戦え!超ロボット生命体ユメパイセン   作:クソザコぎつね

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インフルダウンしている間に4周年とは。しかもデカグラマトンまで。
実を言うと私はリオ会長が好きでですね……その内絡ませたいと思ってます。

それと、ぼちぼち対策委員会編の方で大幅な改稿があると思います。特に最初期の方は当時インフルにかかっていたという事もあって中々に寂しく……。設定とかが変わるとかでは無いのでご安心を、情報量が増えるだけですので。
きっと求めすぎですが、改稿後も読んでくれると……私がとっても喜びます。


キモかわ

 

 

「今回の仕事でここへ来たのは私を含めて3名程です。中があんな状態だと知っていたなら、もっと大規模な人数と装備で来るべきでしたが」

 

『中で一体何があったの?』

 

「あそこは……あそこは化け物の巣窟としか。紫の方はまだ大丈夫ですが、緑と赤のノミはどうしようもありません。見かけたならすぐに、撃退を」

 

そう言うと彼女は重たそうな身体を壁に預け、同時に付近へ付着していた液体……否、粘液の塊達から一際大きな物を選ぶと、おもむろに腕を突っ込んだ。

 

『ノミ?』

 

「ノミはノミ、見れば分かります。とにかくそうとしか形容できない見た目なので……」

 

嫌悪感を分かりやすく顔に浮かばせ、高い粘性を思わす音と共に引き抜かれると、その手にはヴァルキューレ制式採用のM4ショットガンが握られていた。

 

「取り敢えずこれを。見た所、その装備だけじゃ火力不足でしょうし……私は暫く動けませんから」

 

私の事をジロジロ見定めつつも、彼女は自らの服でもってショットガンに付着していた粘液を、それはそれは綺麗に拭ってくれる。

 

『どうやらそうらしいな。足の具合からして歩くだけでも精一杯だろう……バックアップについてもらったとしても荷物になりかねん』

 

足首の向きはあらぬ方向へと曲がっているし、粘液による膜で覆われていて分かりづらいが、火傷もしている様子。

しかしながら化膿している風には見えないので、この粘液が細菌から守ってくれていたのかもしれない。

 

「近づかれる前に討つ事です。そこを徹底して下さい」

 

粘液を粗方拭い終え、手渡されるショットガン。試しにボルトをいくらか操作しても引っかかりやガタつきは特に無く、一定の手入れはきちんと行き届いているようだ。

公的機関らしい。

 

「12ゲージもあるだけ渡しておきますね」

 

追加で、赤色が主張する標準的なバックショットを数十発分持たされた事により、私の手持ち分にあるスラグ弾と合わせて十分な弾数を確保出来た。

 

「では、幸運を。私は少し休ませてもらいますので……」

 

そうして最後に扉を通過する為であろうカードキーを私へ握らせた所で、彼女はふっと瞼を閉じ、肩がストンと落ちた。

精神的な安心感を得た事で肉体がようやくの完全な休息を味わい始めたのだろう。次第に小さくすぴすぴと可愛らしい寝息も聞こえてきた。

 

つまり、後は全て私に託される。

 

(あまり気が進まないけど……やるしかないよね)

 

ショットガンへ弾丸をフルで装填しながら、粘液に塗れたまま眠りにつく彼女の元を後にした私は赤い謎の扉へと向かった。

 

『このセキュリティシステム……カイザー製か。それも、最新式とは』

 

(カイザーのテリトリーって事?)

 

『いや、まだ断定は出来ない。あくまでこのシステム自体は市場に流通している品だ。ムラクモ系列以外としか絞れん』

 

(手広いね、本当)

 

扉の近くにはカード読み込み式のスリット機器が設けられているみたいだ。

いつも通りであればラナにハッキングしてもらったりするが、今回は先程渡された物があるので、それを用いて難なく認証をクリアする。

特徴的な電子音を奏でると、赤い扉は勿体ぶらずスムーズに横へスライドした。

 

するとまず目に飛び込んできたのは、真っ白な正方形の空間と、飛び散った粘液。真っ赤な照明が全体を染め上げ、空薬莢も幾つか転がっている。

空間の先に目をやると扉が1つ。しかも水密扉と同様にバルブが備えられており、厳重な印象を感じさせた。

 

足を踏み入れると、自らの全身へと均等に何かの風圧を感じる。恐らくはここで汚れを落としたりするのが目的なのだろう。

しかし機器はもう存分にパフォーマンスを果たておらず、そよ風程度に留まってしまっている。

 

さっきまで居た下水道とは違う、異質な雰囲気にチグハグを覚えつつも扉へと私は近づく。

片手をかけて、少し力を入れてやれば難なくバルブが動き始めてくれた。ショットガンをもう片方の腕で構え、狙いを付けたままバルブを回し続けていくと段々抵抗の力が弱まっていき、最終的にピタッと止まる。

 

(ここから先に……化物が)

 

いざ扉を手前に引こうとし─────固まってしまう。

 

理由は明白で、未知への恐れからだ。

これまでのシチュエーションにモンスター退治は無いし、そんな訓練も受けてはいない。

ホラーで見たような、食い散らかされる妄想が思考にノイズをかけ、神経にブレーキを掛けている。

 

『怖いか?』

 

そんな私の姿は……分かりやすかっただろう。

ラナ相手なら、尚更だ。

 

『自分を恥じるな。誰しもが未知との遭遇へ恐怖を感じずに飛び込める訳じゃない』

 

力だけ強くなったって、心はそう簡単に変われない。ちっぽけな人のまま、私は人らしく恐れている。

そんな……心の隅で震える私を見つめるように、ラナは呟いた。

 

『ヒトの歴史は恐怖の歴史だ。常に恐怖はヒトを動かしてきた……良くも悪くも。小さくも大きくも』

 

それはまるで1つの真理かのように、らしさを持つ言葉だった。否定の材料は簡単に見つからず、自らに当てはめやすい常識にも聞こえる。

ラナの口から語られた事も拍車をかけているかもしれない。私にはよく分からないが、とにかく説得力のある声色だったという事だ。

 

『恐怖は常に見ている。時には病として、時には敵として、時には運命として。自らが生まれた傍から寝首を掻くべく虎視眈々と牙を研いでいるものだ。無理に振り回される相手ではない』

 

ここで私は別に議論へ徹する事も、また逆にラナの言う事について鵜呑みにする事も無く、また今度暇な時に考える事として一旦保留にする。

今並べられたラナの言葉達が、何を伝えようとしているのか……咀嚼するのは難しいが、彼女なりに元気づけようとしているのだろうという"意味"は感じ取れたので、それで良しとしたのだ。

 

そうした不器用さに私の意識が一瞬逸れると、不意にひとつの疑問が浮かぶ。

 

(ラナはさ、怖いものってある?)

 

これからお化け屋敷へ入るみたいに。それは素朴で至極普通な疑問だった。

 

『急だな』

 

(いーでしょ!答えて!)

 

自分でも、余裕の無さに恐怖を紛らわそうとしているんだなと感じる。

雑談で躊躇いと緊張感を減らし、日常へと無理矢理に組み込むべく四苦八苦しているのだ。

 

『答えたら、進んでくれるか?』

 

(……………んと……ごめん、分かんないや)

 

直ぐに返答は返せなかった。

このフリーズした全身へ指令を出すまでに、どれくらい時を待てば良いのか。そう長くかけるつもりは無いが数分の内に突入出来ると断言は出来ず。

科学的では無い、気力の問題であるから極めて曖昧だった。

 

嘘でも【進む】と答えれなかったのは……この場で嘘をついても意味は無いと私は知っていたから。

自分の心に対して嘘をつく事は何の為にもならないのだと、分かっていたから。

 

『…………簡潔に答えてやる』

 

なればこそ、彼女は口を開いたのかもしれない。

 

『以前までの……遠い、それこそ1番古い記憶の時。私に恐れは無かった。そもそも、そんな機能が無かった。必要ともされなかった』

 

ラナの口から、きちんとした身の上話が出てくるのは初めての事。

出会ってかなりの月日が経ちながらも、触れたことの無い輪郭だった。

 

『他者を傷つける事、傷つけられる事。どちらも平等に価値を持たず、何を相手取るにしても躊躇や執着をする事は無い。自らを越す大型兵器や、昨日共に戦線を張った者が相手でも変わらず……引き金を引けた』

 

(………………)

 

『自分自身という存在にも恐怖を感じたことは無い。当時の私にとって恐怖とは……ただ名声と同一にしか定義されなかった。死にゆく者からの、最大の賛辞だ』

 

おおよそ、フィクションではないかと思う位の話。

人間味ある口調から語られる人間味を欠いた内容に息を呑む。

 

『もはや、私自身が恐怖そのものであり……畏怖の概念が顕現したのだと唱える者も居た。今思えば、殆どの者は多かれ少なかれ私に畏れを見ていたのだろう……』

 

(……畏怖……ラナに……)

 

『……あまり面白い話では無かったな。つまりは……なんだ。君をサポートしているのは、そういう奴と思っておけ』

 

(………うん)

 

言えるのはそれだけだった。

結局今のラナに恐れはあるのかという主題は聞けなかったが、これ以上追求した所で双方に良い事は無いだろう。

 

詰まるところ、いつもの様にほんのちょっと頑張るしかないのだ。

 

即ち私は恐怖の仮面を被り、慣れた手つきでチャンバーを確認。装填不良が無いことをしっかりと認め、深い一息と共にやや重たい扉をこじ開けつつ地を踏みしめた。

 

(…わぁ……洞窟……というよりかは、坑道みたい。見た感じ広さも均一だし)

 

扉の先に続いていたのは、360度全方位が岩石で覆われた道。しかも奥に目を細めれば、分岐する箇所も複数。

さながらアリの巣に潜り込んだかのような雰囲気を持つ現場であった。

 

『進むぞ。あまり時間をかけない方が良い』

 

言葉の通り、2人を救出するためには一刻も早く足を動かした方が良いだろう。

ここまで来ると気分はもうその気で整っているので、動かす足取りは重くない。

 

それに、ここは寒さが目立つ。特に太ももの辺りを通過する風は、僅かに露出する素肌からでも残酷に体温を奪っていってしまうぞ。

いや流石に夜の砂漠よりは断然マシだけどね。

 

ショットガンのグリップを握り締めながら寒さに耐え、足早に進む。

途中で分岐を直感で選び、尚進む。

 

尚、暗視を再度起動する必要はなく、壁に埋め込まれている照明達で事足りるように出来ていたのは数少ない親切だ。

 

『痕跡が増えてきたな』

 

壁に粘液が張り付いているのもそうだけど、奥へ向かうにつれ多くなっていくのは何かの破片だった。

しゃがみ込んでじっくり観察してみると、それは何やら節足動物の肉片と呼んだ方が正しく思える物に見える。ムカデやサソリに近い。

 

(脚っぽいけどかなり太いし、こっちの状態が良い方は一節がだいぶ長いね。胴体の欠片っぽいのも転がってるけど……)

 

脚らしきものが赤色で、胴体らしきものが緑色。想像されるのは話の中で出てきたノミである。

 

『推測するに、コイツの体長は1.5m程か。変に歪な身体構造をしていなければだが』

 

(見当はつく?)

 

『まあな。もし私の思い当たるアレだとしたら、まだ幼体だろう』

 

(これで幼体なの。随分と大きいんだ……)

 

『完全に成長した場合で体高は5mを越す事もある。中々に厄介な奴だぞ』

 

何だそれは。戦いたくないよ。

後悔の意思が若干顔を覗かせた所で調査を進めるべく私は腰を上げる。

残された子への不安がより増し、もしも遭遇した場合はどうするかと悩んだ。

 

(倒せると思う?)

 

『……そのケースでのデータは存在しないとだけ言っておく』

 

(実際に見て考えるしか無さそうだね)

 

今持っている武装は、ショットガン2丁とハンドガン一丁。コンカッショングレネードにC4。残るはナイフ位のもの。しばし心もとない。

 

(火炎放射器とかグレネードランチャーでも落ちてたりしないかな。この前戦った赤髪の子なんかは丁度良いのを使っていたみたいだけど)

 

そう思いながら少し進んで行った所、道の脇に積み上げられた黒い小型コンテナ達に目がついた。第1仮設試験調査現場行きと書き込まれたステッカーが貼り付けられており、中身は外から見えないよう鍵付きの仕組みだ。

もしや、ここのルートは物資搬送の為に掘られたのかも。

 

一体どんな物が運び込まれているのか。無理やりこじ開けて中身を覗こうと考えつつ近づくと、視界の端に不自然な物が見えた。

咄嗟にそちらへ向き、慌てながらも注視すると、コンテナの裏側から少女らしき足がちょろっとはみ出ている事に気づく。

 

─────先遣隊の子かもしれない。

 

そういった風に考えるのは私として至極当然であり、速やかに確認する事への疑いは無い。

すぐさま回り込み、よく見えるようにコンテナを腕で軽々退かしてやると、結果は間もなく分かった。

 

最悪ではなく困惑である。

 

(な、なにコレ……)

 

幸いな事に足の伸びている元は五体満足のヴァルキューレ所属で、まだ軽傷の部類だった。

しかし問題は倒れたその子に覆いかぶさっているナニカ。

 

(生き物なの……?)

 

ナニカはこちらを見るや否や──目は着いてなさそうだけど──怯えた様子で触手を揺らす。

コンテナが影になっているせいで見えづらいが緑色の粘液をぬちゃぬちゃと涙のように分泌し、毒々しい紫色のパンケーキを重ねたようなその姿は不可思議である。

 

いやまさか本当にパンケーキとは言うまいが。食欲はそそられないぞ。

 

『紫の方とは、こいつか』

 

震えながらも触手を全体に展開し、自らを大きく見せる仕草。威嚇だ。

 

『酷く怯えているな。逃げ出そうともしない。さながら蛇に睨まれた蛙だろう』

 

私は蛇じゃないんだけど。

それに、睨んでるつもりも無い。

 

多少はなんだかなと思うビジュアルではあるものの、このパンケーキ擬きにそこまで私は恐怖や嫌悪感といったものを持てずにいるし。キモかわいいというのに近い感覚だ。

 

でもそんな私の事を向こうが知りうるはずもなく、怖がられてしまっている。

独立傭兵になってからというものの、何故かこうした事がしょっちゅう付きまとっているな。それも任務で役に立ったりはしてくれるけど、正直言って私は……うん。

 

(ちょっとごめんね。私、この子を運ばなくちゃ行けないから)

 

内心で謝りつつも、一生懸命威嚇に励むパンケーキ擬きを持ち上げる。すると触手をジタバタと色んな方向に動かし、1秒でも早く私の手から逃げ出そうともがき始めた。

 

(わわっ、暴れないでぇ……)

 

ヌメっとした粘液が顔面に飛び散ると、生温い感触に少々顔を顰める。

元気なのは良いけど、今はダメだよ。

 

パンケーキ擬きを手早く邪魔にならない位置に置き、私は倒れている先遣隊の子の容態を確かめる。

 

(意識は……無いっぽい。でもちゃんと脈はあるし、呼吸もしてるね。よしよし)

 

無事な事にホッと胸を撫で下ろし、慣れた動きで腹を背負うようにして抱え込む。俗に言う消防士搬送だ。

相手の意識が無い場合、普通の背負い搬送よりこちらの方が適切なのである。

 

(ん?)

 

いざ、入口の所まで引き返すべく振り返ると、そこには先程のパンケーキ擬きが行く手を阻んでいた。とは言ってもそこまで図体は大きくない。

 

仕方なくショットガンで撃退しようかといざ片手で構え……躊躇する。

全く未知の生物相手であったとして、やはり無駄に傷つけたくは無い。意思疎通が可能であるなら別のやりようもあるし。

 

こちらから下手に攻撃してしまうよりも良い手があるのなら、そちらを選択した方がベスト。幸運にも私はその選択肢を持ち合わせている。

 

そんな訳で私は銃を下ろして意のままにひとっ飛び。軽々と跳躍し、パンケーキ擬きの頭上を通過した。

 

(おっとと……意外と伸びるんだね、ソレ)

 

すると足先近くにまで届く程触手を飛ばされ、少し感心。されど空中回避はお手の物。当たりはしない。

それから着地し、なんとなく向き直ってみると、パンケーキ擬きは驚いた様に飛び上がり、かと思えばさっさとコンテナの隙間に身を隠してしまった。

 

(紫の方は大丈夫って事だったけど、ここまで臆病な性格なら支障は無いね)

 

やはり問題はラナの言ったアレ。見敵必殺を促される緑と赤のノミ。

果たして一体どんな生物なのか……。私は担いだ状態のまま難なく歩き出し、ラナへと問いかける。

 

(ラナ、さっき言ってた"アレ"について教えてくれる?)

 

『"アレ"か………正直言って、まだ確証は無いぞ。単に似ているだけの別な生物という可能性もある。あくまで話半分に聞いておけ』

 

(分かった!)

 

『恐らくだが今最も可能性が高く、候補に挙げられるのはAMIDA……それも、仕様変更を為される前の前期型だろう』

 

AMIDA。ラナの口から出てきた単語に大分変わった名前だと感じながらも、そこから繋がる説明に強い引っかかりを覚えた。

 

(仕様変更? まるで人工物みたいな言い方だけど)

 

『AMIDAは自然が生み出したものでは無い。かつてキサラギという名の企業が商品として作り出した生体兵器だ』

 

(生体、兵器……)

 

『呼んで字の如く、遺伝子組み換えや薬物によって生化学的兵器として改造された存在。およそ今のキヴォトスに似つかわしくない技術でもある。とうの昔に全て寿命を迎えていると思っていたが……』

 

(生き残りがいたって事?)

 

とうの昔とは、どれくらいだろうか。少なくとも私は"生体兵器"という存在に覚えは無いし、キヴォトスで見聞きする事もなかった。

有名なゾンビ作品に似たようなのは出てくるけど、あくまでフィクションだ。

 

『……AMIDAの前期型はそもそも寿命を基本1年にセットされて生まれてくる。だが繁殖力は強い』

 

(寿命を、セット………)

 

『そうだ。顧客の要望次第では長くも、短くも。全ては企業と顧客の合意に基づき、追加オプションとして用意される』

 

(……そういうのってさ、良くないよね。遺伝子や命を好き勝手に弄り回して、あまつさえ寿命まで管理するだなんて。デパートの一角でカブトムシを売ったりするのとは訳が違うんだよ?)

 

そんなのは自然界の冒涜であるし、謙虚さもまるでゼロ。あまつさえ他人を傷つける為の道具として売り出すとは、何たることか。

怒りが沸き立ち鼻を鳴らすと、ラナが続ける。

 

『……だろうな。あのような連中はこぞって同じだ。出来るかどうかに心を奪われ、すべきかどうかは考えなかった……この言葉は古い映画からの引用だが、奴らを表すには丁度いい』

 

完全に同じ映画かは分からないけど、私も似たような台詞を知っている。先人はつくづく偉大であるけど……もしあの恐竜達と同様の事態がここで起きていたとしたら……? そんなにのんびりしている時間は無いかもしれない。

 

『しかし忘れるな。どうあろうとAMIDAは兵器だ。意思疎通なんて出来やしないし、ましてや仲間にする事も不可能だ。同情するのは自由だが躊躇ったら終わる相手に違いは無い。入れ込むのはそれ迄にしておけ』

 

(……………うん)

 

シビアな考えだけど、ラナが言うのなら最もなのだろうな。1番詳しいんだし。

 

『特性が変化していないとした場合、前期型のAMIDAは通常の生物……生存を第1とする種にとって有り得ない攻撃方法を用いる』

 

そこまでラナが話すと視界の奥、分岐路の先で何かが蠢いている事を目撃。薄暗い空間の中で所々覗かせる刺々しい赤は私に警戒を促し、すぐさまショットガンを構えるに至る。

 

ここまで遭遇していなかったし、あわよくば既に全滅……とどこか思っていたのは甘さだろう。

 

とはいえ、こうなってしまってはもうどうしようにも無い。

まるで誘い込むようにして動かされる複数の脚が駆り立て、ぞおっと背筋を伝う寒気と毛羽立つ鳥肌。

 

構わずラナは告げる。

 

『自爆だ』

 

来た。

来た。

 

見える範囲のど真ん中。

岩の影から飛び込んで来た。

 

撃て。

撃て。

 

照明の白色光が照らす、6肢の脚目掛け。

水晶を嵌め込んだに等しき複眼目掛け。

硬く身を覆う、緑の甲殻目掛け。

 

(──────!!)

 

思っていたよりも素早く、引き金を引いた。

引けた。

引けてしまった。

 

スローモーションに感じる視界で、襲い来るAMIDAを注視。

片手撃ちの強い反動は強化された身体により、大幅に減少。一切の集中を奪わず、私はただ散弾の直撃からグズグズに崩れる肉と、ひしゃげていく外骨格を見つめ続けている。

 

【 】

 

小さな悲鳴が聞こえた……気がする。

あるいは、損傷を食らった身体が鳴らしたのかもしれないけど。

 

撃った。

撃った。

 

たった1発。撃っただけで赤と緑の、ノミの様な生物は沈んだ。

私は、この個体の命を奪った。

 

(………………………)

 

自動排莢によって吐き出された、赤のシェルが舞い、それと同じくして、内蔵と体液をぶちまけながら命だった物も───爆散。

 

発生した非常に高温なガスに頬を熱く引っぱたかれ、つくづく憤る。

最期の瞬間までも、この命に自由は存在しなかったのか。

 

『………ユメ。君がこの事で、無理に責任を負う必要は無い。全ては過去に遺された負の遺産。そのツケを支払う義務は、過去の者にある』

 

プルプルと身を震わせ、拳をギチギチと握り込む私にラナが語りかける。

 

『嫌なら離脱してもいい。10時間あれば私の方で依頼を完遂する事も出来る。……こればっかりは私を頼っても構わんぞ』

 

確かに、そうかも。

これは辛い仕事だ。到底生半可に首を突っ込むべきでは無いし、ラナならちゃんと代わりにこなしてくれるという信頼も有る。

 

でも、私はまだ……。

 

(…………ラナ)

 

『…………あぁ』

 

(私の性格、覚えてるよね)

 

『勿論だ』

 

(なら私が今考えてることも、たぶん分かるでしょ)

 

『……………』

 

ラナの返答は沈黙であったが、それはつまり肯定を表していると、私はここまでの付き合いで知っている。

 

(それにね、直接任されちゃったし)

 

『……まあ、そうだが』

 

(ここで抜け出すってのはちょ〜っと……難しいかもね)

 

『……了解した』

 

命に大きさとか、重さがあるのかは答えられない。

でも蚊を潰した後と、あの生体兵器を撃った後ではまるで心の状態が違う。

 

恐怖や不気味さに屈して動いたのかと悩んでしまうし、正しいのだとしても、何故か苦みが後を引く。

胸がスースーして、頭がいっぱいいっぱいで、流れる血が熱くて……。

これが、命を奪った感覚なのだろうか。

 

ラナに、それを相談する勇気はまだない。

でも、踏み出す勇気はちっぽけだけど、まだ残っている。

 

結局はいつもの任務と同じ。

傭兵として、レイヴンとして私はこの生体兵器を一匹残らず駆逐し、あと1人取り残された子を救助しなくてはならず。

調査のレポートはそこまでいって初めて終わる。

 

私はモヤモヤを胸に抱えたままにショットガンを構え、バラバラに散った亡骸を越えて尚も歩みを再開した。

 

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