だ。
左手方向に見えるのは恐らくマジックミラーであろうか?黒く光る表面には私ともう二人の生徒の顔が写っている。
試しに手でも降ってみようか。誰が見てるか知らないけど。
「あの……いいですか?」
こめかみをポリポリと掻きながら若干困惑気味に話しかけてきたのは、菫色のツーサイドアップに白のジャケットと黒いブレザーを着こなした少女。名前は早瀬ユウカ、と言うらしい。
連行される途中に聞いたけれど、ミレニアムの生徒会であるセミナーに所属、会計担当であり、ゲーム開発部とも何かと接点があるとの事。
ユウカちゃんは私の対面にある席に座り、手元の資料らしきファイルをパラパラとめくり始めた。時折スマホの画面をタップしながら、何かを探している様子だ。
「無理やり連れてこられた割には、大分大人しいですね?もっと抵抗してくるかと思っていたのですが……」
もう一人、ユウカちゃんの横に立ってこちらを訝しげな目線で観察してくる人物が。
フワフワとした印象のメイド服に、黒縁の眼鏡をかけたこの少女は、自身の事を【ゼロスリー】と呼んでいた。
……その後、ユウカちゃんに【アカネ】と当然に呼ばれていたが。
恐らく、本名はアカネなのだろう。
「分からないわよ、相手はあのレイヴンだもの。今この瞬間にもよからぬ事を企ててるかもしれない」
「現時点では私たちの方が良からぬ事をしている気がしますが。ほとんど誘拐みたいなやり方でしたし」
「仕方ないでしょ。こうでもしないと先生が必ず介入してくる筈よ」
この二人の目に私がどう写ってるのか知らないけど、少なくとも善良な一般生徒として扱われていないのは確実だね。
ユウカちゃんは時折資料を読みながらこっちをちょいちょい見てくるし、アカネちゃんの方は一見しただけでは伺えないが、瞳の奥には確かに警戒の色が宿っている。
私の仕事内容は基本的に第三者へ渡ることは無いし、もしそうなれば契約違反で専用の処置が相手へと施される手筈だ。
この二人や、セミナー等の各学校に私の経歴が漏れているとは考えにくい。
きっと文字通りの目撃者からの情報だろう。最近は意識してミッション領域周辺には通信阻害のECMフォグを出したり、ラナが直接ハッキングしてデータを消したりはしているが、直接目で見たものを消せはしない。
巻き込まれた一般人か、捕らえた賞金稼ぎか、大方そういった子達の噂のみが私を知りうる情報か。
「しかし、先生は必ず不審に思う筈です。どうやって切り抜けるおつもりですか?」
「尤もらしい言い訳なら幾つかあるわよ。この位の事情聴取なら独立傭兵相手には問題ないわ」
「いえ、そこではありません。問題なのは、先生を同席させなかったことです」
「………知らなかった、で通るかしら?」
「確率は半分程でしょう。どちらにせよ、ユウカへの好感度に変化が起きるのは間違いありませんね」
それを聞くと、ユウカちゃんは苦虫を噛み潰したような顔でファイルを閉じた。
無理やり連れてこられた、というのは半分間違いで半分正解だ。
まさか部室に帰る途中で弾薬補給の為に一人で寄り道したところを狙って来るとは。
直接私を取り抑えようとしたアカネちゃんではあったが、思いの他拮抗状態に移行してしまい、結局はユウカちゃんによる背後からの不意打ちスタンガンで仕留められる事となった。
かなり痛かったよ。
そして、ここに運ばれる道中で目を覚ました訳だけど……別に逃げ出すことくらいなら出来たのだ。この程度の鎖や手錠なら簡単に引きちぎれるし。
それでも敢えて連行されてきたのには、理由がある。
「……取り調べを始める前に、まずは確認なのだけれど、この写真に写っているのはあなたで間違いないわね?」
ユウカちゃんがそう言いながら差し出したのは一枚の写真だった。ぶれているせいで分かりづらいが、小さな赤い光と9が記されたジャケット。握っている銃からして私本人で間違いないな。
裏面を見てみると、日付が小さく記されていた。意外にもその日付は古く、私がトップランカーとなって直ぐの頃の物だった。
私はユウカちゃんに向かって頷き、その通りだと意を返す。
「そう……あなたが。安心してちょうだい。簡単な質問に答えてくれれば、直ぐに終わる手筈よ」
なら、いいんだけど。アリスちゃんとか皆にあまり心配かけたくないし。
そんな呑気な事を考えていると、ユウカちゃんが口を開いた。
「見ての通り、セミナーはかなり以前からあなたに目をつけていたわ。どうやら噂に違わぬ実力のようね」
「…………」
アカネちゃんが目を細め、眼鏡は鋭くライトの光を反射する。
その表情には微かな疑心と多少の期待が混じっていた。
「独立傭兵レイヴン……主にアビドス近辺で活動しカイザーに、ムラクモ、その他企業等の依頼を主に遂行し、相手は選ばない。しかも依頼達成率はここに来るまで100%を維持」
ファイルを横に退け、机の上で両手を組みながらユウカちゃんは続ける。
「傭兵審査リストのカラードでは短期間でトップランクを獲得。しかしそれだけの名声にも関わらず、分かっているのは簡単な容姿のみ」
そのはずだ。出来るだけ痕跡を消し、傭兵としての存在感を消す。それが私にとっての最善なやり方だ。
元の生活になるべく近づく為の。
「会長からの付け足しによると、アビドスでのカイザーの一件にも関与してるって話だけど……」
そこはノーコメントだよ。あまり繋がりを疑われたくないからね。
私は首を動かさず、真っ直ぐとユウカちゃんの瞳を見つめる。
「あの事件は中々の衝撃でしたね。アビドス高等学校の借金問題やサイレントライン、果てには未知の人型兵器なんて噂まで」
「そう、それよ。もし本当ならば、私達はあなたの持つ影響力に対処しなくてはならないの。あなたが何故ミレニアムに来たのか、私達はそれを知る為にここにいるの」
やっぱりか。多分私を企業の送り込んだスパイではないかと、セミナー側は考えているのか。
けど生憎、今までそういう映画みたいな依頼は来ていないし、ここに来たのは単なる休暇だからに過ぎない。
別に重要機密を抜き取る為じゃないし。
「質問はこれともう一つの方だけよ。それが終われば直ぐに帰すわ」
ユウカちゃんは腕を組み、背もたれへと寄りかかってリラックスした姿勢を取る。
言わなきゃ帰してもらえないというのは、よく分かった。
信じてもらえるかどうかは別として、正直に話して損はないでしょ。
私は会話の為にあの端末を取り出そうとジャケットの内ポケットを探るが────
(………?)
無い。というか私の装備品は何処だ。銃や弾倉はおろかチェストリグや小型のバックパック、音楽プレーヤーすらも無いよ。
私は焦りながら制服のポケットを探るが、どれもぺったんこ。
「お探しの物ならここですよ」
そう言ってアカネちゃんが見せつけたのは、紛れもなく私の愛用している装備品達だった。どことなく皆主人から離れて悲しそうに見えるぞ。
「……………」
ああマズイ!ユウカちゃんからの目が怖いぞ。私はただ話したいだけなのに!抵抗しようだなんて思ってないよ!
慌てて以前にもやったように、指でバツを作ったり喉を指さしたり、タイピングの仕草を表すジェスチャーを実行して誤解を解こうとするものの、状況が違うせいか、それとも慌てる私のジェスチャーに纏まりがないせいか、ますます目つきが鋭くなっていくばかりである。
脳が冷え、順番を変えて試行しようとも結果は変わらず、ただただ鼓動が増していき眼差しに怯えそうな私の目は見開かれていく。
依頼主に口止めされていると受け取っているのだろうか。
(何か無い?何か!)
このままでは私があらぬ容疑をかけられてしまうぞ。
助け舟を求めるはアカネちゃんしか……。
「そんなに見つめられても、今はまだ返しませんよ?」
(そっちじゃないよ〜〜)
私が欲しいのは武器じゃなくて会話だって証明しなくては。しかしそれを伝えようにもその会話用の端末が必要という負のループ。
厄介すぎるぞ。
机の上を指でなぞって文字を描くが、指先に墨をつけているわけでは無いし、結果として残るは指の擦れる音だけ。はたから見たら何をしているのか全く分からないだろう。
事実として、必死な私の突然の奇行にユウカちゃんは憐れみの視線を向け始めているのだ。
「………アカネ、念の為装備品を見せてくれる?ここまでの執着具合、目に余るわ」
「よろしいのですか?何か仕掛けているかもしれませんが……」
「………私の見立てではその可能性は低いけど」
(やった!!)
私の思いが伝わったのか、ユウカちゃんは装備品を受け取ると、一つ一つ中身を机の上に置いていく。
ただし、銃やナイフ等の武器は全てアカネちゃんへと渡されてしまったが、まあそこはどうでも良い。
音楽プレーヤーと、カセットテープや財布、応急処置用の医療品、次々と並べられていく物品の中で、一際輝いて見える端末が一つ。
「じゃあ………質問の仕方を変えましょうか」
ユウカちゃんが前へと乗り出し、頬杖をつきながら私の奥へと語りかけてくる。
赤を小さく差し込んだ菫色の瞳に、私の右眼が重なった。
「あなたはまず、質問に答える気はある?」
勿論。私は深く頷き、精一杯の誠意を押し出す。
「なら良いわ。……でもここまであなたは喋った事がない、一度も。監視カメラやドローンでもそれは確認できなかった。一体なぜかしら?」
答えたくても、答えられない。けど、こういう場面に丁度いい言葉がある─────目は口ほどに物を言う、だ。
「私の推測が正しければ……あなたは喋れない、そうよね?」
息が、かかる。ほのかな暖かさが近寄り、きめ細やかな肌によく映える唇から、求めていた質問がようやく来た。
ここまで近づいてようやく伝わるとは。
難儀な物だ、私はどうやら人であるために必要な要素を一つ失っているのか。
瞬きひとつを介して若干口元が緩むと、ユウカちゃんは姿勢を戻して私に手に取るよう促す。
「……きっと、これが必要でしょう?」
私を繋げる一つ。会話のためのあの端末をしっかりと手元に迎え入れ、その重さを実感する。……次がないことを祈ろう。
「アグレッシブな証明ですね。それだけ積極的なのに何故……」
「黙ってて」
結局は年頃の少女か。……それで、いいのだけれど。
長く眠っていたとはいえ、年齢的に私はこの場の誰より年上である。目線も変わってしまうのだ。
アカネちゃんに一瞬睨みを効かせた後、ユウカは先程よりも少々トーンを上げた声で問う。
「それで……レイヴン、調子はどうかしら?」
『良好だよ』
ちょっとしたスリルからか、指は軽やかに短く返事を返し、ようやくまともな取り調べが始まった。
「じゃあ改めて答えてもらうわ。あなたは何故ミレニアムに来たのかしら?」
『遊びに』
「遊び!?」
先程まで纏っていたシリアスな雰囲気はどこへやら、ユウカちゃんの意識は数秒彼方へと飛ばされ、口がぽかんと開いたまま。瞬きを数回繰り返し、予想外の答えを飲み込もうと計算外のエラーを処理する。
一方アカネちゃんの方はそこまで意外という感情は見せず、やっぱりとでも言いたげな顔で口元に指を当てていた。
やがてユウカちゃんは意識を取り戻し、目を少し見開きながらちょっぴり早口で問いかけてくる。
「遊びっていうのはつまり………文字通りそのまま?あなたの場合だと、ゲーム開発部に……例えばその、ゲームを遊びに来たりとか…….」
『それで合ってるよ』
「………アカネ、反応はどう?」
頭を抱えたユウカちゃんは呟く。
「ありませんね。私としても、今の発言に嘘は無いと思いますし……」
アカネちゃんの証言にユウカちゃんは「そう……」とだけ答え、私に再度視線を向ける。
「一応聞くけど……あの子達とはどういう関係?」
『友達』
本当はそれと同時にパーティーメンバーでもあるのだが……隠語みたいに解釈されたくないし、今回はそれだけだ。
「なるほど……いえ、信じるわ。あなたが噂通りの人物なら無理だったけど、こうして見ればそっちの方がしっくり来るし」
ため息を吐きながら、ユウカちゃんはゆっくりと背もたれに体重の何割かを預ける。
「他の情報は既に多く揃っていたから、後は判別するだけだったのよ。ただ……結果として、最も考えづらく、最も良い解が出てきたけれど」
「真実は実力のみでしたね。どうです?今からでもメイド部のエージェントとして入ってもらうというのは」
『遠慮するよ』
半分冗談、半分本気と捉えられる提案を蹴ると、アカネちゃんは残念そうに目を伏せる。
「ところで、先生とはどういう関係?」
……なんだか見る目が怖いよ、ユウカちゃん。
『ボディーガードを任せたいって依頼が来てたから、それで……』
「ふーーーん」
「ユウカ?その話は後にしましょう。今はもうひとつの方が先決です」
「…………………分かったわ」
長い沈黙を挟んで渋々といった具合に了承すると、ユウカちゃんはファイルをパラパラと捲り、クリップで一枚の写真が停められた文書を抜き出し、私の前に置いた。
「あなた達が廃墟から持ち帰ったデータであるG.Bible。それには厳重なパスワードが仕掛けられているの。ミレニアムでもハッキングに特化したクラッカー集団、あのヴェリタスでもお手上げのね」
『知ってるの?これまでの経緯を』
「私も全てを知らされている訳じゃないわ、これはリオ会長から聞いた物だから。……あの人の目は各地に張り巡らされているのよ。ああ、安心して、廃墟に行ったこと自体なら今回は見逃すから」
『それはよかった』
「話を戻すけど、そのパスワードを解除する手段が一つだけあるわ」
ユウカちゃんは写真をトントンと指で叩く。写真に写っているのはどうやらカバンサイズの機械のようで、所々にケーブルが繋がれている。
「Optimus Mirror System………通称【鏡】。暗号化されたシステムを開くのに最適化されたツールよ。これがあればG.Bibleのパスワードも解ける筈」
『………もしかして依頼の話?』
「ええ、そうよ」
続いてユウカちゃんが取り出したのは、ミレニアムの地図と多少のメモが添付された、ブリーフィング用の書類だった。
「鏡は現在、私達生徒会の差押品保管所に在るわ。ゲーム開発部とヴェリタスは必ず、鏡を手に入れようと襲撃をかけてくるでしょう」
「あんなに可愛らしいのに……ミレニアムの生徒会を襲おうだなんて、人は見かけによりませんね?」
アカネちゃんは同意を求めるように、首を傾げながらこちらへと視線を注ぐ。
「そこであなたには、約束の時間まで彼女達と行動し、合図を送った後に作戦領域から離脱して欲しいの」
『回りくどいね』
「これは譲歩よ。あなたとゲーム開発部の仲のもあるし、きっと同行を頼むはず。そうなった時の為のプランなの」
「作戦地域周辺には私達メイド部が防衛として配置されますので、役不足にはなり得ません」
確かにいい作戦だ。セミナー側につけば私とアリスちゃん達の仲にヒビが入るかもしれないし、かと言ってゲーム開発部側に肩入れすれば、皆は私を頼りにしすぎてしまうかもしれない。
あくまで私は助っ人。これ以上無い采配だと思うよ。
『私に演技の経験は無いよ?』
「そこは上手くカバーするわ。多少荒っぽくなるかもしれないけれど」
足を組み換え、時には手の指を合わせ、または視線を宙に這わせ、私は考える。
この依頼は、いわば私への信頼を利用した物だ。
私の考えには、そう上手く噛み合ってはくれない。
私は、何百回と裏切られようとも構わない。けれど、もし私自身が裏切るとして……私は自分のままいられるだろうか。
彼女達はどう思うだろうか。
『報酬は?』
「金額はこのくらいを予定しているわ。ミレニアムは最近財政状況が厳しくて……これより上げるとなると難しいのだけど」
電卓をカタカタと鳴らし、ユウカちゃんが提示してきた額。口ぶりからして企業の7割程の量かと思いきや、これまた驚き。その額は企業から齎されるものを当然のように超えていた。
金銭感覚が違うというより、相場を把握していないのかもしれない。もしくは、私のことをそれほど高く買っているのか。
なんにせよ、無視できるほどではなかった。
しかしだ。
『ごめんね。本当は依頼は受けつけてないんだけど……』
「何言ってるのよ、演習場に風穴を開きかけたじゃない」
(ひぃん……)
バレていたとは……。断りにくいぞこれは。いや、断る理由というのもそれはまあちっぽけなものであり、かと言って私には大事なのだが。
『せめて報酬はお金以外でお願いできる?』
「………アカネ、何か代わりの物はある?」
「そうですね……ミレニアム内で使えるフリーパスとかはどうでしょう?持っていれば、先生やセミナーの承認無しでも学園内を自由に行き来できますが……」
私はここに、シャーレの権限で入れさせてもらっているに過ぎない。その権限もミレニアムプライスが終われば失効するようになっている。
ミレニアムプライス後でもゲーム開発部の子達に会いたい、という思いも届かずにね。
まあ先生の方でフリーパスを作る事も可能かもしれないけど……直にセミナーから貰った方が容易そうだ。
ミレニアムのトップであるリオ会長という人物にはシャーレよりも近しいセミナーの方が信じやすく思われるだろう。
シャーレにはまだ、実績が不足しているから。
「それって持たせて大丈夫なの?」
「まあ、何かあれば私達が対応しますから」
「私達の信頼を担保にすれば承認はされそうね。レイヴンはどう?これで足りるかしら……?」
こめかみをおさえ、報酬に悩む振りをしながら私は自分に問いかける。
何もかも、私にとってはメリットがある。
デメリットは唯一の、ちっぽけな心の問題のみ。
はたしてこれは、裏切りなのだろうか?
私への期待の。
でもその期待は恐ろしさへとなりうるかもしれない。
あまりに強く、捻れた信頼は、かえって毒になりうる。
過去に起きた自らの経験から、私はそう考えるようになった。
『奪いに来るって知ってて、なんでわざわざ?』
「………確かめたいことがあるらしいの」
『何を?』
「さあ?秘密主義な会長の事だから知り得ないわ。けど私個人の考えとしては……見極めたいのよ、彼女達の想いを」
今迄よりも率直に、極めて通った声でユウカちゃんは続ける。
「あの子達のもつゲームへの熱意……可能性を証明する為に、どこまでやれるか。勿論、生半可な覚悟だったら返り討ちにするけれど……その気持ちが本当であるのなら私達へと真剣に立ち向かってくるわよ。例え私たちが相手でもね」
真っ直ぐな視線で私を見るユウカちゃん。どこか親心にも近しいその考えと想いを受け取り、私は同じ答えを見出すと─────小さなため息が零れる。
見極めたいという、想い。
貶めるためでは無い、裏切り。
ならばこれは……いや。
【一緒に、守りたいの】
そうか。その為の信頼、か。
……バレたとして、彼女達ならば、きっと笑って私の考えに理解を示すだろうに……そんな事に気づかず勝手に怖がるとは、私が彼女達を狭量が小さいと思っているみたいじゃないか。
そっちの方が、私には辛い。要反省か。
私は共に戦い、幾らか過ごして、そしてそこに部員という関係だけでは測れない確かな繋がりを見てきた。絆、とも言えるかもしれない。
故に力が及ばずとも、その輝きと目的への信念が誠のものであるならば屈する事は無いだろう。
もしも真に危機が訪れたのなら、私の出番だが。今回は別。
さて、憎まれ役という事であるが…………そもそも私自体そういう
「………矜恃がいるのかしら?レイヴン……」
私は姿勢を整え、その質問にはっきりと心の底から答える。─────私自身のアイデンティティを。
『私にはそれが必要なの』
その答えを受けてユウカちゃんは押し黙り、アカネちゃんは「変わった傭兵さんですね」と静かに零す。
正しくそう。お金の為だけでない選択。
灰のような信条だが、私にとっては変わらぬ本質。
私にとって力というのは、最終手段に位置した。
だからこそ、変わっても尚私は望むんだ──────振るわれる暴力が、挨拶代わりの日常にならない事を。
理由なき強さほど、危ういものはないから。
私は、私なりの理由を【あの日】、当てはめたんだ。
『その依頼、受けるよ』
「どこに行ってたんだい?」
『ちょっと道に迷っちゃって……ごめんなさい、先生』
「良いんだよ、ちゃんと合流出来たんだし。……何かあった?」
『いえ、何も?』