壁上のジャガーノートが放ったグレネードがMT部隊を吹き飛ばし、壁の側面に配置された狙撃砲台はMTを的確に貫く。なんとか砲撃を切り抜けて街区に突入したタンクACの率いるMT部隊は、大量の4脚MTに包囲されていた。
3発のグレネードによる集中放火によって4脚MT部隊の包囲を切り抜けたタンクACはMTを引き連れてビルの隙間へ身を隠し、砲台の斜線を切ったのだが…
「熱い…!助け…!」
残念ながらその路地にはナパームを撒いてある。ACSに異常が発生しパニックになったMT達は熱に炙り殺されることとなった。
「クソが…ナパームなんてばら撒きやがって…!」
ナパームをばら撒いた敵機を探すタンクAC…キャノンヘッドを駆るG4ヴォルタへバズーカを撃ち込んで先制攻撃。頭上からナパームランチャーをぶちまけつつ目の前に降下する。
『そこのAC…貴様ベイラムのレッドガンだな。この後に及んで有象無象のMT部隊が物量とは…相変わらずだな、ベイラム。全く…貴様らレッドガンには同情するぞ。飼い主が違えば長生き出来たろうに』
「てめえは…多重ダムの時の…!」
『他の番号付きはどうした…捨て駒にされたか?俺がやったのは何番だったか…』
「なんだその話し方は…ふざけてやがるのか?」
めっちゃふざけてますね…まぁスッラごっこはこの辺にしておこう。
改めて状況を説明しよう。多重ダムにてG5イグアスとG4ヴォルタを621の力を借りて退けた俺は壁の防衛に駆り出されることになった。あっち行ったりこっち行ったりハード過ぎないか解放戦線。まぁ絶対に破壊されるストライダーを任せられるよりはマシだけど。
壁越えの阻止という大仕事にあたって、俺はソフィーへ機体構成の変更について相談することにした。ソフィーが考案したエアプアストヒクでヴォルタ、ラスティ、レイヴン達を相手取るというのは流石に厳し過ぎる。
帥父に憧れていたから武装を寄せたのになどと言い出すソフィーへ「そのアセンの何を知っていると言うのだ…」と言おうとするのをなんとか飲み込み、今は帥叔に憧れているのだと適当を言って武装を射撃寄りに変更。
イグアスのバトルログで得られたマインドαのおかげで、近接禁止というソフィーによる縛りをなんとか対処出来た。企業所属も解放戦線も等しく傭兵扱いしてくれるAMちゃんに感謝。
後はG4撃退の実績で解放戦線に用意してもらった推力特化ブースターを始めとして内装をグレードアップ。見違えるほど扱いやすい機体になったはずだ。相変わらず火力は無いが。
「そんな土着企業の旧型ACでレッドガンに挑むつもりか?舐めやがって…!」
「そのMTと大差ねぇ機体でイグアスのやつを墜としやがったのがコイツだ」
どうせならもっと舐めていてくれた方が立ち回り易かったんだが…やるしかないか。
「てめえの首を持ち帰れば…イグアスの機嫌も落ち着くだろうよ!」
〔えっと…なんだっけ…ベイラムの部隊…ベスパー?の5番目…あれ?違う、4番目だ!
…俺はどこからツッコめば良いんだろうね。
「巫山戯てんのか!?
〔ひっ…!?〕
『ソフィー…オペレーターやるなら敵の主要戦力の名前くらい覚えなよ…』
〔アクスだってイグアナの名前忘れてたじゃん!イグアナもヴォルタも私は覚えてたもん!〕
『それはイグアスだよ!あと俺のは名前を覚える価値もない奴だったっていう煽りだから!』
〔アクスのばか!〕
『馬鹿って言った方が馬鹿定期』
〔今ばかって言った!〕
…小学生かな?
「イチャついてんじやねえぞ…てめえらいい加減にッ!?」
バズーカどーん。ナパームばしゃーん。キャノンヘッドのスカスカな皿頭が爆発で吹き飛ぶ。
『ナイス撹乱だ、ソフィー』
〔…?え?あっ!け、計画通り…!〕
『その調子で次も頼むぞ』
〔…了解!〕
ヴォルタはイグアスと違って真人間…だと思うし、メインカメラがやられただけだ!とはいかないだろう。ヴォルタが視界を失った隙に両腕のライフルで残りのMTを片付けていく。
今更だが、ソフィーの発言が大暴れしているうちに4脚MT達は他の地点にいるMT部隊の殲滅へ向かった。ナパームは地上にいる鈍足な相手に有効なため、路地で俺と戦うには相性が悪いからだ。
「やってくれたな…」
ヴォルタがサブカメラを起動した頃には全てが手遅れ。MT部隊は全滅し、ACの状態もとても万全とはいえない。今の俺には色々と足りていない以上、手段は選ばず勝ちに行く。
放たれたグレネードは壁をクイックブーストで蹴り上がって回避。こういう時跳躍性能は水平と垂直のどっちが乗ってるんだろうか?芭蕉脚の性能を考えると壁に対して水平に蹴ってる判定なのかな?
ナパームランチャーでヴォルタの足場を奪い、着弾地点を挟んで跳弾しない距離を維持しながら2種のランセツを斉射。ARは垂れ流して牽制、本命のRFを確実に当てていく。
こちらへ接近するにはナパームの炎上エリアを突破するか、おっそい空中ブーストで射撃の的になるか、アサルトブースト開始の硬直をバズーカで撃ち落とされるかの3択という訳だ。流石にブーストキック連打は身体がもたないだろうからね。
『灰被りて我らあり、この場合俺が被るのは君の遺灰になりそうだが』
「この程度の炎で俺が焼かれるかよ!」
『ほう…この炎の中を突っ切ってきたのはお前が初めてだ…』
〔その機体で出撃するのも初めてじゃん…〕
『細かい女はモテないぞー』
〔………あ、あくすがいるもん…〕
『…ごめん』
そのアクスも俺のせいでもう居ない…流石に幼馴染は負けヒロイン、なんて茶化すことは出来なかった。
「てめえらいい加減に…」
『ところでヴォルタ…君は勇敢にも炎を突破して俺に突っ込んできた訳だが…』
「なっ!?まさかてめえ…!」
『ここには遮蔽がないんだよね』
ヴォルタの機体へ狙撃砲台が斉射される。タイミングをずらして絶え間なく与えられる衝撃はキャノンヘッドに動く余裕を与えない。
「イグ…ス…………俺も………」
〔G4イ…ヴォルタ、ACキャノンヘッドの撃破を確認、レッドガン部隊もMT部隊が殲滅しました〕
『砲撃支援と敵機の撹乱ありがとう、ソフィー』
戦闘中にソフィーが砲台制御担当に話を通してくれたお陰でヴォルタをハメ殺すことが出来た。敵機の錯乱は彼女の素だが。
〔わ、私はオペレーターだから当然…?だよ!アクスもお疲れ様、無事で良かった〕
『それはそうと、戻ったらレッドガンとヴェスパー覚え直しね』
〔はい…〕
レッドガンは退けられ、ひとまず壁は守られた。共に戦った4脚MTの操縦者から賞賛を受け取り、休息を取る。
俺がヴォルタの相手を引き受けたことで、4脚MTの半分ほどは健在。彼らはみんな気の良い奴らで、ポッと出の俺にも親切にしてくれた。
壁内部の非戦闘員だって腹を空かせている筈なのに、「コーラルの戦士がそんな身体でどうする」なんて食料を分けてくれている。
…俺にはそこまでされるほどの価値なんてない。俺はルビコンの為に全てを捧げることなんて出来ないし、同志…いや、彼らを同志なんて呼べないか。彼らが生存したことを喜ぶなんて出来ない。
彼らが生き残った所で…どうせ621かラスティに殺される、そう思ってしまうような奴なのだから。
あと数日もしないうちに、壁は落ちる。俺は…その先生きのこることが出来るのだろうか。
◯アングレカム改
【挿絵表示】
近接禁止縛りに沿う形で改良された機体
芭蕉脚と通常推力特化ブースターによる地上射撃戦を得意としており、ナパームで敵機の足場を奪い、接近してきた相手への迎撃や不足気味な火力はバズーカで補う
オルクスに蔑称を付けたい(他に案があれば活動報告にコメント頂けると助かります)
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オルクズ
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オルカス