無貌の少年は何を想う   作:月ノ蛇

13 / 22
泡沫の日常

ブラックマーケットの一箇所。

最深部とまでは行かないある一つの建物。

そこに、ウルカはいた。

普段の仮面は机の上に置いてあり素顔を晒している。

 

「やっぱり、ゲヘナはダメか………」

 

ウルカはディスプレイを凝視してそう呟く。

ディスプレイにはゲヘナ自治区に存在する企業の株価が映っていた。

その中でも多くの企業の株価がマイナスになっている。

 

「企業の建物が壊れて倒産。よくあることなんだが…」

 

ゲヘナの治安はブラックマーケットほどではないが悪く、特に美食研究部や温泉開発部が暴れておりそのせいでよく企業が倒産する。

そのほとんどの理由が建物の倒壊。

 

「ミレニアムとかトリニティの方は順風満帆だな」

 

ディスプレイの画面を切り替え、今度はミレニアム自治区の企業やトリニティ自治区の企業の株価を見る。

そこにはゲヘナとは比べるまでもなく上がっていることがわかる。

 

「おやおや、ウルカさん。調子がよさそうですね」

 

背後から男の声が聞こえる。

ウルカが振り向くとそこには黒服が立っていた。

黒服はウルカの見ていた画面を見つめながらそう呟く。

 

「あれ?カイザーコーポレーションの株がないですね。あの会社はこのキヴォトス最大と言っても過言ではないのですが」

 

「ああ、あの会社はいつか潰すから」

 

「そういうことですか」

 

「というか、どうせ黒服もあそこに関わってるだろ?ちょっと変な武器や金の流れがあったから」

 

「そうですが」

 

「まあいい。それにしてもどうやって入ってきた?」

 

「くっくっく、窓からです」

 

黒服が指した窓は空いており、カーテンが風によって揺られている。

 

「普通にドアから入れ」

 

「そもそも何のようだ?」

 

「忘れていました。貴方と話すのは楽しいですからね。貴方の血と足の研究の結果が出たのでお伝えをしようと」

 

黒服がウルカの耳元の口を近づけて囁く。

 

「貴方の思っていた通り貴方の⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎です。これは私にとってとても興味深い結果ですよ」

 

「……やっぱりか」

 

ウルカは窓の側まで行くと窓のサンに手を掛けため息をつく。

仮面を外し素顔を晒している彼の瞳には絶望が色濃く浮かんでいる。

 

「はぁ。わかっていてもきついな」

 

ウルカは生身の左腕を太陽に向けて伸ばす。

 

「あの日々が懐かしい。戻ることのないあの日々が。取り戻すことも新たに始めることもできない」

 

「ホシノ。ユメ先輩。また一緒にあの日々を暮らしたいよ」

 

「お金はないけど毎日が楽しくて、笑って、一緒に作業して、借金を返して、たまに贅沢するあの日々を」

 

ウルカは手を下ろすと窓を閉める。

ウルカはカーテンを閉じ、窓に背を向ける。

 

「僕には未来はないから、僕はホシノを幸せにする。俺の心の炎は未来を生きる者に分けられるべきだから」

 

ウルカは誰もいない部屋で宣言する。

声高らかに、自分に言い聞かせるように。

 

「俺はやる。全ての敵になろうとも」

 

いつのまにか黒服はいなくなっていた。

部屋はシンと静まり返りウルカの声だけが反響する。

 

「頑張ろうか。俺」

 

不意に建物のチャイムが鳴る。

インターホンには4人の少女が映っていた。

 

「無貌さん!!ほら開けて!!」

 

インターホンの向こうのツインテールの少女が話す。

ウルカは仮面を手に取ると顔に装着し玄関へと向かう。

玄関の扉をガチャリと開ける。

 

「ムツキにアル、カヨコとハルカ何のようだ?」

 

「えぇ〜、用事がないときちゃいけないの〜?」

 

「………」

 

「ごめんなさいね。近くに来たらムツキが来たいって言って聞かなくて」

 

「うっそだ〜!アルちゃんも来たいって言ったじゃん」

 

「ちょちょ、言ってないわよ。そんなこと」

 

アルとムツキが言い争う。

それをオロオロと見守るハルカと呆れた表情をするカヨコ。

そのままカヨコは2人の言い争いの隣を通り『無貌』へと謝罪をする。

 

「ごめん。うちのバカ2人が」

 

「いや、いいんだが………この状況を止めてくれ」

 

「ほら、アル、ムツキ、やめなさい。困ってるでしょ…」

 

カヨコの言葉で2人は口論をやめる。

 

「うぅ、社員と言い争うなんて……社長失格よ」

 

「ごめんねアルちゃん。ちょっと言い過ぎたよ」

 

「………はぁ。アル、それで何のようだ?」

 

2人の暗い雰囲気を打ち破るように『無貌』が質問する。

その質問を受けてアルはパァッと顔を明るくさせて答える。

 

「私たちが今度やる仕事なんだけど、ちょっと手伝ってくれないかしら?」

 

「…そう言うのは玄関でやるような話じゃないだが。………中で話そう。どうせ昼飯もまだなんだろ?一緒に作ってやる」

 

苦虫を噛むような表情で無貌は提案する。

便利屋が来る時は大抵昼食や夕食を作っている。

 

「いいの〜?ありがと〜!!」

 

ムツキが我先にと無貌の事務所へと入っていく。

アルやハルカも後に続いて入っていく。

最後にカヨコが「いつもごめん」と謝罪をして入る。

 

「はぁ………食材あったっけ?」

 

無貌は冷蔵庫の中身を思い出しながら何を作るかを考えつつ事務所の中へと戻っていく。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。