戦え!超ロボット生命体ユメパイセン   作:クソザコぎつね

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張り切っていこう!

 

「では、ここに揃っているのが補習授業部のメンバーということですか?」

 

これから水泳授業という訳でもないのに何故か水着を着用している生徒──浦和ハナコさんが、首を傾げつつ声を上げた。

 

「いえ……まだあと一名居るはずなんですけど……」

 

ここトリニティ総合学園内にて、急遽特例として新設された補習授業部。読んで字の如く、補習を受けさせることによって部員の成績向上を図り、落第を回避させる部活である。

本日はその最初の活動日、つまりは自己紹介から始まるのだが。

 

(あうぅ……幸先が思いやられます……)

 

ペロロ様のゲリラ公演に参加する為とはいえ、試験をサボってしまった事で半強制的にその補習授業部へと入部させられた私──阿慈谷ヒフミは内心不安になりつつ、部室として使う予定の空き教室にて件の人物が来ることを祈っていた。

言い訳がましく聞こえるかもしれないが、故意にサボった訳ではない。単純に試験日時を間違えて覚えていたのである。そんなドジを踏んでいなければ、今頃はペロロ様のポップアップストアに直行出来ていたのだろうが……もう後の祭りか。後日、土曜にでも行くとしよう。

 

それと、今回私は部長として担当顧問の人をサポートするよう命を受けている。あのナギサ様から直々にだ。

なぜ私ごときに白羽の矢が立ったのかはよく分からないが、なってしまったものは仕方ないので張り切ってやるつもり。

 

「私が探してこようか?」

 

提案の一言を発したのは、前述の担当顧問となったシャーレの先生である。

先生はどうやら、道中で何かしらのトラブルに巻き込まれた可能性を危惧しているようだ。ここトリニティに至っては、そうそうそんな事は起きそうにないが……ブラックマーケットじゃあるまいし。

ナギサ様から頂いた情報では、彼女は成績に難あれど素行は問題ない人物。時間ギリギリになっても来ないというのは少々おかしいのだ。

一応、私と先生で正義実現委員会の教室──実質監禁部屋みたいなものだったが──から3人を回収した後、ここで集合という形になっている筈。

ひょっとしたら、彼女は間違って別の教室に向かってしまったのかも。トリニティは広いし、そういう事は偶にある。

 

「……ねぇ、聞いておくけど場所はここで合ってるのよね?」

 

正義実現委員会の象徴というべき黒のセーラーを着た少女──下江コハルちゃんが疑問を述べる。確かに彼女の言う通り、逆に私たちが間違えているという可能性もある。その場合、私だけでなく先生も間違えているという事になってしまうが。

念の為教室札が一致しているか確認しようと思い、私が廊下に出ると……何やらドタドタと忙しい音が聞こえた。

 

(もしかして……)

 

すぐさま首を動かし、発信源の方に目をこらす。すると見えた見えた、廊下の最奥からこちらへと全速力で走ってくる小さな人影。十中八九彼女だろう。

 

「あ、あの──────うわぁっ!?」

 

まだあと数分の猶予があるのだから、そんなに焦って来なくても大丈夫。むしろ廊下を走られる方が却ってマズイ。普通に危ない。そう思って伝えようとしたのも束の間……彼女はほんの一瞬で目と鼻の先まで迫っていた。

衝突の予感を感じ、咄嗟に目をつむって身構えると、とても靴から鳴るべきではないスキール音が耳をつんざき、巻き起こった風は服とスカートを揺らした。

 

それから少し経ち、自身へと衝撃が一切来ないことに疑問が湧いて、恐る恐る瞼を開いてみると────そこには、握り拳1つ入るか否かといった間合いでギリギリ急停止に成功した彼女が立っていた。

 

『すみません! 遅れました!』

 

そしてレトロな折りたたみケータイがかざされると、画面には謝罪の文面。このあまりにも特徴的なコミュニケーション……間違いなく最後の1人──熾火セラである。

 

「あはは……あまり気にしなくて大丈夫ですよ。今ちょうど集合時間になったところですし」

 

危なかった。すごく危なかった。冷や汗かいた。というかなんてフィジカルだ、あそこからここまで70mはあったと思う。原付より速いんじゃなかろうか。

……まぁそれはそれとして、私は彼女に廊下を走らないよう軽く言いつけながら、教室に入るよう促した。

 

「ちょっとちょっと! さっきの音は一体何!? あなたがやったの!?」

 

「刺激的な登場ですね〜」

 

「………」

 

反応は正しく三者三様。コハルちゃんは面食らっているし、ハナコさんは余裕そう……待て待て、ひっそり銃を構えようとしてるのが1人居るぞ! ガスマスクを被った銀髪の子──白州アズサちゃんだ。

 

「危険。彼女は普通じゃない」

 

その格好でよく言いますね!? とにかく下ろして下ろして! 多分何も危なくないですから!! ね!?

 

「むぅ……」

 

慌てて私が静止すると、彼女は渋々と言った具合に銃口を逸らしてくれた。ついでにマスクも脱いでもらおう。今日は顔合わせとして来てもらったのだから当たり前である。

それにしても、セラさんのどこが危険と感じたのだろうか。少なくとも、外見上は然程怪しい所は無い。

緩く三つ編みに纏めた長い金髪と銀色の仮面。制服の上から羽織る黒のローブと、よく使い込まれているだろうブーツ……気になるとすれば仮面ぐらいか。

 

「何はともあれ、これでみんな集まりましたね……」

 

生徒5名と大人1名。平凡な私を除き、個性溢れる面々が無事ここに揃った。まずは改めて自己紹介をしておいた方がいいだろう。セラさんはここで初めて顔を合わせたんだし。

そういう訳で、各々簡潔に自身の名前や、補習授業部に入る事となった経緯などを述べていく。ところで……セラさんを見る先生の目がどこか訝しげなのは気のせいだろうか。

 

「先生、セラさんがどうかしました?」

 

「いや……? ふふ、なんでもないよ」

 

先生は笑って誤魔化してしまった。なんだか今聞いた所で答えてくれそうな気配は無さそうだし、そんなに気になるかと言われても別にNO。その内、時間がある時にでも聞くとしよう。

 

さて、自己紹介を終えたら次は補習授業部の活動内容についての具体的な説明を伝えていく。

放課後に先生が行ってくれる補習授業を必ず受けること。

後日に控えている特別学力試験で【全員同時に合格】すること。

特別学力試験は第三次まで用意されてこそいるが、一度でも全員同時に合格を果たせば、その時点で補習授業は終わりとなり、部も解散すること。

 

以上である。

 

「うん……なるほど。それほど難しい任務じゃさそうだ。私としては特に、サボタージュする気も理由もさらさらないな」

 

「そ、そうですね!頑張りましょう!」

 

今なんだかサボタージュ(妨害行為)と聞こえたのは置いておくとして、アズサちゃんの言う通り、全員同時に合格という条件を満たすのは滅茶苦茶に難しい事ではないように思える。

だってチャンスは3回もあるのだ。

それに先生だっている。アビドスでの1件から思うに、この人なら熱心に根気強く教えてくれるに違いない。

 

「えっと、アズサちゃんは転校してからあまり時間も経ってないんですよね? ならきっと、この学園にまだ慣れてなかった所為もあるでしょうし、みんなで一生懸命やればすぐに何とかなると思います!」

 

『私とちょっと似た境遇ですね。親近感が湧きます』

 

「む……そうなのか」

 

2人はそう言って互いに顔を見合わせる。

 

「あら? 2人ともこちらに転校されて来たのですか?」

 

『いえ。私は持病の悪化とココに貰ってしまった負傷が原因でして、入学以来殆ど出席できていないんです』

 

セラさんが仮面をコツコツ指で叩きながら、そのように答えると……一気に場の空気が重く、悲しいものへと変わってしまった。

当然の事だが、あまりそう言ったセンシティブな事は触れるべきではなく……特にハナコさんは後悔の表情を強く浮かべ、唇をキュッとしめていた。

 

『全然気にしなくて大丈夫ですよ! 本当に!』

 

あせあせと忙しない様子で文字を打ち込む、当の本人。しかし、それが却って無理に気を遣わせているようで、余計に居た堪れない……。

 

『取り敢えずそんな訳で、私3年なのに未だ疎いですから! トリニティに! ですから一緒に頑張りましょう! ね!!』

 

「ああ……」

 

矢継ぎ早に訴えたかと思えば、アズサちゃんの両手を握り、上下にブンブンと振って溌剌な握手を決めるその姿に、私も何か新しい話題で流れを変えようと口を動かす。

 

「あの、それでなんですけど……折角ですし部内で先輩後輩という扱いは無しにしたいな〜……なんて……。学年は違くても入ったタイミングは同じですし、その方が互いに気負わず教え合えると思いますから……その、どうでしょう?」

 

「……ふんっ! 元よりあんた達を先輩だなんて呼ぶつもりは無いわ! でもね、念の為言っておくけど、私はこんな部活さっさと抜けるつもりなの。馴れ合うためじゃないから、間違えない事!」

 

「私も別に。そもそもそういう文化は不慣れだし。あくまでお互いの利益の為なんだから、親しい振りをする必要も無いはず。違う?」

 

『そんな!? 皆さん仲良くしましょうよ〜!』

 

「…私としては何の問題もありませんし、それで行きましょうか。では、アズサちゃん。ヒフミちゃん。それからコハルちゃんとセラちゃん。うふふふ、何だか良い響きですね」

 

恐る恐る聞いてみると、理由はどうあれ全員が一致した。コハルちゃんとアズサちゃん……果たしてこの2人は上手くやっていけるだろうか。

うう、なんだか胃が痛い……。

でもまぁ、雰囲気は何とか持ち直したみたいだし結構結構。

 

「じゃあ決まり! それに、そもそもの話なんだけど……私が試験に落ちたのはあくまで、飛び級の為に1つ上の2年生用のテストを受けたせいだから!」

 

「あら? 飛び級? どうしてそんな事を……?」

 

「ど、どうしても何も……! 私はこれから、正義実現委員会を背負う立場になるわけだし……!」

 

「でも、それで落第してしまったんですよね? 一度試しにチャレンジするということであれば理解できますが……もしや何度も?」

 

「うるさいうるさい! 言いたいのはそういうことじゃなくて! つまり私は今まで、本当の力を隠してたってこと!! 能ある鷹は爪を隠すって言うでしょ!!」

 

ハナコさん……もといハナコちゃんからの素朴な質問に対し、コハルちゃんは詰め寄るような勢いで捲し立てる。

 

「今度のテストはちゃんと、1年生用のテストを受けるから! そうすればちゃんと優秀な成績を収めてはい終わりってわけ。分かる? こんな部活すぐにおさらばよ!」

 

意気込みがあるのは良いけど、なんだろう……ちゃんと話を聞いていなかったのかな?

 

「あの、個人で優秀な成績を出したとしても、それでこの部を卒業出来る訳ではなくってですね……」

 

仕方ないので、私はもう一度コハルちゃんに"条件"の内容を説明する事にした。なんならプリントを見せつつ話すとしよう。そっちのが確実だ。

 

「ほう……コハルは経歴を隠していた訳か。ちなみに私も今は、前の所属との学習速度の違いが大きかったから、1年生の試験を受けてる」

 

『私も同じですよ。今回は2年生の試験です! 誰か教えてください! プリーズ!!』

 

「各人各様……これから楽しくなりそうですね。ふふふっ」

 

 

 

 

 

 

 

───────

 

 

 

 

 

 

 

「ゆっくりだ! ゆっくりで良いぞ! 不安定だろうからな!」

 

仮付けの縄ばしごに掴まり、降りようとしている部下へと私は大声で伝える。まったく、マダムからの直々の頼みとはいえ……なんで私たちがウォッチポイントに潜らなくてはいけないのか。発掘隊の仕事だろう。本来の仕事は倉庫管理なんだぞ。

 

「うわわっ! 怖いですよぉ〜!」

 

「怯むな、そんなんで! 戦闘訓練に比べたらマシだろ!」

 

「そりゃそうですけどぉ……うわっ!?」

 

「……はぁ」

 

手を滑らせたのか、尻もちを着いてしまった彼女へと私は駆け寄る。ここら辺は結構岩が荒々しく隆起しているから、場合によっては凄惨な事態となってしまうが……まぁ、見た感じ大丈夫そうだな。

 

「あいたた……」

 

「立てるか?」

 

「ええ、はい。鞭をもらった時みたいな痛みが走ってますけども……一応は」

 

本当にいつもヒヤヒヤさせるな。こいつは。

 

「それで……ここに例の兵器があるんですか?」

 

「ああ、そうだ」

 

足をくじかないよう注意しつつ、ヘルメットに装着させている物と手元の物。2つのライトで行き先を照らす。

暗闇を退かして見えるのは、途方もない年月を物語る地層や、鈍色の岩石。加えて、誰が作ったのかも分からない機械の成れ果てや、元々は壁だったであろう分厚い金属板に、大量の配線とパイプ達。

 

マダムがかつて言っていた。

 

ウォッチポイントとは本来、かつての古代文明が地上と地下との行き来を可能とするべく建設した昇降機であると。だがそれだけでなく、所々には木が枝を増やすように無数の兵器群が格納された、言わば前線基地としての役割も持たされていたのだ。

 

ちなみに現在私たちがいるのは、その枝達の中のひとつである。

 

……けれど、積み重なった時間の量は遥かなもので、あちこちに露出した岩肌や、酷く歪になってしまった空間の所為で半分洞窟に近しい有様と化している。

昔読んだ本に載っていた、地殻変動と言う現象が影響しているんじゃなかろうか。

 

「班長。思ったんですけど、メインの縦穴をずーっと潜っていったら地下に出るんですよね。どんな感じになってるんでしょうか……? 班長は見た事ありますか?」

 

「いや、流石に無いぞ。前に一度逃げ出そうとして飛び込んでった奴は見たがな。帰ってこなかった」

 

「ひえぇ……生きてると思います? その人」

 

「死んでるだろ。どうせ」

 

ウォッチポイントには、ガラクタあれど食料あらず。もし仮に地下がユートピアだとして、餓死よりも先に間に合えば助かりはするだろうが、縦穴の深さを甘く見てはいけない。

普通に考えて、持ち込んだ食料が尽きる可能性のが高い。

 

にしても、所々確認できる格納庫の名残を見ていると、古代文明は巨人が支配していたように思えてしまう。だって比較的形の残っている場所は、大体20m以上もの高さが確保されている。

でも実際に発掘された物を見ていると、そんな事は無いのだろうが。兵器達が巨大な分、比例して色んな箇所がスケールアップされていると考えられる。

 

「ま、興味を発揮するのはそこまでにして、早速取り掛かるぞ」

 

前方に見えた灰色のオブジェクトを指しながら、私は部下に呼びかける。

 

「これは……戦車ですか?」

 

足場であっただろう構造物や謎のスクラップ達に埋もれつつ、そこに鎮座していたのは正しく戦車であった。

 

しかし──────かなりデカイ。

 

従来の戦車が赤子に見えてしまう程の大きさ。これもまた、巨人によって運用されていたと考えてもおかしくは無いレベル。

とても人間4人で扱うような代物には見えん。

 

それに、デザインや構造だってかなり違う。

今の私たちより更に進んだ技術が山ほど積め込まれていること請け合いだ。

 

「うわぁ………」

 

思わず感嘆の声を漏らしている部下を尻目に、私はバックパックから無線機と、今回の仕事用であるフックやケーブルと言った道具一式を取り出した。

 

「班長班長! このお眠りさんって名前とかあるんですかね!?」

 

「名前ぇ?」

 

呑気な事を口走る彼女に、やれやれとため息がついてしまう。

 

「ただ戦車って呼ぶだけじゃつまんないですよ!」

 

「んな事言ってもなぁ……大して変わらんだろ」

 

「変わりますよ!」

 

コイツの感性はよく分からんな。こんな訳の分からないヤツを前にして良く【お眠りさん】と呼べる。どっからどう見てもそんな可愛らしい呼び方をする相手じゃない……そう思いながら、道具片手に件の戦車へと近づくと──────キャタピラ側面の装甲に、掠れ気味だが模様らしきものが見つかった。

 

何となくその部分を手で軽く払ってみれば、段々深い青緑が顔を出してくる。これがこの戦車の持っていた本来の色なのだろう。今はすっかり粉塵に覆われ、色彩を忘れてしまっているが。

もちろん、顕となったのはコレだけでなく……そこには生まれてこのかた初めて見る謎のエンブレムと、【AAP-03B】の文字が刻まれていた。

 

「……MT部隊の奴ら、本当に地上までコレを運べんのかね」

 

誘導用の発煙筒を懐から出しつつ、私はボソッと呟くのだった。

 

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