呪いと彼岸花 [呪術 × リコリコ]   作:ヴェルバーン

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「────コー、ヒー……?」

「そ、そうでーっす! なんと今ならスイーツも付いちゃいまーす」(アセ)

「……」

「……え、えと……その、あ、雨宿りがてらに、その」(アセアセ)

「…………」

「あの………もっ勿論、タオルもありますから!」(アセアセアセ)

「………………」

「ア、アハハ……。だ、ダメです……か……?」(赤面、俯き)

「……では、お言葉に甘えて。……ありがとう」

「っ! (バッ)ん゛っ~~~~」(見せられない歓喜の笑み)

「……?」











≪ 1 ≫

 

 

 

 

 

(────────さっ、誘えたァーーー!!

 誘えちゃったァ〜〜〜〜〜〜!!!)

 

 

 

「こっちですよー! お店、もうすぐ見えてきますから!」

 

「そうなんだ……。ありがとう」

 

「いいえ〜。……えひひっ

 

 

 降り続いていた雨が一時的に止んだ正午過ぎ、男性を店まで先導する千束。

 彼女は最初に声を掛けた時のぎこちなさを払拭するかのように、いつも通りの態度と口調を心掛けた。

 それでも、たまに男性の視線が彼女の視線と交わって淡く微笑まれると自然と顔が火照り、恥ずかしさと嬉しさが入り混じった笑みが抑えきれない。

 

 浮き立つような気分で下町特有の細い道を先導する。

 時折、男性の方を振り返り反応を窺う。

 伏し目がちであったり、

 周辺の民家を見ていたり、

 そして、また────目線が合って微笑まれたり。

 

 

(や、ヤバっ! 破壊力ヤバイ~~!!!)

 

 

 愛想笑いの範疇だと分かっている。

 分かってはいるが、それでも、男性が浮かべるその淡い微笑に千束の顔は熱くなる。

 

 そして、店まであと曲がり角1つというところで、先ほどからずっと男性から聞き出したかった事を口にする。

 足を止めずに振り向き、緊張を必死に押し殺して、さりげなく。

 

 それでも、顔の表情はいつもより少しだけ強張ってしまったが。

 

 

「あの~、もうお店に着くんですけどその前に1っコ、いいですか?」

 

「? ……うん、何かな?」

 

「その、えと、わ……私! 錦木 千束って言いますっ!」

 

「えっ? ……ああ、失礼しました。宵咲(よいさき)と言います。宵咲 (あきら)です。よろしくお願いします、錦木さん」

 

「~~っ、はい! こちらこそ、よろしくお願いします! あきっ、〜〜宵咲さん!」

 

「はい、お願いします」

 

 

 幾分緊張したが千束は無事、自己紹介をやり遂げた。

 聞き出したら下の名前で呼んでみようと思っていたし、自身の下の名前呼びをお願いしようと思っていたが旭の淡い微笑の破壊力に一撃で撃沈した。

 

 もう少しだけ語るならば見事に日和ったのだった。

 

 初対面でそれらは早いかと怖気づいたのもあるが、いきなり名前で呼んで嫌な顔をされたら千束は多分ショックで寝込む自信があった。ましてや、嫌われたら……彼女自身どうなってしまうのか分からない。というより嫌われるという想像すらしたくなかった。

 

 

(だ、段階だよねっ! 段階踏まなきゃ‼ 徐々に、……徐々になんだよ!!!)

 

 

 自身に言い聞かせるような言い訳がましい一般論で納得させる。

 彼女の座右の銘である「やりたいこと最優先」に若干反している気もするが、今は一旦置いておくことにした。

 段々と恋人へのステップを踏む行程が、アクション映画ほど観ないにしても恋愛モノの映画っぽくて良い、と完璧すぎる────と千束は思ってる────理論で納得した。

 

 「えへへっ!」と思わず零れてしまった笑みに、旭が微笑を返してくれる。それだけで彼女は恥ずかしいような、嬉しいような、その顔を見られたくないような、しかし自分は旭の顔を見詰めていたいような。

 そんな矛盾する思いで心をかき乱された。

 それが暖かな陽だまりのように心地良くて、いつまでもその温もりを感じていたいと────。

 

 ふわふわとした心地。

 その影響か足取りも自然と弾む。

 そして、ついに

 

 

「はい! ここが喫茶リコリコ、到着でぇ〜っす!!」

 

「ここが……」

 

「はぁ〜い、千束が帰りましたよぉーーー!! ささっ、宵咲さん、中へど~ぞ~!」

 

「失礼、します……」

 

「は〜い ♪ いらっしゃいませ~! ────っ!? す、すぐタオル持ってくるんで、ゆっくりしていってくださいねっ!」

 

 

 入店ベルの音が店内に鳴り響いた。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 ミカはまたぺらり、とカウンター席に座るミズキが結婚雑誌を捲くるのを横目に見る。

 何度も読み込んでヨレヨレのカサカサになったページを捲る音は、客足が絶えている店によく響く。雨音も聞こえないので、何時の間にか雨も一旦上がったようだった。

 真剣……というよりも必死といっていいほどにページを睨む彼女の眼は少し血走っている。店に一人でも客が居れば注意して結婚雑誌を読むのを止めさせるのだが、流石に2人だけの店内でそれは少し気が咎めた。いつものように酒を飲んでいないだけマシだと思うことにする。

 

 喫茶リコリコは和菓子などの甘味とコーヒーがメインで軽食は取り扱っていない。なので、お昼前後は基本今日のように閑古鳥が鳴いている。

 

 午前の終わりに3人でまかないを食べた後、千束は午後の混みあう時間帯前を避けて早めの買い出しに行ってくれたが、もう戻って来ていてもおかしくない時間だ。

 

 ミカが自分とミズキ、2人分のコーヒーを淹れ終えて暫く経った後。さては道草かな、と小さく笑みを零すと同時に、外から我が店の看板娘の声が店内まで聞こえてきた。

 

 

はい! ここが喫茶リコリコ、到着でぇ〜っす!!

 

ここが……

 

「はぁ〜い、千束が帰りましたよぉーーー!! ささっ、宵咲さん、中へど~ぞ~!」

 

「失礼、します……」

 

「は〜い ♪ いらっしゃいませ~! ────っ!? す、すぐタオル持ってくるんで、ゆっくりしていってくださいねっ!」

 

「? ────っ!? ブホォ‼!」

 

「ミズキ、汚い!! 先生、宵咲さんにコーヒーお願い!!!」

 

 

 看板娘の千束のいつもの入店の挨拶は扉のベルがカラン、カランと鳴るのと同時だった。どうやら出かけたついでに客引きをしたらしい。

 

 その客はミカほどではないにせよ長身の男性だった。

 年齢は二十歳前後に見える。

 入店と同時に脱いだのは、一目で分かる品の良い黒のスーツと同色のコート。濡らしてしまったのだろう、脇に抱えている。

 ネクタイは付けていないが、白のワイシャツも少し濡れて肌着の黒いインナーが透けていた。

 ワイシャツは張り付いて、彼の細身ながらも筋肉の乗った身体を否応なく浮き彫りにしている。

 

 滴り漂う、男性の────艶やかな色香。

 

 端的に言って女性陣にとっては眼に毒だった。

 現に結婚願望の強いミズキはモロにストライクゾーンに入ったのか、未婚女性が見せてはならない醜態を晒し激しく咳き込んでいる。飲み込むタイミングが悪かったらしくコーヒーがかなり気管支に入ったのだろう、女性らしからぬ濁音混じりの咳がとてつもなく聞き苦しい。

 

 そして千束は顔を真っ赤にして、ミカが声を掛ける間もなくコーヒーを注文し慌てて裏へタオルを取りに行った。そのまま和服に着替えたり、買い出しの荷物を置いてくる筈なので少しばかり時間が掛かるかもしれない。

 

 必然的に、まともに接客できるのがミカ1人になったところでようやく苦笑混じりに挨拶ができた。

 

 

「いらっしゃいませ」

 

 

 男性は店内の空気に驚いたのだろうか、一瞬キョトンとした顔を見せたが、すぐに微笑んでミカに目礼と会釈を返してくれた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 公園で出会った少女、錦木さんの案内で訪れた喫茶リコリコ。

 出迎えてくれたのはアフリカ系の長髪で大柄な男性で、紫色の和服を見事に着こなしている。外国の出身者、特にアジア系の人種以外ではコスプレ色の強い和装も、この男性はミスマッチどころか完璧に調和している。はっきり言って普通の日本人よりも似合い過ぎていて、物凄くインパクトがあった。

 

 

「いらっしゃいませ」

 

 

 黒縁眼鏡の奥、緑の虹彩と目線が合った。

 優しげな笑顔に、軽い笑みと会釈を返す。

 

 お店の外観を見た時もそうだが、内装もとてもお洒落だった。

 

 カウンター席で蹲り、野太い声で咳き込む女性も店員なのだろう。男性と同じく和服を着ている。

 女性の和服は緑色を基調としていて、若干着崩してはいるようだが。

 

 

「ブレンドコーヒーでよろしいですか?」

 

「はい……すいません、お願いします」

 

「おかけになってお待ち下さい。そちらがメニューになります」

 

 

 何故、苦しそうに咳き込んでいる女性店員に目もくれずに注文を取れるのだろう?

 呪術師としての人生経験しかない私には分からないが、これも接客業のプロ意識なのだろうか?

 

 こういったお店に初めて入る私には判断がつかなかった。

 

 男性────店長だろうか────は特別気にした様子もなく、フフッと笑い着席を促して準備を進めた。

 

 私は一旦判断を保留にし、急ぎ術式を行使した。

 微弱な炎を体内から発して席が濡れない程度に衣服とコートなどを乾かして、店員の女性よりも2つほど離れた席に腰掛ける。

 

 店内のバックヤードの方からドタバタと走り回る音。

 女性店員が喉の調子を治そうと何度も咳払いをしつつ、自席を急いで片付ける清掃の作業音。

 そんな中の男性が煎れるコーヒーの良い香り。

 

 メニューを取って見てみると、コーヒーが数種類に煎茶が一種。和菓子や和テイストのお菓子が大半を占め、洋菓子が数点。

 和喫茶とはこういうものか、と軽食店や喫茶店は勿論、大手のフランチャイズ店にも入ったことのなかった身の上としては中々興味深い。

 

 煎茶もあるから五条さんが好みそうなお店だな、と甘い物好きな先輩兼同僚を想起していると、入口の真横、従業員の出入口の扉がバンと大きな音を立てて開いた。

 

 

「宵咲さん、タオルお待たせしました!」

 

「ありがとう、錦木さん」

 

「……千束、扉は静かに開けなさい」

 

「ご、ごめん、先生」

 

 

 注意を受けて謝ったあと、赤い和服を着た錦木さんが私に大きめのタオルを渡してくれた。

 

 渡してくれたのだが────もしかしなくても、錦木さんの私物のようだった。

 

 黄色の生地に赤い花の刺繍。使い古した感は欠片もなく、見た目からして綺麗で清潔さを感じられるが明らかに女性物。

 

 錦木さんは少し顔を赤らめて、手を胸の前で組みながら何故か私が水気を拭くのを緊張したような、不安そうな面持ちで待っている。

 

 わざわざ私物を貸してくれたことに申し訳なさを感じつつ、何故私が拭くのを待っているのか分からないが恥ずかしさで顔が強張らないように気を付けて、さらに極力匂いを吸わないように……。

 

 

──────………………。

 

──────…………。

 

──────……。

 

 

 

 

 

 錦木さんは満面の笑みを浮かべている。

 

 

 その、……とてもいい匂いがした。

 

 

 自分の顔が赤らむのが分かった。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 コーヒーを口に含むと、その香りで落ち着いてきた。

 

 

 

 店長の男性はミカさんといい、咳込んでいた女性は中原ミズキさん。

 ミズキさんは27歳で6月5日生まれ、双子座のO型。お酒は()()()()()飲める方らしくミズキと呼んで、とどことなく上気した顔で名前呼びをお願いされた。

 他にも彼女は自分のことを怒涛の如く語ってくれたが、情報量が多くて覚えきれなかった。

 

 私も名前以外の個人的(パーソナル)な情報を少しは語った方がいいのだろうか、と迷っているうちに錦木さんがミズキさんをバックヤードに引っ張っていった。

 少し困ってミカさんを振り返ると、彼は笑みを浮かべて「別に気にしなくていい」と言ってくれたので()()()……気にしないことにした。

 何故、()()()なのかは、私の個人的な情報を語らなくていいという意味なのか、錦木さんたちを気にしなくてもいいという意味合いなのか判断はつかなかったためだ。

 

 なので、どちらにも話題として触れることはしなかった。

 

 黙ってコーヒーを飲んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 息を吐きつつ、お洒落な形のコーヒーカップをソーサーに置いた。

 

 カップの中のコーヒーに自分の顔が映っている。

 無表情だ。

 

 常と変わらず見慣れた自分の顔だが、やはりどこか冷たく、自分でも少し近寄り難く感じられる。

 人によっては無機質にも感じられるのではないだろうか?

 だからこそ磨いた愛想笑いや苦笑いなのだが、彼女たちには不自然に映ってはいなかっただろうか?

 

 

 

 いや、……まただ。

 また他人のことを考えている。

 他人のことを考えるだけで、自己という主柱に影響を受ける。思い悩む、弱い自分。

 他人の思いを勝手に想像して、勝手に自分の中に波紋とも呼べぬ(さざなみ)を立てている。

 

 滑稽で、無様で、どうしようもなく救い難い。

 自業自得、自縄自縛の愚か者。

 

 いつからだろう。

 こういうことを考えるようになってしまったのは。

 確か、ある程度成長してからだ。

 高専に入学する前か、在学中か。

 多分、在学中だったように思う。

 その時は同期生も居て……でも、もう居なくて。

 

 彼らがいたあの頃は、しがらみも繋がりで……。

 

 ……いや、もういい。

 こうして思考することすら、煩わしいというのに……。

 

 少し(ぬる)くなってしまったコーヒーを飲み干して立ち上がる。

 

 

「ミカさん、お会計をお願いします」

 

「もういいのかい?」

 

「ええ、コーヒー美味しかったです」

 

「ありがとう、お粗末さま」

 

 

 ミカさんに対応してもらいレジで金額を払い終えたが、錦木さんから借りたタオルはどうしたものか……。

 

 いや、普通に洗って返すべきだろうな。

 

 

「すいません、ミカさん。このタオル、洗ってまた返しに来ます。錦木さんにもそうお伝えください」

 

「そうかい? 千束は気にしないと思うし、何だったら私が洗濯しておくが?」

 

「いえ、……借りた側の礼儀ですから」

 

「ふむ、そうか……では、またのご来店をお待ちしております」

 

「はい、失礼します」

 

 

 そのまま扉を開けて自宅へ急いだ。

 

 また、雨が降りそうだった。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「えぇー!!! 宵咲さん、帰っちゃったのぉ!? もうっ! 先生、引き止めておいてよぉ!」

 

 

 ミズキをあらゆる手(泣き落とし、誠意、弱み、強請り……etc.)で説得し、諦めさせることに一応、なんとか、成功したは良いものの肝心の宵咲さんは既に退店していた。

 衝撃の事実に泣きそうになる。

 

 

「ふふふ。やっぱり、お子さまのアンタじゃダメってことじゃないかしら? 次に来たら諦めてアタシに譲りなさいよ」

 

「おのれ、誰のせいでこんな事になったと……!」

 

「すまんすまん千束。だが、宵咲くんは千束が貸したタオルを洗って返しに来てくれるそうだぞ? 律儀な青年だな」

 

「ホント!? もし、私がその時お店に居なかったら絶対に帰るまで引き止めておいてよ、先生! 絶対だよ、絶っっ対だからね!?」

 

「ええ、アタシがバッチリ引き止めておくから安心しなさい!」

 

「余計なことすんなっ!」

 

 

 さらに、ご馳走すると私から言ったのにコーヒーは料金払っているし、お菓子は食べてないし。

 ちょっと自分が情けなくて、カッコ悪すぎて落ち込んだ。

 

 

 それから閉店の時間が近付く時刻になり、カウンター席の隣に座るミズキが頬杖を付き、晩酌しながら溜め息混じりにボヤく。

 珍しく先生もカウンターから出てきて、私の隣に座っている。

 私はTVの音を極力排して聞く体勢に入る。

 

 

「はぁ〜、アタシもアンタに甘いわねぇ。あんないい男がいるのに、自分から身を引いちゃうなんて……」

 

「……いや、その……」

 

 

 

 一応、悪いとは思っているのだ。

 結婚願望の強い、というより婚期を掴めず焦っているミズキを知っているから。

 

 でも、彼は。

 彼だけは。

 この思いだけは。

 

 手放せない。

 手放したくない。

 絶対に……!

 

 

 罪悪感に何も言えずにいると、ミズキのボヤキは続く。

 TVの方を向き、私たちには横顔しか見えない。

 

 

 

「宵咲くんだっけ、彼のスーツ見た? あれワイシャツも含めてオーダーメイドのブランド品よ? 多分、服装全部合計したら余裕で7桁。つまり、二十歳そこそこで高給取り。しかも……」

 

「……ミズキ。……ペースが、早いぞ」

 

 

 ミズキのボヤキと、お酒のペースは止まらない。

 先生が、ペースを落とせと言ってるけど飲むなとは言ってない。先生は私に味方してくれているがミズキの気持ちも分かってる。

 

 でも、

 

 スーツのこと、全然気付かなかった。

 そ、そうだったんだ。

 高そうだなとは思ったけど、そこまでとは。

 でも、ミズキはちゃんと気付いてた。

 

 宵咲さんって何してる人なんだろう……って、そうじゃなくて!

 

 私はちゃんと最後まで聞かなきゃいけない。

 何だかんだ言って、私のために諦めてくれたんだもん。

 罪悪感が強くなっても絶対に、最後まで聞く……。

 

 そして、ミズキはヒートアップする。

 

 

「あのワイシャツが張り付いた身体! 絶対、絶っ対にいい筋肉してるわよ! ルックス満点、収入満点、落ち着いてて、ガッついてないし、しかも年下、……っ年下!! あぁ! アタシが甘やかしてあげたいぃ〜!」

 

「「……」」

 

 

 最後まで、聞かなきゃダメかな……?

 私も、多分先生もちょっと形容し難い思いを抱いてると思う。

 

 た、確かに、宵咲さんの身体はドキドキしたけど……。

 なんだろう。

 私の思い、我が儘、……こ、恋心。

 ……それを汲んでくれたミズキには感謝しかない。

 ないんだけど、湧き上がるこの……ガッカリ感。

 何故なんだろう。

 どうしていつも、ミズキってこうなんだろう。

 

 

「いい千束!」

 

「 ! 」

 

 

 グリンとTVを見上げていた顔を、私に向けた。

 な、泣いてる……!

 

 

「もし宵咲くんと付き合ったら、彼の友達をアタシに紹介するのよ! いいわね!!」

 

「う、うん。……勿論、約束は守るよ……」

 

「……」

 

「絶対! 絶っっっ対よ!!」

 

 

 ミズキが宵咲さんを諦めるために私に出した条件。

 それは、宵咲さんのお友だちをミズキに紹介すること。

 その、宵咲さんと……つ、付き合うどころか、もう既に彼女がいるかもしれないのに。

 

 今更ながら、かなり無茶な条件を結んでしまった。

 

 

「必ず、宵咲さん以上のスペックの男友だちをアタシに紹介すんのよ! いいわね!!!」

 

「……うん」

 

「……」

 

「破ったりしたら、ホント許さないわよ!」

 

「……うん」

 

「絶っ対よぉ〜〜〜」

 

「……うん」

 

「……」

 

 

 顔面を涙と鼻水でベシャベシャにして、さり気なく条件を釣り上げるミズキに、もうそれしか言えなかった。

 

 閉店後も愚痴に付き合い、酔い潰れたミズキを先生と二人で介抱して、かなり大変だったけど自宅まで運んだ。

 先生、足が悪いのにごめんね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、一ヶ月以上経った現在。

 

 宵咲さんは一度も喫茶リコリコに顔を出していない。

 

 

 

 

 







なんとか自分なりに頑張りましたが今回はここまで。
三人称単視点と一人称の切り替えがムズイ。
今後は一人称のみでやるかもしれません。

また、
そのうち、話の中でも勿論上げたいんですけど。
「DAから見た呪術界」、「呪術界から見たDA」の簡単な概略などをどっかの後書きにまとめて記載できたらと思ってます。(予定だけは立てて、自分からハードルを上げていく私)
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