ゲヘナ学園風紀委員副長、レイジです。   作:QAAM_M1911

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まーた新しいの書き始めたわこの人。


混迷の始まり

「美食研究会による爆破テロの損失記録はそこに。温泉開発部の爆破テロの復興支援の資料はそこです。その他報告がある者は?」

「ふ、副長!万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)がまた変な事を……」

「資料を見せて下さい……成程、また資金の横領ですか。いつも通り備蓄から今月の活動費を賄いなさい。」

「は、はい!」

「それと万魔殿のイブキさん宛てに“風紀委員総員”の名前でケーキを贈っておきなさい。そろそろあの馬鹿共に分かって貰いましょう。」

 

ゲヘナ学園はとても自由なところ。良い意味でも、悪い意味でも。爆破テロは日常茶飯事、授業に出る生徒も超少ない。

 

そんな風紀に真正面から喧嘩を売る様な場所における警察が、俺たち“風紀委員会”だ。

 

俺はそこの副長を務めさせて貰っている。ゲヘナ学園3年、“暁星(ぎょうせい)レイジ”。キヴォトス唯一の男。そして“前世”とやらの記憶を持っている。まぁこの世界についてはマジで何も知らないが。

 

「ヒナは……今日は休暇でしたね。」

「ふ、副長!鬼怒川カスミが脱獄しましたぁ!」

「捕縛隊を3番隊の第4と第5分隊で編成しなさい。隊長のイオリを呼び出し……そうですね、チナツと4番隊の第2分隊を補佐に回して下さい。全く……どこまで業務を増やさせる……!」

 

ホントに風紀委員会の業務量は凄まじいものであり、何となく入部した後の1ヶ月は死に掛けていた。過労で。

 

現在は自分に様々な強化を施して対応しているし、風紀委員の全体的な質の向上を目的とした訓練、選考から溢れた委員を事務に回す。それに伴う連絡網の最適化で、徹底的な効率化を施した。とは言え、それでもまだまだキツい。

 

何せ四六時中問題が起きるせいで牢屋は大体満室、新しいのが来たら軽犯罪の奴らはもう釈放するしかない。増築しようにも資金や許可が降りない。もうヤバい。

 

「レイジ副委員長、今時間はありますか?」

「アコですか。ご覧のの通りですが緊急の報告の様ですね。何がありましたか?」

「はい、それが……連邦生徒会長が行方不明になったとの事です。」

「……分かりました。これよりコンディションイエローを当面の間は発令、出撃の即応性を上げておきなさい。」

「分かりました。このままヒナ委員長に報告をします。」

「お願いします。ですが今日は休めと伝えておきなさい……はぁ。どいつもこいつも……この私を苛立たせる……!」

 

机の横にあるマイクを取り寄せ、通電させる。

 

「風紀委員会総員に通達します。只今よりコンディションイエローを発令します。暫くは忙しくなります。各員の奮闘に期待します。」

「……うげ。酷くタイミング悪い時に来ちゃったかな……」

「来ましたか。むしろ丁度いい。」

「……話は聞いています。これからどう動きますか?」

「まだレベルはイエローのまま、ヒナ委員長が居ないので具体的な話は明日に回しましょう。それよりも、温泉開発部追撃隊の編成を……よろしい。」

 

風紀委員会の中枢は委員長の空崎ヒナ、行政官の天雨アコ、副長である俺。そして突撃隊長の銀鏡イオリ、そして医療班の火宮チナツが担当している。因みに行政官と副長は副委員長に相当する役割であり、呼び方が違うだけ……なのだが、結構別々に仕事をしている事が多い。アコは戦闘指揮を執るためヒナに着いて行く事が多く、俺は戦場に全く立たない訳ではないが、編成や事務仕事などの裏方仕事を多く担当している。故にどちらかと言えば俺の方が決定権は上である。

 

何故か、と言えばアコが時折暴走しまくるからである。ヒナが居ない場合のブレーキは必要だし、裏方仕事というものは俺の得意分野だからだ。その為か、副長の地位にあるがイオリよりもゲヘナでの名は広まってない。かつて前線に居た時も、ヒナの影に隠れてしまったりで……まぁ目立たなくて良いのだが。

 

「全く……総員に通達。温泉開発部追撃の間、一時的にコンディションをオレンジに引き上げます。いつでも出動出来るようにしておきなさい。」

 

えーっと、胃薬が手放せません。助けてください。

 


 

「ふ、副長大丈夫かな……」

「ヤバいよあの形相……近付きたくない……」

 

あれから2週間程が経過した。胃薬の量は何とか維持しているが、キリキリと胃が痛む。あと俺そこまで酷い顔してるのだろうか。不正な武器の流通は5倍程に増え、そこかしこでチンピラは暴れる。どれもこれもヴァルキューレやSRTが機能麻痺に陥っているからだ。

 

「……流石にどうなっているか連邦生徒会に問い合わせましょう。」

「そうね。チナツ、頼んでも良い?」

「はい。私1人の離脱でしたら問題ないかと。」

 

実際風紀委員の被害は相当に少ない。美食研究会やらなら話は別に……と言うより、そもそもそこら辺になるとイオリやヒナが出動する。怪我人は暴れた奴らと巻き込まれた奴らだけになる。よって、4番隊の医療・兵站班は他部隊よりも余裕がある。

 

余談だが、1番隊は企画班。ヒナと俺で統括している班であり、風紀委員会の動向を決める。2番隊は情報班、アコが統括。3番隊は戦闘班で最大規模を誇る。ヒナが長を兼任。4番隊は例外でリーダーは居らず、それぞれ分隊単位で企画班から指示を受ける。5番隊も一応あるにはあるが……まだ編成された事はない。

 

「では火宮チナツに任務を与えます。連邦生徒会に今回の騒動の原因及び解決策を問い、アコに報告なさい。現在私やアコが情報を精査していますが、限界はあります。吉報を期待します。」

 

チナツが退出した後、アコが部屋に入ってくる。顔がやつれている……まぁここに居る1番隊全員の顔が死んでるんだが。

 

「アコ、何か進展はある?」

「噂話レベルのものが非常に多いです。あまり信用出来る情報ではないかと。」

「それでも問題はありません。挙げてみなさい。」

 

アコが情報をアップデートしていく……が、どれもこれも取るに足らない様なものばかり。と言うか全くの別件混じりで少々面倒くさい。

 

「……やはり連邦生徒会が機能不全に陥ってるとしか思えませんね。先日送ったメールも返信が来ていませんし。」

「治安は悪化の一途を辿っています。一応動員数を増やして牽制を行なっていますが……万魔殿が動かず、資金的にも余裕がありません。ヒナ委員長、どう思われますか?」

「どうであっても、やる事は変わらない。それに、その為にレイジが居る。」

 

多くは語らないものの、ヒナの言いたい事は上手くアコに伝わってくれたみたいだ。

 

要するに……俺が全部後始末するって事です。まぁ遠慮なく使ってくれ、その方が俺も分かりやすい。

 

「……そうですね。」

「では、これより情報班は原因の捜査を終了。コンディションイエロー相当の通常業務に戻りなさい。」

 

まだしばらくの間、騒乱は収まりそうにない。

 


 

「今日の夜勤は私が担当です。チナツが戻り次第報告を受けますから、通す様に。」

 

と言ってから2時間ほど。紙の書類は全て片付け終わり、仮眠を取ろうとした時だ。

 

「失礼します、副委員長……アコ行政官はいらっしゃいますか?」

「チナツですか。遅くまでご苦労様でした。現在アコは仮眠を取っていますので、代わりに私が報告を受けます。」

 

帰ってきたチナツにコーヒーをやり、自らも口に含む。そしてレコーダーの電源を入れると、喉を潤したチナツが口を開く。

 

「では……まず端的に話しますと、連邦生徒会長はやはり行方不明になっている事が判明しました。」

「解決策はどうでした?」

「連邦生徒会長が失踪前に外から指名した“先生”を“シャーレ”に配置する事で、解決を図っていました。」

「ふむ……“先生”は外の住人……連邦生徒会長は一体何を考えている?我々の常識と外の常識が違うのは分かり切っているはずだ……失礼、シャーレとは?」

「“先生”を顧問として、キヴォトスのあらゆる生徒の相談に応じ、同時に所属や学籍によらず不特定多数の生徒の協力を仰ぐ一種の部活……との事です。」

「……益々意味が分からない。つまり、我々……ひいては万魔殿やトリニティのティーパーティの生徒までをも動員できる機関である。と言う認識で宜しいですね?」

「はい。事実、居合わせたミレニアムのセミナーの1人が最初のメンバーとして任命されました。」

 

と、言う事は少なからず銃撃戦に巻き込まれたのだろう。外の住人は俺たちとは違って銃弾一発が致命傷になる。怪我すらしなかったのは幸運だったな。

 

「……“先生”も災難な事だ。取り敢えず任命されたからには仕方ありません。今後我々も動員される可能性が高い。もう少し効率化を図り……いやこの事は後で考えましょう。“先生”のご様子は?」

「指揮に長け、人徳をも持つ“大人”である……と感じました。」

「指揮に長けている……?聞きますが、“先生”は銃を見て驚いていましたか?」

「はい。」

「……変ですね。戦いやすさはどうでした?」

「私は前線に立っていなかったので少々感じにくくはありましたが……指示は少なくとも的確でした。やりやすさで言えば確かに風紀委員会の方が上でも、即席のチームと考えれば……」

「凄まじいものですね……ともかくこの録音はアコにも聞かせます。もし伝えきれていない事があればいつでも構いません、報告なさい。では任務完了を宣言します。お疲れ様でした。」

「お疲れ様でした。」

「ゆっくり休んでください。」

 

チナツが退出してから、俺は目頭を抑えた。

 

「また面倒事が増えた……が、治安が良くなるのなら、まぁ良いでしょう。」

「ふ、副長!!」

「美食研究会ですか?」

「え、あ、はい!」

「叩き潰しなさい。3番隊第8分隊と第1砲兵分隊で編成、用意出来次第出撃しなさい……よろしい。出撃!」

 

今日の仕事は、もう少しだけ続きそうだ。

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