オルクス達レッドガン部隊によってわたしとウォルターは再教育センターから救出されたけれど、まだ問題は山積みだ。オルクスのおかげでこれまでよりもバスキュラープラントの完成まで時間に余裕があるし、この期間でなんとかウォルターとカーラを説得しないと…
とは言ったものの、半世紀もの間友人達の遺志を使命として背負ってきたオーバーシアーの2人の意志は強固だ。コーラルに意思がある、と言っただけで止まってくれるとは思えない。こういう時は…やっぱり、オルクスを頼ってみよう。
『…さて、用件を聞かせてもらおうか…G13』
オルクスを2人で静かに対談出来る場所に呼び出して説得を開始。これまでとは違う選択として、わたしは彼にエアのことを伝えることにした。荒唐無稽な話ではあるけれど、オルクスなら話くらいは聞いてくれるはず。
まずは彼にコーラルが意思を持った生命体であることを、そしてコーラルの中に生まれた意識体であるエアがわたしの友人であることを。
次にエアとその同胞を焼こうとするオーバーシアーを説得して、人とコーラルの可能性を守りたいことを。
そしてその為にあなたの力を貸して欲しいと、彼に打ち明けた。
「…しんじられないとおもうけれど、ほんとうのことなの…だから…!」
『…信じるよ』
そう言うと、オルクスは少し考え込んだ後に再び口を開いた。
『…G8のオルクスとしてはコーラルを焼かずに済むならそれが1番良いと思っている』
《…!》
理想的な言葉に、わたしたちの期待が高まる。
『理由は単純だ。レッドガンの仲間たちに惑星を焼き払った大罪人なんて称号を与えたくない。レッドを始めとして、彼らには家族がいるからな』
例えそれがレッドガンの為だとしても、わたしたちに協力してくれるなら…!
『だが、コーラルの「破綻」は論外だ。例えそれが危惧でしかなかったとしても…オーバーシアーの言う通り、問題が起きる前に焼くのが正解なのかもな』
《そんな…!》
「ッ…!」
…今のオルクスは、レッドガンを守るという責任感で動いている。彼にとっての選択肢は、レッドガンに危害が及ぶか、及ばないかどうかなのだろう。
『君が友人を守りたいように、俺は…レッドガンの仲間を守らなければならない。だけど…破綻を食い止める方法を探すことくらいなら、手伝うよ』
そう思っていたのに、彼はすぐに希望を示してくれた。わたしたちならきっと…!
「ありがとう、オルクス…!」
…エアの集めてきた技研やオーバーシアーのデータを2人で確認しながら破綻を阻止する方法を探すけれど、良い手段は見つからない。
『中々良い案は出ないな…どうすれば…』
オルクスは様々は方法を案として用意しようとしてくれるけれどどれも今からやるには大規模過ぎたり、その場凌ぎでしかないためオーバーシアーを納得させられそうにない。
《レイヴン…このままでは…》
『これは…一か八か、直接カーラ達に相談するしかないのか…?』
オルクスの言う通り…このまま時間を無駄にするよりはわたしたちよりもコーラルに詳しい筈のカーラとウォルターに相談するべきなのかもしれない。でも…それで交渉が決裂したら?
その時オルクスは、エアとわたしの助けにはなってくれない。
だって彼は…わたしの先輩じゃなくて、G8だから。
「ビジター…その提案は、笑えないよ」
…わたしの考えは、杞憂に終わらなかった。
ウォルターとカーラにエアのことを伝え、なんとか焼かずに済む方法はないのかというわたしたちの言葉は技術者であるカーラによって却下された。
「…62…1…お前にも…友人が出来た…だが、それは…」
『あんた達の言うコーラルの破綻が…杞憂である可能性はないのか?せめて…コーラルを持続的に焼き続けて増殖を抑えるだとか…』
『それは無理だよ、G8。破綻が起きてからじゃ遅い、可能性がある以上他に選択肢はない。あんたの案なら破綻は止められるかもしれないが、実行出来る程の猶予も無い』
『…そう…か』
カーラの言葉にオルクスは反論出来ない。
「ビジター、私らだってルビコンも、コーラルも、あんたの友人も焼きたい訳じゃない。だがもう、これ以外に方法はないんだ」
カーラ達だって、コーラルをルビコン諸共焼かずに済む方法以外にあるのならそちらで進行しているはずだ。結局、今更わたし達に今出来ることはなかったのかもしれない。
「621…俺は…それでも使命を…友人達の遺志を果たさなければならない。これからのことは…お前の意志で選べ」
…交渉は決裂し、わたしたちは部屋を出るしかなかった。重い空気の中で、オルクスが口を開く。
『俺は…レッドガンの所に…戻らないと』
…わたしだってG13なのに、オルクスはわたしのことまで守ろうとはしてくれない。
『G13…エア…君達とやれるのは…ここまでだ。最後まで付き合ってやれなくて、本当にすまない』
《………》
エアは何も言わない。言った所で、彼には届かないのだから。
…わたしは、彼に選ばれなかったんだ。
『来たか…G…いや、レイヴン』
俺は、どこで間違えたのだろう。ザイレム制御タワーの前に立ち、彼女達を見据えながら思う。
「…エアには…わたししかいないから」
いや、きっと…最初から間違えていたのだろう。俺がレッドガンに入ったことが、間違いだったんだ。
色々と悩んだだろうに、俺を信用して頼ってくれた621に対して、俺は応えることが出来なかった。それどころかレッドガンを言い訳にして2人を裏切った。621だってG13…レッドガンだというのに。
無人洋上都市を掌握する為に配備されたレッドガンの前に、失踪した621はAC//エコー…つまりエアと共に現れた。
俺は…レッドガンの為に、G13を退けなければならない。矛盾しているのは分かっているがそれでも…これ以外にどうすれば良いのか分からなかった。
《いきましょう、レイヴン。私が…あなたをサポートします》
「てめえか…?耳鳴りの正体は…」
『…白い方は皆に任せた、囲んで叩いてくれ。レイヴンは俺が食い止めておく』
…エアは戦闘において素人とは思えない程の実力者だ。恐らく、621の戦闘を間近で見てきたからこそだろう。だが…AC3機とMTに囲まれれば621のようにはいかない筈だ。
「おい、G8!また1人で…!G9、頼めるか?」
「了解です、レッド先輩!」
やっぱりそうなるか…
「オルクス先輩…俺が何を言いたいかは分かりますよね?」
『説教なら後で聞く。今は…レイヴンをやるぞ』
「はぁ…AC輸送の時のリベンジですね」
被害を減らす為にもエアを数で圧倒して欲しかったんだが…1番立場が上のレッドからの指示なら仕方ない。シナノくんの力も借りるとしよう。
ショットガンを両手に装備して突撃してくる621は装甲と姿勢安定性能に優れる俺が引き受ける。
ホバリングモードで両肩の拡散バズーカを順次発射して牽制。流石の反応でクイックブーストを発動するが、タイミングをずらして放たれた拡散爆撃には対応しきれず2発ほど命中。大したダメージにはならないが、当たらないよりはずっと良い。
両腕から斉射されたショットガンは後方にクイックブーストすることで弾を散らし被弾を減らそうと試みるが、流石に4脚の被弾面積では無理があるか…
ブーストキックを狙って近づいてきた621へ小型バズーカを発射。正面から放たれたバズーカなど621は容易く回避するが…
「っ………」
クイックブーストした先にシナノ君のグレネードが撃ち込まれる。俺が621の気を引いているうちにマニュアルエイムで狙いを定めた爆撃は、彼女の機体の危機察知を欺いて直撃した。
俺の武装は重機関銃以外リロード中のため、スタッガーした621をブーストキックでシナノくんの方へ吹き飛ばして彼のパルスブレードに追撃を任せる。
「………」
近接武器を持たない俺に対してブーストキックを狙う621を同じくブーストキックで迎撃。
621の出した足とは反対側へすり抜けるように脚部を回転させて蹴り飛ばすが、621はすかさずパルスブレードで反撃。1発目は命中したものの、2発目はクイックブーストで射程外へ離脱。
負けじと攻撃後の隙に両肩の拡散バズーカを斉射してこちらも反撃を…!
621がアサルトアーマーを展開してバズーカを掻き消す。
いくら重4脚に大豊コアという組み合わせでもパルスブレードの衝撃を受けた状態ではパルス爆発を受けきれずACS負荷限界。
パルスアーマーを展開するが、展開前にスタンニードルランチャーが突き刺さり、アーマーの内側から放電を受ける。
「…おいめをかんじるのはいいけど、せんたくしたならてはぬかないで」
『…そう…だな』
…G13を切り捨てたという負い目が動きに躊躇いを招いていた。それは…彼女にとって侮辱に映ったのだろう。
パルスアーマーにものを言わせてブーストキックで突撃。小型バズーカを至近距離で命中させる。幾ら射撃精度を妥協した性能とはいえどこの距離ならば外しはしない。連撃で姿勢を崩したところにシナノくんの高誘導ミサイルが直撃しスタッガー。
『ナイスだ…シナノくん、追撃も頼む…!』
「はい!先輩!」
高誘導ミサイルの直撃を想定して既に接近していたシナノくんはパルスブレードによる連撃からのチャージ重リニアライフルを直撃させて621の機体に重大なダメージを与えていく。この調子で行けば…きっと621にも…
『シナノッ!』
シナノくんをブーストキックで蹴り飛ばす。
「先輩…!?」
別地点からエアが放っていたコーラルミサイルが、イグアスやレッドではなくシナノを目指して迫っていた。彼に取っては完全に意識外からの攻撃。それから庇えるのは俺だけだ。
着弾したコーラルミサイルが起爆。引き起こされたコーラル爆発は俺の機体の防御性能を貫通して直接APに干渉。弾頭の命中によってスタッガーした機体に、子弾が次々と直撃していく。
《レイヴン…!好機です…!》
レッドガン部隊による集中攻撃を受けて苦しげなエアは、それでもレイヴンをサポートしてみせた。
エアの作り出した好機を無駄にしまいと、パルスブレードを展開した621が迫る。
「…ありがとう、オルクス」
『えっ…?』
パルスブレードが俺の機体のコアを貫き、振り抜かれた。その刀身はコックピットに座る俺の目の前を通り過ぎる。前方にせり出した天槍コアの恩恵で、かろうじて即死を免れたのだ。
何故…ありがとう?俺は彼女とエアのことを裏切ったのに…
「何やってるんですか!?機体を捨てて下さい、先輩!」
そうだ…まだ何も終わっていない…621を裏切った以上…ここで死ぬ訳には…!
彼らを路頭には迷わせまいと脱出レバーを引く。
「…シナノ…わたしは…あなたがねたましい」
「レイヴン…?」
「あなたには…ーーーーー」
俺が憎いじゃなくて…シナノくんのことが妬ましい?
…脱出装置が作動。その先に続く言葉を聞く前に、俺は戦線離脱を強いられた。
…それからの流れはレイヴンの火とそう変わらない。ザイレムは浮上し、フロイトの代わりに現れたスネイルを殺し、オルトゥスに乗ったラスティを殺し…
衛星砲による狙撃もなく万全の状態でバスキュラープラントに到達したザイレムはコーラルを焼き払い根絶するための火薬庫としての役割を果たした。
何か明確な違いがあるとすれば…それを為したのが621を撃墜したG9シナノと、エアを撃墜したG5イグアスだったということだろう。
機体を失い負傷した俺に出る幕はなく、後方支援要員としてそれをただ眺める事しか出来なかった。
俺にとっては都合の良いことに、エア、アーキバス、ラスティとの交戦の中でレッドガンに死者はなく、また彼らの存在が星系を焼き払った大罪人として残されることもなかった。
ルビコンの星系を脱出したレッドガン部隊員はそれぞれの道へ別れていく。家族の元に戻る者もいれば、このまま技術者として続けていくつもりのカーラに雇われた者もいる。
ウォルターは…星系を焼き払った主犯として隠居をしていくのだと、燃え尽きたかのように語った。
生き残ったレッドガンの皆をルビコンの外へ送り出し、ウォルターも、カーラも、チャティも生き残った。
本来の流れに比べれば…上手くやった方だろう。
だからきっと、これで良い。これで…
…良い訳なんて、無い。
誰も幸せにならねえ…
◯オルクス
お前必要だった?
…という訳で、流石にこれでは終われません。G8?オルクス√2周目行きます。まだ終盤の展開を詰めきれていませんが、
全員置き去りにして全力疾走するオルクス
vs
拗らせ621
vs
アイデアロールファンブルするシナノ
vs
(性癖が)明後日の方角に全力疾走するイグアス
vs
またしても何も知らないエア
となる予定です。女装もするよ。
◯アンフォラ
【挿絵表示】
オルクスに蔑称を付けたい(他に案があれば活動報告にコメント頂けると助かります)
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オルクズ
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オルカス