ゲヘナ学園風紀委員副長、レイジです。   作:QAAM_M1911

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パルス狂いと仕事狂い

「やぁやぁ!私の出番がようやく来たか!」

「Ⅴ.Ⅷ、私語が多いです。少し慎みなさい。」

「まあまぁ、やっと私の研究が身を結んだんだ。今日くらい良いじゃないか?」

「なら私語ではなく説明をしなさい。」

 

Ⅴ.Ⅷ。Ⅴ.Ⅶの幼馴染である“滝川(たきがわ)ナミネ”。コイツは「音波」に関するエキスパートであり、本来なら情報部に配属されるはずだった。しかし彼女は自らの手で素晴らしい「音」を作り上げる為に整備班の開発部門へと志望。俺の目に(その問題児っぷりが)留まり、パルス技術を任せた。実際音の破壊力について少し語ったらやる気満タンになった。

 

「それじゃあ仕方ない。とりあえず、このパルス発生器を見てくれ。」

「……弦を使用して空気を振動させるのですか。」

「それじゃあただ音を発生させるだけだ。故に!君のところのデータを見させて貰ったよ。レーザーガン、設計図だけは出来てたじぁないかい?」

「……まさかとは思いますが、使ったのですか?」

「ご明察!良い感じに破壊力のある“波”が作れたよ。」

「あ、あなたは極秘ファイルを……ッ……ま、まぁ良いでしょう。その代わり納得のいくものが作れているのであれば問題ありません。」

「あ、なんかCAD入ってるパソコンに変なファイル追加されてたけど大丈夫かな?」

「……説明が終了次第、あなたは再教育センター行きです!!一体何をしてるのですか……!」

「い、いやぁちょっと先生とやらのお声を拝聴したく……」

「部隊の品位を乱さないで頂きたい。そんな下らない希望があるのでしたら、とっととシャーレの募集に応じれば良いではありませんか。」

 

頭が痛くなりながらも、説明を促す。あとついでに情報部を呼んでパソコンのオーバーホールもしてもらわねば。

 

「とりあえず……そうだなぁ、まずこの技術は二つの用途がある。」

「シールド技術に、それを相殺する技術ですね。ここまでは報告書で読みましたよ。」

「それで、まずシールド技術だが……やはりLCには乗せる事が出来ないサイズになってしまった。HCには乗せられるには乗せられるが、パルスアーマー*1の展開は無理だねぇ。」

「で?どうやって解決するのですか?」

「外付けでパルスアーマー発生装置を付けるか、指向性を持たせて盾の様にするしかないだろうねぇ。ただ、前者はLCの機動力を殺す事になるから、あまり推奨は出来ない。」

「無論です。HCが前線で戦う重装兵だとすれば、LCは後方から撃ち抜く遊撃手兼マークスマン。意味のない装備になります。」

 

だが、このパルスアーマーはやはり欲しい技術ではある。故に、俺は問いかけた。

 

「……この装置をドローンに積み込むのは可能ですか?」

「ふむ、面白い観点だ。可能だよ。やりたい事は……広範囲を覆うパルスアーマーの展開、だね?」

「分かっているのであれば問題ありません。名づけるならば、“パルスプロテクション”とでも言いましょうか。」

「ふむ、良い名だ。直ぐに取り掛かろう。」

「で、問題のパルスガンはどうなっているのです?」

「簡単だね。レーザーをパルスと同期させて撃ちだすだけさ。だから奇怪な形にはなってしまったが……その力は折り紙付きさ。」

「ふむ……試射はしたのですか?」

「もちろん。なんなら撃ってみる?」

 

それに俺は頷き、パルスガンを構える。パルスガンの見た目はその特性上、弦の役目を果たすドームがあり、そこからパルスが照射される仕組みだ。手はパルスから保護するために覆われ、レーザーサイトなどが付けられる場所にはマガジンが付いている。

 

「そうそう、一般委員用のはマガジン式にしてみたんだ。スーツに搭載するのはジェネレーター駆動にはするから、そこは大丈夫さ。」

「……破壊力は問題ありません。ですが疑問は残ります。これが必要になる場面はあるのでしょうか?」

「対パルス防壁用だねぇ。とは言え、普通に使っても強いからSMGの代替として使うのもいいんじゃないかなぁ?」

「コストが高いでしょう。まぁ一分隊に一つは配備を検討しておきましょう……あぁ、もっとドームは手より放してパルスライフルにしてもいいかもしれません。」

「なるほど、そういうのもアリか!面白くなってきたぞ~!」

「……その前に再教育です!みっちり常識を叩き込んでやりなさい!!!」

 

連れていかれるナミネをよそに、眼鏡を掛け直す。

 

「……お、お疲れ様です。」

「ミヨイ、くれぐれも彼女の手綱は握っておきなさい。」

「しょ、承知しました……そ、そんな事より!FCSが完成したんだ!見てくれ!」

「データを見せなさい……ふむ、ゲヘナに流通する銃器及び兵器の殆どを対応させましたか。良い出来です。しかし……このFCSでは負荷が高い。余分な機能は切り詰めて欲しい。」

「そ、そこでだ!近距離用、中距離用、狙撃用にFCSを分けて生産しようと思う!これならばLCを使う生徒に、あ、合わせたカスタムが容易になる!」

「良い着眼点です……が、狙撃用の生産ラインは作らない様に。」

「な、なぜ!?」

「そもそもの話ですが……LCとHCの売りはその剛性と機動力にあります。委員会全員にLCを配るのであれば狙撃用も用意させますが、そんな予算はない。LCの運用もほぼ前線になります。あと単純にレーザーが狙撃に向かないのもあります。」

「あ……ぁ。把握、した。」

 

落ち込んでいるが、ぶっちゃけよくやったと褒めてやりたい……というか勲章ものの働きだ。後日色々便宜してやらんこともない。まぁ、コイツは根がちょっとサボり癖あるもんだから、火は点けっぱなしにしておく。消火は多分風紀委員やめた時くらいだろう。

 

「さて……HCの試作はこれですか。」

「LCに装甲増やして、機動力を補うようにブースター増設しただけ、ですが……」

「いえ、これで十分な戦力になります。しかし、パルスシールドの開発がまだですか……なら、ナミネの再教育が終了したらHCの開発を再開。それまでは……バルテウスをお願いします。」

「バルテウス……を!?HCでの運用を想定しているのに、無茶だ!?」

「ならLCでも構いません。どうせ防御はパルスアーマーに頼るのですから。」

「……はぁ、何言っても聞かないのは分かってる。ならせめてHCにも付けられるようにするさ。」

「助かります。」

「元々、バルテウスは強化パーツだ。LCにもHCにも装着出来る様にすれば……あと何機か開発しても良いかもしれん。」

 

悪夢である。パルスアーマー着込んだヤツが何機も高速で飛び回ってレーザー撒き散らす等、ぶっちゃけ馬鹿げた話でしかない。

 

「ではよろしくお願いいたします。」

「全く……武器も平行して作ってるんだから頼むよホントに……」

「あ、それとⅤ.Ⅸが武器の要求をしていましたね。このデータがそれです。」

「ユヅキめ……!」

「とは言え、ヴェスパー二番手です。無下にする訳にもいかんでしょう。」

「仕事が多いな……なんかテンション上がってきたぞ……」

「部下にいくらか振り分けなさい。一人では限度があります……っておい聞けよ。」

 

設計図面を引き始める彼女の背中を見ながら、溜息を吐く。まぁ無茶ぶりしたのは俺だから何とも言えんが。

 

「仕方ない、ナミネを開放しますから先にHCを。」

「これだ……この無茶ぶり!!ナニカを削りながら開発する快感……ッ!!」

「おい聞けよ馬鹿。」

 


 

HCの開発も順調に進んだある日の事。ヒナと共に少々遅刻して風紀委員会へと向かっていた。尚、登校中はまだオフモードである。

 

「HCはどう?」

「昨日動作試験をしたよ。完璧……とは言えないが、中々良いモノに仕上げてくれたね。」

「そう……確かヴェスパーの訓練は明日?」

「あぁ……ってありゃなんだ……?」

 

見えて来た風紀委員会の敷地に、銀髪が見える。イオリ……とその足元で先生が何かしている。というかアレ、脚舐めてねぇか……!?

 

「何だか楽しそうね?」

「何をしているのですか……先生。まさかそういうご趣味があるとは……」

「え……っ!!!!??」

 

どうやらヒナにはなんかセーフティが掛かって見えてたみたいだ。

 

「あなた方の趣味をとやかく言うつもりはありませんが……その、えぇっと……何だ。風紀を乱すのはやめていただきたい。行きますよヒナ。教育に悪い。」

「う、うん……」

「あっ、ちょっと待って助けひゃんっ!?

 

 

 

「……で、一体何なのですか?その“話”とやらは。」

“助けが欲しい。”

「助け?一体何が」

“ホシノが連れ去られたんだ。”

「……嘘、小鳥遊ホシノが?」

「成程、把握しました。先日の後に情報を探らせていましたが……資料をお願いします。」

 

情報部の生徒にプロジェクターを操作させ、アビドスの現状についての資料を映させる。

 

「現在アビドス自治区の殆どがカイザーコーポレーションへと売却。権利もほぼ持っていない状態。先日アコの侵攻もそこに起因するものでした。重ね重ね謝罪致します。」

「アコも一応しっかり下調べして行ったみたい。住民がいるとは思ってなかったから、迫撃砲を持ち出した。結果民間人に被害を出したのは言い訳出来ない事実ではある。」

「話を戻して、これらの事実を考えてみれば……小鳥遊ホシノは自分の身体を担保としてアビドスの借金を減らそうと試みた。しかし、騙された。」

“……凄い、合ってる。”

「さて、ヒナ。どうしましょうか?」

「……正直、私たちが動くに値する理由は少ない。」

“そこをなんとか!”

「でも、未来を見ればカイザーのあの軍事基地はゲヘナの脅威になり得る。連中が何をしているかなんて、どうでもいい。そこに軍がある事実が重要。」

“……ってことは。”

「えぇ。先日の謝罪の意味も込めて、協力しましょう。作戦決行日は?」

“多分、明日……かな。”

「……で、あればヴェスパーを動かしましょうか。ヒナ、あなたはどうします?」

「……行く。」

「と、なればアコとイオリはここで待機ですね。先生、少々失礼します。」

 

そう先生に断りを入れてから、マイクを入れる。

 

「風紀委員会総員に告ぐ。明日は委員長及び一部Ⅴ番隊不在の為、コンディションオレンジを発令します。明日はアコが統括になります。忘れない様に。」

 

マイクを切る前に、息を吸い込んだ。

 

「ヴェスパーの精鋭共!愉快な遠足の始まりだ!!」

*1
自分を360°覆うシールドの事。

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