いつも短めになってしまって申し訳ないです。頼れるのはもう読者の皆さんの想像力しか……。
ところでヘイローって誰にでも見えるものなんでしょうか?もし良ければ感想欄で教えてください。
依頼主 ムラクモ
目標 敵地砲台の破壊
敵対企業であるカイザーの砲台施設の破壊を依頼します。砲台の建設地は、我がムラクモ社領域との干渉地域ギリギリに位置する為、計画発表当初から再三注意を勧告しましたがことごとく無視されてしまいました。
カイザー側は、自領域の安全確保の為などと、見え透いた言い訳をしていますがその狙いが将来の軍事侵攻にある事は自明です。こうなっては実力行使以外に手段はありません。
ムラクモ社はこのミッションを重視しています。成功すればあなたの評価は更に高いものとなる筈です。
良いお返事を期待していますね。
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ムラクモ社 それはカイザーコーポレーション、セイント・ネフティスに続く大企業の1つ。先の2つに比べると規模はやや小さいが、技術者上がりが多い事もあってか使われている技術はトップレベル。
ミレニアム学園と繋がりがあるとされるが、詳しい所は分かっていない。
(それにしても、最初の時も思ったけどそんな企業から依頼を受けるなんて、ラナはどうやったの?)
『マネージャーだからな』
(にしては、色々おかしいけど?)
脳裏によぎるはシュトルヒという名前の意味不明な二足歩行兵器にジャンクのパソコン。そして、今降りたステルス搭載の無人ヘリもそうだ。
『良いマネージャーなんだ』
良い……のかな?他の同業者がどうなのか知らないからなんとも言えないけど。
遠くの砲台基地からヘリが飛び立つのが見え、サーチライトでバレないよう匍匐前進でゆっくりと目標地点に近づく。
真正面から突入して制圧するのが一番簡単ではあるが、砲台に狙われてしまえば頑丈なキヴォトス人だとしても命に関わるし、別に砲台以外は放置でも構わないというのが依頼だ。おおかた、砲台による制空権が消えた事を確認した後で襲撃を仕掛けるつもりなのだろう。
それに加え、派手に暴れた事でカイザーから目をつけられてしまえば私の生存がバレてしまうかもしれない。その事で私が後輩達に迷惑をかけてしまえば、きっと自分を許せないだろう。
やがて口に砂がいくつか混じった所で基地周辺を囲っている壁に張り付いた。
顔を半分だけ出しながら内部の様子を伺う。警戒はかなり厳重の様で、入り口付近ではPMCが検問を行っていた。カイザーの者で間違いない。
どこから潜り込むか考えていると車のエンジン音が聞こえてきた。慌てて姿勢を低くし、様子を伺う。
『あれは輸送トラックのようだな。この基地に物資を運んでいるに違いない』
未舗装路をトラックがガタガタ揺れながら走っていると、検問前で停車した。右側の窓を開け、検問にいるPMCと何やら話している。
(今の内に……!)
トラックが動き出す前に私は全速力で走り出し、すぐさま荷台に乗り込んだ。念の為積まれていた食料や弾薬などの荷物で体を隠しておく。
「おい、今なにか人影が見えなかったか?」
「あ?見てねぇよ。疲れてんじゃないのか」
「かもな。でも上からは警戒は厳重にって話だ、確認してくるよ」
アイドリング音で聞こえづらかったが盗み聞きした限りでは1人こちらに来るようだ。ヘイローでバレるなんて事ないように頭を極限まで下げ、息を押し殺す。
「……誰もいないな」
「だろ?どうせ動物とかと間違えたんだって。ほら、さっさとしな」
「へいへい」
トラックが一度大きく揺れ、積まれていた荷物が交互に少し滑り出す。
どうやら上手くやり過ごせたようだ。
暫く時間が経つと再度トラックは大きく揺れた。停車したのだろう。積荷を確認される前に急いで荷台から飛び出し、近くにあった木箱の手頃な遮蔽物に身を隠す。
ひとまず中に潜入は出来た。後はどうやって砲台を破壊するかだ。眼帯を使い、自分の視界から斜め右上に設置された目標を確認する。
(思ったより大きいな……)
グレネードを数個投擲すれば壊せるだろうがそれでは余計に警備を刺激して危険な状態に移行するだろう。手持ちの魔改造拳銃なら高所から撃ち下ろせば弾道落下も無く一方的に破壊できるが、この基地にはそんな丁度いいスポットは見受けられなかった。
(やっぱり準備しといて良かった)
腰に手を回し、ダンプポーチからこの前のボーナスで買った時限爆弾を取り出す。こういう時の為に私はポーチに色々入れているのだ。もちろんお菓子もある。
『用意が良いな、殊勝な心掛けだ。目標の砲台は五つある。量は足りるか?』
(充分あるよ)
それからは警備が背後を見せた隙にしゃがみ歩きでかいくぐり、なるべく誰にも銃を抜かないように意識する。
このような場では巡回中の警備兵にルートが割り振られている。もし誰かが居ないとなれば即刻捜索に乗り出すだろう。
因みに、傭兵になってから必要な知識や技術はラナに教わっている。訓練用のオートマタなのにかなりのスパルタでキツいが、こうして役立っているのが現状だ。
鉄で出来た非常階段を登り、砲台の真後ろに着いた。先程の爆弾を2個設置し、タイマーをセット。今度はそこから大きくジャンプし、別の建物に飛び移る。頭上であれば敵は警戒してない為、自分の着地点が見えている時にこの戦法は非常に有効だ。
そんな感じで残りの四つの砲台にも爆弾を設置し終え、準備完了。最初のタイマーセットからの残り時間は二分である。
(後は逃げるだけだね)
視認できる中で出来るだけ警備が薄いところを選び、PMCの頭上をジャンプで通過。壁の向こうへと着地する。
「今の音は……?」
一人こちらの着地に気づいたのか向かってきているようだ。しかしもう遅い。
(じゃあね〜〜〜)
全速力で走って逃げ、目標の基地から離脱する。この強化された体に追いつくのはただの警備兵には難しいだろう。
暫く走っていると、背後から花火程に小さい爆発音がぱちぱちと鳴った。どうやらそのくらい遠くまで来てしまったらしい。
『目標砲台の破壊を確認。ミッション完了だ』
この仕事を始めてそろそろ2週間経つが、少し怖いことがある。正体がバレるとか、死ぬだとか、そういうのとはちょっと違うこと。
(……ラナ)
突然の爆発でアラートを鳴らす砲台基地を眺めながら、私は呟く。
(……この仕事に慣れはあるの?)
ホシノちゃんと居た頃、私は銀行襲撃みたいな手段は好まなかった。きっと一度ソレを行えば、また同じ事を繰り返すだろうから。
ヘルメット団を相手にしている時はさほど気にしなかったが、今回はカイザーが相手だった。自分が今やっている事を、過去の私が見たらどう思うだろうか。
『どんな事でも繰り返せばその内慣れる。この仕事もな』
(……)
ここまで来て怖気づくのはダメだろうけど。自分がどんどんかけ離れていくのが酷く恐ろしい。
『……君は自分を見失わない』
ラナから告げられた言葉はいつもより感情がこもっていて、いつもより何処か人間らしかった。
『私は良いマネージャーなんだ。君が慣れる前に使命を果たす』
(……ありがとう、ラナ)
失った右腕の痛みを誤魔化す様に強く握りしめ、私は再び荒野を確かな足取りで歩き出した。
それから何ヶ月か経った頃だ。
私が企業間の小競り合いに持ち込まれる傭兵審査リストの中でランク1を維持することになったのは。