戦え!超ロボット生命体ユメパイセン   作:クソザコぎつね

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前回のAMIDAですが、感想欄にもあったようにAC3に出てきた生体兵器の要素が混じってます。つまりどういうことかと言うと、ソレの遺伝子で補っているわけでして。おお怖い。



人選ミス

 

 

『それで、話って?』

 

下水道調査を終えた翌日の朝、寝巻き姿に寝癖の残る髪のままな私はボロ小屋のパソコン越しにラナへと話しかけていた。【話がある】と言うのは冗談ではなく、どうやら本気だったようで……しかし帰ってすぐ振られるのかと思いきや、明日まで持ち越しとされたのだ。

 

『その前に顔を洗ってこい』

 

『今日は休みでしょ。後でいーよ後で』

 

予定は空いたままだし、夢見も悪かったので本日はのんびりインドアに過ごす気分である。加えて、まだ午前の10時だし。

 

『まぁ構わんが』

 

椅子を若干鳴らしつつ天井を仰いでみると、窓から差し込む光がやけに眩しく感じる。今日の最高気温は30℃だっけか……と思い出し、ふと手元を見れば、机の上に並べられた9mm弾用のバレルやリコイルスプリング等、ハンマーシア等愛銃の部品達が鈍く輝いている。昨晩に分解と拭き取りをしたっきりだし、後でもう一度汚れを拭いたらガンオイルを塗って戻しておこう。

 

『前提として、今からする話は新しく届いた依頼についてだ。自らの印象について問うつもりはない』

 

『じゃあこっちも言っておくけど、私にとってラナは最高のマネージャーだし、これからもずっと仲良くしていたいって思ってる。だからその事をちゃんと覚えておいて、いい?』

 

『分かった』

 

気まずくなりそうな展開は事前に阻止……出来たかはイマイチ分からないが、本心からの発言だし多分OK。打ち込んでてちょっと恥ずかしかったけど、もしもを考えれば安いものだ。

 

『まず、今回の依頼主は今までの中でも最重要の相手だ。契約事項は事細かに指定され、向こうでも最高レベルの機密として扱われる』

 

早速本題だが、ここら辺は常套句だな。私の方に来る依頼は大体極秘と頭につくし、1つの任務によって企業同士の関係を破綻させてしまえるのも多々。しかしラナが"今までの中でも"と付け加えたからには、相応に細心の注意を払って臨む必要があるのだろう。

 

『肝心な相手の名前は?』

 

『名義はトリニティ総合学園の最高意思決定機関、ティーパーティー』

 

なんて?

 

『ごめん、多分間違いじゃないとしたら、それってあのお嬢様学校のトップとかだったり?』

 

頭の中に浮かぶのは豪華かつ上品な建築物群達に、屋内で優雅に紅茶を嗜むレディの姿。お淑やか全開、マナーたっぷりな空間。

 

『そうだ』

 

『うそ』

 

『嘘をついたとして私に何か得でもあるか?』

 

『いやそうだけど』

 

『正真正銘、依頼主はあのティーパーティーに違いは無い。確認はとうに済ませてあるからな』

 

聞いて思わず私は机に突っ伏すと、頭が真っ白になる感覚と同時に"ヤバい"とか"信じられない"という言葉が暴走して、脳内のあちこちに反芻と衝突を繰り返す。

 

ゲヘナに続き、今度はトリニティ?……一体どうなってるんだ。これでは3大学園からの依頼制覇ではないか。ただでさえ学園からの依頼っていうのは稀なのに。

 

『でもなんでトリニティが? あそこは私みたいに物騒なのとは無縁でしょ? 組織の力だって大きいんだし』

 

有名なのは正義実現委員会やシスターフッドか。どちらも人員や資金、装備共に潤沢だし、輝かしい戦果や周辺の評判を見てもそちらに任せるのが妥当でしょ。

 

『そこを把握したければ、トリニティ特有の派閥問題を視野に入れろ。いくら個々が強くとも連携が取れなくては意味が無いと、君は知っている筈だ』

 

派閥問題。ニュースで度々取り上げられるアレか。そこからのふわっとした知識で知っていることは、組織間の仲が常時良くないっていうのだけ。

でもそれは十分に弱点として機能し、場合によっては自滅の可能性を孕むもの。

 

『ティーパーティーはそんなにも他の組織を頼れない状況なの?』

 

『相手は余程慎重派でな。聞き出した話では、今回の依頼を遂行するにあたって余計な危険思想を挟まずに行動し、明確な信用で扱える駒を求めているらしい』

 

それは悪い兆候だ。不信という病が蔓延れば組織は簡単に瓦解する。

トリニティは文化を重んじると聞いているし、生徒の印象も悪く聞いた覚えはないけど……見かけによらずか。

 

『傭兵に頼るのが最善手かどうかは怪しいけどね』

 

そんなにリスキーな手段、普通は使わない。内外共にバレたらどうなることやら。通常は自前の機関や組織を動かすのが適当だろう。

 

『向こうとしても苦肉の策には違いないさ』

 

ラナの言う通り、ティーパーティーは想像以上に追い詰められていると見える。こんな手を打ってしまうくらいだし。

……ゲヘナ風紀委員長のヒナちゃんを思い出すな。彼女は仕事に多忙で、しかも他者に頼ることが苦手なタイプのようだった。

 

『ちょっとズレるけど、ティーパーティーにも知り合いっている?』

 

『いないな』

 

だとしたらゲヘナよりマズイか。担保がちょっとばかし少ないぞ。

しかしそうまで思うとティーパーティーに対しての恐れ多さはいくらか減り、何か力になってあげたいという気が代わりに湧いてくる。

勿論、自分達の手で解決してもらうのが1番だけど……そこまではしてあげられない。

折角私を選んでくれたんだし、確実な遂行でもって、せめてもの助けとしよう。

 

『で、私は何をすれば良い?』

 

『今回の任務の目的はトリニティ内部においてエデン条約締結阻止を狙う、裏切り者の捜査だ』

 

──────なるほど。

 

そこまで疑心暗鬼になるのも頷けるな。どこに敵が居るか分からないんだから。

とはいえ、良くないやり方には変わりないが。

 

『一応聞くけど、その裏切り者って本当に実在するの?』

 

『依頼主の情報が正しければな』

 

第三者が撹乱を狙ってるとかじゃなければいいけど。

まぁ本当に居るとしたら私情を挟まず金で動く傭兵というのはその点、確実に信用は出来るか。

 

『今回候補となる人物は4名のみ……絞りは相当に出来ているようだ。だが、他の人物がそうでないとも完全には言いきれないと、私は思っているが』

 

ラナがそう書き込むと、画面上に4人分の基本的なプロフィール表が顔写真付きで送られてくる。私にとってを人を疑うってのは非常に苦手に難しいし、嘘もまるっきり上手く使えないのだ。

依頼主の方でここまでやってくれるのはありがたい……とそれぞれに目を通していたその時、まさかの人物を発見してしまった──────

 

(ヒフミちゃん!?!?)

 

見間違いではないかと目を細め、ディスプレイに顔を近づける私だが、映る名前は一文字の狂いなく"阿慈谷ヒフミ"で記され、朗らかな笑みの証明写真が容赦なく決定づけている。

 

(え……あ…そんな……うそぉ……)

 

飲み込めない心情のまま備考欄に目を移すと、立ち入り禁止区域であるブラックマーケットへの侵入と、凶悪犯罪者集団との接点が疑われるとの記載がある。後者はともかく前者は立会人だから否定できないじゃないか!

 

『私としてはこの"白州アズサ"が怪しいと思うが、あくまで参考として受け取ってくれ』

 

うう……ショックのあまり頭に情報が入ってこない。

ヒフミちゃんが疑われているだなんて……。

 

『後で読むね。今は無理』

 

『なら良いが、確認はしっかり頼むぞ』

 

どんな気持ちで臨めばいいのやら、すっかりこんがらがった気持ちのまま、私はプロフィールを閉じる。

他人からスタートするならまだ一定の距離を開けて接せるけど、既に知り合いではどうしようも無い。疑いの目をしっかりかけれるかも問題だし、油断してボロを出すかも。

私の性格上どこかでやらかすぞ。

 

『それと、任務遂行の際は当然身分を偽ってもらう。十分な変装も必要だ』

 

あーうん、変装ね変装。最近はゲヘナ自治区内での活動が多かったからそれは確かに必須……というかそれよりも、だ。

 

『えっと、ちょっと待ってねラナ』

 

『ああ』

 

一旦落ち着くべく私はラナにストップをかけ、またもや机に勢いよく突っ伏した。いくつか物が落ちたり倒れたりしたけど、今はいい。感情や情報を並べていた棚がドンガラガッシャーンと音を立てて崩れた気分なのだこっちは。

 

(まず……ティーパーティーが言うにはトリニティの中に裏切り者が居て……捜そうにも誰も信じられないから、完全に外部の人の私を使うつもりで……)

 

瞼を閉じた暗闇の奥に一つずつ列挙していく情報達はやはりどれも中々にスケールが大きく感じられ、流石に最重要事項。ハイカロリーだ。

 

(ヒフミちゃんが裏切り者かもしれなくて……でも、それはあくまで疑い。他の3人の可能性だってある。裏切り者の目的は、エデン条約締結の阻止……)

 

スパイ映画みたいなシチュエーションだが、だからといってテンションは別に上がらない。一つ一つの行動に伴うであろう責任の重さや心労の事を考えると、まるで鉛を食っているような気分にもなってくる。

 

(エデン条約っていうのはアレだよね。内容は明かされてないけど、ゲヘナとトリニティの仲を良くしようっていうやつ……アレ?)

 

つまり、私の行動次第で戦争が起きる……?

よくよく考えてみれば背負いきれないよそんなの。心臓が縮み上がってしまう!

 

『互いにとってこれはかなり危険な任務だよね。報酬はどれだけあるの?』

 

『前金と分ければ、こうなる』

 

(な……なにこの桁数──────!?!?)

 

目を丸くした私は飛び起き、食い入るように見つめながら桁を一つ一つ指で数えていく。

……まずいぞ、震えてきたぞ。怖いぞ。

あわよくば世の命運がかかる任務なのだから当然と言えば当然である額。でも一介の傭兵に与えるものとしては明らかに過剰だ。

 

『これだけあれば返済も大きく進むな』

 

(いやそうだけど!!)

 

変にケチって裏切られない為にしても、逆に相手への心配が勝るな。他の組織とかから隠し通せるのか?

 

『あのね、ラナ』

 

『なんだ』

 

『正直言って、受けるの躊躇うよ。私』

 

『もっとねだるか』

 

『いや十分。結構!』

 

『金は多い方が良いだろう』

 

『じゃなくて! 受けるのに勇気がいるってことなの!!』

 

『ああ。そういう事か』

 

全くもう。休日だっていうのになんだか頭が痛くなってきちゃったな。詰め込みのし過ぎでパンクしかねないよ。

 

『受けるかどうかは別に今決めてもらわなくても構わない。返事は1週間の間待機するそうだ』

 

─────……良かった。

こんなに派手な任務は滅多に無いんだし、長く考える時間を与えてくれるならば心底感謝。

はてさてどうしたものかと、小さく脳内でこぼしつつ背もたれに体重を預けてみれば、急速に喉の乾きを実感する。思うと、起きてから未だに何も口にしていないし、色々と処理しきるのは難しいか。

 

『今の時点で私はもういっぱいいっぱいなんだけど、まだ何かあったりする?』

 

『ひとつ、重要なものが存在する。任務の流れと付随して説明するぞ』

 

あるんだ、しかも重要なの。

 

『依頼を受けた場合、君には"補習授業部"の部員として潜入してもらう。多くの者に対してこの部活は落ちこぼれ救済のために新設された物として映るが、実態は裏切り者を炙り出す為として作られた監視用の場所だ。君はここで彼女たちと生活を共にし、悟られないよう目的を達成してくれればいい』

 

一緒に生活を……? 余計に任務のハードルを上げてくるじゃん。そんな器用に立ち回れないって。

 

『補習の名の通り、勉強やテストといった活動も実施される予定だ。最後の試験で合格点を取れなかった場合、その者は退学処分を受ける』

 

『それって私も合格点取らなきゃダメ?』

 

『悪目立ちと時間の浪費を避けたいのであれば、なるべく取っておけ』

 

あー……そっちも勘弁して。私勉強苦手なんだよ。

勉強出来る時間が少なかったってのもあるけど、どれもいまいち身につかないし、理解できないのに……ひぃん。

 

『トリニティのテストでしょ。多分一生かかっても解けるかどうか怪しいよ』

 

『では誰かを頼れ。丁度シャーレの先生が顧問として来るようだからな』

 

先生。あの大人の人ね。

そういえばゲーム開発部での1件以来話してない相手だし、良い機会かも。

まぁ任務に関しての相談とかは絶対出来ないが。

 

『ラナは教えてくれないの?』

 

『戦闘のレクチャーと同様、問題集をひたすら続けるやり方になるぞ。それでも構わないのならやってもいいが』

 

『だったら、検討しとく』

 

別に悪い教え方ってわけじゃないんだけど、なんせ時間がかかる方法だ。捜査に専念するのなら勉強にあまり割く訳にはいかない。

あと、ダメ出しを連発されたら普通にヘコむし。

 

『また、裏切り者をついぞ探し当てられなかった時においては4人全員が例外なく退学処分となる』

 

『テストの結果とかに関わらず?』

 

『そうだ』

 

『強引だね』

 

『確かな方法だ』

 

束ねる者のとしての立場を鑑みれば理解はできる。天秤にかけずとも、その方が安全かつ安心。けれどもそこに人情の余地は無く、至って冷酷。防ぎたくば任務に全力を注げと、暗に言っているようでもある。追加のプレッシャーだ。

 

『そして、重要なものというのはつまり、私も同行するという点だ』

 

え。

 

『ラナが?』

 

『私が自ら出向き、捜査に手を貸す』

 

『ほんと?』

 

『君がこの任務に向いていない事は分かっている。であれば、私の方で補うさ』

 

驚いた……唯一嬉しいニュースかも。ラナが生身でついてきてくれるなんて。出会ってから数ヶ月、そんな事一度も無かったのに。

 

『任務の話はここまでだ。何か他にあるか?』

 

『いや、無いよ』

 

『ではよくよく考えておけ。以上』

 

そう最後に添え、彼女は会話を締める。

 

(ラナと共同……)

 

興味抜群なそれを含めても含めなくても、この依頼をみすみす逃すというのはナシだと頭で分かる。報酬面でもそうだし、予測しうる争いを防げるのなら、是非。

 

でも、捜し出す為のノウハウは今現在持ち合わせちゃいない。加えて、裏切り者が判明したとしても、躊躇せずちゃんと報告できるかどうか。

 

(……自信無いな)

 

机上に置かれた強化スライドを試しに手に取り眺めてみるも、背を押すような言葉は聞こえず。ただ次の命を待っている。

 

(ラナに捜査を任せて突き止めたとしても、最後には結局その子との関係は壊れちゃうよね。そんなの、絶対に嫌なのに……)

 

愛想を尽かし、転校していった同級生が居た。

産業の縮小に耐えきれず、潰れてしまった出資者が居た。

あなたの助けが必要と仰ぎ、内心では利用することだけが目的の企業が居た。

 

どれだって、いつも辛かった。

 

昨日の戦友が今日の敵になった時は、そもそも最初に会った時点で互いにその場限りの関係と理解していたからこそ気負わず戦えた。

ミレニアムの時は、誰も何も失わないと分かっているからこそ任務に集中出来た。

 

だけど今回は─────必ず。

 

必ず、また積み重ねた物を失う。

 

(………………)

 

椅子の上で縮こまっていると、窓を叩く風が騒々しく耳に入る。ふと外を流し目にみやると、真っ白な積乱雲は天高く上り、青空がどこまでも広がっていた。

 

……出かけよう。

 

外に出て走ってみれば良い具合に気持ちが落ち着くかもしれないし、変にここで()()()()を続けるよりはずっと良い。

 

多分、そうした方が良い。

 

 

 

 

 

 

 

──────

 

 

空崎ヒナの通話ログ

 

ヒナ、どうやらお手伝い期間はそろそろ終了のようだ。中々に楽しめはしたが、私としてはデジタル化をもっと進めておいて欲しかったぞ。なんせ用紙に足跡がつくからな。ペンもこの身体では扱いにくい事この上ない。

 

それと、部下たちの練度向上を目的とした、面白い提案書が上がっている。可能なら目を通しておけ。

 

ああ、恐らくは問題ない。私としては不安だが、やれるだけはやるつもりだ。

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