《そういえば…ルクス、貴方に質問したいことがあります》
『どうしたんだエア?』
グリッド086を目指してヘリに揺られる中、エアは何か聞きたいことがあるらしい。無断でウォルターにエアのことを話したからだろうか?
《ルクスの一人称…「俺」というのは一般的に女性が使うものではない筈ですが、何か理由があるのでしょうか?》
いきなりぶっ込んで来たな…今のご時世にそんなこといったら燃え…いや、エアに燃えるはシャレにならんか。ルビコンが今度はもっとやばい火に包まれることになる。
『…アイデンティティを守るためかな』
《つまり、背伸びしたいお年頃ということですね?》
TS娘の葛藤をその一言で片付けないで…!?人の心とか…Cパルス変異波形だしないか…ってこれも差別じゃん。言いたいことどころか事実すら言えないなんて生きづらい世の中になってしまったもんだ。
まぁとりあえず、きっとこの世界でもTSロリ転生者はマイノリティだろうからもう少し尊重してくれ。
『俺も質問良い?』
《はい、なんでしょうか?》
『俺がウォルターとエアの話をしてたことに気付かなかったみたいだけど、常に脳波と同期してる訳じゃないの?』
交信の仕組みについては知っておきたい。もし考えてることまで筒抜けなら原作知識とか漏れちゃうし…
《私も交信ができたことは初めてなのでまだ分からない所もありますが…レイヴンと同期している間はレイヴンの視覚や聴覚などからのみ情報を得られるようです》
『なるほど…結構制限は多いんだねえ…』
《昔はウォッチポイントの地中支脈を通してルビコン中を見ることが出来ていましたが、今はそれよりもあなたたちと交信していたいのです》
あー…昔から意識はあったのか。人も同胞も呼びかけに応じてくれないなら全てを見通せる優位性を捨てて621にべったり同期するのも分かる気がするなぁ…
とりあえずエアは交信が可能な強化人間の脳深部コーラルデバイス、地中支脈、技研AC、コーラルを情報導体として使える装置になら干渉できる訳か。ジェネレータとして使う分のコーラルが確保出来ればコーラルツゴウノイイボディは案外現実的かも………ッ!?
突然昨夜の夢を思い出して背筋が凍り付く。義体を手に入れたエアが俺を妹呼ばわりして部屋に引き摺り込んだ後にひたすら頬擦りをされながら甘やかされるという尊厳破壊の著しい恐ろしい夢だった…
やっぱりコーラルツゴウノイイボディは見送るべきか?いやでも義体があったら絶対エア喜ぶし話し合いも円滑になるよな。人は戦う為の形をしている云々の誤解も回避出来るかもだし。あくまでアレは夢の話、さっさと忘れてカーラに頼んでみよう。
さてさて、やって来ましたグリッド086。本来ならRaDによる歓迎会があるはずだが、クソデカミサイルを飛ばしてくる四脚MTは今の所配備されていない。やはり今回はウォルターを通して尋ねて来たから穏便に…
「なんだあ?見ねえツラだな」
…あれっ?
「ここが誰のシマだか分かってんのか?」
俺たちの目の前にガッシリとした体格の黄色いACが降り立つ。
「ボス、見ててくださいよお。この「無敵」のラミーが、客人をもてなしてやりますんで」
あれぇ…?どう見ても臨戦体勢だ…さてはてめえ、コーラルのキメ過ぎでカーラの指示が飛んだな?
「…しかたない、おとなしくしてもらおう」
ここは穏便に暴力で!と言わんばかりに621がショットガンを構える。まぁどうせこの有様だと話は通じないだろう。殺さない程度に痛め付けるしかないか…
「おっ、俺のマッドスタンプがあーっ!?」
《…敵ACを撃破》
という訳で621の後ろでちくちくレーザーハンドガンを撃ってるだけの戦闘はカットだカット。先走った番犬はこれで大人しくなったから、そろそろカーラも…?あれ?門が開かないな…
〔ビジター!好き放題やってくれているようだね。私らRaDは、来る者は拒まないのがモットーだ。せいぜい歓迎しようじゃないか〕
あれぇ………?
「…622、ほんとにれんらくいれたの?」
『入れたよ!厳密にはウォルターが、だけど』
機体越しなのにジト目を向けられているような気がする。勝手にエアのこと話したからって信用無さすぎ…いや、これは全面的に俺が悪いな!
《…話がしたければ力を示せ、ということでしょうか?ひとまず隔壁にアクセスしてみます》
Cパルス変異波形の電子戦能力と新ハウンズの戦闘力を知りたいってことかぁ…随分と面倒なことに…
と言う訳で、結局本編同様に始まってしまったグリッド086攻略。RaDの腹筋爆発ダンゴムシことトイボックスを始めとした面白MTを621がしばき回し、閉めれるところ全部閉めたんじゃないかというレベルで乱立する隔壁をエアが開錠して道を切り開いていく。
え?俺が何もしてないって?元文系男子大学生がハッキングなんて出来る訳ないだろ!戦闘については例によって621の後ろでレーザーハンドガンちくちくしてました…
《…?この隔壁には特殊なロックが組み込まれています。どうやら私では開けられないようです…》
エアにも開けられない?そんなことある?
〔あんたらの実力はよく分かった、ここから先は二手に別れて貰うよ!ビジター!〕
「…!?」
『はぁ!?』
パーティ分断ダンジョン…!?いつからACVIはRPGになったんだ!?そういうのは4人以上のパーティで主人公とヒロインをイチャつかせつつ仲の悪いサブキャラに友情を目覚めさせる為の措置だろ!?
「…エアはルクスをおねがい」
《分かりました、レイヴン》
そして当然のようにエアは俺に同期して介護へ…まぁ俺の実力的にそりゃそうなるよね…621に頼りきりだった俺が、1人でやっていけるだろうか。
《そちらの曲がり角に敵機…トイボックスが待機しています。敵機の待機状態に先制攻撃は無意味です、角から一瞬姿を見せて攻撃を誘いましょう》
『分かった、ありがとう』
エアからの過保護とも言える手厚いサポートのお陰で、なんとか原作にはなかったグリッドの未知のエリアを順調に進むことが出来ている。
『ここは…?』
奇襲を切り抜けながら迷路のような知らない通路を抜けた先で、ようやく俺は開けた場所に出る。スマートクリーナーがいる訳ではなさそうだが…
《敵性反応、AC単騎です…!》
…ラミーが撃破された以上敵機は二択。どちらであっても、確実に俺より強い。
[RaDのチャティ・スティックだ。インビンシブル・ラミーの仇は取らせて貰うぞ]
『建前が雑!?勝手に殺すなよ!?』
俺の正面にある隔壁が開き、現れたのはカーラの補佐AIであるチャティだ。
[ボスからの命令だ、お前の力を見せてみろ]
『っ…』
チャティがそう発言すると同時にバズーカがこちらへ放たれる。やるしかないって訳か…!
バズーカを回避してミサイルを発射。俺の背後ではグレネードが、チャティの後ろでは軽タンの機動力であっさりと振り切られた双対ミサイルが壁に直撃し爆炎を上げる。
《敵機について調べました。ACサーカス、アリーナランク14。ミサイルには注意を、足を止めると危険です》
サーカスはあくまでフルコースとの協働を前提とした火力支援機だが、その真価はこちらの動きを制限する能力の高さだ。戦闘領域を往復するクラスターミサイルと発射時間の長い垂直ミサイルで休む間も与えず爆撃し続け、隙を晒した所にバズーカとグレネードを叩き込む。
ミサイルを避けようとすればアラートへの反応が遅れ、アラートに注目すればクラスターミサイルの爆撃に飛び込みかねない…機体制御に精一杯な俺にとってはかなり苦しい相手だ。
とはいえ敵はタンクだからグレネードの撃ち落ろしは心配ないし、EN耐性も高くはないからレーザーハンドガンで引き撃ちすれば一方的に…あれ?
逃げる俺を追いかけるのはミサイルだけ。チャティは俺を追いかけるどころか後退していく。そうか…俺を視界に収めてさえおけばミサイルが向かっていくのだから、チャティが俺の間合いに付き合う理由はない。
《ルクス、敵機を追いましょう》
ミサイルは垂直ミサイルが30、クラスターミサイルが20発。降り注ぐミサイルにシールドは無意味であり、俺の実力では撃ち切るまで耐え切ることなんてできないのだからエアの言う通り自分から距離を詰めていくしかないのは分かっている。分かっては、いるのに…!
《…ルクス?このままでは…》
ミサイルを躱しながら乱れ撃つレーザーハンドガンの弾速は遅く、チャティには殆ど命中していない。当たったとしても距離減衰で出力の低下したレーザーでは装甲を抜く有効打足り得ない。
[その程度か、ビジター]
俺が握っている武器はあくまでもレーザー“ハンドガン”。近接射撃用のEN兵器であって引き撃ちに適した武器ではない。これを武装として採用したのは、臆病な俺が重量級のコアを載せる為の積載を確保する為だった。
[その力で何かを守れると思っているのなら、それは「笑える」な]
間違いなくチャティの本心ではないであろう挑発は、俺に取って図星だった。エアもウォルターも助けたいなどと独断で突っ走っておきながら、肝心な所は621がやってくれるだろうと他人任せ。
『ぅ…』
…このルビコンで恐らく誰よりも強い621は俺のことを守ろうとしてくれるから、ずっとそれに甘えていた。武装ヘリ相手にゲーム感覚で突っ込んだせいで死にかけてからずっと戦うのが怖くて、気が付けばパルスブレードを振れなくなっていた。けれど…
《ルクス…!動いて下さい!》
双対ミサイルをパージして、コア背部の排熱機構を展開。アサルトブーストで一直線に飛び出す。
『ぅらあッ!』
けれど、いつまでも
《敵機、グレネード構えました!》
エアの警告から数瞬おいて放たれたグレネードをイニシャルガードで受け流し、即座に展開を解除。
距離247、FCSとレーザーハンドガンの性能保証射程に敵機を捉えて攻撃を開始。
《次弾バズーカ、来ます!》
さっきよりも更に弾速の早い軽バズーカも再展開したシールドで受け止める。150ジェネには無駄遣い出来る程のEN容量は無い。選択肢は防御をシールドに全任して愚直に突っ込むだけだ。
距離190、レーザーハンドガンの有効射程だ。攻撃の頻度を上げて敵機を乱れ撃つ。
エアの忠告でグレネードとバズーカを捌き、チャティへレーザーを絶え間なく浴びせ続ける。
《右手武器、オーバーヒートです!》
当然、俺に熱管理なんて出来る訳もない。後一押しという場面で右腕武装が使い物にならなくなった。
…だが、本当に後一歩なんだ。レーザーハンドガンで必死に溜めた衝撃値、この場面で冷却の為に退くなんて出来ない。
『これ…でッ………!』
サーカスの胴体にブーストキックを叩きつけてスタッガー。右腕のレーザーハンドガンをパージし、握りしめた拳を三度振るう。
『終わりだ…!』
拳による三連打でスタッガーの硬直を延長されたサーカス。高速でチャージしたレーザーハンドガンを突き付け、そのトリガーを手放した。
[見事だ、ビジター。実力は見せて貰った]
稼働限界を迎えたサーカスはターミナルアーマーを展開し、武装を全てパージする。認められたということだろう。
《 …ルクス?ルクス…! 》
安堵すると同時に、エアからの交信が遠ざかっていく。一応敵地なのに意識を失うなんて、詰めが甘い…な………
◯エア
ノンデリ波形
でもやっぱり有能
◯ルクス
エアの素朴な疑問が“彼女”を傷つけた
でもちょっと成長した
◯621
スマートクリーナーとカーラの二連戦を危なげなくクリア
今後文字色とか使う可能性があるかもなので聞きたいのですが、ハーメルンは
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