ゲヘナ学園風紀委員副長、レイジです。 作:QAAM_M1911
「……なるほど、ミレニアム行きの休暇が欲しいと。」
「はい……えぇと、アレだ!やっぱりミレニアムの技術力を一回しっかり見に行きたいんだ!そうすればバルテウスの開発にも役立てられるはずだ!」
「分かりました……が、そうですね……」
この前のヴェスパー本格稼働後から、各学園から問い合わせが中々来ている。簡単に言えば……LCを売ってくれ、とか技術開示を求めるとか。全て笑い飛ばして、返答すらせずにゴミ箱に捨てた……ミレニアムからの手紙以外は。
やはり技術者が多いからか、殆どの手紙の内容は共同開発の提案や簡易的ではあるものの、LCに乗せられる武器の図面まで送ってきた。そういう歩み寄りには非常に好感が持てる。一通だけゲームがなんだかと言うのがあってゴミ箱行きになったが。
「先日、多くのメールが届きましてね。」
「あ、あぁ…………ま、まさか!?」
「えぇ、私もミレニアムに飛ぼうと思います。別にあなたの行動を揺さぶるつもりはないのでご安心を。」
「パ、パワハラだろそれ!!」
「手続き面倒なので。あとLC関連の用なら普通に出張で処理しておきますが。」
「そ、そうか……わ、分かった。」
「では私と一緒に出張という事で。」
「前言撤回させてくれ!頼むから!!気が休まらないんだアンタと居ると!!」
「申し訳ありません、もう予定を組み終わってしまいましたので。」
「あァんまりだああぁぁぁぁ!!!」
そんな訳でやって来ました、ミレニアム。因みにしっかりLCとHCを持ってきました。噂が広がりに広がったのか、ヘリポート周辺には生徒の群れが出来上がっていた。
「これは……また壮観だ。副長、とんでもない数ですね!」
「これではヘリが降りられない……仕方ない、LCの装着をしなさい!」
「り、了解!」
ミヨイはやはり優秀だ。指示には従い、開発も出来る。一度再教育センターにぶち込んだ理由も、オーバーワークが原因である程には。言わずとも理解をしてくれた。
「オペレーター、回線をこちらに。
『え、あ、はい!現在だと……実験場が最適かと!』
「了解しました。生徒は居ませんよね?」
『確認します……貸し出し許可は出されていません!』
「了解しました、そちらに向かいます。パイロットは生徒が移動を始めたら着陸なさい。では……発進します!」
HCの機体がヘリの外に投げ出される。フックが外れ、自由落下が始まろうかという瞬間にブースターを起動。高度500mの空の旅が始まった。
「クルーズブースター起動確認、FCSロック、ACS最小稼働。」
『こちらも準備が出来た。副長について行く。』
地面にはこれを見て歓喜し、狂乱するミレニアムの生徒が見える。まぁ悪い気はしない……が、統率というものを少し覚えて欲しい。
「Ⅴ.Ⅱからタワーへ、誘導を願います。」
『了解。』
誘導に従えば、様々なスクラップが転がるフィールドが見える。片付けはしないのか……?
「着陸を『副長、待ってくれ。』どうしました?」
『スキャン結果だ。生きている、しかも遠隔で動いているタレットを発見した。』
「ふむ……こちらⅤ.Ⅱ。タワーへ、実験場に起動したタレットを発見しました。どういう事です?」
『えっ……そんなはずは……』
「撃たれる可能性がある以上、こちらとしては破壊するしかありません。」
『……分かりました。破壊を許可します。』
「ミヨイ、やりなさい。」
俺が直に喰らった“耳鳴り砲”が火を噴き、実験場の殆どを爆炎で包み上げた。ミヨイは全ての距離に苦手がないので、彼女の乗機はプラズマライフルで牽制し、近付けばスタンロッドの電撃が、遠距離なら“耳鳴り砲”のドキツイ一撃が見舞われる全距離に対応できる代物だ。
「目標の破壊を確認。スキャンにも反応はなし……着陸しましょう。」
地面に向かってグライドし、スクラップだらけの地面に若干手間取りながらも着陸する。
「お疲れ様でした。さて……このタレットはどこの馬鹿が仕掛けたものでしょうか?」
「先ほどのデータから解析します……逆探知完了、エンジニア部ですね。」
「あなたが心折られた部でしたね?」
「そ、そうだが……もう私は逆探知できる程には成長したんだ!LCがハッキング出来ない様にファイアウォール構築するの大変だったんだぞ!?」
「えぇ、それは重々承知しています。Ⅴ.Ⅱからタワーへ。着陸完了。指示を待つ。」
『待機せよ、現在トラックを向かわせています。』
「みたいですが、そこに居る奴らどうします?」
「まぁ一度話をしてみましょう。出てきなさい、出てこないのであればもう一度先ほどのやつをお見舞いしましょう。」
「わ、ま、待ってください!出ますってば!!」
と、瓦礫の隙間から出てきたのは三人の生徒。なるほど、タレットを仕掛けていたのはコイツらだな。
「彼女らが?」
「……はい、エンジニア部の白石ウタハ、猫塚ヒビキ、豊美コトリです。」
「久しぶりだね、ミヨイ。一年ぶりかな?」
「そ、そうだが……」
「あれ、先輩のご友人なんですか?」
「私の後輩で、一年生の時にエンジニア部に来てね。色々と見せていたらいつの間にか居なくなっていてね……まさか、ゲヘナ学園で活動しているとは思わなかったよ。」
「……レベル高すぎなんだよここ。あと実用性がない!」
「何を言うんだ、機械にこそロマンを詰めなければ!」
「はいはい。世迷言は言わずにとっとと出て行きましょうね~」
実験場の入り口から大きくはないものの、しっかりと通った声が響き、三人の背筋がぴんと立った。入り口を見やれば、ミレニアムの生徒会に相当する、“セミナー”の2人が立っている。
「あ、あはは~ここはちょっと、見逃してもらえたらと……」
「ダメよ!大事な来賓なのよ。外交問題に発展したら、あなたたちにどう責任が取れるの?」
「ふぅむ、せいぜいが“光の剣”を量産する程度かな?」
「それ戦争しに来てるよな!?」
「とりあえずC&Cの方々に引き渡してしまいましょうか。」
「分かりましたって!出て行きますから!」
「うぅ……抜け駆けする絶好の機会だったのに。」
「でも私たちは諦めない……そこに浪漫がある限り!」
さらっと犯行宣言をして、実験場を後にするエンジニア部。
「……さて、お話は済みましたか?」
「はい。お待たせしてしまったこと、着陸地点の変更とそれに伴うトラブルについて、私たちセミナーから正式に謝罪をさせて頂きたいです。」
「この程度でしたら、水に流してしまっても構わないのですが……」
ゲヘナならむしろ礼儀がなっているとして好印象まである。倫理観/ZEROとはこの事……というか今更の事である。
「申し遅れました。セミナー書記の生塩ノアです。」
「セミナー会計の早瀬ユウカです!」
「ふ、風紀委員会Ⅴ.Ⅶの油川ミヨイだ!」
「ゲヘナ学園風紀委員会副長、暁星レイジです。本日はお招きいただき、ありがとうございます。」
「こちらこそ、招聘に応じていただきありがとうございます。えっと……あの、先日の着ぐるみって……」
「忘れて下さい。悪い夢でしょう。」
眼鏡を懐から出し、ヘルメットのバイザーを上げて掛ける。
「ところで、機体を運ぶためのトレーラーはどちらに?」
「あと2分43秒もあればつくと思います。出来れば道路の方に出てきただけると助かります。」
「分かりました。ミヨイ、行きましょう。」
「……さて、今日私がミレニアムサイエンススクールに来たのは他でもありません。貴方がたの部括、その多数から共同研究の申し出があったからです。他の学園からも問い合わせはありましたが……多くが技術開示や販売に関するもの。私は貴方がたの気の入れ込みように感銘を受けました。これがどういう意味かは……分かりますね?着いてこない者は置いていく、という事です。」
部集会の場が、糸を張った様に緊張に包まれる。それもそうだ、今まさに話題となっている“ヴェスパー”のトップが共同開発の提案を吞もうとしているからだ。ミレニアムに居る生徒であれば、殆どがLCやHCと呼ばれるパワードスーツに対して、興味のある部分がある。あまり縁のなさそうなC&Cでさえも、戦闘という非常に重要な分野に関して食いついて来た程には。
「しかし、私はLCやHCという分野は既に完成した、と考えています。既にパワードスーツとしての性能上限は現界、その為パイロットが耐えられなくなる。」
「つまり、性能以外の部分をやるってこと?」
「いえ、完全なる“新規プロジェクト”を立ち上げようと考えています。」
「嘘でしょ……!?」
「つまり……好きにパワードスーツのデザインとか性能を弄れるって事!?」
「そう考えて貰って良いでしょう。ですが、条件をいくつか設けたいと思います。まず、“基礎パーツはヘッド、コア、アーム、レッグに分けること”。そして“全てのパーツに互換性を持たせる事”。例えば……重装甲のコアパーツに軽装甲のアームパーツを装着できるようにする。」
「私たち独自のパーツで勝負!って事だね!!」
「そして“武器はFCSで認証出来る範囲のものに留めること”。これも頭に入れておいてください。これさえ守ってくれれば特に問題はありません。」
「え、待って!?これミレニアムからお金出すの……?」
「我々から技術提供はしますが……開発費は部に任せたいと思います。いくらゲヘナで腕のある部だとしても、他校の部がやりくりするお金関係はどうしようもありませんから。それに、このプロジェクトは“自由参加”ですから。」
頭を抱える早瀬ユウカ……いや、誘致したのアンタだからそれなりに予算あると思ってたんだが。熱狂する部長たちを手で制し、騒ぎを沈める。とは言え、ソワソワしているのは隠せていない。まぁ……可愛いもんだ。
「新規プロジェクトの名前を発表したいと思います。プロジェクトネームは……」
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