ゲヘナ学園風紀委員副長、レイジです。 作:QAAM_M1911
「Ⅴ.Ⅸ、鍵屋ユヅキ。貴様は一体どうして、どうやってLCを改修した!?」
「どうしたも何も、接続しただけよ?」
「あんな滑空砲……あんな火炎放射器……LCのFCSでは制御出来ないモノなのですよッ!!それを無理矢理使ったのですから機体はオーバーホール……」
「そう。じゃあ私は行くわ。」
「待ちなさい馬鹿!!……まだ話は終わっていません。一応、今回のデータは収集していまいた。貴方が大勢撃破したのは間違いない。それに破天荒な繋ぎ方とは言え、動作はした。よって貴様に実弾兵装に対応したFCSの作成を命じます。それで今回の事案は目を瞑りましょう。」
「そう。これから武装の選択肢が増えるって事で良いのかしら?」
「……………………まぁ、そうなります。」
「分かった、やろう。」
そんな声が響き渡る倉庫の前に、私は立ち尽くしていた。
ゲヘナ学園へお礼をする為に来たが、どうやらヒナは今日は休み。アコはまた別件で万魔殿に出向いている為、レイジの所在を受付の生徒に訊いた。すると、ヴェスパー部隊のハンガーに居るとの事だった。で、今このような状況に直面している訳だ。
「……おや、先生ですか。」
“この前はありがとうね。”
「いえ、とんでもありません。ゲヘナの治安を維持するのが風紀委員会の仕事であり、最優先課題の排除はヴェスパーの仕事。あの程度なら些事ですよ。」
“あれを些事……”
「何せゲヘナ学園は四六時中事件が起こりますので。私が副長に就任してから治安はかなり改善されてきてはいますが……まぁ、それは別のお話です。」
と、言うとレイジは後ろを振り返る。その視線の先には……
“あの時のパワードスーツ……!じっくり見たかったんだ!”
「あぁいうのがお好きですか?結構。ではますます気になりますよ。我々のニューモデルです。格好良いでしょう?あぁ仰らないで。アーマーはカーボン、でもチタンなんて硬いだけで夏は熱いし、高いわ重いわでろくな事はない。積載もたっぷりありますよ、どんなアセンブルでも大丈夫です。」
結構堅物と聞いていたが、中々ノリの良い生徒だ。やはり同性という事もあるのだろうか、それともまた別の理由か。ひとしきりまくし立てた後、また元の堅物に戻ってしまったが。
“乗れるかな!?”
「申し訳ないですが、流石にコレにお乗せする訳には行きませんね。」
“そうだよね……流石に機密だろうし……”
「あぁそうでは無く、訓練を受けていない人間が動かせば最悪背骨が折れて寝たきりになります。」
“結構怖いね!?”
「ですから、ヴェスパーを作ったのですよ。実力が上の下程度、しかし一芸であれば委員長にも比類する力を持つ。専用の訓練を受け、専用の装備を持ち、一騎当千の
一拍置いてから、レイジが肩を竦める。
「まぁ……結局のところ特殊部隊って格好良いですよね、と言うお話しです。」
“分かる。”
「そんなノリで作っていたのですよ、当初は。ですが、思った以上に風紀委員会は機能していなかったのです。1人の権威に縋る治安維持部隊など言語道断、私がある程度の権力を持ってからはその辺りを改善して回っていたのですが…」
“またヴェスパーの権威が出てきちゃった、と。”
「有り体に言えばそうなります。無論入隊に於けるメリットも大きいので、委員のモチベーションも上がっているので結果的にはプラスです。しかし、現状平の委員は舐められっぱなしです。」
いつの間に淹れていたのか、コーヒーを差し出される。私はそれに礼を行って、一口含む。
“……おいしい!”
「それは何より。風紀委員会の事務作業の量ともなると、皆カフェインと糖分が手放せません。自然と淹れるのが上手くなってしまいました。」
“……大変だね。”
「えぇまぁ。なのでゲヘナでフィーカをご所望なら、給食室でも風紀委員会でも構いません。いらして下さい。まぁ……どちらにせよ厄介ごとはやってくるでしょうが。」
“……ジュリがコーヒー淹れたらどうなるんだろう。”
「なので基本ここに来る事を推奨します……あぁ、アコも上手くはありませんので。」
コーヒーを啜る音は工房の喧騒に吸われて、私の耳までは届かなかった。
マグカップを置いたレイジはこちらに歩み寄ってくる。
「どうです?そろそろ食事時です、一緒にいかがですかね?」
“良いの?”
「えぇ、今日はヒナが休みでしたので、弁当は持ってきていませんでしたから。給食でもよろしいでしょうか?」
“うーん……生徒たちのご飯でしょ?”
「注文するだけして、なんて生徒も多いですよ。給食部も事前注文制に変更させたのですが……それでも嫌がらせは尽きませんからね。お陰で風紀委員会の食費が浮くのですがね。それに……フウカさんの事です、先生に食べて貰えば嬉しいと思いますよ。」
“……ズルいね、その言い方。”
「こう言えば断れませんでしょう?では、行きましょうか。」
「あ、レイジさん!今日も賄いを……先生!?」
“こんにちは、フウカ。”
「先生がたまたま風紀委員会に用がありましたので、お連れしました。」
「さ、流石にちょっと急過ぎませんか!?うぅ……先生が来るならもっと腕によりをかけたのに……」
「良いではないですか。以前の状態に比べたら味の差は歴然です。」
「いやそう言う事じゃなくてですね……!」
“フウカ?”
「は、はい!?」
“私も給食、食べて良いかな?”
「へ、え、えぇっと……は、はい!先生がよろしければ……」
「と、言う事で私もここで失礼します。」
レイジからお盆を一つ渡されると、一品ずつ順番に取って行く。ご飯につみれの味噌汁、キャベツの千切りに焼き魚。ごく一般的なメニューだ。レイジは……二人前取っている。お盆が大きい。
“……焼き魚を人数分用意するの、大変じゃない?”
「そうですね……大変ですが、去年に比べたら半分以下になっています。なのでそこまでは、ですね。」
「以前はフウカさんも、自分の時間を一切持っていませんでしたからね。書類の様に速攻で片付けられるものではないのが料理ですから、せめて量を減らせる様に万魔殿に提案しましたよ。」
「それでも美食研究会が襲撃しに来たりして……」
“2人とも、苦労してるんだね……”
「苦労人気質、というのは自覚してますが、ガス抜きはしてますよ。フウカさんはどうです?」
「私……ですか?お料理が好きなので、シャーレに行って作ったり……そもそも給食部は大変ですけど、楽しいですから。」
「……貴方が良いのであれば問題ありません。何かあればまたお申し付けください。ご馳走様でした。今日も美味でしたよ。」
「お粗末様でした。」
“早っ!?”
確か私の1.5倍はあったはずなのに、聞き手より先に食べ切れる人間がいるのだろうか……いや居るな、アカリとかハスミとか。
「先生はこれからどういたしますか?」
“うーん……今日は特に予定はないかな。”
「とりあえず、私はまた業務に戻らねばなりません。どうぞご自由にゲヘナ学園をご覧ください。では、失礼します。」
そう言うと、レイジは高い靴音を立てて廊下へと消えた。