戦え!超ロボット生命体ユメパイセン   作:クソザコぎつね

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美しいと……思いませんか?(3章読了)
公式が最大手ですよ、本当。

心理描写とか、伏線回収とか、カタルシスとか。私も、より良い作品作りに励まなくてはなりませんね。




矜恃、もしくは本質

 

 

「速いッ!」

 

間違いない、先日戦った時に比べて明らかに動きが洗練されています。

かといって、あの時手加減されていたようにも思えませんし……というより、的確に対処してきていると称した方が正しいでしょうか。

 

私の苦手な近接戦闘へと積極的に持ち込もうとする動きが、証明になります。

 

「アカネ!!」

 

ユウカからの警告を受け、考える間もなくその場から緊急回避。

すると先程まで私の居た場所を光の柱が空間いっぱいに貫いた。

 

アリスちゃんの放つアレも、かなり厄介です。

 

瓦礫を踏み越え、懐から取り出した爆弾達をレイヴンの周りを囲むように投擲。

超反応で撃ち落とそうとするレイヴンであるが、それよりも早くいくつかの爆弾が床へと接触した。

 

カラン、と小気味よい音を立て─────起爆。

するとたちまちに地面が揺れ、戦闘によるダメージを蓄積させた床はついに崩れ落ちる。

 

「うわわっ!?」

 

「まさか!!」

 

崩壊した場所はレイヴンの位置からくり抜くようにして半径4m。

狙いは勿論、ゲーム開発部との分断だ。

何しろこのままでは射線が多くてやりづらすぎますから。

正面からはレイヴン、左右からはモモイちゃんとミドリちゃん。

気を抜いた所でアリスちゃんによる援護……私たちも全力で当たってはいるものの、未だに拮抗状態のまま。だからこそ、選ぶは打開の為のステージチェンジ。

 

制限時間になるまで守るとは言っても、全力を出さない理由にはなりませんので。

 

瓦礫と共に落下していくレイヴンを追い、爆発で開けた穴へと侵入を試みる。

視界の隅に私を狙おうとするモモイちゃんが見えましたが、無事ユウカの牽制により中断。

 

内心微笑みながら視界はスクロールし、明かりの微小なフロアへと移行。

ふんわりとスカートを揺らしながら、粉塵の舞い散る床へと優雅に着地した。

 

「レイヴンの位置は……」

 

上での戦闘による影響か、見渡すばかりフロア全体の蛍光灯は一部がチカチカと点滅するのみで、殆どが沈黙している。

恐怖を引き立てるような環境と言えるか。

 

上であれほど賑やかに騒いだ割には、雰囲気が違いすぎますけど……。

 

「──────!!」

 

この身が毛羽立つ感触と、重い空気。振り返ってみれば硝煙を纏いし影が、こちらへと一点集中。飛び蹴りであった。

すかさず右脚を軸としたターンによるステップ回避。

視界を横切る赤き瞳が残光を描き、不発の肉体は壁面へと激突。

 

(なんて破壊力……)

 

コンクリート製のビル内壁へ直径5mの風穴という結果を齎したその力に、私は身震いしてしまう。

当たってしまえば、ペースを持っていかれるのは確実でしょう。

 

ゆらゆらと立ち上がった後、身にかかった瓦礫達を振り払いながらレイヴンはじわじわ近づいてくる。

それが油断によるものでは無いということは、ここまでの戦闘で分かっているつもり。

 

恐らく、一種の挑発に値する行動でしょうか。

しかし乗ってあげるつもりはありません。

私は冷静にサイレントソリューションで頭部目掛けて発砲、と同時に後ろ手でレイヴンの回避先を読んで爆弾を投げる。

 

レイヴンは狙い通り─────上空へ飛翔。

 

こちらへとまた向かってくる。つまりは近接戦へと持ち込まれる訳だ。

 

(そうはさせません!)

 

スカートの裏から勢いよく引き抜き、取り出したるは、ムチのようにも見える一振り。

これから起きる事態を察したのか、レイヴンは腕を交差させ防御の姿勢を空中で取るが。

 

しかしこの攻撃、中々曲者。トリッキーとも言う。

 

 

 

瞬間、レイヴンの目前へと迫るは火花を散らす大蛇であった。

 

 

 

無論、言葉通り蛇が現れた訳では無い。だがその一撃は爆裂し、赤と黄によって織り成す色彩が花火のように光源としてフロア全体を沸かせる。

 

耳に届く破裂音のコーラスは決して下品ではなく、一団の統率が取れたグループであり、また、荒々しく叫びをあげる野性すらもその向こうに見出す。

 

その衝撃はたかが銃弾なぞとは比べ物にならず、愛用する爆弾達と同等の火力を遺憾なく発揮した。

 

身を焦がす熱と、食い破ろうとする火花の子達。

 

ついに空から─────カラスが堕ちた。

 

(中々いい使い心地ですね……今度頼んでみましょうか)

 

私が用いたのは、過去にエンジニア部から押収された兵器群の一部。

ワイヤー状の導線に炸裂弾を蛇の様に括り付け、投射と共に起爆。それによって相手へと重大な衝撃を与える効果を持つ代物。

 

名前は覚えていませんが、爆導索?という兵器に分類されるようです。

 

難点としては、扱いが難しい事と……在庫が今使ったこれっきりという所でしょう。

 

(今の内ですね……!)

 

地に伏した黒い影向けて、コッキングを済ませて一発。次いで畳み掛けるは解き放たれる数多の爆弾達。

確かに頭部へとヒットし、頭が跳ねたのを確認すると、その身へと次々に爆発の波が押し寄せる。

バックドラフトを彷彿とさせる程の熱量は凄まじく、コンマ一ミリの太陽を幻視する。

 

傍から見れば過剰とも言える火力を叩き込みましたが、これでもまだ安心は出来ません。

肩で息をしながらも、視線の先は常に真っ直ぐ炎の先。

 

レイヴンの強みは当たるだけでも致命的な格闘術に、奇襲へ特化した俊敏性。そして適切な対処を弾き出す柔軟な思考。

 

それを可能にするのはやはり────。

 

(骨が折れますね……)

 

荒れ狂う炎の獣。

内より食い破りて尚、そこに佇むは不変なる存在。

 

このフロア全てのチタン製シャッターを破壊できるほどの爆薬量。どう考えても無事では居られないはず。

しかし目の前でこちらへ依然と視線を向ける姿は、そんな甘い考えを払拭してしまう。

 

未だに身体はとしがみつく炎に物怖じせず、破片による切創からなる肉体的損傷を関せず、淡々とブーツを鳴らして、彼女は近づいてくる。

 

一言も発さぬという特徴も、影響しているでしょう。

 

私にはとても、目の前にいるのがどこか死神を想起させて仕方がありません。

悪夢にでも出てきそうなくらいに。

 

レイヴンを相手する上で最も危惧すべきもの………私が思うに、該当せしはその執念とでも呼ぶべき意思と読み取った。

 

(マズイ………この構えは!!)

 

軌道を曲げぬ、あからさまな一直線の突撃。たった一度の脚バネから引き出される初速と距離は常軌を逸しており、緩く曲げられた膝と踵の離れた足先へ気づく頃には既に──────私の目と鼻の先まで接近していた。

 

間違いなく今迄で最高速。反応からの能動を許さぬ理不尽なまでの一撃。

まさかここに来てパフォーマンスを上げて来るとは……!

 

「ぁッッ!?!?」

 

最初に感じたのは、何かが私の腹にめり込む感触。薄い皮膚一枚で到底守り切れる訳もなく、筋肉、内臓、ついでは骨へと。

段階的に減らされていくとはいえ、速さが速さ。

圧倒的な物理の暴力が生み出す純粋なエネルギーは遂に貫通し、私の背中までも内側から叩かれてしまう。

 

その次に襲うものは、痛みと音。身体をこねくり回されるような、捻れる痛み。無理な変形を強要される細胞一つ一つの叫びが脳を埋め尽くし、周波数は爆ぜて耳に届く。

 

成されるがまま、その蹴りを受け入れてしまった肉体に抵抗する能力は無く。

背部へとぶつかる風圧はその威力が、速度が如何程のものであるかを示し、極めつけにはシャッターを何枚もぶち破り、悶える暇もなく壁へと叩き込まれた。

 

「…………ッあ………ぐっ…!」

 

胴体を中心とした、全身への破壊。声を絞り出そうとするだけで身体が潰れるような、生きる事が苦痛に感じてしまう被害。

 

だらんと重力に負ける四肢に力が入るはずもなく。かといって私はまだ諦めてはいない。

唯一動かせる眼球から、レイヴンを逃がさなぬように凝視する。

 

蹴りの姿勢から鮮やかに立て直す一連の動作。その洗練具合からして、熟練度合いも測れるというもの。

 

「いい……ですね………やはり、あなたもメイド部に、来ませんか………?」

 

再度放つ私からの勧誘に、レイヴンはジャケットに隠れたホルスターへ手をかけようとする動作を停止し、首を左右に振った。

惜しいな……と思いながらも、本人が言うならば仕方がないでしょう。

アリスちゃんを6番目のエージェントとして迎えるというのも、あの結束の強さ相手では無理そうですし。

 

「………ふふ」

 

口元から不意に零れてしまう笑み。決して、私が狂った訳ではありません。

 

(あなたは……大分……らしくない人、ですね……)

 

未だにホルスターへ手をかけたまま、止まった手は少し震えているようにも見える。

あれだけの力があるにも関わらず、振るうことを躊躇い、恐れているようだ。

ギラギラと輝く赤い眼光に思わず注目してしまうが、本質はきっとそこではない。

 

だからこそ、不思議で、興味が惹かれる。

 

(なるほど………納得がいきました)

 

何故あの子達に味方するのか、何故矜恃を必要とするのか、何故そうまでして戦うのか。

ほんの少し、その片鱗に触れた気がした。

 

死神みたいだなんて、かなり失礼な事を考えてしまいましたね。

 

「私も……それに応えるとしましょう」

 

きっとその方が、良い方向に行きそうな気がします。

 

(部長には遠く及びませんが、だからといって出来ない理由にはなりませんよ)

 

生まれたての子鹿のようにプルプルと震える脚を腕で押さえつけながら、ふとこれも御奉仕の一種ではないかと解釈する。

そう考えてみると、ガタガタのこの身体も油を指したみたいに力が巡ってくる。

 

結果として私は根性で自らを奮い立たせる事に成功。

煤と細かな破片が付着したスカートをはたき、少し汚れてしまった眼鏡を拭いてやる。

 

レイヴンはホルスターから手を離しじっとこちらを見つめるばかりで、撃ってはこない。

今回の任務を確実に遂行する上でそれは必要なことではありますが……本人にとってはそんな事は二の次なのでしょう。

 

なんとなくですが、そんな気がします。

 

ひび割れていなかったことに安堵しつつ眼鏡をかけ、武装のチェック。サイレントソリューション用の弾薬は充分足りるでしょうが、爆弾の在庫はかなり少なくなってしまいました。

沈黙を保ったままのレイヴンを見やると、さっきよりどこかクリアな視界に、ハッキリと姿が映る。

 

私はその姿──────ではなく、自らの真上に向かって残りの爆弾達を一斉に放った。

 

予想通り、ここの天井は既に脆い。まるでウエハースだ。

 

爆音と共にバラバラと跡形もなく粉砕され、瓦礫がいくつも生成されていく。飛び散るそれらは私の周りへと囲むように落下。

バリケード代わりとしての効果を持たせ、残り少ない体力で私は頭上に開けた穴へと地を蹴った。

 

蛍光灯からなる光へ目を細めながら再度舞い戻るステージ、視界に入ってくるのはわずか生き残りのロボット達と、ながらも優勢気味のユウカ。

そしてそんな状況に耐え忍ぶゲーム開発部の子達。

 

「アリスッ!!」

 

少し驚いた表情ながらもモモイちゃんは指示を出し、受理したアリスちゃんは私が着地したと同時にその巨大な武器を向けてくる。

重量感を微塵も感じさせない動きで的確にロックし、私からは銃口がしっかりと確認できた。

 

「ターゲット確認……出力臨界点突破!」

 

迸る電磁から想像可能な射撃の為要されるチャージ。恐らくは完全威力の発揮……直撃すれば今の私では耐えられぬ必至。

されど、当たらなければ良い。

 

とはいえ回避出来る余力があまり残っていないと言うのが本音ではある。

フルで動ける時間も深刻な損傷により限られてしまったし。

 

だから私は信じ、その場に立つ。

 

避けるにはあまりにも無茶な光が瞬く。視界をジャックする。

ただ私へと矛先が向いていると分かるが、恐怖は無く。

アスナ先輩が一撃でやられた時の事が脳裏に過ぎるも、やはり私は真正面から直視する。

 

そして先程の蹴りを超える衝撃が貫くと思われた矢先──────。

 

 

 

(攻撃が私に命中する確率は…極めて低い!)

 

 

 

蒼き神秘を纏うヘクスの寄る辺。

 

激突するかと思われた衝撃力は、果たして私へと影響を及ぼす事はなかった。

吹き飛ばされそうな風圧も、聴力を奪う轟音も、皮膚を赤く染める熱風も何ひとつとして届かず、無効化されてしまった。

 

そんな馬鹿な、と言いたげに三人は表情を歪ませ、一人はやれやれとため息をつく。

 

「無茶な事するわね……」

 

「ユウカの事は、信じてますから」

 

ピースサインで返すと、ユウカは頬をポリポリと掻き、ゲーム開発部の三人へと向き直る。

 

「ユウカ……作戦内容は覚えていますね?」

 

聞こえぬよう静かに呟き、私は隣に立つユウカへ確認を促す。

 

「ええ……目標の時間まで残り少ないけど────何を考えているのかしら?」

 

私は、にやりと笑い返した。

 

「何よ、それ」

 

別に死ぬわけじゃないんだから、とユウカは顔に出す。実際その通りですが、少しはカッコつけさせてください。

私にとってメイドさんというのは、可愛いさと優雅を持つだけでなく、瀟洒で高潔な存在でもあるんですから。

 

(レイヴン……あなたの考えに、少し乗ってあげましょう)

 

最も優れるメイドに求められる能力は、どれだけ主人の考えを読み取り、それを実行するか。この場合において、主人の考えとは頭に起因するものだけでは無い。

 

そうして欲しいと思った時には既に"そう"されている。

 

それこそが真に頂点たるメイド。

 

私はまだそんな高みへと至ってはいませんが、少なくとも踏み入ることくらいは今、可能です。

 

開通させた床から飛び出す人影。確認した後、私はすかさずその場から移動し、窓際へと自らの場所を変更した。

それに釣られて、ではなく待っていたと言わんばかりに軽やかなステップで影が接近し……窓から射抜くネオンの光が正体を照らす。

 

その顔は、さっきまでよりもどこか人間味が垣間見えた。

 

飛びかかりと共に振るわれる左ストレート。空気を切り裂いて音を発する一発をさも当然かのように繰り出すというのは少し、異次元の領域に足を踏み入れている気がしないでもないが。

私は冷静にその迫り来る拳を視認し、真正面から受け止めるのではなく腕で下から押し上げ、いなす。

摩擦により多少熱は生じるが、それだけ。

力のベクトルを曲げれば無駄に力や体力を消耗せずにすむ。

 

残った爆弾の数はゼロ。私自身の近接格闘も、まだまだ未熟。

しかしこの場面においては渡り合う事を求めるでなく、必要な条件は充分満たしている。

 

続いて鼻先へ突き出すように寸前へと迫るハイキック。これも私は最小限の動き、つまりは上体を逸らすのみで回避した。

一気に曲げたせいでダメージが蓄積したままの腰に激痛が走るも、再度上体を起こす時にはにはどこかへ吹き飛んでいた。

 

そしてこのハイキック、かなり後隙の大きい技だ。自分を支える物が一つ減ってしまうし繋げる技も少ない。ニュートラルな姿勢とバランスを戻すためにそうなるのも無理ない。

 

私はそこを狙い、軸足への足払いを実行。

 

支えを完全に失い宙へと放り投げだされた身体は勢いよく床に叩きつけられる。幸運なことに、その衝撃からか手に持っていたハンドガンも同様に持ち主から引き剥がされた。

 

追撃は──────無理そうだ。

 

焦る様子もなく華麗に復帰するその姿が、ちょっぴり羨ましいです。

 

それからも止まらぬ連撃が続くものの、私は膝を着くことなく、さばく事に徹し続ける。

一進一退の攻防だなんて、そんな殺伐とした、シンプルなものでは無く。

意味を含めた、大事な一戦へと昇華させる。

 

見るものによっては、この光景に踊りを見出すやもしれない。

クイックな攻撃の連続に、スローステップを織り交ぜての緩急。血と汗によるぶっつけ本番じゃなく、打ち合わせでもしたかのような格闘の重奏。

 

実際全てアドリブであるが、どちらも互いに歩み寄る姿勢が為せる技か、不和は生まれない。

 

まるで見世物、されど本気。でなければ伝わらず。

結果として場に居合わせた四人は遮蔽物に隠れ、手に持つ武器を握りしめながらも、目を離す事が出来ずにいた。

 

例外としてロボット達は攻撃の手を止める事は無かったが……。

 

時間は気にしなかった。どこか満ち足りる心と集中力の前に、相対性が働く。

 

しかし、終わりは必ず来るもので。

 

(──────!!)

 

レイヴンはわざとらしくジャケットをはためかせる。私はピントの合わない視界ではあるものの、その奥に光る物だけは、しっかりと認識できた。

 

口角を少しあげると、レイヴンは目をしばたたき返してくる。眼帯のせいかウインクを彷彿とさせ、良く似合う。

 

さて、ここに来てレイヴンは私に真正面からの突撃を実行した。

数分前のデジャヴを感じるが、それとは違い、私に来る衝撃は微々たるもの。

倒れそうな身体へと手が伸ばされ、まるで支えているかのように膠着する。

 

どこかその手つきに優しさを解釈してしまうのは、私の勝手かもしれない。

 

だとしても──────それはせめて、という類に属するが。

 

レイヴンの手には先程まであるべき場所にあったはずのものがしっかりと握られてしまっている。

私も愛用する事があるから、直ぐに理解出来た。

 

黒金の輝きと、リングの形からなるピン。

 

 

 

 

つまりは──────自爆。

 

 

 

 

次の瞬間、眼前に溢れ出る熱量と光。私の意識は爆風と共に吹き飛ばされ、そこで途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて目を覚ました時、身体の節々に鋭い痛みが走りながらも、私自身の意識はそれほど辛くは無かった。

 

『気づいた?』

 

薄く瞼を開けると、任務中よりも遥かに分かりやすい表情で心配そうに見つめる人物が一人。

レイヴンだ。

 

「……………ええ………」

 

『もう少し安静にしてて。そろそろ迎えが来るから』

 

多分、一日位は入院した方が良さそうですね。強がっても、痛いものは痛いので。

 

「…………成功、しましたか?」

 

レイヴンは何も言わず、しかし表情からして満足した様子だった。

視界の隅では私の居たビルが小さく映り、戦っていたフロアに設けられた窓の内、一つが割れていた。

 

爆煙に紛れて離脱し、信号を切ったのだろう。

 

ここには、私達しかいなかった。

 

『ありがとう。まさか気づいてくれるとは思わなかったけど……』

 

「私はメイドですよ?………出来て、当然ですから」

 

『カッコイイね』

 

「………ふふっ」

 

任務の持つ意味。それを求め、信じるからこそ……でしょうね、あなたは。

 

「きっと、伝わりましたよ。あなたの望むものが………」

 

アドリブ混じりな手探りだとしても、確かに触れたメイドとしての本懐。

果たせて私はこの上なく穏やかに、そう呟いた。

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