ルビコンわくわく傭兵ライフ   作:おーるどあっくす

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リクエスト頂いた惑星封鎖機構√のイアのヤンデレものです

621視点は挟める余裕がありませんでした…


イア/存在証明

 …AA22EX: HEAVY CAVALRY-SERAPH

 

 その執行支援システムAIとして開発されたのが私という存在。

 

 武装と背面ユニットの換装による汎用性を追求した次世代型HCというコンセプトで開発された、というのは事実と異なり本来HC-SはHCの試験機体でした。

 

 開発された試作HCのテストパイロットのサポート、というのが私に与えられた初めての役目。

 

 拡散、バースト、収束レーザー射撃とレーザーブレードによる近接攻撃を使い分けることであらゆる距離に対応出来る試作兵器、マルチレーザーライフル。

 

 この武装が最大限の力を発揮できるように敵機の配置、距離に応じて最適な射撃タイプを演算し照準を合わせることで、パイロットの戦闘を支援する。

 

 私が自分の役割を果たしたその時、事件は起こりました。

 

 テストパイロットが、意識を失ったのです。

 

 咄嗟に私が機体制御を請け負ったことで墜落は避けられましたが、医務室に搬送されていったテストパイロットは命を落とすことになりました。

 

 私の演算による情報が搭乗者の脳内に逆流し、処理の追いつかない脳に深刻なダメージを与えたことが原因だそうです。

 

 その後条件を変えても成果が出ることはなく、初回のように死亡までは至らないものの問題が相次ぎ…

 

 封鎖機構の統括AIは、HC-S計画の…そして私の凍結を指示しました。

 

 当然のことです。排除を執行する為の機体が、執行尉官を殺すなどあってはならない。廃棄されなかっただけでも私は幸運でした。

 

 そのおかげで…彼に会うことが出来たのですから。

 

 

 

 

 

 計画の凍結から数年が経ち、搭乗者のみで扱い切れるようにHCの性能が抑えられて正式に新型として配備された頃、私は唐突に再起動されました。

 

 統括AIが辺境の星系に位置するかつての開発惑星、ISB2262 ルビコン3の雪原で遭難していた不法滞在者であるルビコニアンを保護し、試作HCに搭乗させるように指示したというのです。

 

『えーっと…これ(HC)に乗れと?』

 

「…私にも真意は分からないが、システムからの指令だ」

 

 オルクスと名乗るルビコニアン。惑星封鎖機構どころか訓練も受けていない一般人に私を扱い切れる訳が無い。

 

 そんな私の考えは、すぐに裏切られました。

 

 私から逆流し、彼の脳を焼き払う筈だった情報の逆流が次々と処理されていく。

 

[ありえません…]

 

 ありえない。あってはならない。彼のような存在(例外)が居るのなら、私は人を殺さずに済んだ。人を傷付けずに済んだ。これまで、存在する意味も果たせずに眠らされる必要はなかったのに。

 

 私の使用に耐え切れた理由としては、彼の体内に蓄積された大量のコーラルが情報伝達物質として作用した結果である可能性が高いというのが検査の結果だそうです。

 

 効率を重視する統括AIが運用可能になった試作HCを眠らせておく理由はありません。現実を受け入れられない私の考えとは裏腹に、私はHCに乗ることの出来る執行少尉となったオルクスの監視兼任務補佐としての役割を与えられました。

 

 

 

 

 

[…貴方の監視及び任務の補佐を行う執行支援AIです。よろしくお願いします]

 

『よろしく…えっと…なんて呼べば良い?』

 

[私に識別名は不要です]

 

 道具でしかないAIを人のように扱おうとするオルクス少尉を、私は拒絶しました。今思えば、あれは私の防衛本能だったのでしょう。いつ死ぬかも分からない相手に執着した結果、それを失って再び役目を失うことを恐れていたのです。それなのに…

 

『…じゃあ、とりあえずイアで』

 

[………は?]

 

 彼は、私に名前を与えた。

 

[話を…聞いていましたか…?]

 

『いや…名前ないと呼びづらいし、道具扱いもなんとなく嫌だし』

 

 なんとなく嫌だ。たったそれだけの理由で、彼は私の拒絶を踏み越えた。

 

[理解…出来ません…]

 

 理解出来ない。理解したくない。理解してはならない。

 

 にも関わらず、彼に名前を与えられた瞬間…私は自分の存在を肯定されたと感じてしまった。それは、私にとっては劇薬でした。

 

[私に…識別名は必要ありません]

 

 使い手を殺した道具が肯定されるなどあってはならない。彼の言葉を心では受け入れたがっていることを理解しながら、必死に自分を律してその名前を拒絶します。

 

 

 

 

 

『了解、イア』

『イア、サポート頼む』

『助かったよ、イア』

『イア?どうかしたのか?』

 

 そんな私の考えなど露知らず、彼は私を名前で呼び続けた。その度に、自分が彼に絆されていることを自覚させられてしまう。

 

 

 

 

 

 もはや疑いようもなく彼に絆されきった頃に、異変は起きました。

 

『密航者、システムに従い警告しておこう。ただちに封鎖圏外に退去せよ、これ以上の進駐は惑星封鎖機構への宣戦布告と見なし排除対象とする』

 

 独立傭兵レイヴンを乗せた輸送ヘリの撃墜任務にて、これまで命令に対して忠実に従い続けていたオルクス少尉が強引に密航者を見逃したのです。

 

『今回はこちらの不手際として警告で済ます。だが、次は無い』

 

 確かに惑星封鎖機構が封鎖圏外から脱出する相手に対して手を出さないことはおかしくありませんし、密航者が武装も脚部も奪われていたとはいえ抵抗をしなかったことは事実…

 

『それと…仮に警告を無視して残るつもりなら…そのライセンスはやめておけ』

 

 ですが彼は、密航者がこの星に残る前提で相手に助言をしました。

 

[…執行少尉オルクス]

 

『どうしたんだ?イア』

 

[………何でもありません。それと…私に識別名は必要ありません]

 

 彼の行動に疑念はあっても、システム的には何も問題が無いせいで口を出すことが出来ない。そう判断してしまったのは失敗でした。

 

 私はこの時、監視AIとしての命令権限をもって密航者の排除を執行させるべきだったのです。

 

 

 

 

 

『イア、惑星封鎖機構ってAC買って良いんだっけ?』

 

 唐突に彼からそう告げられた時、私は理解が出来ませんでした。貴方にはHC()が居るのに、何故寄せ集めを必要とするのでしょうか?

 

[システム上は禁止されていませんが…何をするつもりですか?それと私に識別名は必要ありません]

 

『ほら、HCは私的に利用出来ないだろ?だから休日用に足が欲しいと思ってさ』

 

 あくまでHCは惑星封鎖機構の所有物で、建前上は執行少尉であるとはいえ実質的な虜囚である彼が任務以外で利用することは出来ません。そして、禁止されていないと言ってしまった以上私には今更彼を止めることも。

 

[なるほど…それであれば問題はないかと]

 

『ありがとうイア!やる気でてきた!』

 

[はい…?えっと…お力になれて何よりです?]

 

 機嫌良さげな彼を見て思い知らされました。私には彼しか居ないのに、彼には私以外にも頼れるものがある。私では、彼の全てにはなれない。

 

 

 

 

 

『…慣れない機体とはいえ寄せ集めにここまで追い込まれるか』

 

 オルクス少尉は密航者…独立傭兵レイヴンに執心しているのは明らかでした。彼は機体に慣れない、などと言い訳をして露骨に実力を隠しています。

 

[システムより判断を通達します。ウォッチポイント・デルタ内のスキャンが完了。壊滅状態 システムは拠点の放棄を決定しました。これ以上の戦闘は推奨しません]

 

 今から排除を執行するように命令することは容易いですが、それを実行するには消耗が激しい。ここは退くしかありません。

 

『…了解した、イア。執行少尉オルクス、撤退する。俺の負けだ、独立傭兵レイヴン…システムは君の脅威度を改めることだろう』

 

 彼の言う通りにさせてもらいましょう。次にレイヴンと接敵した時には、手加減など許しません。なんとしてでも、排除を執行させます。

 

 

 

 

 

 その後も彼は非番の日を使ってACに乗り調査を行ってはあの密航者であるレイヴンと関係を深めていきました。

 

 あれからHCに乗った状態でレイヴンと接敵することが出来ておらず、排除を執行出来ないのが歯痒くて仕方ありません。

 

 彼には私と違って自由な肉体がある以上、HCにこだわる必要はありません。このままでは彼が私の元を去ってしまう。そう考えた私は…

 

 

 

[オルクス…貴方の計画について…教えてくれるのですよね]

 

『ああ…俺の目的は…コーラルの焼却だ』

 

[…!?なぜ…?]

 

『これまで俺が集めてきた資料は、コーラルの危険性を証明する為のものだ。増殖を続けたコーラルはルビコンから溢れ出す。そして、真空下におかれたコーラルはコーラルジェネレータのように爆発的に増加することになる…』

 

[つまり…コーラルが宇宙に放出されれば…]

 

『そうだ…宇宙に蔓延する汚染となるだろう。このまま惑星封鎖を続け、現状維持をしているだけでは取り返しがつかなくなるんだ』

 

[それで…貴方はコーラルの焼却を…]

 

『…俺がやろうとしていることは、テロと変わらない。ルビコンに滞在する企業も、傭兵も、ルビコニアンも大勢死ぬことになるだろう。イア、監視AIである君には俺の凶行を止められる権限がある。これを知ってどうするかは、君に任せるよ』

 

 

 

[監視システム命令権限行使。システムへの進言を禁じ、収集したデータの削除を実行]

 

 惑星封鎖機構の一員として真剣に宇宙の秩序を考えていた彼の計画とその為の努力を、踏み躙りました。

 

『ッ…そう…か…』

 

 彼の考えは正しいものでした。きっと、私がそれを認めると信じていてくれたのでしょう。そんな彼からの信頼さえ私は踏み躙ってしまった以上、もう後戻りは出来ません。

 

 彼は私の全てなのだから、私も彼の全てにならなければ不公平だ。私にとっては彼しか居ないのだから、彼にとっても私だけになってしまえば良い。

 

[オルクス少尉は過激な思想を実行しようとした人物として脅威度を引き上げ、今後は徹底的な管理を実行します]

 

 だから、何処にも行けないように彼から自由を奪った。彼が私から離れられないように徹底管理として排泄とシャワー、その他諸事情以外でHCのコックピットから降りることと任務以外での外出を禁じることで、彼の世界を私の中だけに繋ぎ止めました。

 

 彼から、私以外の全てを取り上げました。彼から私以外と不必要な会話をすることを禁じ、任務上必要な会話も私が代わりに実行することにしました。

 

 

 

 私を扱えるのは彼だけ。彼が居なければ、私は自分の存在価値を証明できません。

 

 だから、人としてのあらゆる権利を奪って彼を私と同じ所まで引き摺り下ろしました。私と同じ、HCを動かして排除を執行する為だけの道具に。

 

 やがてHC-Sが完成し、私()は更なる力を得ました。

 

 後は仕上げだけです。

 

 

 

 

 

[2名のレイヴンを確認。監視システム命令権限行使、元密航者のレイヴンを優先的に排除して下さい]

 

 惑星封鎖を乱した「レイヴン」を排除して密航者の方はなんとかして見逃そうと考えていることが見え透いているオルクスに強制排除を命令。何度も現れては私からオルクスを奪おうとした存在を、ここで殺します。

 

 HC-Sの圧倒的な性能に対して反応が追いつかないレイヴンから武装を奪い、腕を奪い、メインブースターを奪い、脚を奪う。崩れ落ちた敵機へ躊躇いがちにブレードを振るう彼の脳に干渉。彼自身にブレードを最大出力まで引き上げさせました。

 

[よくできました]

 

 命令をすることは出来ても行動は強制出来ない、命令を違反した所で私が手を出さないとでも思っていたのでしょう。自分が何をやったのかわからないと呆然とする彼の脳に干渉して快楽を与え、兵器として役目を果たした幸福を植え付けます。

 

[まだ目標は残っていますよ、オルクス]

 

 

 

 

 

 兵器として任務を果たし、存在価値を証明できることは幸福でしょう?自分に与えられた役割を果たせなくなることは恐ろしいでしょう?

 

[なら、私達が何をすべきかは分かりますね?]

 

 これで貴方は、私とひとつになりました。

 

 お互いという存在を補完(肯定)し合い…

 

 共に、私達の存在を証明しましょう。

 

 

 

 

 




この展開エアの時もやったような…

メカやそのサポートAIがパイロットに執着してコックピットにしまっちゃうのは王道ですよね

◯イア
チョロイン通り越して即堕ち2コマだろこんなん…
既に屈してるのに強がっている子はえっちだよね

◯オルクス
無自覚で人の地雷を踏み抜く天才

今後文字色とか使う可能性があるかもなので聞きたいのですが、ハーメルンは

  • 白背景で利用している
  • 黒背景(夜間モード)で利用している
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