ゲヘナ学園風紀委員副長、レイジです。   作:QAAM_M1911

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ヴェスパーの一日

「……副長寝てる?」

「寝てますね。」

「なら始めようか。盛大なパーティーの時間だ。」

 

仮眠室に入ってきたシキとナミネ、そしてココロ。ココロの持つ物は……先日トリニティにて開発されたグレネード、通称“耳鳴り”。個人携帯出来るロケットランチャーとしては最大の120mmとか言う馬鹿げた口径、そして搭載される火薬量は馬鹿の所業、爆発範囲はクルセイダー戦車のHEに匹敵するとかしないとか。まぁそのせいで取り回しはとんでもなく悪いの一言だが。

 

そんなものを室内に持ち込んで、何をするかと言えば答えは一つ。

 

「……起きろ社畜レイジィィィ!!!」

 

風紀委員会の拠点全域に響き渡るような重低音、四人を巻き込んで爆発する砲弾。キヴォトスクオリティーの早朝バズーカである。

 

「ねぇ。」

「「「あっ」」」

「何もかも吹き飛んだけど、ホントに何がしたかったの?」

 

吹っ飛んだレイジは無事救急医学部行きになった。それと三人は居合わせたヒナの手によって再教育センター送りになった。当たり前である。

 


 

「全く……何がしたかったんだアイツらは……!」

「レイジ副長、怪我の具合は?」

「業務に支障はありません。それより、ここに来たという事は何か報告があるのでしょう?」

「はい、万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)がこの後会計監査に来るそうです……」

「……何だと?訓練の予算案は確実に提出したはずだ。ダブルチェックの不備はなかったのは確認済ですね?」

「勿論、いつもの言いがかりです、はぁ……」

「なるほど。」

 

アコが見舞いがてらの報告に来てくれた。しかし面倒な案件を持ってきてくれるものだ。今はヒナが温泉開発部の対処に出ている為、委員長の暴が使えん。

 

「……アコ1人でも大丈夫だとは思いますが、時期が時期です。私も行きましょう。」

「分かりました、ですが無理はしないでください。そもそも今、建物の4分の1が壊滅している状態なので……」

「どこからあんなモノを仕入れたんだあのバカは……!!」

 

また貯蓄が消えていく……しかも万魔殿の監査か。しっかり資金盗用してるので結構マズイかもしれん。

 

「と言う事で少しだけ外出許可を。」

「良いですが、終わったらまた戻ってください。身内に戦車砲で撃たれた死た……負傷者は初めて見ましたので。」

 

まぁそりゃそうだ。何をどう勘違いしたらバズーカで味方に撃たれるのだろうか。金も時間も何もかもが勿体ない。

 

「では、行きましょうか。車椅子借りますよ。」

 

重いし痛い身体をどうにか奮起させながら、風紀委員会本部へと向かった。

 


 

「とりあえず鎮痛剤は打っておきますよ。」

「お願いします。」

 

チナツに注射を打ってもらいつつ、監査員を待つ。ヴェスパーの奴らは確かに強いし優秀だ。だが決定的になんかが欠けてる。ココロなら常識と言うか……戦闘以外の事を全部投げ捨てて、ナミネは音以外を全部シャットアウトしてて……そういやシキは何で居たんだろう。アイツは忠実そのものでヴェスパーの良心と言える奴なんだが……

 

「副長、ホントに大丈夫ですか?」

「この程度で音を上げるのであれば、風紀委員会を纏めるなど無理ですよ。」

「それもそうか…」

 

車椅子を動かし、やって来た監査員の前に立っ……てねぇわ。前に出た。

 

「ようこそお出でくださいました、イブキさんにイロハさん。」

「えっ、レイジ先輩大丈夫!?傷だらけ!!」

「ちょっとうちの馬鹿共が私ごと仮眠室ぶっ飛ばしやがりまして。また支出が……」

「はぁ……」

 

面倒6割、困惑4割といったところの溜息をもらすイロハ。そりゃそうだ。

 

「一応行っておきますけど……万魔殿の上層部直々の指示ですので。」

「えぇ構いません!どちらにせよ杜撰な管理をしているつもりはありませんし、探られたところで痛くもかゆくもありませんから!!」

 

めっちゃ会計誤魔化してるが大丈夫だろうか。

 

「むしろこの機に、これ以上ないくらい完璧な身の潔白を証明して、今後は変な脅しなんてできない様にして差し上げましょう!!」

 

黒よりの白で結構マズいんだが。

 

「さぁ、やるのでしたら存分にどうぞ!!」

「アコちゃん、自信満々なのは良いけど……」

「行政官がこういうテンションの時は、逆に不安です……」

「まぁ、その為の私です。イオリ、チナツ。通常業務に戻りなさい。」

「では遠慮なく。最初は……風紀委員会の本部ですね。」

「レイジ先輩!車椅子押すね!」

「ありがとうございm……ちょっと待て結構速いな!?安全運転でお願いしますよ。」

 


 

「……掲示板がありませんね。」

「既に全てデジタル化しています。風紀委員全体に配った端末からそういった連絡は全て出来る様にしてあります。」

「減点ですね。」

「はいっ!?」

「外部のお客さんに活動内容が伝わりません。」

「なるほど、その発想はありませんでしたね……」

「どうして納得出来るんですか……」

「大方お上からいちゃもん付けてこいって言われてるんでしょう?」

「そうですね……はぁ、どうしてそもそも私がこんな事を……」

 

こういう時は適当に納得したフリをしておく……まぁ実際その観点は無かったからまた設置しないといけないんだが。

 

「では次です。」

 

 

 

適当ないちゃもんばっか付けられるのは予想通り。巧妙に隠した予算偽装は見破るべくもなく……

 

「そういうわけで……諸々確認した結果、戦術訓練の予算における約95%は削減、あるいは環境整備などの別の予算に割り当てられるべきですね。」

「少し割くのは私も考えてましたが、流石にその割合は看過できません。訓練になりませんね……って待て止まれ!」

「え?わっ!?」

 

イブキに押されるがままで俺の三半規管はもうガタガタ、そんな状態での警告などもう遅く。

 

瓦礫にぶつかり、俺は盛大に地面へとひっくり返った。ついでに宙を舞った車椅子にも押し潰された。

 


 

「……といったことが、先ほどありまして……」

「副長は少なくとも一週間の完全安静です。そこからまたリハビリもするので……復帰には二週間は掛かるかと。」

「更に来年度の予算はゼロ。理由が“イブキを泣かせたから”、だそうです……」

「こっちはレイジ先輩が重体ってのにさぁ……」

「……そう。あのタヌキ共め……」

「い、委員長……」

 

はらわたが煮えくり返る。どこまでも自己中心的な奴らだ、ゲヘナというか世界から消し去った方が絶対に世の中の為になる。

 

「ちょっと行ってくる。迫撃砲用意、照準は万魔殿本部、指示後全弾発射。全部焼き尽くす。」

「ちょ、ちょっと委員長!レイジ先輩の遺言……じゃなくて伝言があるんだよ!」

「……なに?」

「“予算ゼロって言ってたのはマコトだけ”……だって。」

「……分かった。」

 

仕方ない、今日はイロハとイブキの方は許しておこう。それはともかくとして……

 

羽沼マコト、今日がお前の終幕だ。

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