戦え!超ロボット生命体ユメパイセン   作:クソザコぎつね

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波紋

 

 

恐らく、夜

 

月明かりは──────無く。

かといって星が出ているかと言えば、それは違う。

暗い、ただひたすらに暗い闇だけが広がる場所。

実際に私が見たことある訳では無いけど……多分深淵という言葉が一番似合っているであろう、ここは。

 

そんな場所に、私は立っていた。

 

(夢………だよね………)

 

頼むからそうであって欲しい、と思わせてくるくらいには、居心地が悪い事に違いは無かった。

少なくとも最後に持ち合わせている記憶は、ここに至るであろうルートに当てはまらない。

 

そもそも突っ立っている状態から目覚めたのだから、私にとってはありえない事だ。

私に立ったまま眠る習慣はないし。

目覚めた、という表現も恐らく夢であろうこの状況に即した使い方では無いが。

 

さて、ここが一体どれくらいの暗闇であるのか……簡単である。

瞼を閉じても開いても、大した違いが無い。

お魚さんでもない限り分かりやすい例えであろうな。

 

光が一切として無い……つまりは、光の反射によって物事を認識する私の目も役には立たない。

いや、夢であるからそんなリアリティは超越できるのではないかという想像も大いにあるのだが、実際にある結果として私は今自分の手足がちゃんとあるかすら心配になってきている。

 

五感による知覚の割合は、視覚が83%、聴覚11%、嗅覚3.5%、触覚1.5%、最後の味覚が1%となる。

多少の誤差はあるかもしれないが、大体このくらいであったと私の記憶は告げている。

勿論、実際に調べた訳ではなく本で読んだ時の知識である。

その本が間違っていなければ……視覚を失う事の重要性が分かるだろう。

 

試しに大声を張り上げてみるのはどうだろうか?

ここがタチの悪い……具体的に言えば、明かり一つ入らない、究極の無響室とかでなければ少しの安心感は得られるかもしれない。

ああ、これが明晰夢では無いことは既に分かっている。もしそうだったらとっくにこんな環境からおさらばしているからね。

 

しかしだ。

何とも張り詰めた空気が場を支配していることは否めない。

声を発しただけで射抜かれる……そんな直感が身体を拘束しているのだ。

 

と、その時。

 

場に一つの閃光が走った。

辺り一帯を瞬間的な真っ白さが包み込み事で、ようやく私が今立っている場所が理解出来た。

 

(アビドス…………)

 

それもただのアビドスではない。

確かに砂漠地帯であり、各所に点在する廃墟と化したビルや、めくれ上がった道路はキヴォトスにおいてそう多くあるものではない。

悔しいけど、アビドスにしかないであろう特徴だ。

だが記憶よりもこの場所は……荒れ果てていた。

 

またもや、鋭い光が宙を駆け。

ふと、手元を冷たいものが流れる。

今度のは先程よりも大きく、断続的な光が視界を照らし……状況を詳しく教えてくる。

 

いくつも重ねられた瓦礫。削り取られたような、捻り切られたような歪な地形。

その隙間を縫うようにして存在していたのは──────幾人もの死体であった。

 

ハッキリと、わかった。

 

(──────ッ!!)

 

焦点が定まらぬまま見開かれた眼球。

既に酸化が進行し、全身を黒く染め上げる血液。

逆方向に曲げられた四肢。または欠損。

 

果てに……消失したヘイロー。

 

生存の見込みはゼロ。

 

(ぅぷ………!)

 

良識、価値観、つまりはコモンセンス。全ては正常に作動していた。であるから、途端に私を襲うのが吐き気と嫌悪感というのは想像に難くない。

幸いな事に、二回瞬いた光の影響で自身の肉体の有無は確信していたから。

両手で口元を抑え、腹の底から込み上げてくる逆流物を押し留めようと意識を回す。

するとそこで、私は気づいた。

 

自分の手に付着した、冷たいものの正体だ。

 

絶対に、そんなはずはないと自らに言い聞かせるも──────三度目のスパークが、残酷に暴いてしまった。

 

(…………そんな………うそ………ちが……!)

 

私の手をびっしりと染め上げていたのは……その者達の酸化した血であった。

ある程度乾燥しているからか、こびりついており、身の毛がよだちながら必死に拭うものの一向に落ちることは無い。

 

よく見れば、血液だけではなく。

爪の隙間に食い込む、粉々にすり潰された肉片や、硬い感触を未だに維持する骨片。ビリビリに破かれた皮膚も余計に含まれていた。

ただ血だけであったならば精神の逃げ場はあっただろうが……もう既に退路は立たれてしまったのだ。

 

戦慄する私を嘲るかの如く、断続的な稲妻は手元を……目の前の凄惨な光景を見せ続ける。

 

(いや………いやだよ………こんな……私は──────!!!)

 

信じたくなかった。

認めたくなかった。

こんな真似をしたのが自分であるとは信じたくなかった……故に、だろうか。

 

止まぬ霧雨、その奥に人影を見たのは。

 

(誰………?)

 

万雷の拍手とも、祈りのコーラスとも、断罪を望む民の罵詈雑言とも錯覚する雷雨。

そこへ身を落としていたのは、私だけではなかった。

 

しかしその影に、私は酷く見覚えがあった。

 

そんな思考がよぎると同時、まるでスポットライトのように逆光が発生した。

その逆光は影の背後から現れたみたいで、空気中の水滴による反射の様子からして、神々しさを感じさせる。

 

そして逆光の中心、いわば影自身が光を発した。その発光というのは、いわば星の瞬きに近いものであった。

黒い生地に針を刺したような小ささを持つ光で、付け加えればそれは紅く、ただ紅き一つの光であった。

 

するとその影をとり囲むようにして、幾つもの色とりどりな光が顔を出した。

しかしこの光達はどうやら紅いあの光とは別種のようだ。

なんせ形がある。

 

そう、ヘイローであった。

 

ヘイローが囲んでいるということはつまり、と。その思考を裏付けるかのように耳をつんざく轟音と目を焼く光が肯定する。

意味するところは、数多くの生徒達であったのだ。

 

どの生徒の顔も衣服も見たことの無いものだったが、全員が同じ怒りの表情を浮かべていた。

しかしただの怒りではなく、動物的な、本能的な、理性によるものでは無いことは察することが出来た。

しかもだ。怒りだけでなく、どこか恐れている。

 

見かけは生徒であり、本質もまた同じであろうが……なにかが違った。

いや、見かけに違和感を感じたのだ。

そして抉り取られた地面を埋めようとする水面に目を向けてやると──────そこに写っていたヘイローの持ち主達は、私の知る生徒という存在ではなかった。

 

神秘の、異形だったのだ。

 

化けの皮が剥がれた、そんな気持ちであった。

もしや私も、そうなのだろうか?

受け入れ難いそんな有り様を直視した直後、紅き光の元へ、影の元へ皆が突撃を実行した。

 

またもや雷が発生し、何が起きているのかを口早に伝えてくる。

 

その影はまず、拳を振るった。

ただそれだけだ。ただそれだけなのに……相手は爆ぜた。

拳を腹部に貰った生徒は、そこを中心点として砕け散ったのだ。

詳細なディテールではなく逆光による黒塗りだったが、ハッキリと目にした。

 

続けて紅き光が揺らめき、残像を描くと──────今度は首が吹き飛んだ。

クルクルとベーゴマのように回転しながら明後日の方へと飛ばされ……主を失った身体は地面に倒れた。

 

(……待って………待ってよ………)

 

明らかに、超常的な死に方である。

その行いを静止する私の思いが届くはずも無く、あの人影、及び光は次々と虐殺を重ねていく。

叫びたくとも………何故か叫ぶことは許されなかった。

声が、出なかった。

 

(なんで……どうして……!?)

 

影は生徒の腕を掴み、脚を用いて荒く切断した。

影は半ば強引に胸部へと手を伸ばし、貫通させて心臓を握りつぶした。

影は地面へと叩きのめした者を、アクセルターンを彷彿とさせる動きでぐちゃぐちゃにすりおろした。

影は手刀であるにも関わらず、まるで熱したナイフでバターを切るように裁断した。

 

(何のために………こんな事を……あなたは一体誰!?)

 

より大きな雷が鳴り響く。

逆光は天へと昇り……その正体は、月に蝕まれかけた陽の、残り少ない灯火であるように見えたが、同時に全てを焼き付くす業火にも近く。

微かで、それでいて鮮烈な赤黒い光が差し込む。

 

重症に蠢く最後の一人の頭を……足でグシャリと勢いよく踏み潰し、その影は私を見つめる。

最後のトドメだと歓喜するかのように声を上げる雷鳴が、影のベールを剥がした時。

静寂が後を引く中で。

 

 

──────私は、凄まじきモノに出逢い。

 

 

気づけばとっくに太陽は、闇へと葬られていた………。

 

 

 

 

 

 

──────

 

 

 

 

 

 

(…………さいあく……)

 

本当に、最悪な目覚めである。

重い瞼を開けてみれば、部室の蛍光灯が元気よく挨拶をしてくれた。

ちょっと眩しいぞ。

 

(うぁ………ああ………)

 

横になっていた肉体に力を入れるも、寝起きだから思うようには動けない。

まあ、周りの様子を見る限り急いで動く必要も既に無さそうなのだが。

 

「〜〜っ」

 

声は出せなくてもあくびは出るらしい。

 

「あ、レイヴンようやく起きた!」

 

真っ先に声をかけてきたのは、相変わらず元気なモモイちゃんだった。眠気も、そのやや大きな声量のおかげで少し吹っ飛んでしまったよ。

 

「大丈夫ですか?うなされていたようですが……」

 

次に、私を心配する声が聞こえた。

顔を向けてみれば、アリスちゃんとミドリちゃん、それに先生が不安そうな表情でこちらの顔を覗き込んでいる。

その瞳に反射する私は……いつもの通りの、私であった。

少し顔色が悪く見えるが、些細な問題だ。

 

『ちょっと嫌な夢を見ちゃってね。全然平気だよ』

 

「長い時間手伝ってくれてたし……疲れが出てるのかも。少し休んだらどうです?」

 

えへへ。優しいなミドリちゃんは。

起き上がる為に上半身を動かしてみると、背後にベタつく嫌な感触が………。夢の内容が内容だ。寝汗に違いない。

後でシャワーでも浴びようかな。

 

「あっ……ミレニアムプライスへの参加受付は済ませたので……大丈夫です」

 

『本当に!?』

 

二人の肩の隙間からこちらを覗くユズちゃんへと私は咄嗟に近寄り、問い掛ける。

ユズちゃんは一瞬驚くものの、コクコクと可愛らしい動きで頷いてくれた。

 

「レイヴンのメモ通りに修正もしたし、あらかじめ言ってた新要素もちゃんと入れたよ!だから問題なし!!」

 

「まだ分からないでしょ……。目に付いたバグはほぼ無くしたとはいえ、肝心の内容が受け入れられるかどうか……」

 

「なんとかなるって!」

 

「はあ………」

 

ゲーム開発時に用いるブラウン管のディスプレイへ視線を移すと、私の筆跡で記された付箋のメモがいくつも貼り付けられていた。

内容はどれもゲームの内容に関することばかりである。

文章中の誤字脱字や、セーブポイントの間隔、グラフィック処理についてだったり……多種多様だ。

 

ゲーム開発において私が貢献できる数少ない仕事。それが、ゲームテスター及びデバッガーであった。

やる事は簡単。ゲームをプレイし、その途中でのバグや気になる点について発見し、まとめておくことのみである。

とはいえ、楽な役回りではない。

全ての壁に向かってローリングを繰り返したり、フレーム単位で起きる動作の同時発生を引き起こしたり、特定のアイテムが機能しない場所を虱潰しに調べたり、かなり根気が要る。

 

幸いな事に私は我慢強い方であるのと、この肉体は身体的疲労に対して強い耐性を持っている事から、かなり向いている作業だったんだけど……精神的な疲労はまた別。

そんな訳で五徹に差し掛かり限界を迎えた私は、あらかたの報告をメモに書いておき、昨日の深夜にソファをお借りした次第だ。

 

よくよく考えてみればマトモな行動ではないし、あんな悪夢を見るのも当然と言える。

けれど、あれをただの夢だと蹴飛ばすのはどこか違う気がしてならない。

もっと、こう……警告のような、何かを訴えかけてきている様に思える。

 

「どうしました?レイヴン。やっぱりエスト瓶を飲んだ方が……」

 

『いや。何でもないよ』

 

今考えられるとすれば、あの夢は私の暴力に対する恐怖が生み出したものというのがしっくりくる。ただ、それだけでは腑に落ちない所が何処かにあるのだが……これ以上考えても答えは出なさそうだ。

 

何はともあれ、ああはなりたくない。

 

「ココア、要るかい?」

 

小さめのマグカップを持ちながら、先生は私に提案してきた。

白い湯気がやや顔を出すそれには、ミレニアムの校章がプリントされている。

 

『じゃあ、お言葉に甘えて……』

 

「熱いから気をつけてね」

 

両手で受け取ると、手袋越しに仄かな温かさがじんわりと伝わってくる。

きっとまだ入れたてなのだろうか。中を覗き込むと同時に眼帯のレンズが曇ってしまったが、気にせず私はそのまま口に含む事にした。

 

(あちっ!)

 

思いっきり舌に刺激が走る。

革製であるライダー用手袋の所為で半ば温度を勘違いしてしまったのもあるが、寝起きで頭がそこまで回らないというのも理由の内だ。

せめてふーふーで冷ます位しておけば、避けられたかもしれないが……。

 

(……ほぁ………甘い……)

 

軽い火傷になってしまったようで、ピリピリした痛みが発生するものの、それをかき消すくらいには頭の中に"甘い"の二文字が浮かび上がってきた。

ただしエナジードリンクとかの甘みとは違い、柔らかく受け入れやすい甘さ。

エネルギー不足の脳にこの糖分は非常に良く働き、カラカラの状態になってしまった意識が潤っていく過程が身に染みて分かった。

五感から感じ取る情報もクリアに処理できる。

 

コーヒーでなくココアというチョイスは、恐らくゲーム開発部の子達を考えてのことだろう。視界の隅に映るトレーに置かれた、四つの使用済みマグカップを確認しながら、私はそう思った。

こういう所に先生の人間性が垣間見えるな。

 

「そうそう、ゲームが完成した記念にこの後皆で外食でもどうかなと思っていてね。ここの所の食生活も不安だったし……レイヴンもどうかな」

 

食生活か………。

確かにこの六日間、マトモな食事はしていない。主にエナジードリンクと栄養補給用のブロック菓子しか口にしていなかったからだ。

確実に生命力を消費した気がする。

アリスちゃんは【うますぎる!】とか言って貪ってたけど……暫く私は口にしたくないな。

 

『いいですよ』

 

勿論了承した。

遠慮する気持ちも無いわけでは無かったが……お腹も空いてたし、何よりこの状況で断るのは無粋だろうからね。

 

「やった!」

 

「やりました!」

 

モモイちゃんとアリスちゃんが私の承諾にハイタッチして喜ぶ様子は目の保養にもなる。

やがてココアを全て飲み終え、マグカップをトレーに戻した所で、なぜだかアリスちゃんはディスプレイの前に座り出した。

なにかを待っている様子だ。

 

『どうしたの?』

 

「実はさっきweb版のTSC2をアップロードしてですね……夜までまだ時間がありますから、それまでにどんなコメントが来るか知りたくて待機しているんです」

 

(おぉ………)

 

それはそれは。確かにミドリちゃんの言う通りディナーにはちょっと早すぎるし。

ドキドキはするだろうけど、その選択はきっとベストを尽くしたという自信が齎したのだろう。

みんな一緒に、全力でやったからこそ。どんなコメントが来ても、受け入れられる筈。

 

いやはや、本当に尊敬できる子達だね。

 

そう思った所で─────タイミング良くピロン、という電子音が鳴った。

 

「あっ、初コメ」

 

ミドリちゃんの一言に私を含めた全員が瞬時に反応し、モモイちゃんを筆頭に狭い画面を視界に捉えるべくそれぞれが押し合いへし合いになりながらも、ディスプレイ前へと集合する。

 

「何て!?何て!?」

 

はしゃぎたてるモモイちゃんが画面を良く視認できるよう場所を譲り、私はその後ろから肩越しに見る事にした。

さて、一体どんなコメントがついているのだろうか………。

 

<hermet021:わお、これ前回クソゲーランキング1位を取った、あれの続編?もうゲーム作りはやめたと思ってたけど、懲りないねえ>

 

「……………」

 

「……ア、アリス。こういうのはあんまり気にせず……」

 

「……マキに連絡。該当IPアドレスの方角に対して、最大出力の一撃を食らわせてきます」

 

アリスちゃんは壁にかけておいたスーパーノヴァをすかさず掴み取り、セーフティを全て外しながらそう告げる。

本気でやるつもりだ、絶対。

 

「そ、それはダメだってば!」

 

(よくないよ!)

 

私は背後から咄嗟に脇の下へ腕を回し、持ち上げるようにしてアリスちゃんを確保。

モーターのコイルを温めるべく起動シークエンスを開始したスーパーノヴァは、ミドリちゃんが引き剥がすものの持てる筈がなく、床に140kg以上の重量が襲いかかる。

 

「あぶなっ!?」

 

かなり大きな音を立てて落とされたスーパーノヴァ。

だが恐る恐る目を凝らして確認してみると、幸運な事に床へヒビやへこみは一つも入っておらず、下敷きとなるものは居なかった。

下の階の人は突然の音に驚いただろうけども……。

 

「……大丈夫。ゲームをやってもいない人の発言だから……気にしないで、ね?」

 

手足をじたばた動かしながら抵抗するアリスちゃんであったが、ユズちゃんの言葉を受け、しゅん……と大人しくなった。

そこで地面に下ろしてやると、せっせこ手元から落としてしまったスーパーノヴァを再度壁に立て掛けた後、どこか不服そうな表情をみせるものの、アリスちゃんは画面の前に小さくちょこんと座り込む。

 

私としても最初に来たコメントがこれでは少々むっとしてしまうし、手が出る気持ちもよく分かるが……まだまだ本番はこれからである。

大事なのは実際に遊んでくれた人の感想だからね。

 

傍に置いてあったクッションを手渡し、それをギュッと抱きしめる小さな背中を撫でながら待っていると─────またもや通知を知らせる音が鳴った。

 

<Kotoha0507:前回の『TSC』は確かに、手放しで賞賛できる作品ではなかったかもしれません。ですが新鮮味があり、少なくともありふれた作品ではありませんでした。今回の2ではどんな目新しさを見せてくれるのか、楽しみです>

 

「おっ……これはちゃんとした反応……」

 

文章の内容を飲み込むよりも早く、またもや次の通知が来る。

 

<QueenC:さて、鬼が出るか蛇が出るか……せっかくなら中庸なんかじゃなくて、たとえどっち側だとしても、振り切った体験を期待したいね>

 

<kirakiraNO1:前作はやったけど、良い思い出としては残ってない。それどころか苦い記憶がいくつも鮮明に思い出せるくらい。でも、どうしてかな……続編だって知ってるのに、ついダウンロードしちゃった>

 

「す、すごい!なんか私たちのゲーム、滅茶苦茶期待されてない!?」

 

「というより、全体的に【時限爆弾を楽しそうに解除しようとしてる】感じっていうか……」

 

「怖いもの見たさ、みたいな……」

 

『でも、悪くは無いよね』

 

数秒刻みで更新されていくコメント欄の様相に私達は圧倒されていた。

 

<cat0808:2時間後に補習でテストがあるんだけど……そんなことより今はこのゲームがやりたい気分>

 

<You-me:テストなんてこれから先、いくらでもあるじゃん。これを遊ぶ最高のタイミングは、アップされたばっかりの今だけなんだよ!>

 

<Pisces03:要らないわよねぇ単位なんか!それで遊べるって言うんならさ!!>

 

<honest-B:新しいご友人!さあ 楽しみましょう!>

 

「えっと……できればそれは、テストを受けに行ってほしいかも……」

 

どうやら大分熱狂的で、コアなファンも存在していたようだ。喜ばしい限りである。

 

「だ、ダウンロード数がもう2000を超えてる!?さすがにおかしくない!?」

 

「あ……有名な大手のポータルサイトに、私たちのゲームが発表されたって記事が載ったみたい」

 

ミドリちゃんが見せてくるスマホに表示された"今日のトレンド"には、しっかりと【TSC2】、【アレの新作】【テイルズ・サガ・クロニクル】といったワードがトップに躍り出ている。

発表と同時に世に出したものだから、中々衝撃的だったのかもしれない。

 

「うわあぁぁ……!無関心じゃなければ良いな、くらいに思ってたのに!ここまで数が増えると急に怖くなってきた!」

 

「………ドキドキします」

 

先程とは一転して口元を綻ばせながら、アリスちゃんはそう呟いた。

 

「うぅっ!期待と不安で、心臓が爆発しそう!」

 

と、その時だ。

突如として私達の持つゲーム機の内一台、モモイちゃんのすぐ近くに置かれていた物が─────盛大に爆発した。

肌を掠めた破片は辺りに飛び散り、黒煙の中で火花をあげるメモリや電子回路はもう焼き付いてしまっているようだ。

 

「ほ、本当に心臓が爆発しちゃったんですか?」

 

「ち、違う!私の心臓じゃない!」

 

辺りに焦げ臭いにおいが漂う中でアリスちゃんは驚きの声を上げるが、勿論普通はそんな事起きない。というか起きたならばモモイちゃんは確実に死亡。

 

(…………)

 

心臓の事について考えたのが原因か、脳裏に過ぎるあの夢で見た趣味の悪い光景。

胸元を貫通し、抜き出した本人の目の前で潰す、とかいう尋常ではない行動。もといそれに伴う精神的ショック。

 

いわゆるフラッシュバックだが、まったく心臓に悪い。

 

「いったい何が……ゲーム機が、爆発なんて……」

 

「え、長時間やり過ぎたかな……?」

 

「いや、この46mm近い銃弾はまさか……カリン先輩の────!?」

 

スクラップへとジョブチェンジしてしまったゲーム機をまじまじと見ていたミドリちゃんが声を上げると、今度は隅っこに配置されていたダンボール箱が破裂し、少し間をおいて轟音が耳に届く。

ズタボロになった傷口から飛び出すいくつもの線はどうやら押し込められていたケーブル類のようで、その様子はボイラー爆発後の機関車にちょっぴり似ていた。

 

「遠距離攻撃を確認。部室正面に対して11時の方角!距離は約1kmです……!」

 

ゲーム機はともかく、明らかに起こりえないケーブル入りダンボール箱の破裂。

後から響く轟音。

ミドリちゃんが発見した銃弾と、その推測。

全てを一直線に繋ぐのはアリスちゃんの報告であり、続いて突風にはためくカーテンの隙間から覗く二つの穴が……根拠を補強する。

 

「ぜ、前回の仕返し!?」

 

間違いなくC&Cの仕業だという確信があった。ミドリちゃんのこぼした"カリン"というスナイパーの存在がそう思わせたし、アカネちゃんのメールには"近い内にお会いしましょう。"と書かれていたからね。

 

「反撃を開始します!」

 

「ううん、アリス、一旦出よう!ここだと先生を巻き込んじゃうし、それに……」

 

すかさずスーパーノヴァを窓の外に向けるアリスちゃんをモモイちゃんは腕で押しとどめ、部屋を見回しながら述べる。

 

「このままここで戦ったら、私たちの部室が壊れちゃう!」

 

廃墟探索に、【鏡】の奪取に、ゲーム作成……かなり苦労してきたんだし、今更こんなことで水の泡にされては仕方がない。

そんな思いであった。

 

「お姉ちゃん……」

 

「そ、外に生徒会の人たちも……!【鏡】の件の報復……!?」

 

「ちょ、ちょっとは申し訳ないと思ってたけど……!」

 

私としても謝罪の気持ちは多分にあるのだが……ちらっと覗き見た限りでは、話しても受け取ってくれなさそう。

すると窓から見えるビル群の中で一瞬光が瞬いた。

スコープの反射だ。

 

「ひぃっ、また来る!」

 

モモイちゃんの短い叫びが警告となり、全員が狙撃による射線へ入らぬよう身を隠す。

もし当たった場合、どの程度のダメージを負う事になるか……それが未知数であることも相まって、あの光は苦手だ。

 

「まずは落ち着いて。向こうがリロードしてるうちに、とにかく外へ出よう」

 

「先生………!」

 

このような場においてもやはり、冷静な判断を下せる人物というのは非常に頼りだった。

 

「アリス、廊下に出たら私とユズが前に立つからミドリと一緒に援護をお願い!レイヴンは相手の撹乱を!」

 

「はい。アリスは先生とみんなを守ります」

 

『任せて!』

 

ドアノブに手を掛けたモモイちゃんへ返事を送ると、そのドアは果敢に開け放たれ……私はハンドガンのスライドを引いて息つく間もなく、最初に視界へ飛び込んだ相手の頭へ狙いを定める。

 

「よし、行こう!!」

 

モモイちゃんの活気溢れる激励が士気を高めることは、最早常識であった。

そういうのに向いているのかもしれないね。

 




☆9評価、ありがとうございます。
コミケには、行けない……!私にもVOBがあれば……。

ゲーム開発部の子達がファミレスに行った場合、それぞれ何を注文するのでしょうか?
良ければ感想欄で教えてください。参考にしますので。
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