触れて欲しくも無くて
笑いとばしてるんだ
自分の在りかを知りたくて 今
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「おーい、ミザールー!」
「……」
宙を舞った花弁を見つめる中で、聞き慣れた声が私を呼ぶ。
ほどほどに返事をしつつその場から駆け出すと、何をしていたんだ、と彼女に声を掛けられる。
私はなんでも、とだけ答えて、彼女と共に集合場所へ急ぐ。
「――えー、それでは!」
やかましい鼻を啜る音を立てながら、校長先生は言う。
「アシカガトレセン学園、『最後の』卒業式を始めます!」
高らかな宣言に、ぱらぱらと上がる拍手。
私たち生徒『四人』と、教頭先生、『一人』。……合わせて、五人分の、それと言うにはさすがに寂しい拍手。
「えー皆さんもご存じの通り、本日をもって、我が校は廃校となります!」
それにも関わらず、彼は威勢よく張り切るが。
「あなたたちが、本当に意味で卒業出来るまで、ここが持たなかったのは悲しいですが……それでも本日まで! 皆さん、よく学び、よく遊びました! これからはっ、ずびっ、ここで学んだことをっ、ぐずっ……ぞ、存分にっ、発揮してぇ……!!」
その張り切りも長くは続かず、程なく、空に響き渡る泣き声に変わっていた。
各々が同情して声を掛ける中、校長先生はやがて気を取り直し、言葉を続ける。
「――ともかくっ! 皆さんには、これから先も、それぞれの思い描く未来へ向かって、邁進してもらいたい! そんな思いを込めて、ひとりひとり、お話させてもらおうと思う!」
1人目。
「ガーネットカペラ! 未来を『追い込み』なさい! 鍛錬も研鑽も決して怠らぬこと! いずれ来るその時のために爪を磨き、機を逃さず、追い付きなさい!」
2人目。つまりは私。
「サファイアミザール! 未来を『差し』なさい! 集団の中で得られるものはいくつもある! 周囲と強調し、切磋琢磨し、思い描く未来を掴み取りなさい!」
3人目。
「ヒスイレグルス! 未来に『先行』なさい! 先見の明は誰にでも宿るものではありません! 自らに与えられた叡智を存分に発揮し、未来を引っ張る存在となりなさい!」
そして、4人目。
「コハクダブルスター! 未来へ『逃げ』なさい! 現実と向き合うことばかりが生きることではありません。よりよい生き方を、よりよい今を手にするため、未来だけを見て走り続けなさい!」
言い終えると、口元に、慈しみに満ちた笑みが灯る。
「……期待していますよ、皆さん。さぁ、写真撮影しましょう。『ご神木』の前に集合!」
それにわいわいと従って、『ご神木』の前に並ぶと、教頭先生もその横に並ぶ。
カメラのシャッターを設定するのは、校長先生。
「……よしっ、出来たぞ! さぁ横断幕を持って!」
なんだかんだ合ったけれど。
なんだかんだ言ったけれど。
私たちは、事前に準備した横断幕を、協力して前に掲げる。
そして。
「せーの!」
駆け寄ってきた校長先生の合図で。
元気よく言った。
『――我ら!』
『アシセン学園!!』
――我ら、アシセン学園!
横断幕では、そんな文字が、騒がしく踊っていた。