星降り雨のルーミエ   作:鐘餅

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小説のモチベが低下&まどドラにハマったことによる弊害で更新が遅れた
今回から極力一話ごとの文字数減らします


“やっぱりアホな作戦part2”

「結局上手くいきませんでしたわね……」

 

 河川敷、ララとぼたんは川辺近くの勾配の草むらに腰掛け、反省会をしていた。

 

 ――空は既に、朱色に染まっていた。

 真っ赤な太陽が沈んでいき、サラサラと流れる川のせせらぎが心地良い。

 雲を横切るようにカラスの影が二羽、飛んでいく。

 カラスはうるさい声で鳴いた。

 

 ――アフォー、アフォー、アフォー……。

 

 まるでお前らバカだなー、アホだなー、と言っているような実にムカつく鳴き声だ。

 だがカラス達が言うように、自分達は本当のアホかもしれない。

 

 なんせ思い返してみても本当にあの作戦はグダグダだったのだ。

 あまりの酷さに頭を抱えたくなるくらいだ。

 幸い酔っ払ったルーミエはすぐに眠ちゃって、起きても何も覚えていなかったし、ギークからはむしろ感謝されたが。

 曰く、「天国だった。無茶苦茶良い思いした……また酔わせたい」とのこと。

 どうやらあの時のルーミエがお気に召したらしい。

 とても欲望に忠実だ。まあララとしても同意見なので、洋酒ケーキをもう一回か二回、ルーミエに食べさせたいところではある。

 

 だがそんなことを言ったら、当然ぼたんには怒られた。

 

「アホなこと言ってんじゃありませんわよ。もう二度とやりませんわ……」

 

 どうやらぼたんはかなり懲りたらしく、ここに来るまでにも散々「やらない、食べさせたくない」と自業自得のくせにそう繰り返していたぐらいだった。

 隙を伺っても阻止されるだろう。残念である。

 

 と――そんなどうでも良いことを考えたところで、ララは自然、また渋い顔に戻っていた。

 結局、何だかんだ言ったところで、ぼたんが溢した言葉通り上手くいかなかったのは事実なのだ。

 流石のララでもちょっとしょげてしまったのである。

 とは言え、このまま諦める訳にはいかない。

 

「うーん、こうなると別の作戦が必要だね」

 

 ララはぼたんから奢ってもらったアイスキャンディーをペロペロ舐めながら呟いた。

 ちなみに味はチョコミントで、さっき通りがかった自販機で買った。

 スースーするのが堪らなく美味しい。邪道だと言う人もいるけど、ララにはよく分からない感覚だ。

 尚、ぼたんも同じようにアイスキャンディーを頬張っていて、こちらはバニラ味である。

 ストレートなまでに王道だ。

 

「ふむ、それならばアレしかないのではなくって?」

「アレ?」

 

 と、ぼたんが新しいアイディアを提案してきたので思わず聞き返すと、彼女はぎこちなく口の端を吊り上げ、慣れてない悪い笑みを作った。

 

「作戦そのニ。尾行ですわ」

「は? 尾行? マジで!?」

 

 が、思わぬ答えにララは驚く。

 そもそも尾行したところで普通にバレるのではないだろうか、と思ったのだ。普通に皆、警戒しているだろうし。

 そういう気持ちを視線に込めれば、ぼたんは持っているアイスキャンディーの棒を、チッチッチ、と左右に揺らした。

 

「考えても見て下さいよ。私達は天下の魔法少女様ですわよ? 星尾さん相手ならともかく、普通の人間ならば気配を欺けない道理はございません。他の方々から隠れることは十分に可能ですわ」

「それはまあ……そうかも?」

「それにバレたとしても秘策がありますわ。今度こそ完璧な作戦ですわよ」

「完璧ねぇ……」

 

 ララはその響きに微妙な顔になってしまった。

 なんかもう不安しかないのだ。

 特に自信ありげなところがまたなんというか……。

 

(でも気になる……)

 

 だが何故だかウズウズしてきた。

 そんなに言うってことは、実はすごい作戦? どんな感じなんだろう。

 そう考えてしまい、不安に比例するように、それと同じくらいの期待が生まれる。

 気付けばララは、ワクワクしたように目を輝かせてしまっていた。

 こうなったら乗っかってみるのも悪くない、いやむしろ面白いに違いない、などと思ってしまったララも、結局のところぼたんと同類なのである。

 

そしてそんなキラキラした表情を向けられて、ぼたんは得意気だ。

 

「むふふ」

 

 彼女は上機嫌のまま、大口でアイスを、パクリパクリパクリ……、あっという間に完食。

 

「お、アタリましたわ」

 

 幸先が良いのか、アイスの棒切れには“アタリ”の文字が刻まれていた。

 ララも自分の分のアイスが溶けそうになっていたので、慌てて食べ切る。

 でも、

 

「ハズレだ……」

「ま、そういう時もありますわよ。私はいらないんで、そこのコンビニで渡してきたら良いですわ」

 

 と、落ち込んだララを見ていられなかったのか、ぼたんが棒切れを差し出してきた。

 途端ララはパッと笑顔になり、「わーい! ありがとうー!」と嬉しそうにお礼を言って受け取ると、小走りで近くのコンビニに向かって行く。

 

 その後ろ姿は夕景に溶けるように赤かった。

 ぼたんは頬杖をついて、やれやれと言いつつも、そっと穏やかに微笑んで。

 

「本当……面白い子ですわねぇ、ララさんは」

 

 そうやってお前が一番そうだろうという、特大ブーメランを投げながら、優しい目を細めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 と言うことで作戦再び始動。

 しかし作戦そのニ、尾行を行うに当たって、まず大きな問題が一つ存在していた。

 それはどうやって尾行を開始すれば良いか? という問題である。

 当然、仲間達の事情を逐一把握している訳ではないし、そもそもそれを調べるための尾行である。つまり彼らは各々好き勝手に動いている訳だから、会っていない時以外でその現在地を特定することは可能に近いのだ。

 これでは尾行なんて出来るもんじゃない。

 勿論、一番接する機会の多いルーミエをストーキングすることなど論外と言えよう。

 確かに特訓中帰るところを追えば尾行出来るかもだが、感覚の鋭い彼女のことだ。見つかる確率は百パーセントに近いはず。

 

 そんな訳で、ララとぼたんは早速悩むことになった。

 そうして頭を捻らせ、出した結論。

 アジトで誰かが来るのを待ち伏せして、その人が帰るタイミングを見計らって後をつければ良いんじゃない?

 これなら確実に追跡で出来る。いや……もっと良い方があるかもだし、それで本当に知りたいことが知れるかのかと言われたら微妙だとは思うけど。

 まぁ、これしか思い浮かばないのも事実なのだ。やるしかない。

 

 そうやってコソコソ〜とアジトの入り口近くの物陰に隠れ、待機する二人。

 なかなか誰も来ない……とララが退屈を覚え始めた時に、ぼたんが肩をポンポンと叩いてきた。

 

『? なあに?』

 

 声が響かないようあえてテレパシーで返事を返せば、ぼたんはしたり顔になっていた。

 何だろう。謎のデジャブで嫌な予感が蘇る。

 

『今のうちに渡しておこうと思いましてね。ほら、コレですわ!』

 

 そうして、ぼたんが肩から下げたトートバックから取り出したもの……それは全体的にピンクでモワッとした物体だった。一瞬ボンボンかと思った程だ。

 無論、実際は全然違う。受け取ってよく見てみると、なんと桃色の髪のカツラだった。

 

『…………ねえ、ボタちゃん』

『何ですの』

『ボタちゃんってバカなの?』

『ちょ、その度々残念なものを見る目はやめて下さいまし! これこそがまさしく秘策なのですわよ!? ほら、被って見てくださいませ! そしたら効果が分かりますから!』

『う〜ん、じゃあ……』

 

 そこまで言うならと、ララはカツラを被り、渡された丸メガネをかける。更にぼたんがまたトートバックを漁り、キャスケット帽子とポンチョを取り出すと、ララに身に付けさせた。

 

『ほぉら、見間違えたでしょう?』

 

 鏡代わりにスマホを向けられる。

 カメラに映るララは確かに別人のよう。

 しかし全体的にサイズがブカブカ。やぼったいし、ララの趣味ではない。

 というかこれ、探偵のコスプレなんじゃ……。

 

『………………』

『恥ずかしがらずとも、私も変装しますわ。だから安心して』

 

 そう言う問題じゃないがな。

 そんな心の突っ込みを無視するように、ぼたんは着替え始める。

 青髪のカツラ、キャスケット帽子を被って、大きめのポンチョをばさっと羽織り、

 

『魔法少女探偵の爆誕、ですわ! これなら顔を見られても大丈夫。別人だと言い張れますわよー!』

『…………………………』

『せっかくなのでこの際コードネームも決めてしまいましょう。ふむ……貴女は今からラブリー、ラブリー♡エンジェル(キラキラリン⭐︎)と名乗りなさい』

『ラブリー♡エンジェル(キラキラリン☆)……』

 

 ――ダサい。

 ララは素直にそう思った。

 

『で、私がフラッシュ。フラッシュ◇デビルガール(シャラララン♤)ですわ。分かりましたか?』

『……ボタちゃん、もうやめようよ。なんか痛々しくて見てられないよ』

 

 ララは真顔でそう言った。

 

 これじゃあまるで中二病みたいだなのだ。

 そりゃ、ララとて人の趣味にケチはつけたくないが。

 でも、正気に戻った時にダメージを受けるのはぼたん自身なのである。

 だからこのノリがエスカレートする前に――

 

『ノンノン。フラッシュですわよ、ラブリー』

『……、おぉ……』

 

 ――そう思ったのも束の間、コードネームを呼ばれて、ララはちょっと気分が良くなった。

 ほうほう、悪くないじゃないか。なんか普段とは違う気がして。

 そのためか一瞬でさっきの考えも忘れ、上がる口角をそのまま、浮ついた気持ちに流される。

 

『イエッサー、フラッシュ! 我はラブリーであります!』

『イエッサーって……まあ良いですわ。その通り、貴女の名前はラブリーなのですわよー!』

 

 そんな相変わらずのやり取りをしていた時だった。

 遠くから人影が二人見えた。ようやく来たかと確認。

 カズトにユーヤだ。隣でぼたんが呟く。

 

『うんうん、メッセージの効果が生きたみたいですわね』

『ボタちゃん何かやったの?』

『たまたま落とし物を拾いましたの。アジトの机に置いといたとお二人には伝えておきましたわ』

『成程』

 

 そうやって謎にララが感心していると、カズトとユーヤはさっさとアジトの中に入っていった。

 

「疲れてたかも。うっかりしてた……」

「本当、気をつけろよー」

 

 そう短く会話をしたのが聞こえたが、次には「でも良かった良かった」と焦っているというよりホッとした顔をしていたので、彼らも落とし物が見つかって安心したのかもしれない。

 やがて数分してからカズト達が出てくる。

 どうやら元々はユーヤが紛失していたようで、その手には古びた小銭入れのポーチが。

 結構中に入っているのか、ずっしりしていて重そうだ。

 

「よし、これで“あそこ”に行けるな」

「ああ……」

 

 あそこ? とララとぼたんが顔を見合わせるものの、その後は特に何も言わず、男子二人はさっさとアジトから離れていった。

 そうして、ララ達は――

 

「これは……何かありそうな感じがしますわね」

「うん。面白そうな予感!」

 

 口元をニマニマさせながら、ウッヒョ〜と追いかけていくのだった。

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