エルカノの工房からALBAを奪い取ってリリースを止めにきたオルクスを621がボコったあとリリースでローダー4のコックピットに監禁してコーラル漬けにする話の予定でした
没になったということはつまりそういうことです
「…その必要はないよ。準備は整ったから…ついて来て」
そう言って俺を案内するソフィーを追いかける。機体の修理が必要ないということは…撃破される可能性に備えてわざわざもう一機用意してくれたってところだろうか?
「着いたよ、機体を格納して」
案内された先はよくあるAC用の輸送ヘリ。そのハンガーには、既に一機のACが格納されている。
「FCSとコーラル発振装置だけ取り替えるね」
『…この機体は?』
「決戦に備えてALBAをもう一機用意してもらったの。時間が足りなかったから頭部とコアしか間に合わなかったけれど、貴方の戦い方ならこれだけでも十分でしょ?」
いつの間にそこまで…
「元々の弱点だった供給補正と耐久面をコアと頭部で補って、ブースターは近接戦を重視しつつバランス重視に変更、ジェネレーターは帥父に用意してもらったコーラル内燃型だからコーラル発振装置も思う存分振れるはずだよ」
武装の載せ替え終わった機体に乗り込む。パーツ毎に細かく俺専用の調整がされているようだ。
「…貴方のために出来ることは、全部やったつもり。一緒に戦えたら良かったけれど…きっと、レイヴン相手じゃ足手纏いだから」
『…ありがとう、ソフィー。行ってくるよ…!』
「アクス…帰って来なかったら、許さないからね」
『…もしかしたら動けないかもだから、迎えに来てくれ』
なんとも締まらない俺の言葉にため息を吐いたソフィーを尻目に、輸送ヘリから飛び出す。バスキュラープラントに併設された軌道エレベーターに乗り込み、LOCステーション31への上昇を開始した。
BAWSが資金をかき集め、シュナイダーとファーロンが技術を提供し、エルカノが開発したこの新型。
ラスティというルビコンの英雄の為に用意された機体を、ソフィーが俺の為に仕立て直してくれた。
AC//ANGRAECUM ORTUS
この機体に込められた人々の意志。それは、俺には重過ぎるものなのかもしれない。それでも、その祈りに応える為に…そして、俺がここに居る意味を証明する為に、俺は灼けた空の更に上を往く。そして…
撃破されたALLMINDの前に佇むレイヴンに向けてレーザースライサーを展開。高速回転しながら敵機に迫るブレードは、しかし彼女には届かない。
『…追いついたぞ、レイヴン。やはり君は…』
刃の消失したレーザースライサーの展開を解除してコーラルオシレーターに持ち替え、6つの頭部デバイスでレイヴンを見据える。
『…ルビコンを脅かす脅威に、なってしまったんだな』
不意打ちはエアの一声であっさりと躱されてしまったが、リリースのトリガーを引かせないようにするための牽制としての役割は十分に果たしてくれた。
「…オルクス」
スライサーを回避し体勢を立て直したレイヴンが、ここに居ない誰かの名前…あるいは俺のことを呼ぶ。
…オルクス。それが、俺の名前を間違えて覚えている訳ではないことは分かる。だが俺は、彼女がそう呼ぶ人物のことを…いや、そもそも彼女自身のことを、ほとんど知らない。
オルクスは彼女の夢でしかないのかもしれないし、彼女が強化手術を受ける前の大切な人なのかもしれないし、俺のことなのかもしれない。
分かっているのは彼女の容姿が少女であること、そして彼女が俺にオルクスという人物の面影を重ねていることだけだ。
俺にとってレイヴンとはARMORED CORE VI FIRES OF RUBICONというゲームの主人公にしてウォルターの猟犬、強化人間C4-621を指す。
機能以外は死んでいて、言葉を発することの無い圧倒的な戦闘力を持つ強化人間。
俺もまた、そんなゲームの登場人物を彼女に重ねて、彼女自身と向き合えていなかったんだ。
「もう、あなたとはなすことなんて、ないよ」
『俺は、そうは思わない』
言葉にしなくては思いは伝わらないけれど、戦わなくては言葉を交わせない。だから今は…
『始めよう…止めるよ、君を』
「…あなたをころして、むこうがわにいく」
向かい合っていたACはコーラルジェネレータ特有の紅い霧と煌めきを放つ噴射炎を残し、お互いの方へ向けて飛び出した。
この機体で何をすれば良いのかは明白だ。スタッガーを取って、レーザースライサーを叩き込む。
「追い込まれた君は最も強い」「てめえはここからが鬱陶しいんだ」と評されるだけのことはあって、レイヴンは強い。
ならばこちらはレイヴン以上の瞬間火力でねじ伏せる必要がある。芭蕉腕とレーザースライサーならばそれが出来る筈だ。
エツジンを構えながらのアサルトブーストで突撃し、ショットガンを撃たれる前にブーストキックで迎撃。発条の如き逆関節の跳躍力を乗せて繰り出された両脚による蹴りが、レイヴンを怯ませる。体勢を立て直される前にコーラルオシレーターを振り下ろした。
『ルビコンでは…余りにも多くの血が流れ過ぎた。だが…それもこの機体で終わりにする』
俺の手の届く限りは、同志達も…そして君も死なせはしない。例え綺麗事の自己満足だとしても、「壁」で4脚MT乗りの同志たちに621を任せて見殺しにしたように…誰かを切り捨てて前には進みたくないんだ。
レイヴンがショットガンを構えた姿を確認してレーザースライサーを展開。発射の瞬間にレーザー刃を展開して散弾を弾き飛ばした。ドルマヤンの見せてくれた神業に着想を得た、レーザースライサーでのイニシャルガードとでも言うべきか。
「たたかいのなかでしか、ひとはいきられない。むげんのせんたくととうたをくりかえして…たいせつなものをふみにじる」
ショットガンを擊ち切ればレイヴンにはスタンニードルランチャーしか残らない。そして、この距離で足を止めるのはリスクが高すぎる。ブーストキックで反撃を仕掛けようとしたレイヴンを迎撃する為にこちらもアサルトブースト。と、見せかけてその横を通り過ぎる。
ジェネレータ内のコーラルが燃え尽きて足を止めた俺の背後で、パルス爆発が発生。レイヴンのアサルトアーマーは不発に終わった。オールマインド相手に一度も使わなかったと仮定するなら残りは2回。油断せずにいこう。
「もううばわれないように、まもれるようにつよくならなきゃ…かわらなきゃ…!」
再びショットガンから放たれた散弾をレーザースライサーで斬り払いながら接近して一閃。距離を取ったレイヴンに向けてFLUEGELの推力を乗せたコーラルオシレータで間合いを詰め、機体を回転させながら振り下ろす。スタッガーに陥った機体に向けてニードルミサイルを放ち、バーストマシンガンで追撃。
スタッガーを取るためにスライサーを使ってしまったのが痛いが、オールマインドとの戦闘後で補給も出来ていないことを踏まえればかなりの痛手は与えた筈だ。
「うばわれたものも…きりすてたものも…“むこうがわ”にいけばとりもどせる。だから…じゃましないで…!」
『…俺には分からない。君が求めているものも、“向こう側”に待つものの真実も。リリースを考え直してくれとは言える権利はないけれど…せめて話を聞かせてくれないか、レイヴン』
ショットガンをレーザースライサーでの擬似イニシャルガードで対処するが、流石に左右交互でのずらし射撃で対策されているか…
「わたしは、はなすことなんてないっていったよ…!ウォルターも、カーラもきりすてたのに…いまさらもどれない!」
スタンニードルランチャー、重ショットガンの重量が上乗せされた重逆関節のブーストキックでACS負荷限界。すかさずレイヴンはスタンニードルランチャー発射の構えを取る。
「わたしにはもうオルクスしかいないのに…このせかいにオルクスはもういない…!」
一見、矛盾した発言。彼女の言葉を解釈するなら、オルクスは生きているけれど彼女側に居ないと言えるだろう。やはりオルクスは、俺自身…なのだろうか。
ニードルランチャーが直撃。突き刺さった2つの弾頭から発生したACのシステム異常を引き起こす程の放電によってAPが尽き…
しかし、ターミナルアーマーでそれを持ち堪えた。
『まだ…終われない…!』
…俺は、彼女の求めるオルクスにも、ソフィーの知るルビコニアンのアクスにもなれないけれど、ルビコン解放戦線のアクスとしてルビコンを守る権利はある。そして、俺がここまで傷つけてしまった621と向き合う義務がある。
『まだ…君の話を…聞けていない…!』
この5秒に全てを賭ける。アーマーにものを言わせた強引なコーラル発信装置による照射で薙ぎ払い、強烈なACS負荷を受けたレイヴンの機体にバーストマシンガンを連射してスタッガー。レーザースライサーによる連撃で621の機体を斬り刻む。
『これで…止めてみせる…!』
左腕の武装を持ち替えつつブーストキックで追撃。吹き飛ぶレイヴンに向けて即座にニードルミサイルを発射し両方命中。
…ターミナルアーマーの消失と同時に放たれたブーストキックが、俺の機体から右腕を奪う。今度こそ、APが尽きた。
『結局…俺じゃダメだったか…』
コア拡張機能、両腕、両肩、両足。持てるもの全てを吐き尽くしての総攻撃。それを持ってしてもあと一手が詰め切れなかった俺の負けだ。あとほんの僅かに火力が足りれば勝てたかもしれない勝負。しかし近接武器適正はこれが最大で、ブーストキックの火力を底上げする重量も、これ以上は望めない。ソフィーが組んでくれた機体は、最高の仕上がりだった。
「…さあ、あとはいっしょにみとどけるだけだよ…オル…ク…ス…?」
《…!?レイヴン!目を覚まして下さい!レイヴン!》
レイヴンは、宣言通り俺を殺しておくべきだった。あるいは、武装を解除させておくだけでも話は変わっていただろう。
俺の左腕に装備されているのは、コーラルの群知能へのEN干渉を可能とするコーラル発振装置なのだから。
コーラル濃度の高いこの空間ならば、エアの感知も欺いてコーラルジェネレータに干渉し強制的に機体を再起動できる。オペレーション、パターン2という奴だな。
後は復旧したジェネレータから供給を受けたコーラルオシレーターで、通常モードに移行した無防備な強化人間C4-621の脳深部コーラル管理デバイスに干渉すれば俺の勝ちだ。
ソフィーに救援要請をしつつ、レイヴンを見据える。この場を離れるまでは、まだ油断出来ないからな…
かくして、ルビコンは自由を取り戻した。
とはいえ『ルビコンでは…余りにも多くの血が流れ過ぎた。だが…それもこの機体で終わりにする』などと言っておいてなんだが、まだまだ惑星封鎖機構やウォルター達とシンシアの恐れた破綻への備えは不十分なので、平穏を取り戻すまではまだまたかかりそうだ。
621のやろうとしたことはルビコニアン達に混乱を招きかねないこともあり、ドルマヤンやフラットウェル、ラスティ、ソフィーなど限られた者しか知らないように隠蔽されているため、企業勢力のエースであるV.Iフロイトを退けたルビコンの解放者、ラスティに比べれば俺の活躍は些細なものだ。
まあ、英雄とかはガラじゃないから別にそれで良い。それよりも俺にはまだやり切れていないことがある。
『不意打ちを仕掛けて悪かったな、レイヴン』
アナログな施錠がされた独房に入り、部屋に軟禁されている虜囚の少女…レイヴンと向き合う。
「アクス…」
『…君と話がしたいんだ。君自身のこと、オルクスのこと…聞かせて欲しい。もちろん、話したくないなら無理強いはしないけどね…』
「………」
『これは君の求めるものにとって最善の選択では無いし、俺の我儘でしかないけれど…君のことを知れたらまた、一緒に戦ってくれると嬉しいな』
「………!」
「あのね………」
少し考え込んだ後に、レイヴンは話を始めてくれた。この話が終わった後に俺たちが分かり合えるかは分からないし、もしかしたらまた敵対することになってしまうかもしれないけれど…
…来るかも分からない未来に怯えるよりも、今は彼女と真摯に向き合おう。それが出来なかった結果が、今の状況を招いてしまったのだから。
◯アクス
試合に負けて勝負に勝った
最終的に負けてはいるが、他のオルクスと比べると一段階上の強さ
621を止められたのは良いが、そもそも621が拗らせたのはこいつのせいなのでぶっちぎりの戦犯
◯621
オルクスを取り戻すとか色々拗らせていたが、結局の所オルクスが側にいてくれないどころか拒絶されたというダメージが大きいので“一緒に”という言葉を聞いた以上今後和解出来る可能性は高い
とはいえウォルター達を切り捨てたということを考えると、やはりハッピーエンドとは言い難い…
◯ソフィー
MVPその1
和解√を開拓した張本人
アクスを勝利させるアセンとしての最適解を叩き出している
圧倒的メインヒロインだが、621に足元掬われないように気をつけてね…
◯シンシア
MVPその2
コーラルオシレーターを用意した張本人
この後なんやかんやで破綻も阻止されるので、コーラルをなんとかするという大目標も果たせている
アクスの621への対応には終始キレ散らかしてた
◯アングレカム・オルトゥス
【挿絵表示】
ゲーム的に完成された機体ではないが、アクスが乗る機体としては最適解
アングレカムの欠点をカバーしつつ、アクスのモチベーションを底上げして、勝ち筋を開いた
今後の予定として活動報告の進捗をちょろっと書き足しました
オルクスに蔑称を付けたい(他に案があれば活動報告にコメント頂けると助かります)
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オルクズ
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オルカス