目が覚めると、そこは知らない天井だった。
…まぁ、そもそもこの谷底からは天井が遠すぎて見えないのだが。
「…やっと起きましたか、先輩。ここがレッドガンの寮ならとっくにミシガン総長に叩き起こされてますよ」
『…ごめん、シナノくん。現在の状況は?』
「レッドガン部隊は壊滅しました」
『………』
「先行部隊はあの大型封鎖兵器によって壊滅。谷底に落下したG8とそれを追いかけて降下したG9は部隊から逸れ、G3、G5、G6は未だ消息不明、本隊にも戻っていないそうです」
…熱交換室を越えた先の崖際で、俺たち先行部隊はエンフォーサーと接敵。熱交換室という狭所まで押し込まれたMT部隊は完膚なきまでに蹂躙
され、逃げ仰せた者もいるだろうが大半が撃破された。
なんとか熱交換室から谷底まで番号付き五名で押し返したが、G6レッドをレーザーパイルによる突撃から庇った俺はそのまま崖に落下。
どうやらシナノくんは、そんな俺を助けにきてくれたらしい。
『…本隊は…どうなった』
「…先輩が昏睡しているうちに、G4と…G1は、狼に噛まれて死んだそうです」
転んで死んだ訳ではないということは…レッドガン部隊迎撃はラスティがやったということか…
『…あはっ』
「先輩?」
『あはははは…!はぁ…馬鹿馬鹿し過ぎて笑えてくるよ』
「……………」
『やれることはあった筈なのに権力には無力だなんて自分を正当化して、イグアスを弄んで現実逃避して…馬鹿か?俺は』
「まさかこんなことになるなんて、誰にも想像なんて…」
『俺は…最初から分かってたよ…!君たちレッドガンがどうなるかなんて、分かり切ってたんだよ…!』
「先輩…?何を言って…」
『俺はずっと…彼らの戦いを見てきた…彼らが死んで行くのを見ながら…だから…俺は…彼らを救ってやりたかった…救ってやらなきゃいけなかった…!』
「………」
『それなのに…!壁は落とせなかった!五花海は止められなかった!イグアスとレッドは取り零した!ナイルとミシガンは舞台にすら上がれなかった!拾い上げられたヴォルタも結局変えられなかった…!』
『彼らを救ってやれるなんてのは…俺の思い上がりだった』
捲し立てるように自分を責めていたオルクス先輩は、虚な目でそう呟くと項垂れた。先輩が言ってることなんてほとんど理解出来なかったけれど…ひとつ、確実に間違っていることがある。
「先輩は、救ってるじゃないですか」
『………?』
「独立傭兵レイヴンに襲撃された大豊の訓練生、テストパイロットでしかなかった俺をオルクス先輩がG9まで引き上げてくれました」
『…それは』
オルクス先輩が、顔を上げた。
「俺は、貴方に救われてここにいます」
先輩は立ち上がって、俺を見据える。
『…それなら…先輩として、やり切らないとな』
彼の目に光は戻っていない。けれど、その顔はいつもの明るさを取り戻している。
「頼もしいですね…その見た目に目を瞑れば」
『………』
…オルクス先輩の姿は、大豊娘娘のままだった。
『どうしよう…この格好に全然違和感なかった…』
「………」
「AC2機!?識別は…消息不明だったレッドガンか!」
先輩と共に崖を上がった俺は、ウォッチポイントアルファを制圧したアーキバスの部隊を撃破していく。
「敵機は補給を受けられずに疲弊している筈だ!応せッ!?」
封鎖機構から鹵獲されたアーキバス部隊のMTをパルスブレードで切り捨てた。
『あぁクソっ!弾切れか…』
オルクス先輩が左手に装備していたバズーカを投げ捨て、素手でMTに殴りかかる。
「先輩!包囲が緩まりました!」
チャージされたパルスブレードで敵機を薙ぎ払って脱出する為の道を切り開き、オルクス先輩へ声をかける。先輩は纏わりつくMTを脚部を回転させて吹き飛ばし、こちらに強行突破してきた。
『助かったよ、シナノくん…!』
俺に話しかける先輩は一見いつもの余裕を保っているように見えるが、その声には疲労と苛立ちが浮かんでいる。
…現在地はウォッチポイント・アルファ深度2。地上まではまだ遠い。いったい…どうしてこんなことに…
そう思わずにはいられないが、先輩だってついてるんだ。今は進むしかない。
「AC?なんで2機も…!?」
…熱交換室に到達。配置されていたMT部隊を手早く片付ける。
周囲にはレッドガン部隊の仲間たちだったMTの残骸や、破壊された補給シェルパが転がっていた。
『っ…深度1まであと少しだ、先を急ごう』
俺たちがあの大型封鎖兵器によって敗北した場所。オルクス先輩の歯軋りの音を、通信が微かに拾いあげていた。
『待て、後ろから敵影…!避けろ!』
隔壁にアクセスした所で、オルクス先輩が叫ぶ。左右に別れた俺たちの間を大量のグレネードが通り過ぎて、爆ぜた。
「居たぞ!報告のあった機体だ!」
「逃すな!」
『火力型LCか…!迎撃するぞ!』
「了解!」
グレネード発射の反動で構えたまま硬直したLCへパルスブレードで斬りかかる。すかさずブーストキックでACS負荷限界に追い込み、チャージしたリニアライフルで吹き飛んだ所に追撃。周囲のMTを片付けたオルクス先輩が、ブーストキックで更なる追撃を加える。
冷却の完了したパルスブレードで叩き斬り、LCを撃破。
「来るんじゃなかった…こんな
『今度こそやったか…行こう』
ベイラムもアーキバスも、この惑星からすれば侵略者だ。勝手に来ておいて来るんじゃなかったというのは虫が良すぎる。
「待て!ベイラムの残党を確認した!」
「クソッ!アーキバスめ…!」
「また耳鳴りが…邪魔なんだよ!どきやがれ!」
『その声は…!』
声のした方へ駆けつけるオルクス先輩を追いかけて、下層に降下。
「!?貴様は…G8にG9か!?」
『レッド、イグアス!無事だったんだな!』
「こっちの台詞だオルクス!てめえらも手を貸せ!」
「はい!」
2人もここまで撤退していたらしい。先程までは疲労の滲んでいたオルクス先輩の声色が明るくなっている。
4人で分担して、瞬く間にアーキバスの部隊を片付けた。
「片付いたか…-G8、G9…ちょうどいいところに来てくれた。貴様らが無事で良かった」
「てめえ…あんな崖に落ちてなんで生きてやがる…」
「本当ですよ…俺が見た時には先輩、頭から血まで流してたんです」
『なんでだろうなぁ…出血のせいで銀髪のウィッグが真っ赤になっちゃったよ』
「…G8、まだ大豊娘娘の格好をしているのか?」
「なっ!?てめえ…!?」
『……………』
ばさり、という音を通信が拾い上げる。オルクス先輩がウィッグをコックピットの足元に叩きつけたらしい。
『そうだな!よく考えたらもうこの格好する理由無いな!着替えは…五花海のやつ、予備のパイロットスーツまで大豊娘娘のに取り替えてやがった…』
「「「………」」」
…オルクス先輩の尊厳の為にもこの話はよそう。
『この隔壁を越えれば深度1だ。気張って…敵性反応、今度は上だ』
「司令部に報告、V.Vペイター現着…!?貴様らは…レッドガンだな!?」
『ヴェスパーの末席か、LCに乗り換えたようだが…囲んで叩くぞ』
乗り慣れた機体から封鎖機構の高性能機にあっさり乗り換えを…強化人間というのは便利なものだ。
「五花海の話によれば、貴様らは全員戦死したはず…!アーキバスは欺かれたのか!?」
…失踪した五花海さんは、俺たちを庇う為にアーキバスに取り入ったらしい。憎めない詐欺師だ。
「G8オルクス…貴様はヴェスパー第1隊長フロイト殿を殺害した…!許せん…あの方が居なくなったことでスネイル閣下は大いに荒れた…!独立傭兵によってスウィンバーンもメーテルリンクもホーキンスまで失ったというのに…!」
この末席…ついに敬称すら略し始めたぞ…
「ラスティの安否が確定したら 私は…私こそが…上官たちが築いたアーキバスの栄光…このペイターが継承する!」
「?????」
『…気にしたら負けだ、後輩』
ACS負荷限界に陥ったV.Vへオルクス先輩がマシンガンとガトリングキャノンを集中放火。イグアスさんと共にパルスブレードで斬り付け、吹き飛んだ所にレッドさんがバズーカを撃ち込む。
「おかしいな…私はまだ…これから…」
…V.V撃破。
「G5にG6、G8にG9まで…無事だったのですね」
『その声は…数学の得意なオオサワか…!』
ミシガン総長と共に戦ったレッドガン部隊も、ミシガン総長の指示の甲斐あって脱出出来た者がそれなりにいるらしい。だが…
「総長も無しにこれからどこに行けば…」
「ベイラムに戻った所で本社のボケ共に使い潰されるのは目に見えてやがる…」
レッドさんとイグアスさんを始めとして、レッドガンは完全に途方にくれている。まさかアーキバスに行くわけにもいかないし…
『…俺たちを受け入れてくれそうな、猫の手も借りたいであろう組織なら1つ心当たりがある』
「…オルクス先輩?」
『…G13が利用できるかもしれない』
死亡フラグ立ってきたなぁ
◯G8オルクス
⑨には1つ足りない
◯G3五花海
アーキバスに鞍替えした際、G5、G6、G8、G9は封鎖兵器(エンフォーサー)との交戦で死亡したとアーキバスに報告
無駄を嫌った上層部に捜索を打ち切らせたことで4人を救った
オルクスに蔑称を付けたい(他に案があれば活動報告にコメント頂けると助かります)
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オルクズ
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オルカス